イレギュラーは家族と共に 〜ハイスクールD×D'sバタフライエフェクト~ 作:シャルルヤ·ハプティズム
更新が遅れてしまい申し訳ございませんでした。新学期が始まって忙しくなり、作者はFGOを始めて忙しくなり、筆が進みませんでした。
こんな駄文で良ければどうぞ↓
······ここは何処だろうか?
気付いたら、僕は真っ暗な何処かにいた。
周りは真っ暗。さながら本物の闇。漆黒一色と言ってもいい。その中で自分一人だけが存在しているかのようだ。
周りを探るために体からバロールさんの『闇』を噴出させようとするが、何故か出来ない。なけなしの魔力も出せない。魔法も使えない。
加えて、何か制約を受けているわけでもないのに、この場から離れられない。周囲を見渡すくらいなら出来るのだが。
『············
微かに、本当に微かにだが、声が聞こえた。小さ過ぎて、男性か女性か、若いのか歳をとっているのか、何を言ったのかすら分からない。
ギャスパー「·······誰? 何処にいるの?」
声を出して返答を待つ。だが、一向に来る気配がない。この場から何故か動けない僕には声を出すことしか出来ない。
『············
今度は名前で呼ばれた。相変わらず声の主のことを把握出来ないが、自分の名前を口に出したということだけは分かった。
ギャスパー「誰······? どうして僕を知ってる······?」
相変わらず声の主からの返答はない。もしかして、声が届いていないのだろうか。
『······
ギャスパー「何処なの? 声が聞こえてるなら───」
そこまで言った時、声の主は言った。今度こそはっきりと聞こえた。
『────助けて』
ギャスパー「······!!」
瞬間、意識が覚醒する。飛び起きる。
そうか······今のは夢······でも、やけにはっきりとした夢だった。忘れてはいけない······そんなことを強く意識させるような夢だ。
黒歌「······ギャスパー、落ち着くにゃ」
隣で眠っていた筈の黒歌さんに抱き寄せられる。止みそうになかった動悸が、一気に収まっていくのが分かった。
黒歌「······落ち着いた?」
ギャスパー「······ありがとうございます。落ち着けました」
母性すら感じさせるほどの優しい笑みに、強ばっていた表情も自然も弛む。
黒歌「どうしたの······? 魘されてたわ」
笑顔から一転、不安そうな表情を浮かべて、黒歌さんが訊いてくる。
いけない。またこんな表情をさせてしまった。
ギャスパー「そんな大したことじゃないですから······」
黒歌「はい嘘。そんな苦しそうな表情で言ったら誰だって気付くにゃ。話して、ギャスパー。話せば少しは楽になるわ」
そこまで言われるほどなのだろうか······僕にそんな自覚はないのだが······
ギャスパー「うっ·····はい·」
強めの口調で言われると断れない。心配してくれていると思うと申し訳なくなる。以前、お父様が、お母様には敵わないと言っていたことの意味が分かった気がする。
黒歌さんに甘えて、見た夢を話すことにした。
黒歌「······『助けて』か。そう聞こえたの?」
黒歌さんに夢の内容を話した。
ギャスパー「はい······でも、誰の声か分からなくて······知ってる気がするんです。だけど思い出せない」
最後に聞こえた『助けて』という声······声質からして、女性の声だった気がする。聞き覚えがある気がするが······駄目だ。思い出せない。
黒歌さんは少し考え込むように唸ってから言った。
黒歌「む〜······それはギャスパーの知ってる誰かではあるんだろうけど······ギャスパーの深層心理が見せたものかもね。ギャスパーは女性の声に聞こえたみたいだけど、実際は、それが実在している人かも怪しいし、ギャスパー自身が忘れてる何かかも」
ギャスパー「僕自身が忘れた何か······」
深層心理が見せた何か······魔法でも見ることの出来ない最深部の領域が僕に何を見せたかったのだろうか······それとも、ただ単に悪夢を見せただけなのか······
だが、単純に悪夢だと片付けてはいけない気がするのだ。
黒歌「ま、今深く考えても仕方ないにゃ。切っ掛けがあれば何か分かる筈だしね。それより朝ごはん朝ごはん」
黒歌さんが話を切り上げてベッドからピョンと降りると、鼻唄を口ずさんで部屋を後にするのでそれに続いた。
その日、吸血鬼との会談が翌日行われることが決定した。
ギャスパーsideout
小猫side
この日、私はオカルト研究部の部室にいた。無論、私だけではない。
グレモリー側のオカルト研究部全員とアザゼル先生。ソーナ会長と真羅副会長と匙先輩。比企谷先輩とツェペシ先輩。そして、20代後半ほどで柔和な表情を浮かべたシスターが1人。
何故ここにシスターまでいるのかと言うと、今日、吸血鬼との会談がここ、駒王学園のオカルト研究部部室で行なわれることになったかため、天界から派遣されたのだ。
