恋姫†無双~大陸に降り立つ者~   作:新名択捉守

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プロローグ―孫呉に降り立つ者―

 

 

 

 

 

 

 

 

 

時は現代西暦20XX年から約1800年前も過去の話。しかし、世界の異なる過去の話だが・・・。そんな場所に飛ばされている1人の少年。いや、飛ばされているというよりは派遣というべきか?それが彼の仕事なのだから。

 

 

 

彼の名は、姓は孫(そん)。名は龗(りょう)。字が仲然(ちゅうぜん)で、真名が龍蓮(りゅうれん)。

 

 

 

この名を持つ歴史上の人物などは存在しない。しかし、彼は歴とした江東の虎・孫文台の息子なのである。そして姉には江東の小覇王・孫伯符が、双子の妹には孫仲謀が、そして年の離れた妹には孫尚香がいる。

 

 

 

そして、これはそんな孫仲然が亡き孫文台の望みを叶えるために姉妹と仲間達と天下平定を成す軌跡を描いた物語・・・

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

―孫呉に降り立つ者―孫策&周瑜&諸葛瑾√

 

 

 

 

 

 

 

 

 

冥琳

 

「それでは申し訳ないが、よろしく頼む。」

 

 

 

と、孫呉に仕える筆頭軍師・周瑜こと冥琳に頭を下げられる。

 

 

 

雪蓮

 

「心配ないわよ~冥琳。いいリュウ?袁術が隙を見せたらスグ!いい!?スグよ!?スグに頸を叩き切ってしまいなさい。」

 

 

龍蓮

 

「そんなこと言われても、オレは自分の得物の1つも持っていけない所詮、人質みたいな・・・いや人質なんだけど・・・」

 

 

 

今のオレの状況を説明すると、袁術の客将になった孫呉が万が一でも裏切らないための保険つまりは人質なのである。そんな真似が出来る自由を与えられる訳がない。

 

 

 

朱衣

 

「そ、そんな危険なことさせましぇん!!・・・た、たわわ、噛んじゃった。」

 

 

雪蓮

 

「冗談よ。冗談。そんなに焦らなくても良いわ、朱衣。」

 

 

 

と言う姉貴に

 

 

 

龍蓮

 

「姉貴ならやりかねない。」

 

 

冥琳

 

「今だけは雪蓮が孫家の長子で良かったとしみじみ思う。」

 

 

朱衣

 

「・・・ですね。」

 

 

 

3人からのゆっくり静かな、そして重い口撃のトリプルパンチを喰らう。

 

 

 

雪蓮

 

「うっ・・・皆のイケずぅ!!」

 

 

 

と言って城内へ去っていってしまった。全く、暫くの別れだっていうのにギャグで終わらせる気か?

 

 

 

龍蓮

 

「何か締まらない気がするけど・・・冥琳、姉貴のお守り頼んだよ。」

 

 

朱衣

 

「行ってまいりましゅ!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

―孫呉に降り立つ者―諸葛瑾&袁術&張勲&紀霊√

 

 

 

 

 

 

 

 

 

母・孫文台が劉表配下の黄祖との戦いで戦死した後に姉の孫策が引継ぎ、袁術の客将となり勢力の安定を図った孫家は、勢力拡散のためにバラバラにされてしまった。そしてオレは、名目上は袁術の御世話係として、しかし実際には人質として今は袁術が治める城に着いていた。

 

 

 

 

張勲

 

「ようこそいらっしゃいました。お嬢様の下で将軍職に付いています張勲と申します。」

 

 

龍蓮

 

「初お目見得に掛かります。孫策の弟、孫仲然です。この度は袁術様の御世話係として参りました。よろしくお願いします。」

 

 

朱衣

 

「たわわ・・・孫龗様の付き人を命じられた諸葛子瑜でしゅ。お、お世話になりましゅ!・・・(また、噛んじゃった)」

 

 

張勲

 

「クスッ・・・こちらこそ。・・・では、お嬢様の所へお連れしますので付いてきてください。」

 

 

龍蓮&朱衣

 

「「はい。」」

 

 

 

