たぶん居ますよね。ほかにも。きっと
後すごいどうでもいいですが、サムズアップは親指を立ててGoodサインするアレです。
サポート科に武器を依頼してからしばらく。
俺の武器はまだ完成していない。試作品をいくつか試したがどれもイマイチだった。
とりあえず、素手よりはましなのでそれを装備している。
『どうです! 私のドッ可愛いベイビーは!!』
『これなに?』
『
『重さは?』
『320キログラムです!!』
『持てるわけねーだろ! アホかぁ!!!?』
おっと、いかん。アホの事を思い出してしまった。アレは試作品とさえ認めてない。
あの後も散々わけわからんメカを試させよってからに・・・
後ろでパワーローダー先生がめちゃくちゃ申し訳なさそうな顔をしてたじゃねーか。
見た目はかわいいのに何故ああなったんだ?
「どうしたの? 先見ちゃん。車酔い?」
「ああいや、気にしないでくれ。むしろ頭が痛くなるような記憶を思い出していたというか・・・」
隣にいる梅雨ちゃんが心配して声をかけてくれた。
ちなみに今は教室じゃない。今日はヒーロー基礎学、救助訓練の日だ。
「にしても敷地が広いのは知ってたけど、学校内をバスで移動するとは思わなかった」
「そうね。私もよ」
あまりにも遠いので、救助訓練を行うにあたって施設までバスで移動しなければならない。
こういうのもスクールバスと呼ぶのだろうか?
バスの前方では相変わらず爆豪が暴れている。
あの爆豪をいじれる上鳴も、フレンドリーに接する切島もコミュ力の化け物である。
「爆豪って救助とか向いてなさそうだよな。性格的に」
「んだとコラ! できるわ!」
「わかる。クソを下水で煮込んだような性格してるもんな」
なんだその罵倒のセンスは?
「うるさいぞ! 静かにしろ!」
ついに相澤先生がキレた。騒ぎ過ぎはよくないね
「ねえ、先見ちゃん。先見ちゃんはどうなの?」
「ん? なにが?」
梅雨ちゃんが唐突に質問してきた。
「先見ちゃんの「個性」はどうやって救助に使うのかしら? いまいちよくわからないの」
「…あーなるほど。そうだな、どうやってか。」
うーん? 改めて考えると、自分が助かるために使うのはともかく人を助けるには使いづらいな。あれ? 思いつかん。
「俺の「個性」は災害救助に直接役立つことはない。かも」
「え?」
「できることと言ったら…他のヒーローに指示出すこと?とか?」
マジで役立たずだわ。どないしょ。
「判断を適切に下すことはできるけど。…それ以外にできることが思いつかない」
「落ち込まないで先見ちゃん。きっと何かやれることがあるわ」
やさしいなあ、梅雨ちゃん。
でもなあ、災害時に未来見たってあと何分後に死ぬかわかるくらいだしなあ。
戦闘時とかはともかく、限界の12分まで先を見ても見れる時間が短すぎだし。
「ダメだ、俺の灰色の脳細胞じゃ良い考えが出ない。」
「いいの? それで?」
よくない。しかし、問題もない。
「大丈夫、大丈夫。今からそれを教えてもらいに行くんだし」
「それもそうね。災害時の「個性」の使い方を教えてもらえるといいわね。」
分らないのなら先達から教えを乞う。プロヒーローなんだからいい考えの一つや二つ出るでしょう。予知系の個性だって何人かいるだろうし。
しばらくするとバスが到着した。
目の前にはデカいテーマパーク・・・に似た災害訓練施設がある。13号先生が作った【嘘の災害や事故ルーム】。略してUSJだ。
その略称はヤバいぞ先生!
「―――人命のために「個性」をどう使っていくのか学んでいきましょう!」
13号先生からの小言と激励が終わった。皆かなり感動したようだ。「君たちの個性は人を助けるためにある」とか言いきっちゃうのがかっこいいね。
俺はそんなこと思っちゃいないけど。
「それじゃあ、授業始めるぞ。まずは―――」
相澤先生が授業の説明を始めようとしたところ。
何かに気を取られたのか、突然に言葉を切った。
なんだ? 広場の中央を見つめている?
「なんだあれ? 黒いモヤみてーなのが・・・」
「入試の時みたいなすでに始まってるパターン?」
見えた。なんかいっぱい人がでてきてるな。水色の髪の奴が先頭に立ってる。
なんか変なマスクつけてんなアイツ―――? 人の手? きもい
「下がれ!!」
相澤先生の声が弛緩した空気を切り裂く。
「アレは!