詳しくは知らないが、駒王町の警護にあたっている悪魔や堕天使に、吸血鬼が接触を図ってきたことが大元の理由らしい。
シスターが見渡すように全員に挨拶をくれた。
「······挨拶が遅れました。私、この地の天界スタッフの統括を任されております、グリゼルダ・クァルタと申します。シスター・アーシアとは少し前にご挨拶させていただきましたが、皆さんとはまだでしたので、改めまして、今後とも何卒よろしくお願い出来たら幸いです」
シスター·······グリゼルダ・クァルタさんは自己紹介をして頭を下げる。
イリナ「私の上司さまなんです!!」
イリナ先輩がそう付け加える。そこで先生がグリゼルダさんと握手を交わす。
アザゼル「話には聞いてるぜ。ガブリエルの『
相当な実力者であるらしい。
そう言えば、アーシア先輩は、ゼノヴィア先輩とイリナ先輩と一緒に町の教会に行っていた。その時に顔を合わせたのだろう。
グリゼルダ「申し訳ございませんでした。本来ならば、もっと早くに挨拶に伺うべきでしたのに、都合が付かず、今になってしまい、己の至らなさを悔やむばかりです」
グリゼルダさんは深く陳謝する。丁寧な物腰の人だ。
八幡「気にしなくていい。こちらには、ガブリエルが既に詫びを入れてきたからな」
グリゼルダ「そうでしたか······」
イリナ「あら? どうしたのゼノヴィア。顔色が悪いわね?」
イリナ先輩が何やら含みのある口調でゼノヴィア先輩に投げ掛ける。
ゼノヴィア「か、揶揄うなイリナ」
ゼノヴィア先輩は何故かグリゼルダさんの視界に入らなそうな位置に移動しようとするが、途端、ガッチリと両手で顔を押さえられた。ゼノヴィア先輩は顔から冷や汗を垂らしている。
グリゼルダ「あら? そんなに私と顔を合わせるのが嫌なのかしら?」
ゼノヴィア「ち、違うんだ······ただ······」
グリゼルダ「ただ?」
こう会話している間にも、ゼノヴィア先輩の顔からは汗が垂れている。
ゼノヴィア「電話に出なくてごめんなさい······」
ゼノヴィア先輩がそう言うと、グリゼルダさんは手を離した。周りの人は暖かい目で見ている。
グリゼルダ「よく出来ました。折角番号を教え合ったのだから、連絡の一つぐらい寄越しなさい。分かりましたか? 食事くらいなら出来るでしょう?」
ゼノヴィア「ど、どうせ、小言言われるんだし······」
グリゼルダ「当たり前です。また管轄が一緒になったのだから、心配ぐらいします」
しっかり者の姉と、それに頭が上がらない妹という図式が出来上がっている。剛胆という言葉を地で行くゼノヴィア先輩の新たな一面が見られた気がする。
グリゼルダさんとの挨拶も済ませ、後は吸血鬼を待つだけになった。夜は更けていき、室内での会話も少なくなった頃、外から異様な冷たさを感じた。全員が、それを把握して窓のある方に視線を向けた。
小猫「······ギャー君?」
隣りにいたギャー君の雰囲気が一瞬で全くの別物に変化したことを感じ取った私は声を掛ける。
ギャスパー「······どうしたの小猫ちゃん」
視線は逸らさずにギャー君は返答する。さっきまでと違い、険しい表情を浮かべている。気付くと、比企谷先輩とツェペシ先輩も似たような雰囲気を纏っていた。
小猫「······う、ううん。何でもない」
ギャー君の近寄り難い雰囲気に気圧され、会話を打ち切ってしまう。
リアス「······相変わらず、吸血鬼の気配は凍ったように静かね」
部長が祐斗先輩に視線を向けると、祐斗先輩は一礼して部屋を後にした。
会談をしに来た吸血鬼を迎えに行ったのだろう。
吸血鬼───ギャー君しか知らない私にとってはあまり慣れない言葉だ。吸血鬼は招待されないと建物に入れない、鏡に姿が映らない、影がなく、流水を渡れない。
他にも、ニンニクを嫌っていたり、十字架や聖水に弱い。
そして、自分の棺で眠らなければ自己の回復が出来ないと聞く。
ギャー君はデイライトウォーカーと呼ばれる吸血鬼の中でも特殊な種族で、ここにはあまり当てはまらない。
祐斗先輩が下に降りていったのは、吸血鬼が招待されないと旧校舎に入れないからだ。
私達眷属は、来客に備えてそれぞれ席を立ち、『
座っているのは、アザゼル先生、グリゼルダさん、比企谷先輩、ツェペシ先輩くらい。
暫くして、部室のドアがノックされ、吸血鬼を連れて祐斗先輩が戻って来た。
祐斗「お客様をお連れしました」
祐斗先輩は紳士な対応でドアを明け、客を招き入れた。
姿を現したのは、中世のようなドレスに身を包む人形のような少女だ。整った顔立ちは整いすぎていると言ってもよく、生気がない。作られた美しさ、と言えば分かりやすいかもしれない。
死人と見間違うほどに顔色が悪いことが、人形のようなイメージを強調させている。
「······ご機嫌よう、三大勢力の皆様。エルメンヒルデ・カルンスタインと申します。エルメとお呼び下さい」
ギャー君より深い、赤色の双眸をした少女はそう名乗った。
小猫sideout