円卓の料理人【本編完結】   作:サイキライカ

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ガングート無事ゲットし国後、択捉、沈守、神威、沖波、藤波と掘りも好調でイベント乗りきりましたので投下です。

FGO? まだエルサレムをさ迷う基礎力さえ足りないので種火集めに走り回ってますが何か?

と言うことであらすじ。



獅子王「ゆうべはおたのしみで…」
料理長「嘘言うな」

ヒロインX「獅子王の目的は料理長を自分のものにすることなんだ!!」
マシュ「それなんか違います」




そのさん

「ふ……ざけ………るな…………」

 

 夕闇が世界を包んでいくなか、掠れた声が上がる。

 

「ふざけるな」

 

 その声を上げるのは青いバトルドレスを朱に濡らしたアルトリア・ペンドラゴン。

 その目には深い絶望から沸き上がる憎悪が燃え、ロンゴミニアドを杖に立ち上がろうと足掻く。

 

「ふざけるな」

 

 万能の杯を対価に世界と契約した。

 救国を願い誇りさえ擲って浅ましき争いに身を投じた。

 その果てに一人の少年と出会い過ちに気付いた。

 そうして彼女は手にいれた。

 己の願ってやまなかった願望器(聖杯)を。

 だがしかし、

 

「ふざけるな!!」

 

 知らなければ彼女はそこで終われた(・・・・)

 悔いはあれど、それでもいいのだと受け入れられた。

 残酷な真実(人理の傲慢)を知らなくて済んだ。

 しかしそれは既に仮定の話。

 

「赦さない」

 

 アルトリアはただただ憎んだ。

 例え自分がどうなろうと、それだけは許せないと。

 得た答えさえ霞む憎悪が彼女を突き動かす。

 しかしそれは燃え尽きる前の蝋燭の揺らめきにしかなれない。

 命を繋いでいた聖剣は既に返還され、アルトリアに残された命はとうに尽きていた。

 だが、それでもアルトリアは立ち上がる。

 

「赦さない!!」

 

 赤い涙が零れ、打ち捨てた聖杯(がらくた)に吸い込まれる。

 聖杯に納められていた無色の魔力はアルトリアの憎悪に染め上げられ赤い輝きを放ち始める。

 

「陛下!!??」

 

 聖剣の返還を達成したべディヴィエールが悲鳴を上げるもアルトリアには届かない。

 赤い輝きに包まれながら三度歩き出そうとするアルトリアは誰にでもなくその決意を吠えた。

 

「例え幾億の世界を跨いででも、私は必ず辿り着いて見せる!!」

 

 直後、アルトリアは世界から消えた。

 

「陛…下……?」

 

 消えたアルトリアを呼びながら呆然とべディヴィエールはアルトリアが立っていた場所まで歩きそのまま膝を着く。

 そして、理解した。

 

「あ、ああ、」

 

 世界はこんなにも残酷であることを。

 夕闇にべディヴィエールの、絶望の叫びが木霊した。

 

