恋姫†無双~大陸に降り立つ者~   作:新名択捉守

20 / 20
20

 

 

 

―孫呉に降り立つ者―劉備&関羽&張飛&趙雲&典韋&諸葛亮&鳳統&程昱&郭嘉√(+呂覇&鳳凰&陳武)

 

 

 

 

 

 

 

 

オレ達、冀州黄巾党討伐連合軍は自然に解体し、孫龗義勇軍の大将であったオレは今は陶謙が治める徐州の新たな刺史に任命されていた。後漢時期の刺史は、州の中に治所を持ち、治所の周辺の地域の行政権を完全に握れる。それにより、徐州の行政権を完全に掌握し、安定した土地を得た我ら孫龗義勇軍は徐州孫龗軍となったのだった。黄巾党本隊がいた冀州から一旦、孫龗義勇軍の本拠地としていた荊州にある邑からその任命地である徐州へと移動。その道中で新たな体制を確立しようとしていた。

 

 

 

龍蓮

 

「治所はやっぱり下邳国にしよう。で、東海郡は・・・桃香でいいか?」

 

 

朱里

 

「はい・・・あ、ですが、きちんと補佐出来る人も付けてあげてください。」

 

 

 

その朱里の言葉に桃香は「大丈夫だよぅ」と、反論する。が、誰にも相手にされなかった。しかもそれに追い打ちをかけるようにして義妹である愛紗にも、しっかりしてください、と軽い説教をされていた。

 

 

 

龍蓮

 

「それじゃあ、彭城国は嵐。琅邪国は朱里に任せるとしよう。」

 

 

嵐&朱里

 

「御意。」「はいっ!」

 

 

龍蓮

 

「そして残るは広陵だけだが・・・」

 

 

 

「はいはーい。」

 

 

龍蓮

 

「風?・・・何か意見か?言ってみろ。」

 

 

 

珍しく風が目を覚ましており(とは言っても目は半開きの寝惚け眼だが)、自ら挙手した。

 

 

 

 

「ではー。んーこほん。龍蓮様自ら収めてはどうでしょうか?」

 

 

郭嘉

 

「ちょっと風!?」

 

 

龍蓮

 

「まぁまぁ奉孝。風が自分から意見するなんて珍しいんだから、最後まで聞こうよ。」

 

 

郭嘉

 

「はぁ。・・・分かりました。」

 

 

龍蓮

 

「続けて。」

 

 

 

「はいー。まず一つは下邳国は大変栄えた都市ですが、人口が東海郡よりも少ないんですよねー。二つ目としてはー、龍蓮様のお母様、孫堅様の出身地である呉郡に隣接することから比較的安定した統治ができるかとー。もしかしたら人が流れて来てしまうかもしれませんがー。」

 

 

 

その風の言った考えに一理あるな、と皆が納得していた。

 

 

 

 

「まぁ、これと言った任せるに足りる人物がいないというのもありますがー。」

 

 

 

ズバッと言った。現実を一刀両断した。サァーっと、風が舞った。そして誰かが呟いた。「風が騒がしいな」と。

 

 

 

龍蓮

 

「誰だっ!?」

 

 

??

 

「孫龗軍忍隊・忍頭の陳武にございます。いつもは部下の上忍である凌統に任せている定時報告ですが、彼女は今、貴方様の命により皇帝陛下治める洛陽の地にて諜報活動に準じております故に私めが。」

 

 

 

ヌルッと影のようなモノからスルっと出てきて姿を現した。

 

 

 

龍蓮

 

「陳武か・・・なんだ?」

 

 

陳武

 

「はい。洛陽にいる凌統からの報告によりますと、并州刺史董卓が霊帝の崩御後、洛陽にて諸悪の根源である十常侍を殲滅し善政を敷いているとのこと。しかし十常侍の内、張讓、趙忠を討ち漏らしたらしく彼らは冀州の雄、4代に渡って三公を輩出した名門汝南袁氏の袁紹の下へと逃走したとのこと。」

 

 

 

その報告に一同が静まり返る。

 

 

 

龍蓮

 

「星っ!」

 

 

 

「はっ。」

 

 

龍蓮

 

「幽州の公孫賛の下に行き、洛陽の現状を伝えてくれ。単騎で良いか?」

 

 

 

「御意です。」

 

 

 

それだけ言うと、星は北の方角に茶色い毛並みの馬に跨り駆けていった。

 

 

 

龍蓮

 

「紅龍は荊州、豫州、兗州に行って縁のある義勇軍や邑を回わりなるべく多くの兵を集めてきてくれ。但し、各領主には名目上、黄巾賊残党の排除を目的としておけ。」

 

