Fate/Meltout   作:けっぺん

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さて、型月wikiの最近の更新はっと……
ん? ヴァイオレット? キングプロテア? 何でこんなに加筆されてんの?

二分後

( ゚Д゚)

パソコンぶっ壊すかと思ったのは久しぶりです。
さて、公式と自分の設定は混合させるべきか。


Girl's Side Laboratory-2

 

 

 海に沈んだ近代都市。

 そんなイメージを持たせるサクラ迷宮の四階。

 そこは、表側のアリーナに近かった。

 海が舞台となるそれはやはり、表側に帰還できる道だという事を示唆しているのだろうか。

 ここを突破するには一層と同じように、ラニのSGを取らなければならない。

 だが、今回はそれは二の次。今はガトーの救出が優先だ。

『ガトー団長はこの際後回しでも構いませんよ。SGが取れるようなら其方を優先してください』

『まぁ生体反応は拾ってるし? 殺しても死なないような人ッスからねー』

 生徒会(とジナコ)は妙に薄情だった。

 ともかく、出来るのならばどちらも。それを目標に進んでいこう。

 そんな意気込みで探索を始めたのだが、一切分かれ道の無い単純な一本道が続く。

 その先の大きな広場には、ラニと――先ほど激戦を繰り広げたディーバが立っていた。

 先ほどの傷は何処へやら。どうやら一切ダメージは残っていないらしい。

「……」

「行くしかないわ、ハク」

 意を決し、歩を進める。

 広場の周りには巨大な石版が積み上げられており、それら一つ一つには魔力が込められている。

 これは――姿こそ変えられているが、マスター?

「……脱落マスター64名、NPC23名のサルベージに成功。拷問室に転送します」

「素敵! お手柄よラニ! 貴女、ノリは悪いけど仕事は素晴らしいわ!」

「当然です。職務を全うするのが私の存在意義であり、喜びです」

 恐らくは、血液を搾取するための仕掛け。

 それをラニは進んで行っているのだ。

「さて……不測の事態に備え、先三回分の血液は確保しました……ですが」

「えぇ。分かってるわ。招かれざるお客様、でしょ?」

 此方を見据える竜の娘は小さな笑みを浮かべていた。

「はぁい、思ったより早い再会だったわね。てっきり何時間か休むものかと思ったわ。私が言うのもなんだけど、休憩は必要だと思うわよ?」

 そうは言っても、ディーバに此方を気遣う気なんてない。

 槍を顕現させ、臨戦態勢を整える。ラニの一言で、すぐにでも此方に向かえるように。

「だったら休ませてくれないものかしら。そこを退きなさいエリザベート。貴女がいなくなれば仕事も楽になるのだけど」

「それは無理な相談ね。マスターを守るのがサーヴァントの役目、なんでしょ?」

「ラニが……マスター?」

 当然のように言ったディーバ。生まれた疑問にディーバは頷く。

「そうよ。ラニは私の新たな付き人(マスター)。出力はリン以上、私に最も相応しいステータスね!」

 確かに、ディーバが放つ重圧は今まで以上だった。

 ラニだけのものではない。この仕掛けにも作用されているのだろう。今のディーバは、更に手強くなっている。

『紫藤さん、ラニさんに呼びかけてください! きっと彼女もBBに操られているんです!』

 それは間違いない。だとすれば、掛ける言葉は……

「ハク」

 メルトが傍まで歩いてきて、耳打ちしてくる。

「……本当に?」

 それは呼びかける言葉について。

 多分……いや、間違いなくタブーだと思うのだが……

「ものは試しというじゃない。たまには大きく出るのも大切よ」

 そういうものなのか。少し違う気もするが。

「……よし」

 だが、メルトが言った事だ。信じれば、きっと良い方向に向かってくれる。

 いつだってそんな、頼りになる助言をしてくれたのがメルトだ。

 一見間違っているようで、これが正解に違いない……!

