フォールアウト×ハンター   作:るいるい

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短いですが投稿。

誤字脱字はきっとありますがご了承ください。

また、見直して編集する可能性在りますので、悪しからず。


異邦人4

 駆け出す。ドッグミートもそれに合わせてゾンビ共へ向かう。

 

 肉団子にならなかった一部のゾンビ共が俺目がけて集まってくる。ベネリ(ショットガン)とシシケバブ(小さい火炎放射機構を付けた刀剣)を持ちかえながら蹴散らしていく。

 

 肉の腐敗臭とその肉が焦げる匂いで完全に鼻は死んだ。ただ俺よりもきっとドッグミートはもっと苦しいだろうに、ゾンビ共の足元を縦横無尽に駆け回り翻弄している。

 

 火炎放射機を使ってもいいが、燃料のストックはあまりないので使わない。ちなみにシシケバブは火炎放射機構が付いているが特に燃料の補給は必要ないようだ。確立で時に切った相手を燃やす事が出来る。

 

 シシケバブの扱いにも慣れてきた。刀剣類のモーションのMODも追加していたので片手でブンブン振りまわす動作ではなく、きちんと切る動作を身体が覚えているのは凄まじく助かっている。銃器にも言える事で、現実の世界でなんて撃ったこともないし、刀を振ったこともないのだ。

 

 上段から両断、胴切り、首切り、突き。

 

 バリエーションを変えて試し切りを行う。ドッグミートは上手く自分の死角から迫るゾンビに対処してくれる。

 

 わん! とドッグミートが吠えた。

 

 肉団子が動き出している。その丸々とした姿が変貌して行く。巨大な手足が生えは始め、中心部分は胴体となり最後に頭が盛り上がってくる。

 

 凡そこの世のモノとは思えない怪物。某風の谷に出て来る腐った巨人を百倍グロテスクにした感じだ。

 

 死体を継接ぎした巨人。高さはマンションの2~3階位だろうか。身体の所々から得体の知れない汁が滴る。

 

 両目があるはずの窪みには代わりに青い火が爛々と灯っていた。

 

「ヴァァアアアアアアアアアアアア!」

 

 両足では自重を支えられないのか四足歩行。開いた口の中に歯はない、その変わりなのか、折れた骨が剣山かと思うほどにびっしり生えている。

 

 「あんなもんに噛まれたらひとたまりもないぞ」

 

 ベネリ(ショットガン)を試しに数発撃ち込んで見るが嫌がる素ぶりするだけで効いている様には見ない。

 

 そんな腐った巨人の姿勢が低くなる。その青い火の目が俺を射抜いた。

 

 「くそ!」

 

 次の瞬間その巨体が俺目がけ突進。俺は紙一重で右方向に全力で走り飛ぶ。

 

 腐った巨人は俺が先ほどまでいた場所に顔面から突っ込んだ。どうやらあの口で俺を美味しく咀嚼するつもりだったらしい。

 

 意外にも素早く体勢を立て直して、左手を振り上げて俺を潰さんと叩きつけてくる。予備動作がデカい分避けやすいが当たれば確実にやられる。奴の攻撃範囲外まで距離を離すが距離を取るとまた頭から突っ込んできて食べようとしてくる。しかも、他の雑魚ゾンビがわらわらと群がって来て嫌らしい位置で俺を出迎える。

 

 どうする。身体を削り切るには手間と弾薬が厳しい。正直脳裏にはアレが浮かぶ。確かに一撃必殺だろうが今手元にない上にあまり弾を持って来てないのだ。

 

 しかも、安易に使っていいものかとも思う。まずこの距離では自分にも被害が及ぶ可能性があり。自然環境への配慮。ゲームマスターに何かしら感づかれる可能性。

 

 今後、使用せざる負えない場面は必ず来ると考えれば、最終手段として温存しておきたい所。リスクも考えれば尚更今ではない。それよりもきっとこの手のモンスターなら弱点が設定されているはずだ。

 

 青い火の玉にゾンビ達が群がって出来上がった事を考えれば必然的に、それが核であることは自然だ。その青い火の玉と同じ青い火の目が無関係なはずがない。

 

 鉛玉程度では効きにくい、近接攻撃も当てにくい。ならばこれだ。

 

 M79 グレネードランチャー

 

 中折れ式で、装弾数は1発。銃身中央にある折りたたみ式の照門は、銃口の照星と合わせて照準して狙える距離を調整出来る。重さは3キロ程だろうか。

 

 じっくりと狙い撃つ必要はない。的は大きい。腐った巨人の頭部より高めを狙ってトリガーを引く。弾はポンと軽い音を響かせた。敵もこちらの動きを察知して更に前傾姿勢となり、頭部を掠め背中に着弾。数秒後爆発。

