イレギュラーは家族と共に 〜ハイスクールD×D'sバタフライエフェクト~   作:シャルルヤ·ハプティズム

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第89話 静かな開戦

 

クルルside

 

 

 

転移が封じられたせいで走っていった八幡達を見送りながら、私は連絡用の魔法陣を展開する。

 

クルル「······無茶苦茶な妨害術式ね······」

 

最近毎度のように妨害を受けているが、この程度なら術式解体に時間は掛からない。

 

妨害の術式を片っ端から解体していく。連絡用の魔法陣にも妨害も受けているが、全て解体する。

 

結構な数があったが、一つ一つは大して複雑でもないため、2分ほどで全て解体出来た。

 

改めて連絡用の魔法陣を展開し、クロウと連絡を取る。

 

 

クルル『······クロウ、聞こえる? こちらクルル』

 

一瞬間を置いて、クロウから返答される。尚、何処で聞かれているか分からないため、連絡用の魔法陣以外にも『光矢伝達(ブロードキャスト)』と、魔法陣の不可視化の術式を複合使用している。

 

クロウ『······クロウだ。聞こえている。事態は把握した。こちらでもツェペシュの城に張られた結界を確認した』

 

敵は近くに来ないと見えないとか、認知阻害と言った類の術式は用いていないらしい。それが偶然なのか態となのかは私には分からないが······

クルル『なら良かったわ。八幡はギャスパーと黒歌を連れて、ヴァレリーと聖杯の奪還に向かったわ。そっちはこっちに来れる?』

 

クロウ『可能だ。今から────む?』

 

今から向かう、と言おうとしたクロウが途中で言葉を切った。

 

クルル『どうかしたの?』

 

クロウ『······すまないクルル。こちらの動向が予測されていたらしい』

 

ということは······クロウやヴァーリ達はすぐにはこっちに来るのは無理ね。

 

クロウ『吸血鬼と、リゼヴィム・リヴァン・ルシファーに賛同と思われる悪魔が多数。すぐには向かえない······最悪ヴァーリだけでもそちらに向かわせるつもりだ』

 

クルル『······十分よ。気を付けて』

 

クロウ『······了解』

 

 

そこで連絡を切る。その時、廊下の向こうから何者かが歩いて来るのに気付いた。

 

クルル「······誰だ」

 

ローブを羽織り、白いフードを深く被っているため顔は見えない。が、少なくとも味方ではないことは雰囲気からすぐに察することは出来た。

 

「······久しぶりだな。クルル・ゼクスタ」

 

クルル「······!!」

 

ゼクスタ······私の名がツェペシになる前の旧姓だ。だが、私がそれを知ったのはルシフェル様の意識体を八幡が感知出来たからだ。私はゼクスタを名乗ったことはない。

 

······いや、一人いた。可能性ではあるが、知っている者が。

 

クルル「······四鎌童子(しかまどうじ)!!」

 

私はいつの間にか握り締めていた、義兄さんが宿る黒塗りで翠に輝く刀───『阿朱羅丸(あしゅらまる)』を手に臨戦態勢に入っていた。

 

四鎌童子「······漸く思い出したようだな。さぁ······殺してやろう」

 

奴はフードを取り、右手に聖剣と思しき物を亜空間から取り出した。奴の長い金髪は以前とは違い、黒髪のメッシュが入っていた。

 

手にしている聖剣からは、攻撃的なオーラが漏れ出している。

 

 

······ここで暴れれば、下にいるであろうヴァレリーに多大な影響を与える可能性がある。この場にいたら最小限に力を抑えないといけないわね······

 

 

一つ息を吐いた後、刀を右手に持って素早く振る。壁の一部をバラバラに斬って外に飛び出す。

 

クルル「······来てみなさいよ。私を殺したいのでしょう?」

 

四鎌童子「貴様·····!!」

 

挑発して、外に誘き出す。結局、外で戦うことにした。どの道奴は元熾天使(セラフ)。奴くらいの力なら、戦闘の際に周りにそれなりに影響を与えることは覚悟しなければならない。

 