 

紅龍

 

「御意ですっ義兄上!」

 

 

 

紅龍は来た道を引き返すようにして走り去っていった。

 

 

 

龍蓮

 

「陳武。」

 

 

陳武

 

「ここに。」

 

 

龍蓮

 

「お前は涼州連合の首領、馬騰に会って話をつけてこい。」

 

 

陳武

 

「必ずや。」

 

 

 

それだけの会話で陳武はボヤァっと現れた影の中にヌルッと呑み込まれたかと思うと既に姿は見えなくなっていた。

 

 

 

龍蓮

 

「奉孝。」

 

 

郭嘉

 

「は、なんでしょう。」

 

 

龍蓮

 

「確か奉孝はまだオレの臣下になった訳ではなかったよな?」

 

 

郭嘉

 

「な、何だか、すみません・・・。」

 

 

 

奉孝はその言葉に申し訳なさそうな態度をとった。

 

 

 

龍蓮

 

「あ、いや。別にそういうんじゃなくてだな。まだ自分の主を決めかねているのであれば見てきて貰いたい人がいるんだ。」

 

 

郭嘉

 

「その人物とは?」

 

 

龍蓮

 

「あぁ。」

 

 

 

ひとつ呼吸を置いた。

 

 

 

龍蓮

 

「孫仲謀。オレの愛すべき妹だよ。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

―孫呉に降り立つ者―典韋&鳳統&程昱√(+陳武)

 

 

 

 

 

 

 

 

それから暫くの時が経過した頃の話である。

 

オレ達は無事に徐州へとたどり着いていた。そのまま徐州刺史の証しである印を前任の陶謙殿から譲り受け、東海郡に桃香、琅邪国に朱里、彭城国に呂覇が太守として赴いた。オレが自ら治める下邳国と広陵郡の行政や軍事を合併させた新しい下邳国では前統治者の陶謙殿の善政が良く浸透していて大きな改革などを行う必要には迫られなかった分、逆に急激な支持率上昇なども見られなかった。

 

 

 

雛里

 

「・・・え、えと、東海郡太守の桃香さんからの報告によりましゅと、配下に臧戒と臧霸という名の親子と、麋竺と麋芳という名の姉妹を入れたこと以外は大きな変化はないとのことでし。・・・あわわ~」

 

 

 

徐州に入ってからは朱里と雛里が別れて行動することも多くなってきた。そして兄の紅龍は現在、義勇兵の徴集に奔走しているため雛里の「あわわ」にフォローを入れてくれる者は誰一人としていなかった。

 

 

 

龍蓮

 

「流石は人たらしの桃香だな。手が早い。・・・次、風。」

 

 

 

「はーい。えとですねー。琅邪国を任せてる朱里ちゃんからの報告ですがー、他家に仕えていない諸葛家一族郎党を召し仕えたいそうなのですよいのでしょーかー・・・という報告ですがー?」

 

 

龍蓮

 

「・・・あぁ、そう言えば朱里の地元が陽都県だったっけか。少し不味ったかな・・・まぁいいや。朱里には、承知した、という内容の文を送っておいて。」

 

 

 

この時代では役人を自分の出身地に配属するということは基本的にないはずである。

 

 

 

 

「了解ですー。・・・で、彭城国を治める嵐さんからは・・・至極平穏無事何ら変わりはない・・・だ、そうです。」

 

 

龍蓮

 

「了解。さて・・・」

 

 

 

次の議題に移ろうかと、話を変えようとした時だった。オレの右斜め後ろ辺りで急に影が地面に出てきてそれと同時に人影と気配が現れた。

 

 

 

陳武

 

「孫龗様、報告を持ってまいりました。」

 

 

龍蓮

 

「陳武か。ということは・・・」

 

 

陳武

 

「はい。間も無く諸侯に袁紹からの檄文が届く頃合かと。」

 

 

 

その報告に軍議の場にいた皆は、とうとう来たか・・・という表情になる。

 

 

 

龍蓮

 

「で、西涼の馬騰はどうなった?」

 

 

陳武

 

「はい。とても良い返事を頂きました。諸侯が徒党を組み、洛陽に迫るようでしたら涼州連合は兵を動かし洛陽の防衛に徹する、と。」

 

 

龍蓮

 

「よし・・・陳武よくやった。これで反董卓連合が出来たとしてもこちら側はこちら側で親董卓連合を作れるな。」

 

 

陳武

 

「有り難きお言葉。・・・それから幽州の・・・こうそ、こうさ、こう、こ、・・・降参します(?)に援軍を要請している趙雲ですが、暫くあちらに留まり烏桓に一撃を与えてから洛陽に参るとの報告でした。」