 

~~~~

 

 

 唐突なんだが、ケイに殴られた。

 

「…痛ぅ」

 

 唯一の救いは素手だったことか?

 いや、歯が割れてるしマシとも言えねえか。

 足まで来る衝撃になんとか立ち上がると割れた歯を吐き出して口を拭う。

 

「再会頭に随分なご挨拶じゃねえかケイ?」

 

 そう言うとケイは鼻を鳴らした。

 

「ふん、貴様はどの世界でも相変わらずか」

 

 そう言うと何故だと言う。

 

「どうしてあの馬鹿を甘やかす」

「……」

「お前だって分かっている筈だ。

 あの阿呆は取り違えている(・・・・・・・)と」

「……そう、だな」

 

 アルちゃんが、いや、獅子王がやろうとしていることは本人から聞いた。

 獅子王は人理が焼却されたこの世界で人という種が存在していたことを遺そうとしている。 

 正直、そのやり方自体あまり受け入れられるものじゃない。

 獅子王が選定した人を槍の中に記録として封じ込め永劫残すという、さながら昆虫標本の人間版みたいなやり方だ。

 しかし、受け入れがたくてもそれを完全に間違いだという事は出来ない。

 そもにしてカルデアが人理修復の機会を得たこと自体が奇跡。

 成功しなければならないのは当然として、失敗した際の備えが有る筈もない。

 それに対し獅子王の用いた方法は失敗する方法がない(・・・・・)

 槍そのものが破壊されれば話は変わるが獅子王曰く、詳しくは解らんがあの槍を破壊すれば世界がどうにかなっちまう代物だから、ソロモンの目的からして関わって来ることは獅子王が対立しない限り無いそうだ。

 それはつまり、獅子王がやることをソロモンは放置すると言うこと。

 敵対する筈のソロモンがなにもしないなら獅子王の行動が失敗する理由がない。

 だけど同時に、それをすると言うことは獅子王に人理を守るつもりはないということの証明そのものだ。

 人理を保つならカルデアに来た時にそう意思表示をすれば終わっていた。

 だけど獅子王はそうはせず独力で人の保全をすることを選んだ。

 それはつまり、人は救いたいが人理は守りたくないし、直らなくていいと言っているようなものだ。

 人を遺したいのに人理は守りたくないなんて、それはとても矛盾していると思う。

 だけどそれを誰も異と言わない。 

「なあケイ。

 お前こそなんでアルちゃんを止めないんだ?」

 

 アーサー王を支えることをただ由とするアグラヴェインや忠義と考えるのを止めているガウェインは話にならんし賛同しているというガレスもダメ。

 ましてや後悔から過去の清算にと荷担するランスロットとトリスタンなんかそれ以前の話だが、ケイだけは昔と変わらずアーサー王を否定する。

 

「止めろと言って聞くタマ(・・)かあの阿呆は」

 

 無駄だと諦めの混ざった毒を口から吐き出すケイ。

 

「俺は最初から言っていたんだ。

 お前は王の器なんかじゃない。

 その辺の無害な器量良しの嫁にでもなって、山ほどガキを抱えてそいつらに振り回されているのが似合いだとな」

「流石に言い過ぎやしないか?」

 

 政治なんてわからん俺でもアーサー王は立派にブリテンを治めていたように見えてたぞ?

 

「笑えんな。

 あんなものは人間を捨てれば誰にだって出来たものでしかない」

 

 そう言うとケイは俺を見た。

 

「ああ、そうだ。

 今からでもあの阿呆をかっ拐って手込めにしてしまえ。

 そうすれば自分がただの馬鹿だって気付ける筈だ」

 

 なんならガレスも付けるぞとおどけるケイに俺は溜め息を吐く。

 

「馬鹿言うな。

 義理だって妹だろうが」

「千年以上行き遅れた間抜けな奴の世話をするこっちの身にもなれ。

 そこまで行けば貰ってくれるなら誰でもいいと本気で思うんだよ」

 

 ……全く、

 

「アルちゃんが心配だから守ってくれと素直に言えないのか?」

「お前の耳はギャラハッドの盾で塞がっているのか?

 俺はいつも正直だ」

 

 皮肉げに笑うケイ。

 

「だが、まあそれももう終わる。

 星見の連中がオジマンディアスを味方に付けた。

 このロンデニウム(箱庭)も陥落するだろう」

 

 そう言うとケイは背を向ける。

 

「……行くのか?」

「まさか。

 ギフトなんて要らないものを押し付けられてでもお前をぶん殴るって目的も果たしたんだ。

 俺は今度こそ逃げさせてもらう。

 あの馬鹿に付き合って二度も死んでられるか」

 

 そう言うと肩を竦める。

 

「とはいえ前回は迂回しようとしたせいでべディヴィエールに追っ手を擦り付けられたからな。

 今度は正面から堂々と逃げてやるよ」

 

 口では軽く言いケイは首だけ俺に向け言った。

 

「他の奴等にあいつの手綱は任せられん。

 お門違いは承知だが、その気があるならアイツを頼む」

 

 そう言い残しケイは完全武装のまま厨房を後にした。

 俺が動き出したのはそれからすぐだった。

 俺が動かなくても全て解決するのだと頭では分かっている。

 寧ろ、余計な真似をしているのかもしれない。

 だけど、だからってなにもしないってのは絶対に間違っている。

