イレギュラーは家族と共に 〜ハイスクールD×D'sバタフライエフェクト~   作:シャルルヤ·ハプティズム

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第70話 レーティングゲーム⑩

 

 

ギャスパーside

 

 

 

サイラオーグ『······やっと本来の力の触りを見せたかギャスパー······ああ、俺は、委員会に、そしてギャスパーに申したい。俺はギャスパーと······ギャスパー・ルシフェルとの一騎打ちを所望する······!!』

 

サイラオーグさんがカメラに向かって言う。

 

リアス「なっ······!? サイラオーグは何を言っているの!?」

 

ここにいる僕以外の全員がサイラオーグさんの発言に驚いている。僕から見れば、望んでいたことだ。折角向こうから1対1を申し込んできたのだ。断る理由がない。

 

ナウド『おおっと!? サイラオーグ選手からの驚きの提案が出てしまいましたーっ!!』

 

観客席がどよめき、実況が叫ぶ。

 

ディハウザー『······確かに、今見せたギャスパー選手の実力から見るにグレモリーチームでサイラオーグ選手と渡り合えるのはおそらくギャスパー選手のみでしょう。そうなれば今後の展開は結局読めてしまいますので、つまらないという点はありますね』

 

ディハウザーさんはにこやかに言っている。

 

アザゼル『ディハウザー殿の言う事が本当なのであれば、ワンサイドゲームになりかけることは防げる。さて、委員会はサイラオーグの要求を飲み込むか切り捨てるか』

 

先生も顎に手を当てながら、意見を口にしている。

 

リアス「アザゼルまで!!······ギャスパー、これは無理に受ける必要はないのよ?」

部長は無理に受ける必要はないと言うが、僕からしたらありがたい限りだ。僕が言ったところで一笑に付されるだけだが、サイラオーグさんが言うなら話は変わってくる。

 

サイラオーグ『······さてギャスパー。お前はどうする?』

 

サイラオーグさんが訊いてくる。当然答えは一つだ。

 

ギャスパー『······もちろん、ありがたくお受けさせていただきます』

 

受ける以外他にない!!

 

リアス「ギャスパー!!?」

 

小猫「ギャー君······!?」

 

ナウド『え、はい······今、委員会からの報告を受けました!!······なんと、認めるそうです!! 次の試合、サイラオーグ選手とギャスパー選手の一騎打ちとなります!!』

 

これは······もしかしたら、お父様が裏から何かしたのかもしれない。ありがたい。

 

サイラオーグ『······だ、そうだ。ギャスパー、3年越しになってしまったが、今度こそ(・・・・)勝たせてもらう』

 

闘志で目をギラつかせたサイラオーグさんが言う。僕も負けてはいられない。

 

ギャスパー『······いいえ。今回も(・・・)僕が勝たせてもらいます』

 

僕達の宣言に会場が湧いていた。

 

 

 

僕は、心臓に巻き付けていた『ブリューナク』を外して体外に出し、服の中でバレないようにブレスレットに変形させる。そして、懐から出したように見せかけて、血の色をしたブレスレットを左腕に付けた。

 

そして、仙術でオーラを調整しつつ魔法陣で転移して行った。

 

 

 

ギャスパーsideout

 

 

 

 

 

 

 

小猫side

 

 

 

何ということだろうか······

 

 

······ギャー君とサイラオーグ・バアルの一騎打ちが決定してしまった。

 

いくらギャー君が強くても、勝ち目がない。

 

サイラオーグ・バアルには並の遠距離攻撃など一切効かず、尋常ではない速度で懐に潜り込まれる。

 

僧侶(ビショップ)』であるギャー君とは相性は最悪に近い。ギャー君がサイラオーグ・バアルの防御力と速力を上回る攻撃が出来るなら話は変わってくるが、それは相当な威力がないと出来ないことだ。

 

 

フィールドにギャー君とサイラオーグ・バアルが転送された。フィールドは、裕斗先輩が初戦で戦ったような、広大な草原だ。

 

アーシア「······どうして······?」

 

イッセー「アーシア······ギャスパー、何で1人で······?」

 

アーシア先輩はこれから起こることを想像して既に目を向けられないでいた。それは私達もほぼ同じで、辛うじて目を向けられているところだ。

 

だが、幾つも気に掛かることはある。数時間前に会った、ハーデスのギャー君に対するあの言葉······ギャー君の言動からも2人には、面識があり両者の実力を垣間見ていることを伺える。

 

それに、先程の『今度こそ』というサイラオーグ・バアルの言葉と、『今回も』というギャー君のあの発言······こちらも、面識があるのだろうか?

