イレギュラーは家族と共に 〜ハイスクールD×D'sバタフライエフェクト~   作:シャルルヤ·ハプティズム

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ATTENTION!!

※本作において、ギャスパーは別人です。
※こんなのギャスパーじゃない。とお思いの方は即座にブラウザバックをお願いします。




第66話 2度目の警告

 

 

八幡side

 

 

 

八幡「······入るぞ」

 

白いドアを3回ノックして、その部屋に入る。

 

 

ここはオーフェリアの病室だ。今日はギャスパーとサイラオーグのレーティングゲームなのだが、オーフェリアの外出許可が降りたため、オーフェリアを迎えに来たのだ。

 

カルナ「おじいちゃんだー!!」

 

孫である茶髪の少女、カルナが抱き着いて来る。

 

八幡「よ、カルナ。元気か?」

 

カルナ「もっちろん!! ギャスパー(にい)がかっこよく戦うんでしょ?」

やはりギャスパーが大好きらしい。黒歌に牽制してギャスパーに抱き着くぐらいだからな。にしても、最近の女の子は()かすぎると毎度のように思う。

 

八幡「······オーフェリアも。体調大丈夫か?」

 

俺が聞くと、オーフェリアは可愛げに笑って首肯した。声帯を切除してしまったオーフェリアは2度と声を発することが出来ない。それに、下半身も殆ど動かないのだが、昔と違いよく笑顔を見せてくれるようになった。

 

十分なだけの栄養も取るようになり、まだ病弱であることには変わりはないが、昔に比べればずっと体が丈夫になった。

 

未だ退院は叶っていないが、ここ数年は、自身をも侵す猛毒の魔力もある程度制御出来るようになった(それでも、魔力を抑制する補助器具は外せないが)。早ければ数ヶ月、遅くとも後数年もあれば退院出来るだろう。

 

 

 

八幡「カルナ、はぐれんなよ?」

 

カルナ「はぐれないもん!!」

 

八幡「分かった分かった」

 

オーフェリアを優しく車椅子に乗せる。オーフェリアの乗った車椅子を押して、カルナを伴って病室を出る。

 

クルルとヴァーリと黒歌が病室の外で待っており、カルナはクルルに抱き着いたかと思うと、本人がいない所でギャスパーの取り合いを黒歌と始めていた。

 

 

そんな溜息が付きたくなるも微笑まし光景を見ながら、オーフェリアの外出手続きを終え、アグレアスに向かった。

 

 

八幡sideout

 

 

 

 

 

 

 

ギャスパーside

 

 

 

僕達オカ研はアグレアスに続いているゴンドラの中から、アグレアスを眺めていた。

 

イッセー先輩達、今年部長の眷属になった人達は物珍しそうに見ていた。僕は『サングィネム』に浮かぶ建造物群を見ているので慣れている。

 

あれはアグレアスとは違い、魔法と束さんの科学力の結晶なのだけど。

 

アザゼル「······聞いた話じゃ、今回のゲーム会場設定はかなり上が揉めたらしいな」

 

アザゼル先生が漏らした言葉に皆の視線が集中した。

 

······なるほど。現魔王はグレモリー領か魔王領での開催を望んだけど、大王家はバアル領での開催を望んだと。それで、結局アガレス領にあるアグレアスに落ち着いたのだろう。

大公は中間管理職のような立場だと聞いていたが、予想よりだいぶ大変なようだ。アガレス家の人々の胃が心配だ。その内破裂するんじゃないだろうか。

 

アザゼル「現魔王は世襲制じゃないからな。家柄だの血筋だのを重視する悪魔にとっちゃ、バアルってのは魔王以上のファクターだからな」

 

血筋や家柄をどうしてそこまで重視するんだろう······吸血鬼もそうだが、全く理解出来ない。

 

イッセー「······旧魔王に加担してた悪魔も、過去に同じこと言って内部で相当揉めたんですよね? 何で同じことを······?」

 

イッセー先輩がジェスチャーを入れながら漏らしている。

 

小猫「それで結局アガレス領······」

 

小猫ちゃんがぼそりと呟く。先生はそれに頷き続ける。

 

アザゼル「ああ、大公は魔王と大王を取り持ったって話だ。時代は変われど苦労してんなぁ······」

 

アガレス家の苦労は大昔からの話らしい。逃げ出す人とかいそうだ。悪魔は思想も倫理観も何もかもがバラバラすぎるからなぁ······そんな人達の間を取り持つってどれだけ大変なのだろうか。

 

裕斗「僕達のゲームは、ルシファーとバアルの代理戦争ということになるのだろうか」

 

裕斗先輩が目を細めて言う。先生も顎を擦りながら裕斗先輩に答える。

 

アザゼル「ま、そう見る連中が多いのも事実だ。裏じゃ政治家があーだこーだ言い合いながら見てんだろうな」

 