 ラニを見て、口を開く。ラニに掛けてやる言葉、それは――

「――つけてないって本当なのか、ラニ!?」

「シャラップ」

「シャラップ!?」

 この少女から出てくる筈のない言葉に、思わず復唱してしまった。

「まぁ、そうなるでしょうね」

「っ……!?」

 謀ったなこの加虐嗜好(サディスト)……!

『白斗君……笑いを取りにいくにしてもさ、時と場合を考えようよ』

 白羽さんからの容赦の無い指摘が突き刺さる。ちなみに断じて笑いを取りにいこうとした訳ではない。

 メルトが「つけてないって本当なのか、ラニ。この一言で堕ちる筈よ」と言ったからその通りにしただけなのだ。

「貴方の心無い発言は何度目でしょう。貴方にとって真面目な説得だったのだとしても、私が衛士だという事実が揺らぐことはありません」

 あぁ、と何となく察する。ラニは只今、絶賛憤慨中だ。

「私と貴方達は敵同士。それを理解した上で迷宮に踏み入ったのではないのですか? もしや話し合いが通じるとでも?」

「っ……」

 思っては、いなかった。

 凛が敵として現れた以上、ラニも衛士ならば戦うほかない。それは理解していた。

 だが、それでも戦いを拒みたいのは変わりない。こんな形でラニと戦うのは、微塵も望んでいなかった。

「戦闘行為に来たのではないのですね。ではお引取りを。私も暇ではないので。衛士であると同時に私にはディーバを育てる職務があるのです」

「ディーバを……育てる?」

『それは……ディーバを違法改造するという事ですか?』

 こうなったら以上、ラニは衛士として徹底した戦い運びをするだろう。

 ディーバを違法改造して更に強力なサーヴァントとする事も厭わないかもしれない。

「いえ、違います。ディーバを一流アイドルとしてプロデュースするのです」

「……は?」

「そうよ。ラニがいれば、私は歌姫(アイドル)として完成できるの。アイドル・マスターならぬアイドル・サーヴァントね!」

「それが、ディーバとの契約条件ですから」

「……バーサーカーは?」

 ラニが表側で契約していた、偉丈夫のサーヴァント。

 理性を失った代わりにマスターと意識を同調させ、より機械的にした上で従いやすくしたクラス。

 一騎当千のバーサーカーが今のラニにはいない。凛と同じ状況であるならば、或いは……

「バーサーカーは健在です。しかし今は契約をカット。下の階層で待機させています」

 一階層の凛と同じように、元々契約していたサーヴァントとの契約を破棄してディーバと契約している。

 そこが不思議な点だ。ディーバも確かに強力なサーヴァントだがランサー、バーサーカーは明らかにそれ以上の実力を持ったサーヴァントだ。

 それに、真名からしてもディーバ――エリザベート・バートリーに戦闘の逸話はない。その卓越した拷問技術が戦闘に特化されているとしても生粋の戦士とは比べるべくも無いだろう。

 例えば、ランサーの正体はインドの大英雄カルナ。確か、ラニのバーサーカーもそれと十分に真っ向から戦える実力を持っていた。

 そんな実力者との契約を切ってまでディーバと契約する理由。一階層から考えていたがその解がどうしても浮かばない。

 BBの影響――それは間違いないのだろうが。

「それに、魔力についても支障はありません。聖杯戦争の脱落者を回収、そのリソースを使用していますので」

「え……?」

 聖杯戦争の……脱落者を……回収?