 なによりもだ、俺は獅子王にまだ何も聞いちゃいないんだ。

 身支度を終え、さあ行くかと一息いれた直後、背中に強い衝撃が走った。

 

「……どうしたボーマン?」

 

 背中を見れば震えながら俺にしがみつくガレスが居た。

 

「いかないでください」

 

 そうぎゅうと服を掴むガレス。

 

「分かっているんです。

 料理長は料理長だけど私達の料理長じゃないって。

 でも、それでも居て欲しいんです」

 

 正規のサーヴァントとして顕現した後で獅子王に頼んで自分から復讐者に身をやつしたガレスがどんな気持ちなのか俺にはちゃんとは解らない。

 少なくともだ、

 

「全く。

 包丁は引いて切れ(・・・・・・・・)と教えたろうが」

 

 俺を刺したその気持ちは理解しようもない。

 

「……どうして?

 だって、私の宝具は真名を解放しなくてもキャスターに……」

 

 平然としていることがあり得ないと言いたげに後ずさるガレスに俺は痛いのを必死に堪えながら理由を言う。

 

「お前がぶっ刺したのは俺の包丁(・・・・)だ」

 

 なんとか血錆を落とせないかと思いその間だけでもと俺の包丁と交換しておいたんだが、まさか自分が刺されるとは思わなかったぜ。

 そう言うとガレスは崩れ落ち泣き喚いた。

 ひたすらにごめんなさいと泣きながら叫ぶガレスに俺は包丁を抜いて出血が続かぬよう止血を施してから顔を上げさせる。

 

「そんなに泣くんじゃねえよ。

 ボーマンは騎士なんだろ?

 騎士がそう簡単に泣くもんじゃねえんだろ?」

「だっで、わだし、りょうりちょうの、たましいを、にかいも、」

 

 女の子が見せていい許容なんかぶっちぎってぐちゃぐちゃになった顔でそう泣き腫らすガレス。

 

「ああもう、んなもん気にすんな。

 血なんか洗えばいい。

 それでも気になるってならよく研いで塩でも振っとけ」

 

 突き詰めれば包丁なんかただの刃物でしかない。

 持ち主が1度や2度その使い方を間違えたって本質がそう簡単に変わるはずが無い。

 ガレスの手に渡った包丁がその1度の間違いで変質していたとしても、それは後世が押し付けたものであってガレスが悪いとは俺は言わない。

 ハンカチなんて洒落たものはないので洗った後でまだ使っていない布巾で顔を拭いつつ俺は言う。

 

「だって、だって私!!」

「いい加減にしろ!!」

 

 まずい、思わず怒鳴っちまった。

 しかしやったものは返らないからこのまま押し通す。

 

「俺が許してるんだからそれで納得しろ。

 それでも気が済まないってなら、俺が用事を終わらせてくるまでにこいつを新品同様になるまで洗って研いでおけ」

 

 そう俺の血で汚れてしまった包丁を押し付けて俺は立ち上がる。

 

「待って料理長!?」

 

 追いすがろうとするガレスに今日のディナーの下拵えを言い付けて厨房を出た。

 そのまま獅子王の居るだろう王の間へと向かうも、途中で目眩を起こし柱に体を預けてしまう。

 

「……痛ぅ」

 

 ガレスの前では意地を張っていたが刺された傷は結構深いらしい。

 だけど、止まれない。

 マスター達は既にロンデニウムに入ったらしく遠くから戦いの音が聞こえる。

 ケイ、お前やっぱり……

 

「……しぃっ!!」

 

 こんなところで立ち止まってられねえんだよ。

 鉈の柄で頭を叩き意識を揺り戻させる。

 テメエだって中途半端に終わるなんて認めねえだろ?

 ちっとでいいんだ、手を貸せや獅子王の料理長(もう一人の俺)

 本当に力を貸したのか、それとも単に少し休んで落ち着いただけなのか分からないが、目眩が収まったのを感じ俺は再び歩き出す。

 血で汚れたコックコートを1度廃して着直し、王の間へと続く扉の前で立ち止まると、俺は一回深呼吸をしてから普段と変わらぬよう意識しながらその扉を開いた。

 




 すまんべディ。どうやってもお前を救済できんのだ。
 fateENDでのベディは聖剣返還を躊躇っても1度が限界としか思えんのだ。


 だらだら引っ張ってもしょうがないので以前言ってたきのこななしにしただろう設定ですが、冒頭の通り獅子王は冬木の聖杯手に入れてます。
 何時だったか読んだ設定の中で士郎が聖杯に『正義の味方』になるという願いを叶えた世界線があると書いてあって、その際アルトリアは聖杯を手にブリテンに帰った旨が同時に書かれていたのです。
 と言うことで、獅子王世界線ではアンリ君オミットで真っ当に聖杯戦争が完了した世界線だったのだとご了解をお願いします。

 後、本編に出る隙間がないケイのギフトを紹介します。

 『不沈』

 円卓一の泳ぎの名手にして何者にも溺れずアーサー王にさえ揺らぐことの無かった強靭な在り方を評して授けられたギフト。
 直接的には水に溺れなくなり水場で自在に移動できると非常に無意味に見えるが実は流砂等の流れるもの全般も対象に含み一応死にスキルではない。
 そしてもう一つ、デバフ完全無効。

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