・・・まじかよ
雄英のドッキリとかそういった類ではないらしい。
正真正銘の社会に対する敵対者。奴らが俺たちに牙を剥いた。
相澤先生がヴィランであふれる広場へ飛び込む。
あの数を相手に一人で立ち向かうつもりだ。
「個性」を使い、連携を乱れさせ、隙あらば拘束・制圧する。
どの敵の「個性」を消すのか、判断が上手い。
遠距離からの攻撃に拘束具を巻き付けた別の敵をぶつける。連携攻撃は「個性」で足並みを乱し、活路を開く。戦場全体をコントロールする戦い方だ。
ヴィランどもを次々となぎ倒していく。
ていうか、肉弾戦強すぎ!!
「・・・すごい。多対一こそ先生の得意分野だったんだ。」
「何をしてるんだ緑谷君! 早くこっちへ!」
緑谷さん分析してる場合じゃないっすよ。逃げましょ?
するとさっきの黒いモヤがこっちに来た。
アイツもヴィランか! 空間系? 便利なモンもってんな。
「そうはさせません。あなた方にはここでオールマイトをおびき出す餌になっていただかなくては。」
――あ、やばい。『観えた』
「平和の象徴。オールマイトに息絶えていただきたいと思いまして。」
ダッシュ。
切島と爆豪の攻撃は無意味に終わる。
「それとは関係なく、私の役目はこれ。散らして 嬲り 殺す」
黒いモヤが一気に広がる。
アレに包まれたらアウトだ。その前に飯田が範囲外に何人か連れて逃げる。
もう一人くらい何とか。尾白の奴を外に投げ捨てる。
「助けを呼べ」
何とか言えた。
驚愕に目を丸くする尾白。それを最後に視界は暗闇に包まれた。
△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△
視界が開ける。どこだここ? 火災ルーム・・・かな?
「ん? 俺一人か?」
周囲には誰もいない。クラスメイトはこっちに来ていないようだ。
「まだまだピンチは続いてるみたいだな」
物陰に指をさす。
そこにはぞろぞろとヴィランが待ち構えていた。
「だいたい20人くらいか。分断させて囲んでボコる。そういう戦略ってわけね」
有効な戦略だ。数は力。それは正しい。
しかし、これはどうなんだろう?
「しょーがない。ちゃちゃっと片づけよう。」
この程度の数なら問題ない。数の不利を覆してこその英雄、だろ?
ちょうどいいや、こいつ等で試作品の使い心地でもチェックするか
「そんじゃ、いくぜー。ほっ!」
試作品その一。ブーメラン。
「ヒーローの卵だろうが油断すんなよ。」
「ぶっ殺す!」
「腕振り回して何やってんだあいつ?」
「なんか、変な音聞こえねえ?」
もちろんタダのブーメランじゃない。サポート科なめんな。アイツら変人だけどすげえぞ?
「ギャアアア!??」
「なんだあ!?」
「ぐあああ!? 斬られた!?」
「なんか刺さってるぞ!?」
なんと、このブーメランほぼ目に見えない。極薄の透明な素材で作られているらしく、少なくとも遠目に視認することは不可能だ。
欠点は極薄なせいで相手を切り裂いてしまうこと。そして、周りから見ると『腕を振り回したと思ったら敵が切り刻まれてた』ように見える。つまり、地味だしグロイ。
うん! これはボツ!!
「おら、次いくぞー!」
試作品その二! ヨーヨー!
「ぐべっ!?」
「何か投げてきたぞ!」
「ボールか? なんか紐みたいなのがついてたが」
まだ俺の攻撃ターンだ。ずっと俺のフェイズ!
「うわあ! また投げてきた!」
「ゴムで手元に戻してやがる! また来るぞ!」
「避けろー!」
これは縁日の水風船ヨーヨーを模してある。伸びやすく縮む力が強いという特殊なゴムで本体とつなげてある。これを投げつけてゴムで引っ張って再利用。ぶん回して使うことも可能だ。
欠点は単純。威力が無い。そして、
「おっしゃあ! つかんだぞ! こっちにこい!!」
掴まれやすい。せっかく再利用できてもこれでは意味が無い。体勢を崩されこっちが不利になるだけだ。
これもやはりボツ!
