イレギュラーは家族と共に 〜ハイスクールD×D'sバタフライエフェクト~   作:シャルルヤ·ハプティズム

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今回はギャスパーがよく喋ります。



第64話 姉は何時でも妹を想っている(彼が妬けるくらいには)

 

 

 

 

八幡side

 

 

 

俺は今クルル、ヴァーリとグレモリー領のホテルに来ている。尚、ヴァーリは髪の色を魔力で黒に偽装している。

 

今日は、バアル眷属とグレモリー眷属の合同記者会見があるのだ。俺達はギャスパーとサイラオーグを見に来ただけだが。

 

因みに、サイラオーグも俺の弟子の一人である。サイラオーグの母、ミスラ・バアルが、俺に土下座までして頼み込んできたのだ。

 

『恥を承知の上でお願い致します。この子に、サイラオーグに力授けて頂きたいのです!! サイラオーグには······魔力という物が殆どありません。ですが、この子には立派な体があります。そして、未来があります。魔力が無いというだけでこの子の未来を潰したくないのです!! どうか!!!』

 

サイラオーグの境遇は、初代バアルであるゼクラム・バアルとの裏取り引きの際に聞いていたので、受けることにした。

 

尚、このためサイラオーグはギャスパーとヴァーリと曹操も知り合いであるため、ヴァーリチームが『(カオス)の団(・ブリゲード)』に潜入した時に、身内以外で唯一説明しなくてはならなかった。

 

又、曹操が純粋にテロリストに成り下がった時は好敵手(ライバル)が一人減ったと嘆いていた。

 

 

 

 

グレモリー眷属が会見場に入ると、拍手で迎えられていた。俺達は裏から見ている。別に、ギャスパーとサイラオーグを見に来ただけなので、記者に紛れたりとかする必要は皆無。あと、ギャスパーとサイラオーグは俺達がここから見ていると気付いたな。2人だけこっち見たし。

 

会見席の上には『サイラオーグ・バアルVSリアス・グレモリー』と書かれた幕がある。これ見ると1対1で戦うかのように見えるが、リアス・グレモリーじゃサイラオーグに瞬殺される。というか、ギャスパーを除いたグレモリー眷属でサイラオーグと精々善戦出来る程度なのが赤龍帝であるイッセーくらいだ。他は戦うまでもない。

 

尚、ギャスパーは後方2段目の右から2番目、サイラオーグは真ん中に座っている。

 

 

司会進行役が一言掛けたところで記者会見はスタートした。ゲームの概要や日取り等の基本情報が司会から通達され、両『(キング)』が意気込みを語る。

 

その後、『王』以外にも一人ずつ質問がなされていたが、ギャスパーは当たり障りのない答えを返していた。俺やクルル、ヴァーリの事は奇跡的に聞かれもしなかった。

 

 

 

あと、イッセーのインタビューには笑いを堪えることが出来なかった。何故なら、

 

『最近、巷で乳龍帝や、おっぱいドラゴンとして名を馳せている兵藤一誠さんにお訊きします』

 

だぞ? 俺とクルルは笑いを堪えられなかった。ヴァーリは、これから自分も不名誉な名で呼ばれるんじゃないかという不安に駆られていたアルビオンを慰めていた。その時のイッセーの顔と言ったらな。あの無表情で『え?』という顔は暫く忘れることはないだろう。

イッセーはその後の質問でも墓穴を掘りまくっていた。

 

因みに、ネタを提供したのは俺だ。京都で九重とイッセーが話している時のゼノヴィアの一言をアザゼルもサーゼクスに言ったら、瞬く間にここまで広まった。サーゼクスは、このネタを特撮にしてグレモリー家の一大ビジネスにしたいらしい。

 

サーゼクス特撮大好きだもんな。サタンレッドだし。俺はイエローに巻き込まれそうになって、グレイフィアを身代わりにしたが。あの時のことは未だに恨まれてんな。見ていて面白いから後悔はしていない。

 

 

尚、イッセーの受け答えによって会場の張り詰めた雰囲気は完全に砕けて、笑いに満ちた状態で会見は終了した。

 

 

 

