THE IDOLM@STER 輝く星になりたくて   作:蒼百合

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フェスの闇に呑まれよ!(爆死)
訳:せめて書いたみくにゃん出てよ!


5話 Pとアイドルと

「え、今なんて・・・・・・?」

 

 初めは、聞き間違いだと思った。

 

「え? 私このステージが、初めてのステージだったんですよ!」

 

 二度目では理解した。聞き間違いでは無かった。私の耳は正常のようだ。

 

「だから、すーーっごく楽しかったです!」

 

 ぴょん吉というハンドルネームの少女は満面の笑みを浮かべていた。その言葉に嘘偽りはないだろう。

 

「はぁ~凄いわね。初めてなのに、あんなに凄いなんて」

「いや、そんなことないですよ。結局みくちゃんに負けちゃいましたし」

 

 でへへと人差し指を頬に当てて言う姿は、可愛らしかった。その表情に後悔は感じず、その笑顔には、随分と懐かしいものを感じていた。

 負けるのは当然、と切り捨てるのはよくないが、大衆の目線がある中で踊るというのはかなり緊張する。失敗するかもしれないという不安は勿論だが、観客がステージをどう感じるかわからないという不安もあるからだ。

 

「そ、そっか。ステージは楽しかった?」

「はい! とーっても楽しかったです」

 

 

 きっと彼女は近い将来、アイドルになるのだろう―――。

 

 

 

 

 

「武内さん、でしたよね? こんにちは」

「・・・・・・こんにちは」

「「・・・・・・」」

 

 互いに見つめ合ったまま私たちは固まっていた。まさか居るとは思わない相手と出会ったのだから当然だろう。

 

 

「髪型、変えられたのですね」

「ええ。さっき整えてもらいました。気持ちを変えたかったので」

「そうですか・・・・・・」

「「あ、あの!!」」

「「・・・・・・」」

 

 なんだこの空気は。強制的に親に組まされたお見合いか。もの凄く居づらい。

 着物を着た女――私――とスーツ姿の男性。隣だとはいえ、並んでいる列はそれぞれ違う。つまりは、この後会話をするアイドルは同じでない。それなのに話しているのも可笑しな話である。

 

「お先にどうぞ」

「先日は、すいませんでした」

「ぁー、あの時ですか。気にしないで下さい。」

 

 と言ったとしても、気になるのが普通だろう。路地裏で泣いている女性というのは、あまりにも異常だ。

 

「ところで、武内さんもさっきのライブバトルを観ていたのですね」

 

 少し強引だけど話題を変える。

 

「はい。御二人ともいいステージでした」

「ですね。まさか原宿でこんなにレベルが高いものを観れるとは思いませんでした」

 

 エリアごとに、ある程度出演するアイドルのレベルがわかれている。東京地区だと、秋葉と池袋に強豪が多く集まり、ここ原宿には、初心者。つまりは新人が多く集まる。

 

「そうですね。みくさんは、この地区のリーダーのような方みたいです。新人さんの相手役を勤めることが多いようです」

「へぇ。そうなんですか」

 

 つまりは町のドンといったところか。ライブバトルにも色々とルールもあるらしいので、その指南役もしているのだろう。

 差し詰め、チュートリアル戦やお助けお姉さん?

 

「はい。ですので、ステージ中に帰る人は少ないですね」

 

 詰まらなければ、仮にステージの進行中であろうと客は帰る。

  それはアイドルランクを持つ実際のアイドルでも同じだ。そして審査をするオーディションだろうと、演技によっては審査員でさえ帰る。それが現実だ。

 けれど、スマホを弄っているよりはましかもしれない。ステージ上から下を向いていたり、暇そうな人が見えると、演者側も悲しくなるからだ。

 

「武内さんはみくちゃんがよかったと思いましたか」

 

「そうですね。それに、みくさんが気になっていたので・・・・・・」

 

 元から彼女狙いだったようだ。

 もう少し食い付いて質問してみる。

 