「何か問題でも? 回収しているマスターは、一秒後には消滅させられる運命の敗北者。それを生き長らえさせる事が、悪だとでも?」

「っ……」

 それが、はっきりと悪だとはいえなかった。

 聖杯戦争で敗北し、一秒後にはムーンセルに消される存在。

 残りほんの僅かの余命――たった一秒間を、永遠に引き延ばせるのだとしたら。

 それは果たして悪なのだろうか。

 経験が少ないからか、僕にはそれは分からない。だが、ただリソースを搾取される命に喜びなどないという事だけは、理解できる。

『その手の人権問題は余所でするッス! レオさんの西欧財閥だってそんなもんだって聞くし!』

 聞いてられないとジナコが声を大にして言う。

『おや、アレよりマシですよ。労働や研鑽の自由はありますし、福利厚生もバッチリです』

『そういう事を笑顔で言うんだよねレオ君は。それよりラニちゃん、ガトーさんは?』

 そうだ、今はとにかく、ガトーを探さなければ。

「ガトー? あぁ、あの猪ね。あんな血液にまで筋肉が入ってそうなのはこっちから願い下げよ。ラニ、アレどうしたの?」

「あれは王子力マイナスの汚染物質です。面倒なので、迷宮の一角に隔離しました。十年も放置しておけば“きれいなガトー”になっていることでしょう」

 どうやら無事なようだが……助け出す術はないのだろうか。

「アナタお得意の王子様採点ね。見込みのないマスターは放置するんだっけ。じゃあその辺り、この子ブタはどうなの?」

 小馬鹿にしたように薄ら笑いを浮かべながら指を差してくるディーバ。

 ラニは眼鏡を掛けなおし、その感情のない目で此方を見据える。

「……このスカウター(メガネ)によると、主人公力たったの5……」

「ゴミね。ここで片付けちゃう?」

 やろうと思えば、この場で簡単に抹殺できる。

 それを確信し、ディーバは槍を構える。

「……ですが、磨けば光る逸材です。いえ、なんとしてでも、私が光らせます」

 何やら決意を持った言動。

 その様に――五停心観が微かに鳴動した。

「決めました。プランDでいきます。この迷宮を作り変えますので、ディーバ、一旦戻りましょう」

「ふうん……面白そうじゃない。いいわ、合意(サイン)してあげる。代わりに専用ステージとファンクラブ会員(スレイブ)千人、早く用意してね」

 ディーバとラニは転移していった。

 こうなっては僕たちに、ラニとディーバを追う術はない。

 それにガトーも見つけ出す事が出来なかった。だが、無事は確認できた。それだけでも良かっただろう。

「運命ってのは、本当に皮肉なものね」

「……ラニとも、戦わなくちゃ駄目なのか?」

「でしょうね。覚悟を決めなさいハク。ラニを正気に戻すためにもね」

「……」

 それ以外に道はない。既に一度、それを痛感し突破してきている。

 だが、やはり抵抗はあった。友人と戦わなければならないというのは何処まで辛いものなのか。失った記憶の中で、どれだけの友人と殺し合いをしてきたのか。

 今考えるべきではないことは分かる。それでもやはり、脳裏を過ぎていく。

『ハクトさん、対策を練りましょう。一旦帰投を』

「……うん」

 考えたくはないが、表側に戻ればそれも必然となる。

 そもそも聖杯戦争という場でこの感情自体が、異質なものなのだろう。

 それを持っている自分の欠陥。表側に戻っても、そこから先を戦えるのかという不安。

 苦悩を紛らすためには、とにかく目の前の障壁にぶつかっていくしかない。

 この場で出来るのは、そのためにも来た道を引き返すことだけだった。

 

 

