Fate/Meltout   作:けっぺん

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能登セイバー「ランサーもやられたようだな……」
義経(仮)「ククク……奴はGO新規勢の中で最弱……」
ジキル「発表数分で真名バレとは、新サーヴァントの面汚しよ……」
コャスター「イヤッホオオオオオオオゥッ!」


Wont Love.-6

 

 

 宝具『悪竜の血鎧(アーマー・オブ・ファヴニール)』。

 Bランク、正統な英霊であればB+ランク以下の攻撃を、無条件で無効化する血の鎧。

 それ以上の攻撃でも、相応にダメージを削減する、正に鉄壁の宝具だ。

 たった一つの、致命的な弱点を突かれない限り、物理攻撃のぶつけ合いで敗れることはない。そう、思っていた。

 だが、そんな確信めいていた考えを否定するように、不死身の肉体から鮮血が迸っている。

 ノートが斧を振り切るまでを、スローモーションのようにはっきりと認識する。

「――セイバー!」

「ガウェイン! 援護です!」

「はっ!」

 霧の中に、ガウェインが突っ込んでいく。

 追撃を加えようとしたノートの斧を自身の聖剣で受け止め、体勢を立て直そうとしたセイバーに目を向けず叫ぶ。

「退避を!」

「ッ、ぐっ……!」

 今までの鋭敏な動きが嘘のように、ふらつきながらセイバーは撤退する。

 傷は深い。或いは、心臓にまで届いているかもしれない。

 だが、致命傷かと言われれば、ギリギリのところで否だ。

 宝具の能力がなければ、此処まで戻ってくることなく消滅していたかもしれない。

 そんな一撃を、ここまで軽減したこと自体が、『悪竜の血鎧(アーマー・オブ・ファヴニール)』の強大さを証明している。

「……セイバー。回復はさせるが、集中は出来ん。戦闘は可能だな?」

 ユリウスは術式を紡ぎながら、セイバーに問う。

 マスター自体も、この戦闘において重要。ゆえに回復だけに集中するわけにはいかない。

 そんな、無情とも取れる言葉を、あくまでもサーヴァントとしてセイバーは答える。

「……無論だ。だが、今の力は……」

 セイバー自身、これで終わろうなどとは思っていない。

 寧ろ、傷そのものより傷を付けた斧に疑問を示していた。

「対心宝具としての性能だけじゃなく、物理攻撃力も所持している、という事でしょうか」

「にしても異常よ。真名解放による真髄じゃあるまいし、セイバーの宝具を貫通するなんてありえるの?」

 ラニと凛も、共通の疑問を持っているらしい。

 あの、ノートの斧はカズラの弁によるならば対心宝具である筈だ。

 対心というからには、物理ではなく精神的な能力に重きを置いているのであって、物理攻撃力がないと言い切れる訳ではないがそれが真髄ではない。

 そもそも、本来の威力を解放した宝具でもない限り、あそこまでの傷をセイバーに与えられるとは思えない。

 傷を与える自体だったら、例えばガウェインやランサーならば可能だろう。

 だが、たった一撃でここまで深く入るのは幾らなんでもおかしい。

「プロテア。呆けていないで、戦いなさい。貴女の言う通り、私はボロボロなのですから」

 ガウェインと刃を交わせながら、ノートはプロテアに言う。

 最強クラスのサーヴァントであるガウェインと互角に渡り合っている時点でその傷が致命的でないことは明らかだ。

 当のプロテアは、眼前の星空を消されたことを理解できず、放心している様子だった。

「まったく……相変わらず――ッ、分からない子ですね」

 セイバーが下がったのを確認したガウェインが、置き土産に一撃打ち込んで戻ってくる。

 受け止めたノートは呟きつつも、斧の状態を確かめるように撫でている。

「……ノート。その斧は……」

 答えてはくれないだろうと思いつつも、訊ねようとする。

 すると、ノートは微笑みながら、斧の刃先を此方に向けてきた。

 メルトとリップが警戒するように前に出るが、気にした様子もない。

「対心宝具ではないのか、ですか?」

 先読みしたように声を挟まれ、頷く。

 此方の意図を見て取ったノートは、まるで悪戯が成功した子供のように笑みを濃くした。

「当然の疑問ですね。対心宝具だと思っていれば、先程の威力を怪訝にも思うでしょう」

「思って、いれば……?」

「はい。ああ、いえ、対心宝具という点は間違っていません。ですが、これが持つ性能は対心だけではない。せっかくの手製の宝具に、手を抜く筈もないでしょう」

「手製……って、まさか」

 ノートがこの大斧をお気に入りと称した所以。

 そもそもが、本来他のサーヴァントが持っていた宝具ではなかったから。

 ノート自身の宝具『女神の繰り糸(エルキドゥ)』は概念の創造のほか、その泥を武器へと変えることが可能だ。

 以前のように、射出するだけの量産武器ではなく、たった一つ、相応に力を込めて『お気に入り』を作っていたのだとしたら。

「通常は真っ白な、対巨人兵装。ですが、真髄を解放することで、七つの色へと姿を変える。対心はその一つに過ぎません」

 七つの色――通常の形態から、七つの宝具種別へと変化する、多様な状況に対応する武器――!