 

 

一方で、フィールドに転送された2人は話をしていた。

 

ギャスパー『······『兵士(ポーン)』は使わないんですか? サイラオーグさんの勝ち目が減りますよ?』

 

······? サイラオーグ・バアルの『兵士』は何か訳ありなのだろうか? 今までひた隠しにしてきたから、何かしらの事情はあるのだろうが······

 

サイラオーグ『構わん。あれは冥界の危機に関しての時のみに使うと決めたものだ。それに、お前とは神器(セイクリッド・ギア)など関係ない己の純粋な拳だけで勝ちたいからな』

 

ギャスパー『······分かりました。なら、僕もサイラオーグさんと同じで行きます。神器も魔法も使いません』

 

 

ギャー君は、自分もサイラオーグ・バアルと同じ土俵で戦うと言った。つまり、『僧侶』のギャー君がサイラオーグ・バアルと殴り合いをするということだ。

 

これは、剣道の初心者が未経験のレスリングで、レスリングのオリンピック金メダリストに挑むようなものだ。勝てるわけがない。

 

 

裕斗「ギャスパー君!!?」

 

裕斗先輩が堪らず声を上げる。

 

サイラオーグ『······嘗めている······わけがないか。それは俺自身が分かっていることだ』

 

ギャスパー『······そうですか。サイラオーグさん、このブレスレットの意味が分かりますよね?』

 

ギャー君が左腕に付けたブレスレットを翳しながらサイラオーグ・バアルに言う。すると、サイラオーグ・バアルは不敵な笑みを浮かべた。

 

 

あれは、ギャー君が転送直前に懐から出していたものだ。ブレザーの内ポケットに入っていたものだとばかり思っていたが、違うのだろうか······?

 

 

サイラオーグ『当然だ!! それはお前の身体能力を限界まで引き下げるものだ。それを外に出している(・・・・・・・)ということは、お前の本気が見れるということだ······ならば俺も自身に課した枷を解き放つしかあるまい』

 

サイラオーグ・バアルの四肢に奇妙な紋様が浮かび上がる。かと思うと、紋様から淡い光が漏れ、その紋様は弾け飛んだ。

 

次の瞬間、ドンッ!! とサイラオーグ・バアルを中心に周囲が吹き飛ぶ。暴風が巻き起こり、足元は抉れてクレーターとなった。湖の水が揺れ動き、大きく波立っている。

 

そして、サイラオーグ・バアルが身に纏っていたのは────白く光輝く闘気だった。彼は仙術を会得しているのだろうか。

 

 

アザゼル『······なんて奴だ。可視化するほどの質量の闘気を纏っていやがる······』

 

先生が言うと、実況が皇帝(エンペラー)に質問をぶつけた。

 

ナウド『となりますと、サイラオーグ選手は気を扱う戦闘術を会得しているのでしょうか?』

 

ディハウザー『はい。彼も師の下で己を磨いたと言っていました。ですが、あれは仙術ではなく、体術を鍛え抜いた先に目覚めた闘気のようです。パワーを純粋なまでに求め続けた彼の肉体は、魔力とは違う、生命の根本とも言うべき力を身に付けたのです。彼の活力も生命力が可視化したと言っていいでしょう』

 

凄い······仙術を扱える私でも、ここまでの質量の闘気を身に纏うこと出来ない。

 

 

ギャスパー『······流石ですね。僕も最初から本気でやらないと、瞬殺されそうだ』

 

ギャー君がそう言うと、ギャー君の体からもサイラオーグ・バアルと同じように、白く光り出した。それもサイラオーグ・バアルの闘気に劣らないほどの質量。

 

ギャー君の周りも抉れて、クレーターのようになって行く。

 

ギャスパー『いつ見ても凄いですね。サイラオーグさんの闘気とは違って、僕のは仙術によるものですから。純粋な生命力をそこまで可視化出来る人はサイラオーグさんを除いていませんよ』

 

ギャー君も仙術を会得している······!? それも私より遥か上の······

 