「もしかして、スカウトとかしようと思ってます?」

 

 みくちゃんのアイドル性は、確立されている。このまま売り出すことが可能かは不明ではあるけれど、個性があるのは確実に売りになる。

 

「・・・・・・はい。よくわかりましたね」

 

 武内さんは少しだが、驚いていた。

 

「そりゃあ、みくちゃんはアイドル向きですからね」

「アイドル向き、ですか?」

 

「はい。色物要素は強いですが、自身のイメージを固めていて、それをステージ実行出来ている。それだけでも、十分に上を目指せるポテンシャルがありますから」

「そうですね。彼女の個性はアイドル界で戦えるだけの力があると思います。ですが」

 

 と間を置いてから、予算との兼ね合いが懸念材料です、とつけ足した。

 

「予算ですか」

「もし、沢山の猫と歌うとしたら、複数の動物プロダクションに出演依頼を行う必要があります。そうすると予算も、相手側の時間も・・・・・・」

 

 武内さんの表情が次第に曇っていく。

 

「そうですよね」

 

 はぁ、と重たい息を吐いた。

 一体何匹必要で、あの自由な生き物は大人しくしているだろうか。とても撮影には向いていない、というか厳しい。

 

「でも、実現したら楽しいでしょうね」

「えぇ。実現すれば、笑顔が溢れるステージになると思います」

 

 だからこそ、実現したときの喜びは計り知れない。撮影風景、ステージ脇で観る光景。それは、プロデューサーだけの特権だ。

 

「そうですね。実現すれば本当に・・・・・・楽しいステージになるでしょう」

 

 ――ありがとうございましたー!

 

 ぴょん吉さんの声が聞こえた。どうやら私の番は次らしい。

 

「あ、次みたいですね」

「えぇ」

「随分と長く話しちゃいましたね」

「そう、ですね」

「貴重なお話ありがとうございました。()()()()()()()()()()()()機会はそうそうないですから」

「い、いえ。こちらこそありがとうございました」

「では、失礼しますね」

 

 他所のアイドルについて専門家と話すのは随分と久しぶりだった。久しぶりに、楽しい時間を過ごせたことに感謝した。

 

 

 

「楽しかったなぁ・・・・・・」

 

 純粋にステージを楽しんだのは何時以来だろうか。

 一度ステージを見たら、演技の駄目だしや、魅力的なポーズや表現ばかりを追いかけてしまっていた。それか、自分自信よりも上手いか下手か、を比べていた――。

 実力を比べ続けるのは息苦しさがある。けれど、互いの目的は変わらない。最高のステージを創ること。

 その為に、私は動き続けていた―――。

 

「これからどうしよう」

 

 今西さんからの返事をどうするかだ。遅くても明日には決めるべきだろう。

 アイドルとは関わりたくない、とは思いつつもそれ以外の仕事をするイメージが全く沸かないでいた。アイドルマスターの世界ならプロデューサーにならないと、という単純極まりない思考でアイドルの世界に踏み出したからだ。

 そもそも、いつまでもニート生活をするわけにもいかないからだ。最終学歴、中卒というのは余りにも社会的地位が無さすぎる。書類選考で落ちると考えてよい。

 高卒認定試験を受けて大学に入りどこかの会社にでも就職するか、それとも――――――。

 

 多分、答えは初めから決まっていた。

 

 

 *

 

 

 

「ぁ、お名前」

 

 武内は未だに着物を纏った謎の女性、雪乃の名前を知らない。話をしようにも、彼女は既にみくの対戦相手であるぴょん吉とのアフタートークを始めようとしていた。

 

 ――今は、スカウトすることに集中しないとですね

 

 気持ちを切り替える。みくの知名度はあるので、既にスカウトされているかもしれない。そうでなくても、スカウト中に別の女性のことを考えていては、失敗するかもしれないからだ。

 

「こんにちは、先ほどは素敵なステージでした」

「ありがとうにゃ!」

 

