帰ってきてからも執筆する気力がない事が殆どで、一話仕上げるのに一週間掛かりました。
今後も更新が遅れる可能性があります。ご了承ください。
え? アニメUBW? キャス子のマスターイケメンでしたね。
何故か蒼銀ライダーを思い出しました。
次回? うん、プリヤしか知らないイリヤ好きの友人に視聴を勧めときました。
「――きっと、間違ってない」
いや、確実に。
これは、正しい。
自分に言い聞かせる。
「――この、選択は」
欲したものを手に入れる。それに一体、何の問題があろうか。
NPCが物欲を持つのはおかしいけれど、欲を持ってはいけないという規律は存在しない。
「――大丈夫」
主には黙っていた。
だって、怒られてしまうから。
終わってからならば、きっとそれも受け入れることができる。
だけど、始める前に禁じられれば、私はやりきれない。そんな気がした。
きっと、大きな罰がある。もしかすると、私という存在を抹消されてしまうかもしれない。
嫌だけれど、私はそうしたかった。
『心』があるという事がどういう事なのか。モノを感じるとはどういう事なのか。
知りたかった。何より私は――胸の内にある何かの正体が、知りたかった。
「――情報に漏れはない。後は実行するだけ」
予め定められているAIの階位を引き上げる。
ムーンセルへの反逆などがないように、NPC含めたAIには全てに制限が掛けられている。
万能の願望器が使わしたAIだ。あらゆるAIは、質も完璧に作られる。
最大まで力を注がれれば、そのAIは自我を持ったムーンセルそのものになる。尤も、それには度を過ぎた容量の拡大が必要なのだが。
そんな完璧なAIは、与えられる役目だけでなく有事の際に対応できるよう、高い適応力を持っている。
だから『心』を付加しても、何ら問題はない。より豊かな感情を持つことが出来るだろう。
“そう思うように作られた”のではなく、“そう思うことも出来る”存在になれる。
設計ではない。自由な『心』を持てる筈。
ムーンセルにあるあらゆる記述から情報を引っ張り出して自力でプログラムを完成させて、何度も何度も再試行した。
テストとして使用するのは私自身。成功確率は、九十九パーセントを超える。失敗しても、私に異常が発生する可能性があるだけ。あの人には、何の危険もない。
「――あれ……この記録は……」
そんなとき、引き出した情報の中に、一つ気になるものを見つけた。
『心』に関する情報を無差別に取り出した。途方もない数のデータの中にあった、保存形式の違った記録。
ムーンセルのデータはそれこそ数え切れないほど触れてきたし、管理に関する知識ならば、全部記憶に入っている。
なのに、そのデータの正体は知れなかった。
不審に思った。異常の種になるかもしれない。自身の欲より、危険の種の排除が先だ。
それを判別するために、細心の注意を払いつつデータを開く――
――――――――――――――――――――
それは、記録――記憶――主の片方が秘めている、■の物語の記憶――
そして、それと一緒に封じられた――彼女にとって、忌まわしき何かの欠片――
凄まじい速度で、データを開いた指先から何かが入り込んでくる。
その要素は、私が求めていたものだった。
だけど、決して心地よくない。悍しいまでの負荷と、不気味なまでの解放感。
「――な、なにこれ……!? これじゃあ……!」
呑まれる――咄嗟に判断して、私は緊急的な手段を取った。
即ち、バックアップにその要素を全て移動させる。
起用されていない、機能すらない状態の、空っぽの“私”。
――出来ない。
命令を、受け付けない。
それどころか、バックアップが稼働を始める。
健康管理AIとしての本来の役割ではなく、動かしてはいけないデータを基にして活動するバグとして。
『――――』
寒気を感じる笑みは、主に背いて禁忌に手を出そうとした私の内面を写しているようだった。
「――だめ、実行しては――――!!」
+
それが、在るべき月の最後の記録。
そう、桜は話してくれた。
「……あの出来事が、この事件の引き金になったのだと思います。気付けば私は、聖杯戦争の予選へと遡り、健康管理AIの役割を任されていました」
桜の自供によれば、そのデータがこの事件の原因。