「お疲れ様でした、ハクトさん。ガトー団長を発見できなかったのは残念ですが、無事が分かっただけでも良しとしましょう」

 戻ってきた生徒会室には多少変化があった。

 ユリウスとダンさんがおらず、今まで空席だった席に座る新たな仲間。

「凛、もう大丈夫なのか?」

「お気遣いどうも。今は仲間だけど、表に戻ったらアンタたちほんっとに容赦なくタコ殴りにするから」

 ……恐ろしい。だが、許可もなくSGを引き抜いたのだ。今仲間でいてくれることだけでも感謝すべきなのだろう。

「ミス遠坂の犯罪予告はおいておきましょう。サクラ、解析の結果を」

「はい。パッシブソナーで計測したところ、あの迷宮は全六階です。凛さんの迷宮が三階まででしたから、残りはラニさんのものと思われます」

「つまり、ラニちゃんをどうにかすれば表側に帰れるワケだね」

衛士(センチネル)システムにも符合すれば、そうなります。迷宮の核として使えるのはミス遠坂とラニだけだと、BB自身が言ってましたから」

 ラニの迷宮が三階分……つまり、ラニのSGを三つ取る必要がある。

 負い目もあるし、それがどれだけ難しい事なのかも理解している。

 だが、表に帰る目処が立ったのならば、それに向かって走るしかない。

「……それで、ユリウスとダンさんは?」

「一階から三階の再調査をお願いしています。既に通り過ぎた階層ですが、万が一、何かがある可能性もあるので」

 なるほど。既に突破した階だが、見つけていないものがないとも言いがたい。

 ユリウスもダンさんもサーヴァントを連れている。戦力的にも問題はないだろう。

「サー・ダンも兄さんも、隠密行動には長けています。お二人は心配ありませんよ」

「それに、二人を迷宮に向かわせたのはもう一つ理由があるわ」

「もう一つ?」

「白斗君に何かあったとき、すぐに応援に向かえるようにだよ」

 白羽さんが説明してくれた。

 ……確かに、戦力的に一番不安なのは紛れも無く僕だ。

 メルトは共闘はできないといっていたが、ディーバとの戦いではランサーと基本的な協力は出来ていた。

 もしかするとアサシンやアーチャーとの共闘もありえるかもしれない。アーチャーとメルトの仲が悪そうなのでどうにも不安だが。

「二人を向かわせたのは、BBとの時間の勝負も兼ねてます。彼女が新たな衛士を見つけてしまえば、此方の脱出は更に難関になるでしょう」

「つまり、それより先にラニを突破しなきゃならないって事か」

「はい。そのためにも……連続になりますが、お願いできますか?」

「うん。分かってる」

 凛と戦ってから連続になるが、文句や泣き言を言ってもいられない。

 SGを取って一度休憩……を繰り返すくらいが間隔的にもちょうどいいだろう。

「SG、ねぇ……他人の秘密を盗むなんて私は反対なんだけど」

 凛はあまり賛同していないようだった。その被害者であるのだからそれも当然だろうが。

 だが、その否定とは裏腹に、口元には笑みが浮かんでいる。

「ま、こうなったらラニにも私みたいに恥ずかしいエピソードを披露してもらうしかないわね!」

「……」

 意外に乗り気らしい。

「では、引き続き僕、ミス黄崎、ミス遠坂、サクラの四人でハクトさんをサポートします。一応、ガトー団長の捜索も片手間にお願いします」

「一応て」

 片手間て。

「……まぁ、いいか。メルト、行こう」

『えぇ』

 ラニは強敵だ。きっと、SGを取るのも苦労するだろう。

 あのディーバの真意も含めて、探っていかなければ。

 ともかく迷宮に赴かないことには始まらない。

 謎は次々生まれ、解決する前に増えていく。

 まずはそれを減らすことから始めなければと、迷宮に向かうために席を立った。




メルト
「うーん……赤いのが生放送したみたいね。
 狐みたいに私もハッキングするべきだったかしら。
 いや……狐の艦これアカウント乗っ取って資源使い果たす方が面白いかしらね。
 やっぱり二番煎じはいただけないわ。もっと別で、面白そうな……
 そうだ。この小説(コミュニティ)をグソクたんに乗っ取らせるとか。「しんかいはえさがない」みたいな。
 ……駄目ね。作者が大好きな大御所と同じ思考回路になってる。
 やっぱエイプリルフールも過ぎてるし、何もしないが一番よね。ハクのところに帰りましょう」

そんな訳で、やっぱりエイプリルネタは没になりました。
某大御所さんのエイプリルネタは吹きました。グソクたんマジ人気者。

↓次回はオリキャラ枠三人目ですよ予告↓
「わたしはあまり、細かい事は気にしないので。AIにあるまじき思考回路(アルゴリズム)だとは思ってますよ」

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