遠目で、町の外れの方で魔力などが飛び交っているのが見えた。おそらく、ヴァーリやクロウ達だろう。こちら側はここの住民を巻き込む可能性のある技を使うわけにはいかない。結構不便ね。

 

 

 

私が壁に開けた穴から魔法を使って飛び出してすぐに、奴は羽を広げて外に出て来た。

 

羽が······3対? 堕天していたアザゼルとシェムハザも含め、熾天使は『聖書の神』の死後、システム調整の際の不具合で羽が6対になった筈だけど······

 

 

まぁ、今それを気にしても仕方ない。目の前の敵に集中するとしよう。

 

 

八幡達と合流するのは諦めるしかないわね······

 

 

 

 

私は刀を構え、奴の攻撃に備えた。

 

 

 

クルルsideout

 

 

 

 

 

 

 

 

ギャスパーside

 

 

 

お母様と分かれた僕とお父様と黒歌さんは、地下に向かって駆けていた。

 

黒歌「······ギャスパー、ここの城での儀式は、主に地下の祭儀場で行われるのよね?」

 

足は止めずに、黒歌さんが訊いてくる。

 

ギャスパー「······うん。トリスト・ヴラディもそのように言ってたし、昨日何かあった時のために、って警備兵からくすねておいた城の見取り図にもそこ以外で大きな儀式が出来そうな場所がなかったから間違いない筈だよ」

 

顔だけ向けて答える。

 

八幡「お前そんなことまでしてたのか······いや、まぁ神器(セイクリッド・ギア)の反応は確かにそこからだと思うが······」

 

ギャスパー「だって」

 

黒歌「なるほどねぇ···」

 

 

 

 

 

僕は見取り図を頼りに右へ左へ曲がりながら進んでいく。この城はそれなりに入り組んでいるため、見取り図がないと地下に辿り着くのは難しいだろう。

 

床をぶち抜いて地下に行く手もなくはないが······

 

地下に向かう階段を見付けたので、そこを駆け下りて行く。階段を駆け下りている最中に、何度か吸血鬼から襲撃を受けたが、特に大したこともなかったため軽く吹き飛ばしておいた。

 

地下への階段を暫く降り続けていると、開けた空間に出た。天井の照明で奥まで様子を見ることが出来たが、鎧を纏った200人以上の吸血鬼が待ち構えていた。

 

八幡「チッ······面倒だな」

 

お父様が舌打ちしながら愚痴を漏らす。そう言いつつも、手には3メートル以上ある大刀────『塵外刀(じんがいとう)真打(しんうち)』を亜空間から取り出していた。つまり、吹き飛ばす気満々だということだ。

 

お父様が一歩前に出て口を開く。

 

八幡「······俺達の邪魔をしないならば、攻撃はしない。さてどうする?」

 

お父様が手に持つ大刀が超高速で振動を始めた。『型式・蟋蟀(こおろぎ)』だろう。一振りするだけで破壊力抜群の高周波を塊として放つことが出来る。お父様なら、一振りで山脈を丸ごと消し飛ばすことも簡単に出来るだろう。しないと思うが。

 

お父様の問い掛けに対して吸血鬼達の反応は───手に持つ獲物をこちらに向けることだった。

 

八幡「······そうか。なら仕方ないか」

 

ギャスパー「······どうします? 僕がやりますか?」

 

お父様に訊いてみる。

 

八幡「いや、俺がやる。ギャスパーは出来るだけ力を温存しとけ」

 

ギャスパー「分かりました」

 

控えるよう言われたので、大人しく退る。

 

 

お父様がキィィィンと高音を発し続ける大刀を構える。そして、大刀を横に薙いだ。

 

次の瞬間、ギャリィィィン!!!というとてつもない轟音と共に高周波の塊が放たれ、200人以上の吸血鬼達を一度で消し飛ばした。建造物への損害が思ったより軽微であることを考えると、限界まで力を抑えたのだろう。

 

黒歌「······うわ。これでも限界まで抑えたんだよねぇ······」

 

あれだけいた吸血鬼達は完全に消し飛んでいて、広大な空間は綺麗になっていた。高周波で、肉眼では分からないほど細かく粉砕されたのだろう。相変わらず恐ろしい刀だ······

 

 

 

 

先ほどの空間から更に地下に向かう階段を駆け下りている僕達は、次の階層から負のオーラが流れてくるのを感じた。

 

黒歌「······ねぇギャスパー。このオーラは······」

 

ギャスパー「······うん。クロウさんと似てる。邪龍のオーラだよ」

 

邪魔は、その殆どが滅されており、クロウさんのように生き残っている者は極僅かだ。この強さのオーラなら、既に討伐された筈だろうが······

 

 

······まさか、これもヴァレリーの聖杯を使ったのか?

