ドツボだったのが「黒白横ストライプのパーカーとショートパンツ、ついでに眼鏡」でした。
袖チラ太もも眼鏡とストライク三点セットの神話礼装レベルでした。
(授業中に)ラフを書き終わった後で「あ、これキャス狐2Pカラーだ」と気がつきました。
でも正直気に入ってるので採用したいです。
そうは言っても私服枠なんて三つ四つ設けるんでしょうから特に審議もしませんけどね。
……水着? 何ですかそれ?
旧校舎にプールなんてありませんよ?
サクラ迷宮の中に戦闘禁止の平和なビーチフロアなんて……
…………ダメだ、BBならやりかねねぇ。
「……」
扉が開いた。
勿論ズボンは穿き直している。ラニの言う通りの「
扉の先にはラニが待ち構えていた。
「ごきげんよう。気分はどうですか?」
「……いや、どうと言われても……」
強いて言えば、違和感しかない。
早く片を付けたい。その一心でラニのSGを抜き出さなければ。
「それが一切の無駄を廃した、ベスト・ナチュラル・コンディションです」
「……
「……
『
最後の通信は白羽さんのものだ。モニターは切れたが音声は拾えるらしい。
「良かった……気に入っていただけたのですね」
誰一人そんな事は言っていないのだが。
「今回、私はサーヴァント用の拘束に興味を示しました。貴方のサーヴァントに課せられている筈ですが」
「え……あぁ」
確かに、メルトの今の服装には
外せないようになっているらしいが、それに興味を持ったから何だというのだろう。
「その呪いを解呪する術式を私なりに模索した結果がこれです。ミス遠坂ならば、これを基に解呪の術式を組む事が出来るでしょう」
『……まぁ出来なくはないけど。じゃあ貴女はこの階の仕組みはその為とでも言いたいワケ?』
「はい。あくまでも私の学術的興味です。これは趣味でも嗜好でも、ましてやSGでもありません」
いや違うし。
内心突っ込まずにはいられない。これはラニの秘密だ。
僅かに上気した頬から明らかである。
「……ま、私としては感謝したいところだけど」
確かに拘束を解除してくれた、という恩はある。だがそれとこれとは話が別だ。
ならば、それを暴く――表出させるためにはどうすればいいか。
「……ラニ」
「何でしょう。この先へと通すことは出来ません。貴方の快進撃はここまでです」
「――おそろいだね」
「ッ――――」
その言葉に、ラニは目を見開いた。
「ハク?」
メルトの声に黒いものを感じる。状況的には仕方ないと思ってほしい。
「おそろい……おそろい……驚きです。その発想は、ありませんでした。私たちは今、無防備な互いを見つめ合ってるのですね……」
胸に手を当てて、言葉を反芻するラニ。
左手の術式が反応する。取り出すべき秘密と呼応するように、持ち上がっていく。
「……心拍が、上昇してきました。思考が、同じ単語を、繰り返して――」
何故ラニがこのSGを持つに至ったのかは分からない。
しかし――
「わたし、いけないホムンクルス、です――どうしてか――こんなに、興奮、して――」
「ッ!」
抜き出された秘密はそれを証明付けるものだった。
――露出癖。あえて言及はしないでおくが。
SGを取り出すと同時、ラニは硝子のように透き通った音を立てて消えた。
そして二つ目のSGに呼応し、シールドが砕けていく。
後一つ。後一つでサクラ迷宮を突破できる。
『今回は割とあっさりいきましたね。ミス遠坂、ラニのSGは予想できていたのですか?』
何事もなかったかのようにレオが凛に問う。決して、あっさりいった訳ではない。
『まあね。SGは隠したい事だけじゃなくて、主張したい事も壁にするのよ』
『ラニさんは……紫藤さんに自分の悪いところを知ってほしかったんですか?』
『結果だけみればね。ラニは人とAIの中間的立ち位置だから、桜から見れば共感半分、理解不能半分だろうけど』
『はい……AIには欠点を申告する義務はあっても、それを知ってもらおうという考えは浮かびません……人間の心は、本当に不思議ですね』
桜の寂しそうな声が耳に残る。
人間であるマスターの健康管理AIとして、思うところがあるのだろうか。
『何はともあれ、色々とお疲れ様、白斗君。もう戻っていいと思うよ』
「うん……」
必要以上に疲れた。さっさと戻り、休むとしよう。
階段のすぐ前に向かい、帰還の術式を待っていると――
「ハク……あれ」
「え――」
下へと続く階段を昇ってくる人影。
体中に傷を作り、もう動けないのではという程のダメージを負いつつも、確実に歩を進める少女がいた。
――少女というのは、あくまでも体の要所のパーツを見ての憶測だが。