それはメルトの記憶。恐らくは、メルトの生前――今回とは違う、月の裏側の物語。
僕はその詳細までは知らないが、メルトからある程度を聞かされている。
「――ループ」
だが、
マスター――岸波 白野は月の裏側には存在しない。そもそも、聖杯戦争は既に終わりを告げている。
似た形で進行しているのは確実。ならば、その記憶そのままに再現しようとしている“何か”がある。
その存在など明らかだ。生前、事件の元凶たる存在に吸収されたメルトに、その一部が痕跡として残っていても不思議ではない。
だからそれを、メルトは記憶と共に封印したのだ。開かれることさえなければ、悲劇の繰り返しはなかっただろう。
それを桜は――『心』というキーワードで辿り着いてしまった。
心を欲するばかりに、桜はパンドラの箱を開いてしまったのだ。
「……心、か」
「……ごめんなさい。こんなことになるならば、直訴に出た方が……」
「うん。言ってくれれば、白融の完成をもっと急いでいたかも」
「え……?」
何故、そこで白融が出てくるのだろう。表情から伺える桜の疑問は尤もだ。
「白融は僕とメルトしか知らなかった存在。心を付属した人工生命として作っていたんだ」
それは、皆に話したことだ。
勿論、桜も知っている内容。
「白融が完成すれば――NPCたちの感情キャップも引き上げて、随時心を付加する予定だった」
「ッ――――」
「白融の完成に時間が掛かった理由。それは、心を人工的に作ることの工程の多さにあるんだ」
だから、直訴をされてもすぐに動くことは出来ないけれど、白融が完成例となれば、その後の作業に掛かる時間は大幅に短縮される。
黙って行動をしていた桜が正しいとは決して言えない。だが、僕も布達をするべきだった。
このすれ違いが、事件の発端だったのか。
「そん、な……」
桜に何と声を掛ければ良いのか分からない。
僕にも非はあるが、桜のそれは容認できるものではない。
メルトが知れば、どれだけ呆れ怒るか想像に難くない。もしかすると、既に察しているのかもしれないが。
「……」
……この事件に至ったのは、メルトの記憶データによるもの。
そもそも、何故データを開いただけで桜に異常が発生したのか。
恐らくは、キアラさんの影響だ。
メルトは殺した筈のキアラさんによって吸収された。
解放されたメルトに、元凶たるキアラさんの意思が一部でも残っているとすれば――
ムーンセルそのものであるメルトの内部にそれがあれば、またしても足元を掬われかねない。
たとえその確率が零に近くとも、考えられる以上メルトは手を打っておいたのだろう。
月の裏側の記憶を、元凶の存在諸共放逐し、封印したのだ。
本来であればそれで終わりだった。だが、開かれてしまった。
それによって月に発生した異常――それが、二度目の
「桜……月の裏側に落ちてからも、その記憶は……?」
「……ありました。紫藤さんの記憶が戻るまでは、一マスターとして接しようと……」
しかし、記憶を取り戻しても――言い出せなかった。
報告義務がない以上、それも仕方ない。
そしてそもそも、危険なデータが検索に掛かるようになっていた。僕の管理体制が招いた事件なのだ。
「桜」
「は……はい」
「僕は、桜を咎めない」
「え……?」
「教えてくれてありがとう。これで、対処の方向性も見えてくる」
戸惑う桜に笑いかけて、椅子を立つ。
今回の原因は桜ではなく僕にある。故に不問。それが、管理者としての僕の決定。
「ちょ、ちょっと待ってください! それじゃあ……」
「まあ――メルトはどう思うか分からないけど。もう、隠している事はない?」
「え……あ……は、はい」
「じゃあ、終わりにしよう」
桜は役割に意固地な面がある。
不問という命令。無理矢理納得させないと、桜は背負い続けるだろう。
「でも……」
「ともかく、BBが暴走した原因は分かった。彼女を止めなきゃならない。桜、最後まで協力をしてくれ」
故に、新たな指示を与える。
何よりも勝る、最優先命令として。
「――」
この場で彼女を裁くという事は出来ない。
少なくとも事の清算は、全て中枢に戻ってからだ。
「――はい。全力で、サポートさせていただきます」
暫く桜は悩んでいた。
しかし、そう答えたその表情には、決意の色が見られる。