それから城内を軽く紹介されながら暫く道なりに行くと、随分と大きな広間に出た。するとそこにはチッコイ少女が1名、玉座の上でギャアギャア喚いていた。

 

 

 

袁術

 

「七乃~七乃~七乃はおらぬか~・・・・・・蜂蜜水は何処じゃ~・・・・・・妾は、蜂蜜水が飲みたいのじゃ~」

 

 

張勲

 

「はいは~い!只今お持ちしますね~」

 

 

龍蓮

 

「・・・・・・・・・(大丈夫か?コイツら)」

 

 

朱衣

 

「・・・・・・・・・(た、確かにこれなら龍蓮様でしたら暗殺など容易そうでしゅね)」

 

 

 

そんなこんなで、それから袁術と言葉を交わすまでに30分位は待たされただろう。

 

 

 

袁術

 

「それで七乃?こやつは一体何者なのじゃ?」

 

 

張勲

 

「美羽様。この方達は客将の孫策さんの弟君とその付き人ですよ。今日の朝の内に伝えておいたじゃありませんかぁ。」

 

 

袁術

 

「はて、そうじゃったかの?妾は七乃の話など一言も聞いてなかったのじゃ~」

 

 

張勲

 

「あはは・・・流石は美羽様ですね!本人を目の前にそこまでズケズケと仰られるなんて。このお調子者!大馬鹿者ぉ!」

 

 

袁術

 

「そうじゃろ!そうじゃろ?七乃もっと褒めてたも~」

 

 

龍蓮

 

「・・・・・・・・・(なんなんだ?可哀想過ぎて逆に可愛く見える!?)」

 

 

朱衣

 

「・・・・・・・・・(た、たわわ・・・前言撤回でしゅ。わ、私でも出来そうです)」

 

 

 

と、まぁ。初お目見得の時は、こんな感じ。実際、彼女らの性格は自己中心的というか唯我独尊というか我田引水というか、そんな感じだが何故か憎めないような描写をされているせいか、オレは袁術の勢力を完全に崩壊させるために動くのではなく、今の状況を少しは改善をした上で、将来的に取り込めるような形で、距離を縮めようと思った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

初お目見得の時から2週間弱が過ぎたある日のこと。オレは、いつもと同じように袁術にお勉強を教えていた。しかし、いつもと違うのは張勲が書類仕事の為、隣に居ないことだ。ついでに言うと朱衣は、個人的な勉強と称して図書室に篭っている。しかし・・・

 

 

 

袁術

 

「仲然~蜂蜜水はまだかの~七乃~七乃はおらぬか~もう妾は無理じゃ~助けてたも~」

 

 

龍蓮

 

「えーっと順番に答えていくと、蜂蜜水は今日の分を飲みきっちゃったから無理。張勲さんも珍しく仕事中だから無理。公路は偉いからまだ頑張れる。助けてくれそうなのは張勲さんだけど張勲さんはさっきも言ったように仕事中だしそれに手が空いていても『お勉強が嫌で涙目になっているお嬢様も可愛いですぅ』みたいになってると思うから結局、全部無理。」

 

 

??

 

「くぅ~!!ウチの可愛いお嬢様にもバッサリ一刀両断な龗君。そこに痺れるぅ憧れるぅ!!」

 

 

龍蓮

 

「あ、あの~突然後ろから抱き着いてくるのやめてもらえませんか?紀霊さん」

 

 

 

そう、この人が紀霊さん。通称・そのベクトルを向ける人を間違えた張勲さん。いい人ではあるのだが、少々疲れる。

 

 

 

紀霊

 

「嫌ですねぇ、龗君。私のことはお姉ちゃんって呼んでくださいって言ったじゃないですかぁ♪」

 

 

龍蓮

 

「・・・聞いた覚えはありません。」

 

 

紀霊

 

「ではでは、私のことはどうぞ未那とお呼びください♪」

 

 

 

内心、溜め息をついた。

 

 

 

龍蓮

 

「それ受け取っちゃうと、どこまでも付いてきてくれそうな気がするんですけど・・・」

 

 

紀霊

 

「もちろんですよ♪龗君がいるのなら例え、火の中、水の中、草の中、森の中、土の中、雲の中、あのコのスカートの中まででも付いていきますよ?」

 

 

 

・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ 暫しの沈黙。

 

 

 

龍蓮

 

「公路。」

 

 

袁術

 

「うー何じゃ?」

 

 

龍蓮

 

「ここに離反の疑いがある人が。」

 

 

 

そう言って、まだ背中に張り付いている紀霊さんを指す。すると、グダ~っとしていた公路の表情が急に暗くなり涙を滲ませた。

 

 

 

袁術

 

「未那ぁ~お主、妾のことが嫌いになったのかえ?・・・うっうぅ~」

 

 

 

あ、やりすぎた?

