イレギュラーは家族と共に 〜ハイスクールD×D'sバタフライエフェクト~   作:シャルルヤ·ハプティズム

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最近八幡視点全然書いてないな。まぁ、原作だとギャスパーメインの14巻と16巻で、ギャスパー視点に一回もならなかったからいっか。





第81話 この腕(て)の中に···

 

 

 

 

ヴァーリside

 

 

 

ヴァーリ「·······さて、何があったのか聞かせてもらおう」

 

崩壊する空間から瀕死のギャスパーと一緒にいた少女──レイヴェル・フェニックスを何とか連れ出した俺と黒歌は、冥界で、666(トライヘキサ)に目覚めてからも力を苦痛なく制限出来るようにする術を掛けていた父さんと母さんを呼んだ後、ギャスパーの治療を任せた。

 

 

空間から2人を連れて脱出してから3時間後。治療は終了し、父さんと母さんは崩壊した空間から、敵の足取りを探しに。黒歌はギャスパーに付きっきりで看病している。余った俺は、ギャスパーと一緒にいたレイヴェル・フェニックスから事情を訊くことにした。

 

 

レイヴェル「······はい。──────」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

レイヴェル・ フェニックスから聞いた話を整理すると、彼女は一昨日、冥界のフェニックス領······つまり彼女の父が治める領にある魔獣の森で、修行中の兄──ライザー・フェニックスに会いに行っていたらしい。

 

 

だが、彼女はその兄に会いに行く途中に人間に(・・・)襲われた。

 

 

その際、何らかの術を掛けられた彼女は、魔力を出せなくなり、ほぼ抵抗も出来ずに捕えられた。

 

その後のことは気絶してしまい分からないらしい。目が覚めた時は、ギャスパーが黒いローブを纏った男(僅かに聞こえた声から判断したらしい)と戦っているのが朧気に見えたという。彼女は目が覚めた時は五感が麻痺していたようで、3時間前に回復術式を施してやっと感覚が正常に働きだしたところだ。

 

 

 

 

 

レイヴェル「······あ、あの、ギャスパー様は······」

 

俺に怯えたような目を向けながらレイヴェル・フェニックスは聞いてくる。

 

ふむ。俺がそんなに怖かったのだろうか? 出来るだけ優しく話したつもりなのだが······

 

ヴァーリ「······ギャスパーなら今は治療が済んで安静がしている筈だ。かなり危なかったが何とか間に合ったのでな。現在は黒歌······ああ、俺と一緒にいた着物を着ていた女が看病しているよ」

 

ギャスパーの体からは、僅かだがフェンリルのオーラを感じ取れた。フェンリルはあの時、俺と一緒に探していた筈だが······

 

ギャスパーは昔とある神から神格の一部を引き継いでいる。フェンリルの神殺しは、ギャスパーに対しても特攻作用をもつ。さぞ苦しかっただろう。

 

ギャスパーをそんなことにした奴を······許すことは出来ない。

 

レイヴェル「そうでしたか···········よかったです······!!」

 

ヴァーリ「······? 何故泣く?」

 

見ると、彼女は涙を流していた。

 

レイヴェル「ッ!!·······い、いえ、ただ······こうして自分が助けていただいたのに、ギャスパー様があんなに傷付くことはなかったのに······」

 

ヴァーリ「······それは違うね」

 

レイヴェル「······え?」

 

彼女は聞き返してくる。

 

ヴァーリ「君を助けたいと思ったのは他ならぬギャスパー自身の意思だ。君がどう思うかは勝手だが、そういう考えはやめてもらいたい。ギャスパーがしたくてやったことだ。

傷付くことはなかったのに······まぁそう思う気持ちもよく分かるが、それはあくまでギャスパーが君を見捨てられなかっただけのことだ。気にするなとは言わないが、思い詰められるとギャスパーのしたことが無駄に思えてならない」

 

レイヴェル「······分かりました。大変失礼致しました」

 

 

ギャスパーは下心などそんなものなしで助けたに違いない。敵に対しては父さん以上に冷徹になることもあるが、根の優しい部分が変わることはないだろう。

 

 

後、泣き顔を見られるのは気分のいいものではないと思い、取り敢えずハンカチを渡して、部屋を出ることにした。

 

 

ヴァーリsideout

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ギャスパーside

 

 

 

僕は、またもや真っ暗な何処かにいた。

 

 

·······夢? またこの夢か?

