Phantom of Fate   作:不知火新夜

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続きを楽しみにしていた皆さん、遅くなってしまってすいませんでした。
今話は正直言うと、どう進めたらいいかで思いのほか悩みました。


2日目-4

「此処が、俺の家だ。まあ色々聞きたい事はあるだろうけど、まずは入ってくれ」

 

校内での凛とアーチャーの主従との戦闘で圧勝し、彼女達を拘束した士郎は「話がしたいし、会わせたい人もいる」として自らの屋敷へと連れて来た。

その際、彼女は士郎を警戒してか何処か渋った様子で、道中も表情は固く、終始無言であった。

それも当然と言える、衛宮家の屋敷もそうだが、魔術師の本拠地には基本、結界等の仕掛けが施されている物、其処に他の魔術師を招き入れるという事は「怪しい動きをしたら仕掛けを作動させる」という意思表示であり、其処での交渉は即ち自らを優位に立たせての物、というか脅迫に等しい物である、今回の様に成す術も無く敗北したり、抵抗できない状態にされたり、或いはそんな仕掛けにも対処できると言えるほど自らの実力に自信を持っていない限り、士郎の要求に応じる筈も無い。

そうは言っても士郎に従う他無い凛、警戒心を隠そうともせず、だが素直に、案内に応じ入って行くが、

 

(な、何なのこの高度な結界…!?

『御三家』のウチより格上で、私が入るまで気付かせないとか、どんだけ出鱈目なのよ…!

今までこれ程の結界が張ってある家を見逃していたなんて…!)

 

そんな警戒に満ちた表情は、敷地内に入った瞬間に驚愕へと変貌した、主に張られていた結界の凄さに。

 

「セイバー、今帰ったぞ」

「お帰りなさい、シロウ。彼女が例の魔術師(メイガス)、遠坂凛ですか。それにアーチャーと思しき、彼女のサーヴァントまで拘束して…

結果を見れば流石シロウと言うべきでしょうが、やはりマスターとして好ましい対応とは思えない。貴方も分かっているでしょう、幾らサーヴァントをも倒せる力があっても、絶対は無い、と」

「勿論分かっているさ。さっきもヤバくなった時の為に令呪でセイバーを呼ぶ準備はしていたし」

「なら良いですが…」

「せ、セイバー!?まさか衛宮君、貴方が最優のクラスを引き当てたというの、というかオールA!?何なのこの馬鹿げているにも程があるステータスは!?さっきの戦闘でアーチャーを圧倒して見せた衛宮君自身といい、一体全体どうなっているの…!」

 

だが、帰宅した士郎を迎えに来たサーヴァントの少女――セイバーが属するクラスに、いやそれよりもマスターとしての能力で閲覧した、彼女のステータスが余りにも強大な事に凛は更に驚き、先程自らのサーヴァントをも圧倒して見せた士郎の底知れぬ実力もあって混乱に陥っていた。

 

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「落ち着いたか、遠坂?付いて来てもらってあれだが、まだ会わせたい存在が戻ってない様だし、折角だから俺達の話し合いを済ませよう」

「わ、分かったわ…

さっきまで驚いて我を忘れていたけど、色々と聞かなきゃいけない事が出来たし…」

 

余りの事態に混乱状態になっていた凛を何とか屋敷へと招き入れた士郎、その後何とか立ち直った凛とアーチャー、士郎とセイバーが居間で対面する形で、話し合いは神妙な雰囲気の中始まった。

尚、この場にセイバーのもう1人のマスターである天音はいない、本人が面倒くさがったのも一因ではあるが、セイバーの(表向きの)マスターは士郎1人のみとして通っている、友好的な関係とは『まだ』言えない凛達相手に、態々そのアドバンテージを放りだす様な真似はしないという士郎の考えからだ。

 

「そっちから仕掛けて来たとはいえ、さっきは縛り上げて無理矢理連れ込む様な真似をして悪かった。詫びと言っては何だが、そっちから聞いても良いぜ。答えられる限りの事は話そう」