「『白き七枚の戯れ(シグナム・ノート)』、そう名付けました。時に、心を喰らう対心宝具。時に、一つに七つを込める対人宝具。そして――」

 カズラが教えてくれた、対心宝具としての性能。対象の心を喪失させる“ハートイーター”。

 セイバーに一撃の下、重傷を負わせた対人宝具としての性能。一撃に七つの斬撃を込め、実質的に七倍の威力とする威力特化。

 どちらも強力で、ともなれば残る五つも警戒しなければならない。

「時に、七つの鋭利な刃からなる大渦、対軍宝具」

「ッ」

 斧を振り上げたノートを、悠長に放置したりはしない。

 弾丸を放つとそれが引き金になったように、一斉に皆が攻撃を始める。

 真名解放――否、『シグナム(SCEGNAM)』という節を謡わなければならないのなら、そんな隙は決して与えない。

 そんな意気込みを、無意識に否定する何か。

 背筋の冷たくなったのを、感じた。

「――下がれ!」

 咄嗟に叫ぶ。接近を始めたサーヴァントたちは、退避こそ出来ないまでもその場に立ち止まる。

 放ってしまった攻撃。弾丸や矢は、止まる筈なく突き進み――天から落ちてきた光に迎撃された。

「なっ……プロテア!?」

 光に吹き飛ばされたように霧が一部晴れ、プロテアの姿が現れる。

 放心から解放されたのか。プロテアは再び光を作り始めていた。

「も、もう一回……!」

 リップがその腕を空に掲げ、もう一度星々を圧縮しようとしたとき。

シグナム(SCEGNAM)

 勝利を確信した様子のノートが、斧を振り下ろす。

 一方向ではない。全域を侵す七つの刃が飛ぶ。

 ノートから広がっていくように、邪魔な障害物を蹴散らし、粉々にしながら刃は迷宮を蹂躙する。

 対処すれば良いのはそれだけではない。

「リップ!」

 圧縮に集中していたのか、退避が遅れたリップに呼びかける。

 やっと異変に気付いたらしく、リップが下がろうとする。が、間に合わない。

 あのままでは斬撃の餌食になってしまう。咄嗟に手を伸ばし、その肩を掴む。

「ハク! 何を――!」

 後ろから、メルトの声が聞こえる。

 リップの肩を引っ張って退避を促し、しかし既に、刃の嵐は目の前にまで来ていた。

「――――」

 一秒にも満たない数瞬の後、自分がどうなっているか。考える暇すらない。

 メルトを含めて、他の皆の様子を確かめることもできない。

 視界が光に包まれる。それが死というものの、寸前の光景。

 体が後ろに向かって強く引っ張られる感覚。爆音。そして、体中の痛み。

 誰かが、何かを叫んでいる。凛のような気もするし、ラニなのかもしれない。もしかするとレオという可能性もあるし、ユリウスだったりするのだろうか。

 全てが判然としない。

 コンクリートを掘削するような、ガリガリという音。それを最後に、頭が大きく揺さぶられ、思考が不可能になった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ――――、

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ――――――――ッ、

 

 

 

 

