円卓の料理人【本編完結】   作:サイキライカ

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次回予告(四月一日時点)

それは、ほんの僅かなボタンの掛け違いだった。

 

「新たな特異点が発見された。

 場所は五世紀のイングランドだ」

「五世紀といえば、円卓の騎士だね」

「生前の騎士達に逢えるかもね」

「あ、ランスロットさんは結構です」

 

 いくつもの特異点を乗り越えた人類最後のマスターは、そこで人理を守ることの残酷さを思い知ることになる。

 

「去れ。人類最後のマスターだった(・・・)者よ。

 この地は既に人理より切り離された異聞帯へと突入する。

 貴様達に踏み入れる理由はない」

 

 それは一つの奇跡から始まった絶望(・・)

 

『有り得ない!?

 ローマが、サクソン人が、ピクト人が悉くブリテンに滅ぼされている(・・・・・・・)!?』

「然り。

 そして其れを成したのは余達だ」

 

 立ちはだかるは運命に絶望しながらも抗い続けていた(・・)者達。

 

「コサラの王ラーマ、それに王妃シータ!?」

「お帰りくださいお二方。

 彼の地で叶わなかった願いを私達は漸く叶えられたのです。

 これが一夜の夢だというのなら、私達は目覚めることを拒絶します」

 

 円卓は砕け、花のキャメロットを守るは人理に希望を抱かぬモノ。

 

「その森に入っちゃ駄目だ。

 その森を守護するサーヴァントは、人の存在を許したりはしないから」

「アストルフォ……まで」

「君達は正しい。

 だけど、彼らを救いたいって願いも間違いじゃないんだ」

 

 何が正しいのか、その意味を見失いかけた先にマスターに悪夢のような決断が突きつけられる。

 

『結論から言おう。

 君は帰れない』

『そんな……何か手は無いんですか!?』

『ある。

 それは、この異聞帯を破壊することだ』

『破壊……それはまさか』

君の手で(・・・・)ブリテンを(・・・・・)滅ぼすことだ(・・・・・・)

 

 大事な人との再会の方法は余りにも残酷な手段のみ。

 両の手を朱に染めてでも帰りたいと望むべきなのか惑うマスターだが、選択の刻限は徐々に迫っていく。

 そんな中、未だ人理から切り離されまいと抑止は刺客を投入する。

 

「大のために小を切り捨てる。

 それが僕の仕事だ」

「どちらにしろ死ぬべき命だ。

 徹底的速やかに皆殺しにしてやる」

 

 守護者達による容赦の無い虐殺。

 そしてソレを阻むブリテンのサーヴァント達。

 

「貴様達も奪うのか!?

 ローマがそうしたように貴様達も!!??」

「堪忍なぁ。

 奪うも殺すも鬼の性よって」

『■■■■■■■■!!』

「うるせえ犬だ。

 犬なら犬らしくも吠えてねえでさっさと首を刈りに来い」

 

 生きたい。

 ただそれだけを願って戦ってきた。

 そしてどちらも根幹は同じ。

 罪なき命が散る世界でなにもしなかった(・・・・・・・・)魔術師が重い腰をあげる。

 

「あたたた……

 久しぶりの運動は堪えるねぇ」

「マーリン!?

 『あの人』が殺された時、なにもしなかった貴方が今更何をしに来たというの!?」

「確かにその通りだ。

 だけどガレス、あの時何もしなかったから今回もなにもしない訳じゃないよ?」

「戯れ言を!?」

 

 九死の中でマスターの命を拾い上げたマーリンは、一時の休みをと楽園へと誘う。

 

「これはきっと僕の罪が招いた結果なんだ。

 美しいものが見たいだけで、それを織り成す人の心の強さに目を向けず、機会があったのにただ一歩を踏み出さなかった人でなしの僕の罪こそが、この世界を閉ざしてしまったんだ」

 

 花の魔術師は語る。

 平凡で、なんの力もない、ただ善良だった故に人理に殺された一人の男の物語を。

 

「君の本当の人類史に帰りたいならば、守護者達に荷担すればいい。

 君が協力すれば遠からずこのブリテンは崩壊するだろう。

 この異聞帯に留まるというならそれもいい。

 僕が責任を持ってブリテンの一員とアルトリアに認めさせてあげよう。

 大切な人と無辜の命、君の天秤がどちらに傾こうと僕は君の力になると約束しよう」

 

 どちらを選んでも後悔は必ず残る。

 そんな残酷な世界で人類最後のマスターは己の選択を言葉にする。

 

 

 

 異聞帯No.0401『千年理想郷◆◆◆◆』

 

 

 

「ここは……日本じゃねえ?」

 

 




遅刻投稿です。

後で先頭に移します。

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