Phantom of Fate   作:不知火新夜
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1日目-7

「今日はありがとうな、桜。いろいろと助かったよ」
「いえ、先輩達には日頃からお世話になっていますし。そのお礼と言うのはちょっと変ですけど…」

教会での聖杯戦争への参加表明を終えた士郎達、その帰り際に士郎は桜に、此処までこの戦いに関して右も左も分からなかった士郎達の為に手助けをしてくれた彼女にお礼の言葉を掛けていた。
それに対する桜の返答は、お世話になっている事への礼だとの物だった、が、

「それに先輩達には、一生かかっても返し切れない程の大きな恩がありますから…」
「ん?どうしたんだ、桜?」
「あ、い、いえ、何でもありません、それでは戻りましょうか。ちょっと話したい事があるので…」
「分かった。それじゃあ戻ろうぜ、皆。明日も早いし」
「ん…」
「了解だ」
「はい、シロウ」

士郎達には聞き取れない程度の小声で何か呟いた様だった。
それはともかく、教会での用も済んだので、6人は屋敷へと戻るべく、其々バイクに乗り(ライダーは霊体化した)発進、冬木教会を後にした。
ところが、

「っ!皆、ストップだ!」
「ああ!早速出て来やがったか!」
「随分耳が早い…!」
「え!?ま、まさか…!?」
「下がって下さい、皆!」
「此処は私達にお任せを!」

新都と深山町とを繋ぐ橋を渡った所で、途轍もない殺気を感じ取った士郎達、即座にバイクを路肩に停車、霊体化を解いたライダーと共に周囲を警戒する。
士郎はコンテンダーと刀、零は何処からともなく出現させた先程の大刀、セイバーは剣の様な物、そしてライダーは釘の様な形状の短刀、各々の武器を持つ事も忘れずに(先程使っていたSCAR-HやMAGは、物々しさを考慮して置いて来た)。
其処へ、

「こんばんは、お兄ちゃん達」

鉛色の肌に腰巻だけという異様な出で立ちに斧の様な大剣を装備した巨人と、紫を基調とした厚着を着込んだ銀髪に赤い眼の少女が、士郎から見て向かい側からやって来た。
何ともミスマッチな2人組、巨人に至ってはこの寒い時期に腰巻だけという季節はずれにも程がある姿だったが、それにツッコミを入れる余裕など、士郎達には微塵も無かった。

「あれはサーヴァント、それも相当の実力を持った存在…!」
「な、何あの出鱈目なステータス…!」
「セイバーさんと互角、いや、それ以上…!」
「士郎達がそういうって事は、アレは見た目通り、文字通りの化け物って事か…!」

その背後に控えていた巨人、もしかしなくてもサーヴァントだと分かってはいたが、士郎達の脳内に送られて来るそのステータスに驚愕せざるを得なかったからだ。

【クラス】狂戦士(バーサーカー)
【属性】混沌・狂
【ステータス】筋力:A+ 耐久:A 敏捷:A 魔力:A 幸運:B 宝具:A

幸運以外の全てのステータスが、表記可能な最高ランクであるA(筋力に至っては条件によって倍化する可能性もある)となっていたからだ。

聖杯戦争に加わっているマスターには、令呪によるサーヴァントとの契約関係や魔力供給源としての役割を持つ代わりに、ある能力を与えられる。
その1つが、サーヴァントのクラスや属性、ステータスを把握する能力だ。
此処で言うステータスとは、最大パワーを示した『筋力』、打たれ強さを示した『耐久』、走った時のスピードや立ち回りの素早さを示した『敏捷』、内に秘めたる魔力量を示した『魔力』、運の強さを示した『幸運』、そして宝具の強大さを示した『宝具』、この6つを現している。
ステータスの大きさは、最も低いEから、最も高いAまで五段階のアルファベットで表記されているが、一部サーヴァントは条件付きで能力が倍増する+表記や、時には本来の能力が発揮出来なくなる-表記がされる存在もある、尚これは、サーヴァント個人個人が所有する特殊能力、スキルも同じ表記である。
それを踏まえて士郎達の眼前に佇む巨人――バーサーカーのステータスを見ると、それが余りにも凄まじい物だと分かる。
彼と対峙している2人のサーヴァントと比較すると、

【クラス】騎兵(ライダー)
【真名】メドゥーサ
【属性】混沌・善
【ステータス】筋力:B 耐久:D 敏捷:A 魔力:B 幸運:E 宝具:A+
【スキル】対魔力:B 騎乗:A+ 魔眼:A+ 単独行動:C 怪力:B 神性:E-

まずライダーとは、敏捷と宝具以外が大きく勝り、

【クラス】剣士(セイバー)
【属性】秩序・善
【ステータス】筋力:A 耐久:A 敏捷:A 魔力:A 幸運:A+ 宝具:A++
【スキル】対魔力:A 騎乗:A 直感:A 魔力放出:A カリスマ:B

ステータスがオールA(幸運と宝具に至っては倍化の可能性あり)、スキルもカリスマ以外がAランクと、これまた無茶苦茶なセイバーとは、戦闘に直接関わるステータスで言えば互角以上だ。
尚、これらのステータス表記は全て、セイバーのマスターである士郎と天音から見た物であり、ライダーとセイバーのスキルが表記されているのは、ライダーは真名が既に判明している為、セイバーは自らが契約しているサーヴァントである為と、予め明記しておく。

「オ嬢様、ア奴ラガ…?」
「しゃ、喋った…?」
「ええ、そうよバーサーカー。さて、折角だから自己紹介と行きましょうか。私はイリヤ。イリヤスフィール・フォン・アインツベルン」
「アインツベルン…?」
「知っているのか、桜?」
「えーと、何処かで聞いた様な気がするんですが…」

セイバー達とバーサーカー、及び互いのマスター達が対峙するその状況下でふいに、強大な戦闘能力の代償として理性や言語能力が失われているのがクラスの特徴である筈なのに、側の少女―イリヤに何かを尋ねるバーサーカー。
その問い掛けが切っ掛けかどうかは兎も角、自己紹介を始めたイリヤ。
其処で名乗った名字(ファミリーネーム)が気にかかったのか、思わず反芻する桜、それに彼女か家の知り合いかな?という感じで士郎が聞いてみたが、桜は良く分からない様子だ。
が、

「やっぱりキリツグは、私の事を…!」

その様子がイリヤの逆鱗に触れたのか、激昂した様子を露わにし、

「誰をやればいいか、言わなくとも分かるよね?やっちゃえ、バーサーカー!」
「御意…!」
「っ、来ます!」
「迎え撃ちますよ、セイバー!」

控えていたバーサーカーに突撃の指示を下した。

「覚悟ォォォォォォォォォォ!」
「な!?き、効かない!?」
「くっ!?何て重い…!」

その指示を受け、セイバー達へと突撃を仕掛けるバーサーカー、それを迎え撃つセイバーとライダーだったが、まずその突撃を狙い打ったライダーが投げつけた短剣は、バーサーカーが防いだ素振りすらないにも関わらずその身を穿つことなく弾かれ、その剣撃を受け止めたセイバーは、その余りにも重い攻撃故に耐えるのが精いっぱいといった様子だった。
圧倒的と言っても良い破壊力と耐久力、

「阻ムカ、セイバー!ナラ死ネェェェェェ!」
「っ!やぁっ!」

その持ち主たるバーサーカーとの戦いが、遂に始まった聖杯戦争の初戦が、今幕を開けた…!