 

 

『······やぁギャスパー』

 

 

突然耳に僕の名前を口にした声が届く。僕と同じ声。ただし、声の主が何処にでもいるように聞こえた。

 

ギャスパー「······どうもバロールさん。珍しいですね。普段はまず出てこないのに」

 

 

振り向くと、僕によく似た姿をした女の子がいた。僕と違う点は、髪が腰にかかるくらい長いことと、瞳が漆黒······例えるなら、オーフィスさんの髪より黒いほどであることくらい。

 

魔神バロール。ケルト神話において、フォモール族を率いた魔神だ。僕がもつ神器(セイクリッド・ギア)の、『停止世(フォービトゥン)界の邪眼(・バロール・ビュー)』はバロールさんの魔眼を模して聖書の神が作ったものであり、生まれる前に僕の魂に同化したバロールさんの意識が呼び寄せた物だ。

 

また、魔神バロールは太陽神ルーの祖父でもある。女の子の姿を取っているのは、バロールさんは闇の具現化そのものであり、本来性別などなく、生前男性の姿でいたため、今度は女性の姿になってみようとの気まぐれだそうだ。

 

 

バロール『まあね。でも、キミはフェンリルの神殺しで殺されかけたろ? ボクとしては気が気じゃなかったよ。ねえルー(・・・・)?』

 

バロールさんが、僕の背後に呼び掛ける。僕が再び振り向くと、そこには、長身で長い金髪を一つに纏めた美形の男性がいた。

 

ギャスパー「こんにちはルーさん」

 

太陽神ルー。ケルト神話において、ダナ親族に加わって魔神バロール率いるフォモール族と戦った。魔神バロールを『神槍ブリューナク』で貫いたのは太陽神ルーとされる。

 

実際は、ルーさんは呆れるくらいのおじいちゃん子だったらしく、バロールさんと知らずに投石機に変形させたブリューナクでバロールさんを討ったらしい。

 

現在は、バロールさんの意識が紛れている僕に、バロールさんと会いたいがために、神格の一部を意識の一部と一緒に切り離して僕に埋め込むくらいだ。

 

お願いだから僕の夢の中で騒がないで欲しい。

 

 

ルー『やぁギャスパー、こんにちは。それと、現実での時間だともう夜だよ』

 

僕と小猫ちゃんが『禍の団(カオス・ブリゲード)』の魔法使いと遭遇したのがだいたい午後1時。今の時期、日が落ちるのが5時半とかだから少なくとも4時間は寝ていたのか·······

 

ギャスパー「·······そうなんですか」

 

でも、少なくとも僕は生きてるってことだ。神殺しのオーラを流し込まれて本当に死を覚悟した。

 

 

 

バロール『······にしても、キミはまた黒歌ちゃんを泣かせたみたいだね』

 

ギャスパー「······ッ!!」

 

唐突にバロールさんは僕の核心を突くようなことを言った。

 

ギャスパー「返す言葉もないです······」

 

言葉が尻すぼみになっていく。

 

ルー『うーん···ギャスパーは何処か焦ってるように見えるなぁ。黒歌ちゃんを守りたいから強くなりたいっていうのは分かるけど、もう少し休んだ方がいいよ。最近のギャスパーは強さってものに執着しすぎてる』

 

ギャスパー「·················」

 

何も言い返せない。図星だからだ。

 

バロール『まぁこれからルーマニア行くんだろうからあんまりとやかく言うつもりはないけどさ。このままだとキミは何度も黒歌ちゃんを泣かせることになるからね』

 

ルー『そうならないようにボクとおじいちゃんがいるんだけどね。頭の片隅でいいから常に置いておきなよ』

 

ギャスパー「······分かりました」

 

分かってるんだ······このままだといつか限界来ることぐらい。でも、もっと強くならないと黒歌さんを守れない。

 

 

 

バロール『······さて、ならもうキミは戻りな。可愛くて愛しくて抱き締めたくてたまらない奥さんが待ってるよ』

 

ニヤニヤしながらバロールさんが言ってくる。ウッ···恥ずかしい······

ギャスパー「わっ、分かりました······////」

ルー『若いね~』

 

口笛吹かないでルーさん······!!

 

ギャスパー「じゃ、じゃあ戻ります······ありがとうございました」

 

僕の夢はそこで終わった。

 

 

······しばらく夢は見たくないかな。

 

 

 

 

 

 

ルー『いや〜若いな〜』

 

バロール『ルー、いつまで言ってるの?』

 

ルー『いいじゃんかじいちゃん。子孫(・・)の成長を見てるのは楽しいでしょ。だからじいちゃんだって力貸してるんでしょ?』

 

バロール『ん〜、まぁそうだね』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ギャスパー「······んぅ」

 

目が覚めた。刺された所は心臓から外れていたため、すぐに闇で欠損部分を作り直したためもう傷はない。けど凄い体が怠い。神殺しか·········神格に大きな影響が出なくてよかったのかな。