だがどこか無機質だ。完成されつくした、人形のような雰囲気。
機械仕掛けで全てが稼動している、そうとさえ思わせる違和感が、その“サーヴァント”にはあった。
「……メルト、見覚えある?」
「いいえ……だけど、瀕死ね。本来の力も三流程度。大したサーヴァントじゃないわ」
臨戦態勢を取るまでもない。そのサーヴァントに戦う力は残されていない。
その少女を構成するパーツで最も異質なものは、額にある角だろう。
そこを基点に左右に分かれた髪の下に見える目はひどく虚ろで、視覚があるのかも判然としない。
そんな異常の中で、絶対に離すまいと握り締めているメイス。
先に球状の物体がついた武器であろうものを引き摺りながら、少女は階段を昇りきった。
メルトは一応、警戒の体勢を取っている。それにまもなく帰還の準備が整うだろう。危険は殆どない。
「ゥ…………ァ……」
少女の喉が小さく震え、呻き声を漏らす。
ようやく僕たちに気付いたのか、焦点の合っていない目が向けられ、
「……ァア……ッ」
限界が来たのか、倒れこんだ。
「だ、大丈夫!?」
「ハク、迂闊よ」
走り寄ろうとしたが、メルトに制される。
確かに何をしでかすか分からないが、このままでは危険だ。
「桜、このサーヴァント、契約はしてある?」
『分かりません……旧校舎内でしか、サーヴァント情報の把握はできないんです……』
駄目か……下から昇ってきたという状況から考えて、このサーヴァントがラニの手先であるという可能性は十分にある。
だが、敵と確信できないサーヴァントを見捨てる事は、僕には出来なかった。
「レオ……」
『はい。分かってますよ。旧校舎への転移を許可します』
『ちょっ、本気!? 得体の知れないサーヴァントよ?』
「凛、事情は僕が聞く。凛たちに迷惑はかけないようにするから」
『……はぁ。分かったわ』
帰還の術式が少女にも組み込まれる。
そして次の瞬間、旧校舎へと戻っていた。
「戻ったか。……む?」
「あぁ……ユリウス」
今日は朝から見ていなかったユリウスが迷宮の前に立っていた。
どうやら先に探索を終えていたらしい。
「そのサーヴァントは?」
「怪我をしていたみたいだから、とりあえず運び込んだんだ」
「……相変わらずお人好しな奴だな。遠坂辺り、渋っただろう」
「うん……まぁ」
ユリウスは勘が鋭い。だが、僕の行動を否定してはいないようだった。
「戦力として使えればいいがな。まぁ、お前はそうでなくても置いておくんだろうが」
帰還確認の為だったらしく、ユリウスは校舎に戻ろうとする。
「ユリウス」
「何だ?」
とりあえず、言っておきたい事がある。この状況でどうかとも思うが。
「……レオのお守りを放棄しないでくれ」
「…………良く分からんが……すまん」
切実に、そう頼み込んだ。
気を失った少女を背負い、校舎に入る。
「おや、ハクト。おかえりなさ――い?」
「これはまた……妙な落し物を拾ってきたのだな」
購買に立つ言峰……そして何故か、サクラメントを持ったアルジュナ。
「……アルジュナ、何を?」
「ジナコの使いですよ。チップス菓子を買ってこいと」
「……」
大英雄をパシらせるジナコ……恐るべし。
「さて。そういうハクトはどうしたのですか? そのサーヴァント、随分と弱っているようですが」
「えっと……」
アルジュナと言峰に事情を説明する。
ラニのSGを取得後、このサーヴァントが下の階から昇ってきたこと。
瀕死の状態であったため、レオの許可を得た上で保護したこと。
「……ふむ。マスターと契約状態ではないようだが。サーヴァントだけ裏側に落ちたと見るべきか」
「分かるんですか?」
「元は監督役だからな。聖杯戦争進行の為の
ルーラーなる役割が何をするものなのかは分からないが、桜と同じくAIとしてサーヴァント情報を把握できるのだろう。
マスターと契約はされていない。つまり、センチネルとなっているラニの本来のサーヴァント、バーサーカーと同じような状況。
だが、一つ違うのはマスターがそもそもいないという事。サーヴァントだけが落とされた状況。
「それじゃあ……もう存在するだけの魔力は」
「極僅かだろう。サーヴァントとして機能は動いているようだがな」
助けることは出来ないのか……考えていると、
「どうだね雷神の子よ。一つ、手を貸してやるというのは」
「え――」
「……私に出来る事が?」
言峰が提案してきた。アルジュナは怪訝な表情で言峰を見つめている。
「これは近代の錬金術と死霊魔術の賜物だ。生体電流と魔力の転換を可能とするスキルを持ち合わせているようだな」
近代の英雄――それも、錬金術と死霊魔術によって生まれた、“作られた英雄”?