やむを得ないので武器を手放す。
さあ、次だ。
「そらよっと!」
試作品その三!! ダーツ!!
「いってぇ!!」
「グッ!? 肩に! なんだこりゃ? ダーツ?」
こいつはすごいぜ! 悪い意味でな!!
「ぎゃあああ゛あ゛あ゛!!?」
「いだあああああ!??」
このダーツはモーターを内蔵している。そして針と本体は特殊な形状をしていて、相手に刺さると傷口を掘り進んでいくぞ!
欠点とかそういう話じゃねえ! グロすぎる!!
当然の如くボツ!!!
「あ、あ、いでえぇぇ」
「ううう・・・」
「ち、ちくしょう。」
何時の間にやら死屍累々。こりゃあひでえ。
残りのヴィラン共も俺に向かってくるのを躊躇してる気がする。
ブーメランもヨーヨーもダーツも、「個性」のおかげで相手を行動不能にする場所に打ち込めるのはいいんだが・・・
「くそっ、腕の腱がやられた。動かせねえ」
「こっちの奴はアキレス腱だ。あの野郎、躊躇なく急所を狙ってやがる。」
「お、おい。こいつ泡吹いてるぞ? 痙攣してるし」
「そいつは…息子をやられたんだ・・・」
まあ、すなわち急所に当ててしまうというわけでして・・・。
やむを得なくだよ? 一撃で行動不能にするためですよ?
どうしてヴィランの皆さんは俺を頭おかしい奴みたいな目で見ているのかな?
「おい、ゴラァァァ! かかってこいやヴィランンンン!!! 逃げたらそれよりひどい目にあわせてやるからなァァァアァ!!」
「「「うわあああ?! クッソがあああ!!」」」
ばらばらに逃げられると厄介なので、挑発してこっちに来させる。
ようやく遠距離だとマズイことが分かったのか接近戦を仕掛けてくる。複数人で囲めば何とかなると思ってるのだろう。
甘いぞ。
殴りかかってきたヴィランを最小限の動きで躱す。
左から顔面を蹴ろうとする奴がいるので屈んでかわす。その際に足を払って転ばす。
「個性」なのか、周囲の瓦礫を取り込んで巨大化させた拳で攻撃してくる。ジャンプして躱す。そのまま腕を伝って顔面を蹴っ飛ばす。
左右からの同時攻撃。左からの攻撃を躱し右側の攻撃をそらす。そらした拳は左の奴の顔面に直撃した。
これは使える。
さっきの相澤先生の物まねだが、これはかなり有効だ。
回避は最小限、相手の攻撃をなるべく利用する。言うは単純だが行うのは難しい。
普通は無理かもしれない、訓練が必要かもしれない。しかし、俺には関係ない。
経験で磨かれた戦術眼がいるかもしれない、武術を学んで修行する必要もあるかもしれない。しかし、全く持って関係ない。
「
最終的に、近接戦闘で残った全員を片づけてしまった。色々試せたし満足しました。
武器を回収するついでに、他の敵が潜んでないか確認する。
火災現場だからあんまり隠れる場所とか無いけど。
あと熱い! コスチュームが頑丈で助かった。割と生命線だな上鳴との戦闘でもそうだったし。
それはさておき、ヴィランを動けないように拘束する。
「これからどうするべきか?」
俺は大丈夫だった。しかし、他の人間もそうだとは限らないだろう。戦闘が不得意な人間は間違いなくピンチだろう。
つまりだ。
俺は戦闘が割と得意な「個性」だが、そうじゃない「個性」の人間も―――
「いや、大丈夫な気がしてきた?」
だって、みんな普通に強いじゃん? 俺が勝てそうな人間の方が少ない様な?
当たり前だが我々はヒーローの卵。
こんなチンピラ程度のヴィランに負けるクラスメイトがいるとは思えない。
「よし、決定。災害ルームをぐるっと回ってクラスメイトを助けようかと思ったが、止めだ。」
俺が今まで戦ってたやつとかはほとんどチンピラの
水色の髪の奴とか、黒いモヤの空間系「個性」の奴とか。
「そいつらのところに行ってくる。つまり広場を目指す。」
なにより、「嬲り殺す」と言われたからな。ワープで飛ばされたし、やり返さないとな!!
試作品はもうあまり使われないかも?
メイン武器はすでに他のを考えてあります。