 

 

 

袁術

 

「仲然?お主は、妾のことが嫌いになったりはせんじゃろうの?」

 

 

 

涙目に上目遣い。いくらアホの子だとはいえ、外見は幼いとはいえAA+だろう。・・・普通に可愛い。ギューってしたいくらいには。

 

 

 

龍蓮

 

「そうだね~・・・じゃあ、まず。民に好かれることをしていこうか。」

 

 

 

その答えにポカンとしている公路。

 

 

 

龍蓮

 

「とりあえず、税の引き下げ。その次に国を挙げての田畑の開墾。それに伴う失業率の緩和。街の風紀を取り締まる警備隊の設立。あとは・・・明らかに酷すぎる賄賂をやる文官の解雇。さぁさぁこれくらいは、パパっとやっちゃって早く遊ぼ?」

 

 

袁術

 

「で、でも税を引き下げると蜂蜜水を飲めなくなるんじゃないのかえ?」

 

 

龍蓮

 

「大丈夫だよ。今は、5の民から10を取り上げているけど、良い政をしたら民が集まる。そうすると20の民から15をもらう。そしたら民の負担は減って公路は好かれる。そして公路の蜂蜜水は増える。良いことだらけじゃないかな?」

 

 

袁術

 

「??妾には、政はわからぬ。・・・じゃが良いことなのは分かった。仲然、好きにすると良い。」

 

 

紀霊

 

「お、お嬢様?流石にそれは・・・」

 

 

 

そりゃあそうだ。一体どこに人質に政を一任する奴がいる・・・。

 

 

 

袁術

 

「ん?どうかしたかえ?」

 

 

龍蓮

 

「オレは別に良いんだけど。袁家の家臣が黙ってないと思うよ?」

 

 

袁術

 

「何でじゃ?妾の言うことが聞けない奴しかおらんのかえ?」

 

 

龍蓮

 

「違うよ。公路とオレは家族でもなく、ましてや元々の配下でもなかったのに行き成り皆の上に立ったら怒られるだろ?」

 

 

 

それから暫く公路は『う~う~』と唸っていたが、急に表情が明るくなったかと思えばトンデモ爆弾を投下した。

 

 

 

袁術

 

「そうじゃ!仲然と妾が家族になればいいのじゃ!」

 

 

 

何とも単純な頭に、どうしたものかとオレは頭を悩ませる。そして、背中にいる紀霊さん・・・紀霊も同じようだ。

 

 

 

紀霊

 

「お嬢様!ダメです!」

 

 

袁術

 

「へ?名案じゃと思うたのに。」

 

 

 

そうだ、理解をさせることはできなくとも納得させてやれ。

 

 

 

紀霊

 

「私がお嫁さんになるんですから!!!」

 

 

 

・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ もう知らない。

 

 

 

袁術

 

「だから、仲然が妾の兄となれば良かろう?」

 

 

紀霊

 

「!?そうですね・・・それは気付きませんでした。流石、美羽様ですね。臣下である私の女としての幸せを第一と考え、ご自分が多大なる我慢をしそれでも尚、龗君の隣を開けておいて下さるなんて・・・!!」

 

 

 

ツッコミを入れるのを戸惑うくらいの甚だし過ぎる勘違い。悪いけど、0秒間の脳内会議の結果、流すことに決まった。いや、既に確定事項であった。

 

 

 

龍蓮

 

「分かった。今日からオレが公路の兄貴な?」

 

 

袁術

 

「妾の真名は、美羽じゃ。これからはそう呼ぶと良い。お義兄様。」

 


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