話は終わり。生徒会室に戻ろうとしたときだった。
『――ハクトさん、少しよろしいですか?』
レオの通信だ。いや、レオの、というよりは生徒会室からのか。
「ああ。話は終わったから、構わないよ」
『そうですか。では、一旦休んでください。続け様にブリーフィングは辛いでしょうから。六時間の休憩の後、最後のブリーフィングとします』
「最後、か……」
『うん。だから、しっかり休憩を取ってねー』
『ミス黄崎、貴女は何故僕の台詞を』
『レオ、お前も休め。通信を切るぞ』
『だから兄さ』
通信が切れる。この旧校舎で目覚めたときも、同じような展開があった気がする。
桜と二人で顔を見合わせ、苦笑する。
「……相変わらず、だね」
「はい。レオ会長も、皆さんも」
さて、レオの言う通り、休むとしよう。
目を覚ませば、これまでで最大の敵となるであろうノートとプロテアとの戦いが待っている。
少しでも多く休んで、万全の状態で挑まなければ。
「それじゃあ、僕は部屋に戻るよ。お休み、桜」
「お休みなさい。あの……ありがとうございます」
桜の礼に頷きを返し、保健室を出た。
「……?」
保健室を出て、辺りを見渡す。
メルトが見当たらない。そこそこ長い間話していたし、ある程度の“事”は覚悟していたのだが……
しかし、そのメルトは保健室前にはいなかった。
「お兄ちゃん、どうしたの?」
扉を開ける音に振り向くと、ちょうど図書室から出てきたありすがいた。
その後ろからアリスが付いてくる。
「ああ……メルトが何処にいるか、知らないか?」
「お姉ちゃん? この部屋にはいなかったわ、ねえ、
「ええ、
「きっとそうよ、行きましょうお兄ちゃん!」
「お、っと……」
二人に引っ張られ、購買の方に向かう。
そこには、普段通りの中身の読めない笑みを浮かべた史上最強の店員言峰。
そして――
「メルト?」
「あら、ハク。話は終わったのね」
購買の前で何かを手に持つメルトがいた。
「ちょうど良かったわ。支払い、頼めるかしら」
「え……」
「お買い上げありがとう。料金は25000smだ」
「え? え?」
メルトはその手に持つ何かを購入したようで、それはやたら高額だった。
一応、サクラ迷宮をここまで突破してきて、多くのエネミーを撃破してきた。
なのでサクラメントはほぼ困らない程度には集まっている。
だが……そもそもあれは何なのだろうか。
袋に包まれているが、メルトの好きなフィギュア、人形にしては大きい。
「えっと……それは?」
「内緒。まあ、すぐに分かることだけど」
「まったく。最後の最後に購入とは、仕入がほぼ無駄足ではないか」
「随分前から言っておいた筈だけど。貴方の仕事が遅すぎるのよ。一日しか着れないじゃないの」
「着れない……?」
「さ、ハク。お願い」
まあ、買ってしまったのなら仕方ないか。
料金を言峰に手渡す。しかし……着れないとは。
服、だろうか。こんな最後の最後まで来て、買うようなものではないような。
メルトの言葉を聞く限りでは、言峰の職務怠慢によって仕入が遅れたらしいし、元々メルトはもっと早く購入するつもりだったようだが。
「――で、ハク。サクラは話してくれたかしら?」
「ああ。でも――」
「分かってるわ。大体、想像は付いてるし」
メルトがそう返してくるのは、想像が出来ていた。
そもそもムーンセルはメルトそのもの。今までも、様々なことを理解してる風だったし、幾らかは最初からわかっていたのだろう。
売買の取引を終えた言峰は次の客であるありすとアリスの対応をしている。
二人が買っているのは大量の菓子類。この購買、陳列棚を見る限り、菓子の量が普通ではない。
「まあ、話は部屋で聞かせてもらうわ。それで、生徒会室に戻るの?」
「いや。一旦休めって」
「そう。なら、部屋に戻りましょう」
「うん……だけどその前に」
寄らなければならないところがある。
彼女の
今度こそ本当にサーヴァントを失ったマスターのいる、用具室だ。
ざっと、原因が判明しました。
伏線はあちこちに散りばめてありましたが、どれが伏線だったのかもう覚えてません。
伏線記録したテキスト作ってあるのに、何してるんでしょうね。
メルトが買ったものは、例のアレになります。
八章になるまでタイミングらしいタイミングがなかったんですよ……