円卓の料理人【本編完結】   作:サイキライカ

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流石にこのペースはもう維持できないかと……。

後、アルトリア(剣)が酷いことになるので注意してください。


カルデアで頑張る料理人の話
料理人とけん


 人理焼却なる事件によりカルデアにサーヴァントとして喚ばれた訳なんだが、やることは生前と特に変わることはなかった。

 一応キャスターなるクラスは持ってるけど、そもそもただの料理人に鉄火場など連れてっても足手まといにしかなりませんって。

 ついでにスキル構成も料理関係特化だしね。

 スキル? 『調理EX』『心眼(食材)EX』『陣地作成(厨房)EX』『道具作成(調理器具)EX』だけど?

 宝具? 包丁でフルコース作って振る舞うだけですが?

 勿論厨房でしか使えませんよ?

 音楽家や作家も居る訳だけど基本戦闘に参加することはないから同じだよね。

 なんて、俺は今猛烈に現実逃避をしていた。

 

「どうして、どうして私の世界に貴方は居なかったのですか!?」

 

 等と訴えながらギャン泣きするアルちゃん(偽)を前にどうしろと?

 始まりは些細な勘違いからだった。

 第一特異点なる場所へのレイシフトなるタイムトラベルに当たり戦力増強を願って喚ばれた俺だが、まあ戦闘では役に立たないので後方支援として厨房を任せてもらわせた。

 ブリテンでは拝むこともなかった電気式調理器具の一式に感動しつつ最適な調理環境を整えているとそこに懐かしきアルちゃんが現れた。

 まあ、よく考えれば1500年ほど前の人間がここに居るわけもないんだが、アーサー王退陣の際に城を移すアーサーと共にキャメロットを去ってから自分が死ぬまで逢うこともなかった顔に思わず昔の態度で挨拶をしたのだ。

 だがしかし、

 

「……申し訳ありませんがどちらでお会いしましたか?」

 

 等と言われ轟沈した。

 その後話をしてみるとアルちゃん(偽)は平行世界のアーサー王だったと判明したのだ。

 その後アーサー王は俺の料理の腕前に興味を持ち、折角なので当時使えた材料だけで簡単な料理を提供したのがついさっき。

 そして先程の慟哭である。

 

「あれだけ悲惨な食糧事情でこれ程繊細な食事が叶ったなんて……」

「まあ、香草系なんて早々試さないだろうしな……」

 

 あの当時俺が改革したと胸を張れるのは大きく三点。

 骨や皮といった食用に適さない部位から栄養価の高い出汁などを抽出させる転用の徹底。

 豆類の発酵や肉類の熟成といった保存食に関わる概念の普及。

 そして香草類の利用価値の周知と栽培。

 これだけで餓死者が4割無くなり慢性的な食糧不足であっても栄養不足で餓え死にする者は大分少なくなった。

 ハーブは薬にも転用され負傷者の感染症予防による損耗の低下に繋がったとアグラヴェインに感謝されたっけ。

 死ぬ少し前に始まったサクソン人の入植の際には輸出品として重宝もされてたな。

 

「……やはり私が王になったことが全ての間違いだったのでしょうか?」

 

 なにやら死んだ目でそう呟きだすアーサー王。

 そういや気になったんだがこのアーサー王はやはりカムランで死んだのかな?

 だとしたら……いやよそう。

 下手に何か言うとアーサー王が本格的に自殺しかねん。

 

「とりあえず食ってくれ。

 じゃないと折角作ったのが無駄になっちまう」

「……そうですね」

 

 誤魔化されてくれないかなと期待しつつそう促すと、アーサー王は死んだ目のまま牛肉の塩スープを食べきる。

 

「シロウ、答えは貴方に貰いましたがやはり私は王になるべきではなかったのです」

 

 そう誰かに訴えながらうちひしがれた様子で食堂を出ていくアーサー王。

 

「……なんか、悪いことしちまったな」

 

 別人とはいえアルちゃんと同じ顔の少女を泣かせた罪悪感にしかしどうすることも出来ずこの時の俺は黄昏れるしかなかった。

 

 後日、正義の味方を名乗る青年に殺されかけるのだが、その時の俺は当然知る由もないのだった。


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