サイラオーグさんには、夢を叶えるためにも、各所とのパイプが必要だ。政治とはそういうものだ。サイラオーグさんだって、向こうが自分を利用しようとしていることぐらい分かっている。

 

······甘い汁を吸うためなら一度見放した相手でも平気で擦り寄っていくのは、些か気持ち悪い。

 

イッセー「めんどくさいっすね。俺らは俺らで目標があって臨んでるのに······」

 

イッセー先輩が先生が疲れたように言うと、嫌そうな顔をして言う。

 

アザゼル「それでいいんだよお前らは。努力を積み重ねた結果、注目されるようになったと思えばいい。理由があろうと無かろうと名のある者には成果が求められる。お前達は政治云々のことなんか気にせず全力で行け。そうでなければ、あいつには勝てないだろう」

 

サイラオーグさん相手にそんなことを考えられる余裕はないんだけど······曹操さんの『黄昏の聖槍(トゥルー・ロンギヌス)』に拳一つで対等以上に渡り合える人だからなぁ······今はレグルスさんまでいる。

 

裕斗「でも、大王家はサイラオーグ・バアルの夢を容認するでしょうか。能力さえあれば、身分を超えて、どんな夢でも叶えられる。反対意見も相当多いと思いますが」

 

裕斗先輩が先生に聞く。

 

アザゼル「家柄に拘る大王家が容認すると思うか? あくまでも、あいつらは、サイラオーグを現魔王に一矢報いるための駒としか思ってないだろう。サイラオーグはそれも認識してるだろうな」

 

サイラオーグさんは境遇に恵まれなかった。それでも自身の夢のために、どこまでも愚直に突き進んでいる。僕ではその心中は計り知れない。

 

 

僕がサイラオーグさんの境遇を考えていると、ゴンドラはアグレアスに到着していて、降り過ごしそうになった。

 

 

ゴンドラを降りると、待ち受けていたのはマスコミのフラッシュだった。スタッフとボディガードの誘導の下、用意されていたリムジンに全員が乗り込む。

 

 

 

 

ゲームの舞台となるドームを目指すリムジンの中で、僕はサイラオーグさんとの戦いを考えていた。

 

 

ゲームで、多分僕はサイラオーグさんと一対一になる。サイラオーグさんが出てくるのは十中八九最後になるだろから、そこまでは出来るだけ消耗を避けたい。

 

だが、今の僕はあくまで部長に従うだけの駒だ。あまり眷属としての常識の範疇を超えるようなことは出来ない。危なくなったら流石にそんなこと気にしないけど······

 

 

それと同時に、『禍の団(カオス・ブリゲード)』の対策についても考える。

 

あのリゼヴィム・リヴァン・ルシファーの性格からして、今ルーマニアにいなくとも、ルーマニアの現状を知れば絶対に飛び付く。

 

何せ、『幽世の聖杯(セフィロト・グラール)』はルーマニアにあるのだ。所有者は僕の大恩人で、比企谷家に出会う前の僕に、唯一、家族の温もりを与えてくれた人だったと言っていい。

 

吸血鬼は他の勢力との干渉を極端に嫌っているため、お父様は彼女を引き取ろうとしたが、拒否されてしまい、僕だけを引き取ることになった。今までに数回は申し出ているが、全て拒否されたと聞いている。

 

いっそ、リゼヴィム・リヴァン・ルシファーが吸血鬼達に干渉してたら、それを理由に保護することも出来るんだけど······

 

 

僕が考え込んでいるうちも、リムジンは都市部を走り、アグレアス・ドームに着いた。

 

 

 

 

僕達はアグレアス・ドームの横にあるホテルに移動していた。

 

 

試合までまだかなり時間があり、ホテルのボーイに、グレモリー眷属専用ルームまで案内されている途中。

 

通路の向こうから、気持ち悪いオーラを放ちながら歩いてくる集団があった。

 

その集団は顔が隠れるくらいフードを深く被り、足元が隠れるほど長いローブを着込んでいる。そして、その集団の中央には、祭服を着て、杖を携え、ミトラを被る骸骨······冥府の神、ハーデスがいた。

 

 

······へぇ。この人達はお父様に戦争でも仕掛ける気なのかな? 警告を無視したと見ていいのかな?