 

八幡「······ギャスパー、お前の予想通りだ。邪龍のオーラに僅かに神器のオーラが混じってやがる。こんなことは聖杯じゃないと出来ん」

 

お父様は苦虫を噛み潰したような顔で言う。

 

ギャスパー「やっぱり······」

 

聖杯の乱用がここまでだとは······相当無茶苦茶な乱用だ。邪龍を蘇らせるなんて······

 

 

 

僕達が次の階層に辿り着くと、そこには黒い鱗に銀の双眸をした巨大なドラゴンが佇んでいた。

 

『んぁ?······グハハハハハッ!! やっと来たのかよ、待ちくたびれたぜ』

 

黒いドラゴンの哄笑が空間内によく響く。

 

初めて見るドラゴンだ······相当昔に滅ぼされたのだろうか?

 

八幡「······こいつがグレンデルか······なるほど。クロウの言ってた通りイカレてるな」

 

と、お父様がドラゴンを見ながら言った。

 

こいつが『大罪の暴龍(クライム・フォース・ドラゴン)』グレンデル······!! デンマークの伝承に登場するドラゴンで、ベオウルフに滅ぼされたと言われていたドラゴンだ。まさか『クリフォト』が蘇らせるとは······!!

 

グレンデル『······ああ、てめぇが『堕天魔』とか言うのか? 少し俺と遊んでくれよっ!!』

 

戦いに身を狂わすほど興じるタイプか。この類の手合いは腕を捥ぐくらいじゃ全然戦意を失わないから厄介なんだよなぁ······

 

そこで、お父様が僕と黒歌さんに言った。

 

八幡「ギャスパー、黒歌。お前ら先に行け。取り敢えず、ここは俺がやろう。まぁすぐに滅ぼして追いつくから安心しろ」

 

お父様は、空いている左手にエクスカリバーを亜空間から取り出しながら言う。

 

ギャスパー「······いいんですか?」

 

黒歌「邪龍は面倒なんでしょ?」

 

僕と黒歌さんがそう言うが──

 

八幡「逆だ逆。こいつらの生命線は聖杯だ。早いとこ押さえないと俺達が手を付けられなくなる」

 

ギャスパー「ああ······」

 

黒歌「それもそうにゃ······」

 

お父様の言うことの方が正しい気がしたので、何も言えなくなった。

 

ギャスパー「······じゃあ······先に行きます!! お父様も気を付けて下さい」

 

黒歌「······そっちも頑張ってにゃ」

 

僕と黒歌さんはグレンデルの横を駆け抜けていく。グレンデルは僕達のことなど眼中に無いのか、お父様から視線を外さなかった。

 

八幡「······ああ、お前らもな。

 

────さて、俺もやるか」

 

 

 

僕達は、お父様にこの場を任せて更に先へ進んだ。

 

 

 

ギャスパーsideout

 

 




ギャスパー、黒歌
(ツェペシュ城の地下祭儀場へ移動中)

八幡
(ツェペシュ城地下にてグレンデルと交戦開始)

クルル
(ツェペシュ城城外にて四鎌童子と交戦中)

ヴァーリチーム、及びクロウ達混成チーム
(多数の吸血鬼と悪魔と交戦中)

混成チームメンバー

・ヴァーリ
・美猴
・アーサー
・ルフェイ
・フェンリル
・クロウ
・ジン
・シフラ
・スコル(転移が可能になり次第、ギャスパーの下へ向かう)
・ハティ(転移が可能になり次第、ギャスパーの下へ向かう)

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