「軽く雷の一つでも落としてやれば、簡単に復活するのではないか?」
「破壊に特化した我が父の雷鳴で人の手に因るものを起こせるようには思えないのですが……」
「その時はその時だ。死に掛けのサーヴァント、生かしておくならば手段は選んでいられないと思うがね」
「……」
確かにその通りだ。
成功するかどうか、一か八かの賭けだろうと試してみるしかない。
「アルジュナ、頼む」
「……ハクトが言うならば。微力ながら、お手伝いさせていただきましょう」
アルジュナの助力を得て、まずは個室へと少女を運ぶ事にした。
個室の床――ベッドに寝かせようとしたところメルトに猛反対された――に少女を寝かせる。
衰弱しきったその体は、恐らく後数分と保たないだろう。
「……アルジュナ」
「ええ。辺りに被害は出ないようにしますが、一応離れていてください」
それに従い離れると、アルジュナは手に魔力を変質させた電撃を発生させる。
微弱なもので、攻撃としては使用できない程度。
軽く手を振り、それを少女に浴びせると、その体がビクリと跳ね上がった。
「これは……」
「……魔力に変換されたわね」
言峰の言っていた事は本当だったらしい。
「……」
続けて暫く、電撃を流すと少女は小さく呻き声を上げた。
「…………ゥゥ」
その声を聞いたのか電撃の発生を止めたアルジュナが一歩下がる。
「これで、戦闘をしないならば当分持つ程度は流しました」
「あぁ……ありがとう」
起き上がった少女は、不思議そうに辺りを見渡している。
「……気がついた?」
「ッ…………」
驚きに目を見開いた少女。
無理も無い。気がついたらすぐ近くに見知らぬ人間がいたのだから。
「……ァア……?」
状況を確認し、やはり分からないと首を傾げる。
「えっと……君はアリーナで倒れてたんだ。それで瀕死だったから、とりあえず連れてきたんだけど……」
「…………ゥ」
理解しているのかしていないのか。反応が希薄であり、よくわからない。
「どうやら、クラスはバーサーカーのようですね。言語能力は失われているようです」
「バーサーカー、か。言葉は……分かる?」
「……」
少女は小さく頷く。
バーサーカー。理性と引き換えに強大な力を手に入れる、狂戦士のクラス。
理性がないという特殊性は利点を挙げれば、機械的になりマスターと意識を同調させることでより連携の取れた動きが可能となる。
欠点は英雄としての頭脳が生かせなかったり、暴れ続けるという特性から魔力の消費が激しいことだ。
だが、この少女はその欠点、理性の喪失というのは薄いようだ。
狂化のランクが低いのだろう。その場合、ステータスの恩恵は少ないが理性を多少残す事が出来る。
機械的なサーヴァントという特徴からすれば低いランクの狂化は利点があまりないのだが、この状況ならば寧ろありがたい。
「君は表側……聖杯戦争の途中で何があったか、覚えてる?」
「……」
今度は首を横に振った。やはり僕たちと同じく、記憶はないらしい。
「気がついたら、あのアリーナに?」
肯定する。つまりは凛やラニと同じような境遇か。
だとすればBBが捕え、駒にしようとしたのか。そこから逃げ出してきたと。
「……マスターは?」
「ゥゥ……ァ……」
少女は傍らにメイスを置き、首元を手で切るようなジェスチャーをした。
つまりは、死。どうやら既にマスターはいないという事らしい。
「そうか……」
BBについて、聞いてみるべきだろうか。
だが、落ち着いている状態なのに錯乱してしまうかもしれない。
それは後にしておこう。後確認するべき事は――
『――先輩、聞こえますか?』
「ん……? 桜?」
端末から聞こえてきたのは桜の声。
『はい。そのサーヴァントですが、詳細が分かりました』
「あぁ――とりあえず、バーサーカーって事は分かったんだけど……」
『では、残るマトリクスを送りたいのですが……えっと……』
何故か桜が口篭っている。情報を渡すのに何かまずい事が――あるに決まっているか。
サーヴァント情報は聖杯戦争において最たる秘密。それを露呈してしまう事は表側に帰った後に大きなアドバンテージになってしまう。
AIである桜が迷うのも当たり前だろう。なので一応、本人に聞いておく事にする。
「……バーサーカー。僕たちは聖杯戦争に戻るために、マスター同士で協力をしてるんだ」
「……ゥ」