 流石はプロ(素人だが)。みくは強面な男性相手だとしても一切臆することも、驚きもしないで対応している。

 

「あなたのステージは、とても可愛らしかったです。猫のようでした」

「ふふん。そりゃ、みくは猫ちゃんだからにゃ! 」

「みくさん、アイドルに・・・・・・興味はありませんか?」

 

 武内は雪乃にしたのと同じように、名刺をみくに差し出していた。

 周りの視線は、武内とみくに集まる。

 

「346プロアイドル事業部・・・・・・プロデューサー!?」

「はい、そうです」

 

 渡された名刺を朗読して相手が誰だか理解したようだ。みくは突然の出来事に声をあげた。当然遠くにいた人も気が付く。

 

「おい、まじかよ」「え、スカウト?」「すげぇ、初めてみた」「あのみくにゃん先輩が?」

「遂にみくにゃんもリアドルデビューか!!」

 

 反応は人により様々であったが、言伝に「みくが有名事務所にスカウトされた」という事実が伝わっていく。しかも無名のプロダクションではなく、アイドルに詳しくなくても認知されている346プロだというのだから当然驚く。

 

 その中でみくは、舞い上がっていた。アイドルになれるという事実を噛みしめたからか、やったにゃー! と叫んだ。

 

「みくは、本当にアイドルになれるのにゃ?」

「はい。貴女がなりたいのなら」

 

 武内は強い肯定で、返事をする。彼の口数は少ないが、みくにはその一言で十分だった。

 

「勿論にゃ」

 

 ぱちぱちぱち。周囲からは拍手と共に頑張れよ、と言った声援が沸き上がった。

 武内は困惑するものの、みくはテレビでも応援よろしくにゃ! と相変わらず猫語で元気に笑顔を振り撒いた。

 

「あのー、そういったお話は別のところでして頂けると・・・・・・」

 

 腰を低くして会話に割り込んで来たのは、ステージでの司会者であった。

 指摘されたことで、時間をかけすぎていたここと、騒ぎが大きくなりすぎたことに改めて気づいた。

 

「で、ではこのお話は後程・・・・・・ということにしましょう」

「あっ、はい。お願いします」

 

 みくから猫語が抜けていた。

 

 *

 

 その男は、ステージを眺めていた。しかしその目的はアイドルではなく、別の女性であった。

 その事実に気がつく者は、誰もいない。もしも気がつけば通報されてしまうかもしれないのだが、その視線は欲情に満ちたものでは無く、慈愛といった方が近かった。親が子供を視るような目だ。優しい眼であった。

 彼女はその視線に気づかない。視線を向けられることに慣れているからではない。やはり、その視線には慣れていたからだ。向けられることに安心感を懐く程に彼のことを信頼していた。故に、気にも止めなかった。

 彼女の視線の先には一人のアイドルがいる。

 男もアイドルに目を向けた。

 流れる音から理解していたが、この曲には馴染みがあった。

 そのステージは、本家と同じような人が歌って、踊っていた。

 彼にとって一つ残念なのは、自身がペンライトを持っていないことであった。普段は出演するアイドル全員分を持参しているが、今は無い。代りにコールを観客と共に行った。

 

 ―――この中にも天海君のファンは多いようだね。そして………

 

 

 

 

 

「ふむ、ティンと来た!」




ライブバトルといえば、原作ことモバマスでは衣装を賭けるものですが、当作品では無いものとしてください(投稿してから気がつきました)
勝者側には少しお金(大道芸でのチップのようなもの)が多く入る、ということでお願いします。

ソシャゲといえば、頭のおかしいミリシタの情報を皆さんご存じですか?(褒め言葉) また武道館でライブだし(積まなきゃ)しかも新アイドルの登場で、こちとらプロットの練り直しですよ……

それはそうと、本日がデレマス5th SSA公演先行予約の応募最終日ですよ、最終日! 皆さんお忘れ無く。

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