円卓の料理人【本編完結】   作:サイキライカ

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愉悦「書けよ」
自分「いい加減にしろや」
愉悦「アラフィフと北斎引いてやるからさ」
自分「課金できんから無償と呼び符で本当に引いたら書いたるよ」

呼び符召還➡箒星➡北斎

自分「」

無償石召還➡騎兵➡オジマン

愉悦「すり抜けだと!? 糞が!!??」
自分「……まあ、北斎来たからいいよ」

そんなわけでどうぞ


料理人と太陽とお姉ちゃん

「……ふむ。

 良しとしておこう」

 

 そう言いながらモッキュモッキュとハンバーガーを貪るオルタ。

 苦節二年の死闘の果てに漸く出した品に一言の文句も言わなくなったオルタだが、その料理が大量生産でさえ認めないような手抜きハンバーガーだったことが面白くない。

 

「オニオンもトマトもレタスも駄目とか偏り過ぎだろうが……」

「パンと肉だけあれば戦は勝てる」

 

 つい溢した愚痴を鮸膠もない暴論で切り捨てやがる。

 

「だが、このソースは別格だ」

 

 そうバンズの間に見える砕いた卵が混ぜられた黄色いソースを指すオルタ。

 

「マヨネーズと卵だけというシンプルさは悪くない」

「ああ、そいつな」

 

 余ってた卵の始末をどうするかと思い、懐かしさについ作ったやつだった。

 

「ガウェインが好きだったんだよ」

「……何?」

 

 なんともなしにそう言うと、信じられないものを見たような目で俺を見るオルタ。

 

「今、聞き間違いでないなら貴様、ガウェインがマヨネーズを好んだと口にしたか?」

「言ったが?」

「……」

 

 肯定してやるとオルタの鉄面皮が崩れ鳩が豆鉄砲食らったかのような顔をする。

 つうか、そんな顔出来たんだな。

 

 ガシャッン!!

 

「……ありえない」

 

 何事かと音の発生源を確認すると食器を取り落としたアルトリアが顔面蒼白でブルブル震えながら否定の言葉を口にした。

 

「あの、あのビネガー以外は塩さえ邪道と切って捨てたガウェインが調味料を口にしたなんて……」

 

 嘘だぁぁぁあぁぁぁあぁぁぁぁ!!?? と泣き叫びながら脱兎のように食堂から走り出すアルトリア。

 

「……気持ちは分からなくもねえがそこまでか?」

「いや、そこまでだよ」

 

 なんとも言えない空気の中でそう返したのは此方側のモードレッド。

 

「あいつのクッソ不味いマッシュに酸味以外の味が付いたなんて、ヴォーティガーンが復活したっていうほうがよっぽど信憑性があるってもんだ」

「えぇ……?」 

 

 いや、ガウェインの評価ってどうなってんだ?

 

「つうか、マヨネーズってあの頃のブリテンで作れたのかよ?」

「出来るぞ」

 

 というより、マヨネーズぐらいしか作れる調味料が無かったとも言えるんだが。

 

「基本は卵の黄身をよく溶いて、そこに少量のオリーブ油とビネガーを加えるだけだからな。

 粒山椒を加えればマスタード擬きになるし、更に蜂蜜を加えてやればステーキソースとしても使えるぞ」

 

 尤も、そこまで手間を掛けるなら普通に洋芥子用意するほうが色々楽なんだが、残念なことに当時のブリテンの洋芥子はまだ原種に近くて癖やらが使い辛く、どうしてもというならランスロットの領地から輸入するのが無難と実に本末転倒だったりする。

 そして言わないほうが良い余談だが、マヨネーズに目覚めたガウェインはその後、より良いマヨネーズを目指すためだけにビネガーの開拓と養鶏に傾倒していき、卵に至っては何の考えもなしにやってしまった俺の入れ知恵もあって最終的にはヨード卵の開発までやりきっちまったんだよな。

 だが良いことばかりでもなく、マヨラーと化したガウェインはその後、なんでもかんでもマヨネーズをぶっかけて食うようになり、お陰で罵倒がゴリラからマヨゴリラに変化しちまったのはすまないと今も後悔している。

 過去のやらかしに遠い目をしているとそわそわした様子のモードレッドが俺に注文してきた。

 

「なあ料理長。

 俺もそのステーキ食ってみたい」

「ああ、分かった。

 すぐに用意するから待ってろ」

 

 未知の味に目を輝かせるモードレッドに、早速厨房へと向かおうとする俺をオルタが呼び止めた。

 

「待て料理長」

「なんだ?」

 

 またお代わりか?