 

イッセー「2人ともすげぇ······まるで、パワーの権化だな」

 

イッセー先輩が2人を見て言う。2人の闘気によって、勝負がまだ始まっていないのにも関わらず、周りの地面は今も尚抉られ続けている。

 

サイラオーグ『······行くぞッ!!』

 

サイラオーグ・バアルが飛び出す。それを見て、ギャー君は同じように飛び出した。

 

ギャスパー『はぁぁぁッ!!』

 

サイラオーグ『うおぉぉぉッッ!!』

 

ギャー君が左拳を、サイラオーグ・バアルが右拳を握り、引き絞るようにして突き出す。

 

────両者の拳は真正面から衝突した。その瞬間、ドウッ!! という爆音と共に、2人の周囲の地面は完全に吹き飛び、地面には一つの巨大なクレーターが出来る。

 

その衝撃は、ギャー君とサイラオーグ・バアルをも吹き飛ばすが、2人は吹き飛ばされても目に見えないほどの速度で、また接近した。

 

 

 

 

 

それからは、ただひたすら殴り合いが続いた。

 

ナウド『殴り合いです!! 壮絶な殴り合いがフィールド中央で行われております!! 華麗な戦術でも、練りに練られた魔力合戦でもない、超超至近距離による殴り合い!! 殴って殴られて、ただそれだけのことが、頑丈なバトルフィールド全体を吹き飛ばさんばかりの大迫力で行われています!!』

 

2人の壮絶な殴り合いは、観客を総立ちにし観客全員を興奮させている。最早、ギャー君をただの『僧侶』だと見る者は誰もいない。

 

ギャスパー『はあぁぁぁぁぁあッ!!!』

 

サイラオーグ『うおぉぉぉぉぉぉおッ!!!』

 

ギャー君の拳がサイラオーグ・バアルの顔をめり込ませる。サイラオーグ・バアルの拳がギャー君の腹に突き刺さる。

 

フィールドは、2人の殴り合いにより既に崩壊寸前であり、まともな地面など殆ど残っていない。

 

それでも2人は殴り合いを止めない。

 

サイラオーグ『俺は負けん!! 今度こそお前に勝つ!! 俺には叶えたい夢があるのだッ!!』

 

ギャスパー『僕にだって負けられない理由くらいあります······だから、今回も僕が勝つ!!』

 

2人にあるのは恐ろしいまでの勝利への執念。

 

まるで、勝たなければ全てが終わると言わんばかりの執念だ。

 

 

 

······私は、そこまでの執念を抱いたことはあるだろうか。いや、ないだろう。ギャー君に言われるまで、姉様がはぐれ悪魔になった理由を知ろうともせず、優しい周囲の人に甘えきっていた。

 

私には行動を起こすだけの覚悟が無かった。いや······姉様が悪いと全て擦り付け、自分はただただ現実から逃げていただけだ。

 

 

負けられない理由は?·······ない。そんなこと考えたことも無かった。

 

 

叶えたい夢は?······それもない。現在の安穏だけを見て、過去も未来も見ていなかった。

 

 

 

私は、殴り合い続けている2人から目を離せなかった。

 

 

私と同じように、2人を見る者全員が釘付けになっている。

 

 

 

そして─────

 

 

 

 

 

 

 

ギャスパー『はぁ······はぁ······はぁ······』

 

サイラオーグ『······まだ、遠い、な······また、俺の負け、か······』

 

膝を付き、大量の血を流しながら肩で息をしているギャー君。

 

そのすぐ隣りで倒れ伏すサイラオーグ・バアル。

 

ギャスパー『僕の······僕の勝ちだぁぁぁぁぁあッ!!!』

その声に固唾を飲んで見守っていた者全てが湧いた。

 

 

 

 

『サイラオーグ・バアル選手、投了。ゲーム終了です。リアス・グレモリーチームの勝利となります』

 

 

 

 

小猫sideout

 

 

 






超が付くぐらいにはパワーバカもいけるギャスパーでした。メインはまた違いますが。


サイラオーグの強さですが

制限時(本作)=制限解除時(現在)

制限解除時(本作)≧禁手化(バランス・ブレイク)状態(原作)

禁手化状態(本作)=覇獣(ブレイクダウン・ザ・ビースト)状態(原作)


くらいには作者は考えてます。


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