 

 

龍蓮

 

「了解。あとは陳武、この城に残って待機していろ。もしかしたら将としても今回の戦、出てもらうかもしれないからな。」

 

 

陳武

 

「御意に。」

 

 

 

陳武はそう返事をすると、また影のようにその場から一瞬にして消え失せた。

 

 

 

龍蓮

 

「風。」

 

 

 

「はいー。」

 

 

龍蓮

 

「桃香達、太守にこのことを連絡。軍の調整には雛里も手伝って二人で迅速に。」

 

 

風&雛里

 

「「御意です。」」

 

 

龍蓮

 

「琉流。」

 

 

琉流

 

「はいっ!」

 

 

龍蓮

 

「琉流は降参兵3000を守備兵として徐州に置いておけるだけでも良いから使えるようにしておくように。」

 

 

琉流

 

「御意です!」

 

 

 

その後すぐに軍議の解散宣言をすると、皆は与えられた仕事を迅速に行うべく慌ただしく軍議の場から駆け出していった。

 

 

 

 

 

 

 

閑話休題

 

 

 

 

 

 

一方その頃、龍蓮の地元、孫呉の地では袁紹から届いた反董卓連合への加入要請という檄文が届いており孫呉のいつもの騒がしさとは別の騒がしさに一時包まれていた・・・。

 

 

 

雪蓮

 

「袁紹からの檄文?」

 

 

冥琳

 

「えぇ。どうやら袁紹は洛陽に駐屯し権力を得た田舎者の董卓に嫉妬しているみたいだな。」

 

 

 

「どうやらー有名どころの諸侯には片っ端から声をかけているようですねー。」

 

 

 

穏の発言に孫権・・・蓮華が「例えば?」と尋ねる。

 

 

 

 

「えーっとですねー・・・北方の雄、公孫賛さんに、中央から距離を置きながらも着々と勢力を延ばしつつある曹操さん。それから涼州連合の馬騰さんや、喬瑁さんに張貌さんといった太守たちにも声かけているようですねー。」

 

 

冥琳

 

「勿論、我らが孫呉の王子にして徐州刺史の龍蓮様にも声が掛かっている。そして袁紹の檄文を受け取った諸侯はほぼ全て袁紹に応じ反董卓連合に名を連ねることになるだろう。余程の事情があるか、もしくは全く持って野心がない限りかの2つを除いて、な。」

 

 

 

「ならばもちろん我らも行くのじゃろ?」

 

 

雪蓮

 

「そうしたいのは山々なんだけど・・・袁術がねぇ。」

 

 

 

現在の孫策軍は、先代孫堅の死後、4代に渡って三公を輩出している名門の袁家の庇護を受けるという名目で事実上の汝南袁氏である袁術の傘下に加えられてしまっている状態だ。故に孫呉としては癪なのだが彼女からの許可や命令がないと軍を動かすことができないのである。

 

 

 

雪蓮

 

「しょうがない。袁術と話を付けに行くとしますか。」

 

 

 

それから袁術の治める建業に赴いた雪蓮は、これから十中八九あるだろう我侭袁術との会談に頭が痛くなっていた。

 

 

 

美羽

 

「檄文?ふむ・・・では見て進ぜよう。ええと・・・董卓は許せないので、皆さん、やっておしまいー・・・とな?」

 

 

雪蓮

 

「そうよ。で、これには多くの諸侯が参加すると思うわ。ということは徐州刺史のリュウも当然来る訳よ?あなたもリュウに会いたいのならやっぱり参加するべきじゃないかしら。」

 

 

未那

 

「これはもう参加すべきです!」

 

 

美羽&七乃

 

「そうじゃな!」「ですねぇ。」

 

 

未那

 

「ではでは、お義姉さんのご同行も許しちゃいましょう。本妻としての器量です。」

 

 

 

こうしてなし崩し的に孫策軍は反董卓連合の舞台に立てることになったのであった。

 

 

 

雪蓮

 

「(意外とあっさり簡単に話が付いたわね・・・。)」

 

 

 

この後、帰り道の道中で呉郡出身者10名の護衛を連れた郭嘉とバッタリ出くわし、そのまま蓮華付きの軍師になるというイベントを交えながら、袁術・孫策陣営は反董卓連合軍合流地点へと出立した・・・。

 

 

 

 


▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。

評価する
※目安 0:10の真逆 5:普通 10:(このサイトで)これ以上素晴らしい作品とは出会えない。
※評価値0,10についてはそれぞれ11個以上は投票できません。
評価する前に 評価する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。