「あら、良いの?じゃあ遠慮なく聞かせて貰うわ、冬木の管理者(セカンドオーナー)として、貴方には聞いておかなきゃならない事が山ほどあるし」

 

その冒頭、先の戦いで圧勝したにも関わらず下手に出る様な対応を取る士郎にセイバーが何か言いたげではあったものの、相手が相手だった事もあってか口を挟む事無く、

 

「じゃあまずは、どうやって今までこの冬木に潜んでいたかを聞かせて貰うわ。10年位前から何の報告も無く、そして気配を悟られる事も無くこの地に隠れられたその理由を…」

 

凛は己が抱いていた疑問をぶつけた、が、

 

「え?報告とか許可って必要だったのか?いや確かに市役所とかに住所とか届け出る必要はあるけど、遠坂が職員な訳はないだろうし、とすると魔術関係のか?だとしたら親父は一体何をしていたんだか…」

 

それを聞いた士郎、初めて知ったと言わんばかりのうろたえ振りを見せた。

 

「え、いや、ちょっと待って?衛宮君、これはいたって真面目な話よ?」

「そ、それは分かっているさ。遠坂がその、魔術関係において冬木市の管理を担っている事とか、俺達が10年位前から、結果的に隠れ潜む形でこの屋敷に住んでいた事を問題視しているとか、聞きたい事はちゃんと伝わっている。ただ親父、魔術関係の事は何一つ俺達に教えてくれなかったからさ、そこら辺全て、遠坂から聞いて初めて知ったって状態なんだよ…」

「は、はぁ!?」

 

その様子がふざけていると捉えた凛は真面目に聞けと注意するも、士郎もそれは百も承知の事、その上で疑問に答える上での前提となる情報が全く無いと言って良い事を白状すると、凛は信じられないと言わんばかりに驚く。

 

「ま、待って。じゃあ、魔術協会って聞いたことある?名目上は、今衛宮君が推察していた魔術関係の管理組織なんだけど…」

「いや、知らない」

「そしたら、どうやって魔術を使うかは」

「それは流石に知っているよ。俺達魔術師の身体に、疑似的な神経の形で張り巡らされている魔術回路を起動して、其処から詠唱とか動作とか、何らかのアクションを取って魔術を発動させる。常識だろ?」

「ま、まあ基本的には衛宮君の言った通りだけど」

「尤もこれ、親父から教わる事無く最初から『知っていた』し、今使える魔術も最初から『使えた』んだけどな。だからかな、魔術に関して教えてくれってしつこく頼み込んだ零達には『士郎から教わりなさい』と俺に振るし、俺が頼み込んでも『なら士郎への宿題。零達に魔術に関して教える事。良いね?』の一点張りで、結局5年前に亡くなるまで1つも教えちゃくれなかった」

 

其処で漸く凛は、士郎は本当に何も知らないんじゃないかと考える様になり、幾つかの知識を確認するが、その予想外な返答には、

 

「は、はぁぁぁぁぁ!?て事は何、私達は魔術に関して何の教育も受けていない常識知らずに、我流その物の粗削りな魔術しか使えない野生児にあっさり返り討ちにされたって訳!?なんて出鱈目…!」

「な、なんでさ!?何で野生児!?いや確かにそうとしか言いようのない戦い方だけどさ…」

 

先程の混乱が再発した。

流石にその言い方はどうなんだと士郎は指摘するが、そうなるのは無理もない、凛が混乱状態に陥っている事から話し合いは中断された、

 

「士郎、今帰ったぞ、お?遠坂じゃねぇか?どういう風の吹き回しだ?」

「戻りました、士郎、おや?アーチャーに、貴方は…!?」

「お義兄さん、只今帰りまし、ね、姉さん…?」

「へ?え、さ、桜…?」

 

が、それも程無く終わった。


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