「君のマスターも、もしかしたら表側――本来の聖杯戦争に残っているかもしれない。だから、君の手も貸してほしい」
「……ゥィ」
少女は、一瞬躊躇しながらも頷いた。
何か決意を固めたように。それが何なのか、僕には分からないが。
「ありがとう。それで……君の情報を受け取りたいんだけど、いいかな?」
「……」
黙り込んでしまった。改めて凄いと感じる。
バーサーカーのクラスだというのに、情報の重要性を理解しているのだ。
やがて、大丈夫と判断したのか頷いた。協力関係というのを重視したのだろうか。
「大丈夫みたいだ、桜」
『は、はい……! じゃあ、送りますね』
程なくして、端末にサーヴァント情報が送られてくる。
『それと、レオ会長からですが、今日の活動は終わりだそうです。生徒会室には顔を出さなくて良いのでゆっくり休んでくださいとの事でした』
「分かった……じゃあ、お休み桜」
『はい、お休みなさい』
通信を終え、マトリクスを確認する。
ステータスはほぼ平均的だ。だが、スキルや宝具と併せれば持久戦に向いている。
瀕死の状態ではそれも満足に使えなかっただろうが、回復した今なら旧校舎に存在する
そして、真名は――
「……フランケンシュタイン、か」
「……ウゥ」
正しくは、フランケンシュタインによる無銘の怪物。
十九世紀のメアリー・シェリーによる作品、『フランケンシュタイン』に登場する人造人間。
理想の人間を目指して作られながらも、醜さゆえに創造主から拒絶され、生きる意味を持たずに破滅した悲劇の物語が、目の前にあった。
「うん……これからよろしく。バーサーカー」
「ウィィ……」
意図の読めない呻きだが、肯定という事で良いのだろうか。
「ふふ……真名で呼んでも構わない、だそうですよ」
「え……? アルジュナ、言葉が分かるのか?」
「まぁ、ある程度は。ですよね、フランケンシュタイン」
「……ゥゥ」
頷いた。先ほどは真名の秘匿について悩んでいたようだったが、良いのだろうか。
だが良いというのなら、別にそれでも構わない。
「じゃあ……フラン、でどうかな?」
「……ゥァ」
――心なしか、少女は少し微笑んだような気がした。
「さて、私はそろそろお暇しましょう。ジナコの使いも終わってませんし」
「あぁ、うん。ありがとう、アルジュナ」
「いえ。ジナコが怠惰な分、私は出来る範囲でお手伝いしますよ」
部屋の扉に手を掛けてから、アルジュナは振り返る。
「フランケ――いや、フラン。貴女はどうしますか? 必要であれば、部屋を用意してくれる方がいますが」
「……ゥゥ」
「……何て?」
「迷惑は掛けられない、だそうで。バーサーカーとは思えない謙虚さですね」
苦笑して、アルジュナは部屋を出て行った。
続くように、フランも出て行こうとする。
「大丈夫なのか?」
「……」
頷き、深く頭を下げると、フランも部屋を出た。
「……律儀だなぁ」
「居座られなくて良かったわ。せっかくの個室だってのに」
「別に僕は構わないけど……あ、いや、ごめん。なんでもない」
メルトからの無言の圧力に何も言えなくなってしまう。
寝るくらいしかいない部屋だから別に問題ないと思うのだが……
メルトの怒りの原因は良く分からないが、ともかくこれで今日の活動は終わりらしい。
カレン、そして新たな主従。そこに続き仲間に加わったフラン。
これでBBにどの程度近づけただろうか。或いは、まだまだかもしれない。
だが恐らく、ラニの迷宮の先にBBはいる。そこで全面対決となるだろう。
BBの目的は何なのか。それを知ることも重要だが、何よりも一刻も早く表側に戻るため、最後の階も全力で突破しなければ。
フラン「よーんひゃーくきゅーじゅーごねんいきーてるー」
ハク「いや、違うから。そのフラン違うから」
という訳で外典枠一体目、フランちゃんです。
口調も相まってアルジュナさんが完全にケイローン先生になりました。
初めから決まってた展開なんですがね。言わずもがな、外典ジーク君のオマージュです。
彼女と一緒に寝てる部屋に新しい女の子連れ込む系男子、紫藤白斗。
気になっている人がいるかも分かりませんが、個室に戻るまで「はいてない」状態です。
モニターついてないからアリーナで穿き直せばよかったのにね。
今回の話が終わった後にちゃんと穿いてるんですよ。
↓東方のキャラを覚えるのは神霊廟で限界でした予告↓
『……BBよ、けもなーとは何なのだ?』
――次回、外典勢揃う! の巻!