 

 肉片が飛んでくる。後方に下がりながらリロード。銃身についているつまみをスライドさせて、銃身を中折れさせて手動で排莢。薬莢の熱さなど気にしていられない。

 

 左手に一発次弾を出現させて込める。

 

 「次は外さん」

 

 V.A.T.S.と心の中で呟く。

 

 V.A.T.S. (Vault-Tec Assisted Targeting System) は Vault-Tec社によって開発されたpip-boyの戦闘支援システム

 

 世界が変わる。停止はしていなが全ての動きが極めて緩慢になる。ただ、己の意識だけが通常の速さを保っていた。敵を見れば、頭部・胴体・両手・両足に命中率が表示されている。撃対象の体の部位に表示されている数値は命中率を表し、装備している武器の性能や敵との距離、遮蔽物等の地形によって命中率は変動する。

 

 狙うは頭部。緩慢な時の世界、トリガーを引くと同時に通常の世界に引き戻される。発射された榴弾が飛びかかろうとした奴の青い火の左目に吸い込まれて行く。痛みでもあるのか、動きが一瞬止まり、奴が俺を見た時、頭部の左側が盛大に吹き飛ばされた。

 

 醜悪な叫び。肉は削げ散り、残った肉も剥がれ落ちかけている。

 

 割れた頭部からは青い火が燃る。

 

 まだ、終わっていない。素早くリロード。突っ伏した奴を狙い撃つ。

 

 「ちっ!」

 

 肉の壁。奴の前に数体のゾンビ共が滑り込んで爆散。他のゾンビも盾となる様に俺の前に立ちふさがる。

 

 「いいだろう。まとめて吹き飛ばしてやる!V.A.T.S.!」

 

 世界が全てがスローモーションとなる。

 

 視界内にいる標的全てに命中率が脳裏に映った。余りの数に眩暈に似たぐらつきを感じるが、歯を食いしばり無視する。ゲーム内であれば、AP(アクションポイント)分だけ狙いを付けて連続で複数の敵を攻撃出来る。

 

 しかし、今APゲージはない。では何を消費しているのか。勿論オーラであろうかと思う。このスローモーションになっている状態を維持していること自体が身体の何かを消費していると感じる。

 

 壁となっているゾンビに何発か狙いを付けて、トリガーを引く。

 

 今まで遅くなっていた時が待っていたとばかりに動き出す。直後、狙いを付けた敵の箇所へ正確に自動で榴弾を撃ち込んでゆく。

 

 「くっ。はぁはぁ」

 

 身体が重い。V.A.T.S.は負荷が高いか。しかしもう一歩。疲労が貯まった身体を筋肉を叱咤して奔る。

 

 腐った肉の壁に穴が開く。欠けてもまだもぞもぞと動く死体共を踏みつぶし元凶へ。

 

 最早、致命傷ではあったのだろう、先ほどまでの様な動きは出来ず、目の青い火も小さくなっている。しかし、それでも、生者への恨みからか俺の動きに合わせて噛み付いてくる。

 

 口。

 

 博物館で見た、古代に居たとされる巨大な鮫の巨大な顎の様に巨大で俺をすっぽりと収められるだろう。

 

 俺はそのままその中へ飛び込んでゆく。口腔内は剣山の様に折れた骨がびっしりと生えていた。食い込む骨。足・腕・背中・脇腹に痛みが現れる。

 

 「V.A.T.S.」

 

 加速する思考。ある一転に命中率100%と表示される。手には燃え盛るシシケバブ。

 

 「もう、消えろ!」

 

 この突きに全身全霊を、全力で自身のオーラをシシケバブに乗せるイメージを。更にシシケバブの炎が燃え盛る。その熱気が自分の肌を焦がすのが分かる。

 

「うおおおおおおおおおおお!」

 

 時が動き出す。肉に白い刃が侵入してくる。身体の至る所から発せられる痛みに耐え、その一点へ赤く燃える刀身を滑り込ませる。殆ど抵抗なく何かを砕く感触がした。

 

 一瞬の間。

 

 頭部に出来た傷口から血が流れ来て視界の半分が赤く染まる。

 

 先ほどまでの緊張を打ち破るが如く、ぽんっと軽い音と共に腐った巨人が煙となりカードが1枚落ちてくる。

 

 辺りのゾンビも動きを止めてカード化してゆく。シシケバブを支えにして膝をつく。

 

 「くそ、痛いし、疲れたぞ」

 

 ワン!とドッグミートが駆け寄ってくる。ドッグミートも敵の腐った血で全身汚れている。しかし、至って元気そうで良かった。

 

 一気に疲れが押し寄せて俺は気を失った。

 

 

 


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