八幡sideout

 

 

 

 

 

 

 

ギャスパーside

 

 

 

記者会見後、会見場の裏でグレモリー眷属とバアル眷属が集まっていた。

 

サイラオーグ「······ハハハハッ!! いやすまない。それにしても、お前達と絡むと楽しいことばかりだ。戦闘前から闘気を纏って会場入りしたんだが、すっかり毒気を抜かれた。逆にリラックス出来たぞ」

 

サイラオーグさんは豪快に笑っている。昔から変わらないと思う。その性格は自分の置かれていた状況からの裏返しなのかもしれない。

 

リアス「サイラオーグ!! 変なこと言わないで!!」

 

サイラオーグ「いいではないか。血なまぐさい会見ではなく、話題性に富んだ物となったからな。明日の朝刊が楽しみだよ」

 

サイラオーグが愉快そうに言うと、部長はいっそう顔を赤らめる。因みに、話題性というのは若手悪魔の会合の時に暇つぶしに会場に来た美猴さんが、イッセー先輩が禁手(バランス・ブレイカー)に至った時のことをカメラで全て録画しており、お父様が録画映像をサーゼクスさんやアザゼル先生に渡したのだ。

 

巷で有名らしい。渡してからまだ一週間とかだったと思うけど、ここまで広がるのが早いとは。

 

 

その後も談笑で盛り上がって、この場は解散となった。

 

 

 

 

 

サイラオーグ「······聞いたぞ、曹操のこと。『禍の団』に参加しているとな。残念だ」

 

この場に残ったのは僕とサイラオーグさんのみ。気を使ってか、他の人がいる時は、サイラオーグさんは僕に殆ど話しかけてこなかった。

 

ギャスパー「······まぁ、お父様は危うく死に掛けたそうですけど。お父様はそれのお陰で収穫があったらしいので、あまり弟子が起こした問題については悲観的ではなかったですね」

 

サイラオーグ「ハハハハッ。流石八幡殿だ」

 

サイラオーグさんは僕から見れば弟弟子にあたる。曹操さんと同時期にお父様に弟子入りしたのだ。そのため、曹操さんについて残念がっている。

 

サイラオーグ「そう言えば、先程の会見場に、八幡殿とクルル殿、それにヴァーリまで来ていたな。兵藤一誠が受け答えに戸惑っていた時、爆笑していたな」

 

ギャスパー「お父様は赤龍帝ドライグが大嫌いですからね」

 

多分、ザマァみろクソ蜥蜴って思ってる。

 

サイラオーグ「そうかもしれんな」

 

サイラオーグさんも同意見だったらしい。

 

そして、唐突に不敵な笑みを浮かべた。

 

サイラオーグ「······レーティングゲームで、『今度こそ』勝たせてもらうぞ」

 

ギャスパー「『次も』負けませんよ」

 

サイラオーグ「ではな。ギャスパー」

 

そして、廊下の角を一瞥すると(・・・・・・・・・・)、サイラオーグさんも帰って行った。

 

 

 

 

ギャスパー「······もう出てきていいよ、小猫ちゃん」

 

壁に寄り掛かりながら言うと、先程サイラオーグさんが一瞥していった廊下の角から小猫ちゃんが出てくる。

 

小猫「······ギャー君、気付いてたの?」

 

ギャスパー「まぁ······最初からかな。サイラオーグさんも気付いてたけど、何かしようってわけじゃなさそうだったから」

 

小猫「······ッ!!」

 

小猫ちゃんが聞いてくる。どうやら帰ろうとしなかった僕に疑問を抱き、隠れて聞き耳を立てていたらしい。黒歌さんのような猫耳がぴょこんと頭に出ている。僕とサイラオーグさんは気付いてたけど、敢えて気付かなかった体で話していた。

 

小猫「······ギャー君は姉様についてどう思ってるの?······知ってたんでしょ?」

 

小猫ちゃんは黒歌さんのことについて聞いてきた。いくら事情が事情だったとは言え、姉妹間に出来た溝は深い。黒歌さんのためにも、僕が出来ることはしたいけど······どうしたらいいんだろう。

 