「――い、つ……っ」

 肺を強く圧迫していたらしい。息苦しさを感じる

 大きく呼吸することで肺に思い切り空気を詰め込むと、鈍い痛みが体を走り、息が止まる。

 目を開く。ひどく暗い。視力強化の術式の反動で目に疲労が来ている。その影響もあるかもしれない。

 しかしそれでも、迷宮はここまで暗くはなかった。旧校舎の、夕日の当たっていない暗がりくらいの、慣れてくれば問題の少ない薄暗さ。

 目に入ったのは、大量の打ち崩された瓦礫。呼吸の際に感じた砂っぽさは、これらによるものだろう。

 迷宮に設置されてた建造物の内部のようだ。

 いや、もしかすると内部ではないのかもしれない。周囲を見ても殆どが崩れているため、内部に放り込まれたのか崩れた建物の陰になっているのかも分からない。

 後ろに引っ張られたような感覚は、吹き飛ばされたことによるものか。どうやらそれで、強く体を打ち付けてしまったらしい。

 戦いは、どうなっているのだろうか。

 メルトとのパスは繋がっている。彼女が存命している事に一先ず安堵し、状況の確認を始める。

 あちこちに開いている隙間から、少しずつだが霧が入り込んできている。このことから、ジャックも無事であることが分かった。

 戦いの中であることが嘘のように、静寂が支配した空間。まさか、全員が今、同じような状況なのか。

 あれほどの威力の蹂躙の後だ。退避のために全員がばらけていても不思議ではない。

 生きているという事は、何かしらの理由であの嵐は届かなかったらしい。幸運を喜ぶべきか。

「……」

 通信が断絶している。全員の居場所が分散し、かつ状況が混乱したせいだろう。

 復旧にそれ程時間は掛からないだろうが、この状況においてはあまりにも痛過ぎる。

 何もしなければ、意味消失の危険性がある。そもそも、全員の状態確認が出来ない。

「い、た……」

「っ」

 すぐ近くで、声が聞こえた。

 それに、岩がぶつかり合うような音が続く。

 痛みを堪えて立ち上がる。ようやく暗がりに慣れてきた視界で注意深く見渡しながら、声のした方向に向かうと、大きな爪が目に入る。

「……リップ?」

「え……ハクト、さん?」

 瓦礫の下敷きになっていたリップが、それらを退かして起き上がる。

 大きな傷は見られない。頭を左右に振って砂埃を払う様子は緊張感を感じさせない、小動物染みたものだ。

「ハクトさん、怪我を……!」

 目が合うと同時、リップはその表情を驚愕に染める。

 痛みは確かにあるが、どの程度の傷なのかは分からない。

 しかしどうやら、怪我は大きいらしい。

 真正面から受けたあの衝撃というよりは、叩き付けられただろう岩によるものだろう。

 リップに大した傷が見られないことからも、衝撃に直接的な攻撃力はなかったことが分かる。

 では、あの刃は防がれたのだろうか。だとすれば、一体何故。

「大丈夫。リップは?」

 ともかく、心配している様子のリップに大事がない事を告げ、問い返す。

 確認不足なだけで、もしかすると傷を負っているかもしれない。

「私も……大丈夫です。でも、ここは……」

「迷宮……二十四階の何処かだって事は分かるけど」

 今、どんな状況なのか。

 外へ出てみないと、把握もままならない。

「――そこに、誰かいるのか」

 瓦礫を蹴り、踏み締めるような音と共に、そんな声が聞こえてくる。

「セイバー?」

「お前たちか。無事で何よりだ」

 現れたのは、セイバーだった。

 斜めに走る切り傷は相変わらずだが、多少なり回復したのか、足取りは普段通りだ。

 セイバーは周囲を眺め、他に誰かがいない事を確認すると、説明する。

「ノートの対軍宝具を星が迎撃したらしい。偶然か、故意にかは分からんが」

 プロテアの仕業だったのか。

 刃を吹き飛ばしたことで、衝撃は攻撃力を失ったようだ。

 他の皆は無事だろうか。セイバーに問うと、首を横に振った。

「安否は取れていない。探し始めて、最初に見つけたのがお前たちだ。ユリウスは健在のようだが」

 全員、無事であってほしい。もしプロテアの攻撃が偶然であれば、あの刃全てを迎撃することはないだろう。

 僕たちは運が良かっただけ。対処をしなければ、必然的にその嵐に巻き込まれることとなる。

 素早く退避するなり、自分達で迎撃するなり。何かしら手段を講じていなければ、今頃斬撃の餌食になっている。

「ノートとキングプロテアはどうやら、一つの場所に待機しているらしい。お前たちは此処に残っていろ。俺が片を付ける」

「え……? だけど、その怪我じゃ」

「お前も変わりあるまい。満足に走れもしないだろう」

 ……確かに、そうだ。

 大した傷ではないと思うが、痛みが行動を妨げる。

 走ることは不可能ではない。それでも、そう長くは持たないだろう。

「それに、お前もだ。あれほどの性能のスキルを外付けで使用して、反動がない訳があるまい」

「なっ――」

 リップを見る。外部に傷が見られなくとも、それ以外に――

「……」

 気まずそうに、リップは目を逸らす。

 リップは正直で、故に顔に表れてしまう。

 少なくとも、何か異常が発生している事は明らかだ。

 軽率だったかもしれない。もっと考えて、プロテアの攻撃への対策を考えるべきだった。

「危険がないよう、戦いに配慮はする。だから――」

「駄目だ」

「――――なに?」

 セイバーの、信頼しうる言葉だ。大きな傷を負っていても、不安にさせないものがある。

 だが、それでも許容はできない。僕の浅慮から出た芽だ。

 そもそも、この最後の階層を突破するには、プロテアを倒すのでは駄目だ。

 彼女の、深い深い心を理解しなければならない。

 今度こそ、彼女と会話を交わす。戦うことが難しくとも、それだけは僕にしか出来ない。

 そして何よりも、中枢に行くために此処に来ているのだ。僕が何もしないなんて選択肢は、最初から存在しない。

 セイバーは数瞬のうちに、そんな意思を見て取ったらしい。

 怪訝な表情を僅かに変え、初めて見る表情を見せた。恐らくは、呆れの類だろう。

「……ノートは、俺に任せろ」

 言って、背を向ける。

 顔を逸らす寸前、セイバーはもう一度、表情を変えた。

 僅かに口角を上げて、笑っていた気がした。




ランサーが自害した直後に新しいランサーを披露する事に悪意を感じた。
公式サイト見て速攻で真名分かって、やっぱりランサーが自害した後に出したことに悪意を感じた。
というか、Meltout始める前に考えていたFateの二次創作でスカサハ出そうとしてたことを思い出した。
スキルを教えるというどっかの先生みたいなスキルと神殺しのスキルで、バーサーカーで無双してたエルキドゥキラーになる予定だった。

そんな事はさておいて、CVですよ、CV。
能登さん。能登ランサー。CV被りアリな訳なんですよ。
はやみんワンチャンありますよ。

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