 

ギャスパー「黒歌さん······」

 

黒歌さんは僕が寝ているベッドに突っ伏すように眠っている。

 

ずっと付いていてくれたんだ······泣いたような後がある。バロールさん達が言ってたように、やっぱり泣かせたのか······僕は何度黒歌さんに心配させたのだろうか。

 

ギャスパー「······ごめんね、黒歌さん······また僕のせいで泣かせて······」

 

そっと髪を梳くように黒歌さんの頭を撫でる。手触りがよくて、癖になってて偶に無意識でやってたりもする。

 

 

時計をふと確認したら、時刻は夜の9時前。8時間近く眠っていたらしい。

 

黒歌さんは8時間ずっと僕の看病をしてたのかな······

 

黒歌「······んにゃ?」

 

ギャスパー「あっ·······」

起きてしまった。寝顔が可愛かったもう少し見てたかったけど、撫ですぎたかな。気付いたら、20分近く撫でてるし。

 

黒歌「······ギャスパー?」

 

ギャスパー「あ······おはようございます?」

 

······何で僕挨拶したの?

 

 

黒歌「ギャスパー······!! 良かった······!!」

 

黒歌さんが抱き着いてくる。涙ぐみながら良かったと言った。

 

ギャスパー「ごめんなさい黒歌さん······僕また泣かせたみたいで」

 

黒歌「ホントにゃ!! 死んじゃうかも、ってどれだけ心配したと思ってるの!?」

 

ギャスパー「······ごめんなさい」

 

僕はどうしようもないなぁ······周りに心配掛けてばっかで······

 

黒歌「······私を置いてかないで······」

 

黒歌さんが言った一言にハッとする。

 

 

そうだった。黒歌さんは親に先立たれていたんだ。それでも、残った白音を守るためになりたくもない転生悪魔になって······何時もは小猫ちゃんに対してお姉さんとして振る舞っているけど、本当は誰よりも寂しがり屋で、甘えたいのを我慢して。

 

 

ギャスパー「······ごめん黒歌さん。もう置いていかないから。絶対に離さないから」

 

黒歌さんを抱き締め返す。もうこの人に寂しい思いはさせない。僕が隣にいる。

 

 

 

黒歌「······絶対?」

 

ギャスパー「·······うん。絶対に」

 

 

ギャスパーsideout

 

 

 

 

 

 

 

 

 

クルル「······あら、あの子も言うようになったわね」

 

八幡「これなら、もうギャスパーは大丈夫だろうな。俺達が何かする必要はなさそうだな」

 

 

ヴァーリ(············何故俺まで?)

 

 

 

 






追加キャラ説明


・バロール
ケルト神話の魔神。『魔眼のバロール』と称されダナ親族に恐れられた。バロールは自身を太陽神ルーにブリューナクで貫かれたとされる。

本作においては、バロールの意識は生まれる前のギャスパーの魂と同化しており、ギャスパーは最大限とはいかないまでも、バロールの闇を司る能力を使いこなすことが出来る。

尚、ギャスパーはバロールやルーの直系の子孫の一人。バロールの闇やブリューナクを使えることはここに起因するところが大きい。

ギャスパーと同化したバロールは、神格を失っていたが、ギャスパーがルーから神格の一部を埋め込まれた(同意の上)時に、神格が一部復活した。



・ルー
ケルト神話における太陽神。『長腕のルー』と称される。元々のブリューナクの持ち主であり、魔神バロールを討ち取ったとされる。

本作では、大のおじいちゃん子であったが、バロールがフォモール族を率いていたとは知らずにダナ親族に加わった。ブリューナクでバロールを貫いてから初めて彼は祖父を殺したことに気が付いた。


ブリューナクに選ばれたギャスパーを見て、彼に正式にブリューナクを譲る。序に、その時に自分の神格の一部と意識の一部を切り離してギャスパーに埋め込むという荒業をやってのけた。

それによって、ギャスパーは太陽神の力を一部扱えるようにもなった。このため、ギャスパーはダナ親族からは柱神としてスカウトを受けたことがある。

現実にいる際は神としての振る舞いを弁えているが、ギャスパーの夢の中でバロールと話している時はノリが軽い。とにかく軽い。ギャスパーの安眠を妨げるくらいには。
一つ言っておくと、バロールとルー(ギャスパーの中にいる方)は、八幡の精神空間にいるルシフェルと違い、如何なる方法でもギャスパー以外と接触することは出来ない。

因みに、ギャスパーには何重にも術を掛けられており、神格やブリューナクを外から感知出来ないようになっている(一部例外あり)。




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