 

「ハンバーガーはもういい。

 私にも同じステーキを提供しろ。

 焼き加減はレアだ」

「父上……」

「勘違いするなモードレッド。

 ただステーキが食べたい気分なだけだ」

 

 いい雰囲気になりかけたところをバッサリ切り捨てるオルタ。

 しかしながら『向こう側』のモードレッドとなにかあったらしく、あまりショックを受けた様子もなく残念そうに眉尻を下げるのみで引き下がる。

 だが甘いぞオルタ。

 二年も戦い続けた俺から見ればお前が消えろと言わない事が容認の意だと手に取るようにわかる。

 試しに同時に完成させたモードレッドのステーキをオルタの対面に置くとオルタは俺を半目で見遣る。

 

「何の真似だ?」

「何か問題あったか?」

 

 問い返してやればオルタはフンと鼻をならしてから無言でステーキにかぶり付く。

 

「あの……?」

「黙れモードレッド。

 モノを食べる時は、誰にも邪魔されず、自由であるべきだ。

 独りで静かで豊かで……だ」

 

 貴様も勝手にしろと一瞥もくれずステーキへと向かうオルタに顔を輝かせいそいそと席へと座る。

 

 

 

 そんな訳知り者なら頬が緩むやり取りが食堂であった頃、逃げ出したアルトリアはヒロインXの所に抗議を叩きつけていた。

 

「なんなんですかあの人は!?

 あのガウェインまで更生させたとか羨ましすぎますよ!!」

 

 訂正。

 料理長のやらかしに嫉妬が爆発しやりきれない感情をぶつけていた。

 しかしそんな抗議も何処吹く風とばかりにヒロインXは胸を張る。

 

「舐めないで下さいアルトリア()

 あの人のやらかしはその程度じゃ終わらないのです」

 

 ドヤァと不敵に笑うヒロインXに、本気で叩き斬ってやろうかと騎士の矜持も月までぶん投げかけたアルトリアだが、辛うじて崖っぷちで留まり問を投げる。

 

「兎に角、以前からずっと疑問に思っていたのですが、どうしてあの人が抑止に狙われるようになったのですか?」

 

 円卓がどれだけ円満であっても崩壊は免れない。

 実際、モードレットが跡目を継いでさえ穏やかにでもブリテンは終了を迎えているのだ。

 そうであるからこそ、料理長が剪定事象に選ばれるのはおかしい。

 その質問を投げ掛けるとヒロインXは少し真面目な顔になる。

 

「これはアルトリア()にとってかなりきつい話ですが聞く勇気はありますか?」

 

 真剣な空気を纏うヒロインXにアルトリアも居住まいを正しはいと頷いた。 

 

「……正直な所、私自身マーリンから現状のままでは抑止に殺されるとしか聞いておらず、詳しいことは聞かせてもらっていません。

 ですが、思い当たる大きな出来事があったことは確かです」

「それは?」

「それは、モルガンに復讐を諦めさせたことです」

「……なん…ですって……?」

 

 憎しみから王位簒奪を企み、権謀術数を繰返し続け、最期はブリテンを滅ぼすことしか頭になかったあのモルガンに復讐を諦めさせたと口にされアルトリアは絶句する。

 

「どうやって!?」

 

 つい語気を荒げてしまうアルトリアにヒロインXは静かに答える。

 

「方法は余りに簡単でした。

 いえ、今ならそんなもので良かったのだと納得できましたが、当時彼に言われるまで私は気付かなかった」

「彼は、何をしたのですか?」

 

 固唾を飲むアルトリアにヒロインXは答えをいう。

 

「モルガンに見せたのです。

 戴冠から今日までに至るブリテンの経済状態の推移を」

「…………」

 

 その答えに目から鱗が落ちたような顔をするアルトリア。

 

「そんなことでブリテンを諦めたのですか?」

「……分かっているでしょう?」

 

 アルトリアの言葉に声を震わせ紡ぐヒロインX。

 

「あの頃のブリテンの台所事情は火の車処じゃない程切羽詰まっていました。

 確かに末期のモルガンなら意に介さなかったでしょうが、当時の彼女はまだ、未来を考える余裕がありました」

 

 明後日の方向を向き、頬に滴を伝わせながら語るヒロインXに驚愕も羨望も嫉妬も吹っ飛び、ただ悲しい気持ちで耳を傾け続けるアルトリア。

 

「今、国を簒奪しても待っているのは雪だるま式に積もり積もった負債の山。

 ケイとアグラヴェインを始めとした文官達が必死に債権をかき集めても、そんなこと知るかと襲ってくるサクソン人とピクト人のお陰で戦費に全て持っていかれ手元には借金ばかり。

 ランスロットに寄生していると言われても黙るしかない現状を理解したモルガンは、とても優しい顔で私に謝罪してきました」

「もういい……」

 

 聞くに耐えない嘗ての悲惨さをまざまざと思い出さされ、アルトリアは制止を促すもヒロインXは止まらない。

 

「もう、いいですから……」

「知ってます?

 モルガンは母と同じ香を好んで使っていたそうですよ。

 顔を見ることさえ出来なかった母の香りを私はその時初めて知りました」

 

 その後、食事時になっても顔を見せない二人を心配してエミヤが様子を見に来るまでアルトリア達の啜り泣く声がカルデアの一室に響き続けたそうな。


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