ギャスパー「······黒歌さんのことについてなら知ってたよ。倒れてたところを保護したのは僕だしね」

 

小猫「!!」

 

ギャスパー「で、続きだけど、僕から見たら黒歌さんはどうしようもないくらい優しい人、かな」

 

小猫ちゃんはおそらく黒歌さんの身に何があったかを知らない。知っているのは、はぐれ悪魔の認定が解除されていた、ということぐらいだろう。

 

小猫「······どうして?」

 

ギャスパー「黒歌さんは、小猫ちゃんの身を案じていた。6年前、黒歌さんの元主は、高い素養を持っていた黒歌さんと小猫ちゃんに目を付け、眷属に勧誘した。ここまでは小猫ちゃんも知ってると思う」

 

そう言うと、小猫ちゃんは無言で首肯する。それを見て、更に続ける。

 

ギャスパー「······そこまでは何の問題もないことだった。けれど、黒歌さんの元主───ジェロマ・リバートリンは黒歌さんとの間に交わした契約を破った。『自分は手足となって働くから白音の身の安全を保証する』という契約をね。ジェロマはその契約を破り、小猫ちゃんを強引に眷属にしようとしたんだ。黒歌さんが『僧侶(ビショップ)』の駒2つ分だったから、小猫ちゃんも猫又としての高い素養に目を付けられた」

 

小猫「······そんな······姉様が······」

 

現在の冥界でもこのような悪魔はかなり多い。それは身分が高くなればなるほど多く、純血が、上級以上が至高だ、という思考なのだ。おそらく、僕も『悪魔の駒(イーヴィル・ピース)』を貰ったら、このような者達と顔を合わせなければならないだろう。

 

止む無くはぐれとなった者は年々増加傾向にあり、お父様達が、その人達を内々で保護している。とは言え、全員を保護出来るわけではない。

 

ギャスパー「······黒歌さんはね」

 

小猫「······?」

 

不意にこぼした言葉に、小猫ちゃんが顔を上げる。

 

ギャスパー「いつも小猫ちゃんのことを自慢してるんだ。白音がね、白音がね、って。小猫ちゃんのことを一番想ってるのは、他でもない黒歌さんなんだ。それは断言出来るよ。だから、今度黒歌さんと会って話をしてあげて。無理にとは言わないし、すぐにとも言わない。ゆっくりでいいから。人外にはそれが十分出来るだけの寿命があるしね」

 

小猫「······姉様」

 

小猫ちゃんの頬から一筋の涙がつーっと垂れた。

 

小猫「ギャー君は、どうしてそこまで······」

 

絞り出すように小猫ちゃんは口を動かして言葉を発する。

 

ギャスパー「······妹である小猫ちゃんに言うのもなんだけど、黒歌さんが大好きだからかな? 見てると助けたくなるんだ。いつも白音のために何が出来るか、って考えてる黒歌さんを支えたいから」

 

小猫「······そう」

 

ギャスパー「······何時でも家に来ていいよ。きっと、皆歓迎してくれるから」

 

小猫「······うん。ありがとうギャー君」

 

 

そこで、小猫ちゃんは笑った。翳りのない綺麗な笑顔だと思った。

 

ギャスパー「僕ももう帰るよ。あ、この場のことは出来れば秘密にしてね」

 

小猫「?······どうして?」

 

ギャスパー「お父様の立場だと、大王家の次期当主と繋がりがあるって思われるのはあまり良くないんだ。いくら初代バアルとの合意の上とはいえ、お父様の影響力は魔王や大王を上回る時もあるらしいからね。お父様は政治からは距離を置いてるんだけど」

 

小猫「······分かった」

 

ギャスパー「ありがとう小猫ちゃん。レーティングゲーム頑張ろうね」

 

 

僕はそう言って帰ることにした。小猫ちゃんを送ろうかと思ったけど、部長とイッセー先輩が小猫ちゃんを探しに戻って来たから任せることにした。

 

 

 

黒歌さんのためにも、小猫ちゃんを黒歌さんと出来るだけ早く会わせてあげたいな。

 

 

 

 

ギャスパーsideout

 

 


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