 

取り敢えず、警告の意を込めて、一歩前に出て挨拶する。

 

ギャスパー「······これはこれは冥府の神ハーデス様。お久しぶりですね」

 

目玉の無い眼孔を見据え、殺気を放ちながら言う。

 

「「「「「なっ······ハーデス!?」」」」」

 

僕とアザゼル先生以外は会ったことがなかったらしい。

 

僕はお父様に無理を言って各地を飛び回るお父様とお母様について行っていた時期があるので、ぶっちゃけたことを言えば、各勢力のだいたいの柱神とは会ったことがある。このハーデスとも。

 

······あの時はかなり反対されてたなぁ······今思うと懐かしい。

 

ハーデス『······ほう。久しいな『堕天魔』の息子、ギャスパー・ルシフェル。それに、紅髪のグレモリーに堕天使の総督』

 

アザゼル「何故ここに······!!」

 

ハーデスも相当なオーラを放っているが、これくらいはうちでは普通なので、別にどうということはない。

ギャスパー「······ここに何の用ですかね? お父様の警告を無視して戦争吹っかけにでも来ましたか?」

 

更に殺気を強めて言う。

 

ハーデス『ファファファ······この殺気、流石と言えようか。まあよい。今宵は貴様や『堕天魔』と戦争をしに来たわけではない。貴様とやり合えば、私とてただではすまん。それに、『堕天魔』とこれ以上やり合えば冥府は消し飛ぶのでな』

 

ハーデスは愉快そうに笑い声を上げる。取り敢えず、今のところは行動を起こすつもりはないらしい。

 

流石にこの程度の殺気で怯むわけないか······まぁ僕も全開にしているわけではないから当然なのだが。

 

ギャスパー「······そうですか······でも一応言っておきましょう。これ以上何かするようであれば、お父様の前に僕が冥府に攻め込むつもりなので。刺し違える気でいけば、貴方を道ずれにすることぐらいは出来るでしょう」

 

これは傍から見れば宣戦布告なのだが······ハーデスは既にお父様に敵対行為を起こしている。サマエルを貸し出したことなど、本来ならお父様に消し飛ばされてもこの目の前の骸骨は文句を言えないだろう。

 

まぁ······お父様は敢えて泳がすことにしたのだが······お父様やお母様、お姉様やお兄様やカルナに何かあれば、今度は僕が最初に動く。容赦など、微塵もない。

 

ハーデス『ファファファ······しかと命じておこう。そこの烏の首魁以上の実力を持つ貴様相手では、この年寄りでは荷が重い。では、私達は失礼するとしようか。精々死なぬように頑張るとよいわ』

 

そう言い残して、ハーデスは僕達の横を通り過ぎて行った。後ろに控えていた死神(グリム・リッパー)も通り過ぎて行った。

 

······だいたいはハーデスにただ着いていくだけだったが、何人かは僕に明確な敵意と殺意を示していたが。でもプルート······あれは自業自得だと思う。

 

 

ハーデス相手にどうしたら勝てるかを少し考えてみたが、バロールさんの『闇』で完全に飲み込むしか出てこなかったので、考えるのをやめて後ろを振り向いたら、アザゼル先生以外の全員が2、3歩後ずさりしており、額に脂汗を垂らしていた。

 

 

 

どうしたんだろう······?

 

ギャスパー「·······皆さんどうかしましたか?」

 

ロスヴァイセ「······北欧にいた頃、先輩のヴァルキリーからハーデス様の話は聞いてはいましたが······魂を掴まれる感じは生きた心地がしませんね」

 

ロスヴァイセさんがそう言うと、皆が頷いた。

 

そんなに怯えることはないと思うんだけどな······あれでもお互い様子見だし。

 

ロスヴァイセ「と言うか······ギャスパー君は何故平気なのですか?」

 

平気、と言われても、お互い様子見程度の殺気しか出していなかったのだ。それに、お兄様と本気で修行している時は、お互い、今のとは比べ物にならないくらいは殺気出してるし······お互いがお互いを殺す気で掛かってるし······

 

ギャスパー「そう言われましても······あれはお互い様子見ですよ?」

 

ロスヴァイセ「よ、様子見······!?」

 

アザゼル「······ギャスパー、それは異常なんだよ。普通はハーデス相手にあんな口聞けねえよ。そもそも、俺でもあの殺気は出せない」

 

先生が僕の肩に手を置きながら言う。

 

ギャスパー「先生まで······僕はハーデスがお父様の警告を無視したように見える行動を取ったからやっただけですけど······」

 

アザゼル「頼む。あれはやらないでくれ。見ろ、他の奴らは未だに体が震えてる」

 

ロスヴァイセさん以外はまだ震えており、脂汗を垂らしていた。ロスヴァイセさんは一足先に止まったということなのだろうか。

 

 

 

その後、やっと皆の震えが収まったぐらいのタイミングで、主神ゼウスと海神ポセイドンがやって来て、僕と先生に、開口一番に『嫁は取らんのか?』と聞いてきて、僕には黒歌さんがいるから、『間に合ってます』と答えたら今度は小猫ちゃん以外の皆が固まっていた。

 

先生は四つん這いになって『イッセーじゃなくて、まさかのギャスパーに先を越された······』と今にも泣きそうだった。

 

先生に貶された気がする······

 

 

 

というか······先生、結婚相手ぐらいいくらでもいたでしょうに。

 

 

僕は史実における『アザゼル』という堕天使に疑問を抱いた。

 

 

 

ギャスパーsideout

 

 


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