イレギュラーは家族と共に 〜ハイスクールD×D'sバタフライエフェクト~ 作:シャルルヤ·ハプティズム
八幡side
俺達はこれから、『世界の最果ての地』へと向かう。
向かうのは、俺とクルル。もしもの時のためにクロウ、束。そして、何かあったら何も考えずに逃げるという条件で、ヴァーリとギャスパー。
息子2人は祖母に会って話がしたいと、危険だと言っても引き下がらなかったため、連れて行くことにした。当然、この2人は有事の際には真っ先に逃がすつもりだ。
まぁ、ヴァーリは白龍皇の力があるし、ギャスパーも3段階ぐらい封印が解けて、昔みたいに『あの槍』や、『闇の力』も使えるから逃げるだけなら十分の筈だ。又、束には逃げる際に2人と一緒に行ってもらう。最悪の事態になることだけは防げる筈だ。
······完全に想定外なことも起きないとは言えないが、それを話していたら俺達も行けなくなるので今はいいだろう。
クルル「······準備はいい?」
クルルが、魔剣ノートゥングを手に聞いてくる。
俺達は聞いてきたクルルに対して首肯する。
魔剣ノートゥング。切れ味だけならグラムに勝るほどの剣だ。アーサーが振るうコールブランドと並ぶ程の切れ味を誇る。
無論、コールブランドのように空間を切り裂くことも可能だ。
長いことジンに貸していたが、ジンが戻って来たため、グラム、バルムンク、ディルヴィング、ダインスレイブと共にクルルの手元に戻ってきた。
尚、ヴァーリが持っているバルムンクは束が作ったレプリカだったりする。
クルル「······皆、行くわよ」
クルルが掲げたノートゥングを振り下ろす。
ノートゥングが振り下ろされた所には、空間に切られた跡が出来たかと思うと、人数人が入れるくらいの穴が開いた。
穴の向こうからは、次元の狭間が顔を覗かせている。
『Vanishing Dragon Balance Breaker!!』
俺、クルル、クロウ、束はオーラで体を包む。
ヴァーリが『|白龍皇の鎧《ディバイン・ディバイディング・スケイルメイル》』を纏う。
ギャスパーは自分の体を闇で覆う。
そして、俺達は空間に開いた穴に飛び込んだ。
クルルの母、『
『世界の最果ての地』自体は次元の狭間ではなくこちら側にあるものの、大昔に、完全に空間が切り離されたため、直接行くことは出来ない。
切り離したのは、お袋は神だと推測しているがどこの神かは不明。その神自体もう消滅しているかもしれない。
尚、切り離される前は本当に世界の最果てだったらしい。確か、ジブラルタル海峡の外側だったようだ。
次元の狭間を漂うこと数十分ほど。
八幡「······クルル、ここだ」
目標の座標に到達した。念のため、意識体のお袋に確認を取る。
······お袋、ここでいいんだよな?
ルシフェル《ええ。ここから行けるわ》
分かった。サンキュお袋。
次元の狭間には物理法則が通用しないため、時間も距離も関係ないように思えるが、実際は次元の狭間の『無』が強すぎて物理法則がめちゃくちゃになっているだけであり、一応時間や空間は存在する。
まぁ、ある程度広大なフィールドを魔力などで常に形成して、フィールド内の『無』をある程度弱めておかないと、座標の観測なんて到底不可能なんだが。
目的の座標に到着すると、クルルが再びノートゥングを振り下ろす。
それだけで空間は真っ二つに避け、穴の向こうからは俺達の目的地である、『世界の最果ての地』が顔を覗かせた。
俺達は躊躇なく空間に開いた穴にそこに飛び込んだ。
因みに、ここの座標にくるまでの間、束は次元の狭間に流れ着いていた古代文明の遺産やら旧時代の兵器を発見する度に、目を輝かせては自分の亜空間に放り込んでいた。
ギャスパー「······ここが世界の最果てだった場所······」
お袋に案内された、『世界の最果ての地』。俺は何もない場所だと勝手に想像していたが、予想とは違い、一面の草原が広がっていた。
クルル「······もっと何もないと思ってたけど······」
ヴァーリ「······神が封印に選ぶにしては、穏やか過ぎる気もするが······」
クロウ「······ああ」
束「向こうなんか、花畑になってるよ? 本当にこんな所にいるの?」
確かに、もっと封印に適した場所はある筈だ。現に、サマエルなんかは『
そこで、意識体のお袋が話し出した。
ルシフェル《······なんとか神を丸め込んでここにしたのよ。何もない所に封印されるなんて可哀想じゃない······これでも友人だったものだから。あの時ほどミカエルとアザゼルにおかしな目で見られた時はないわね。今考えると、よくバレなかったわ》
·······お袋はどこで
ルシフェル《······666は元々『
そうか······それで、666さんは何処にいるんだ?ここかなり広そうなんだが······今の所、俺達以外の気配を感じないからそこまで急がなくても良さそうだけど。
ルシフェル《さっき、貴方の『
ああ、分かった。
八幡「······666さんはさっき束が言った、花畑の中央にいるらしい。取り敢えずそこまで行くか」
クルル「そうね」
俺達は花畑の中を歩いていく。ここが本当に
それに、お袋の話だと666さんはグレートレッドと同等クラスだと言うが、それなら、神や
封印される際に無抵抗だったとか? それならまぁ納得がいくが······
クルル「······
花畑の中央に着いた俺達の目の前にあるのは、真っ白なキャスケット型の柩だった。とても封印されてから700年以上経ってるとは思えない。今さっき設置されたと言われた方が納得出来る程だ。
ルシフェル《······状態保存の術を掛けたのよ。私が》
そうか······よく神にバレなかったな。
ルシフェル《······666が封印されてからも、私がこの空間の管理をしていたのよ。私が死んでからは誰が入ったのかは分からないけど······》
ここに神が来るってことはなかったのか?
ルシフェル《封印してからは私以外は誰も来てないわ。もしかしたら『
まぁ今探れる範囲には俺達以外は誰もいないし、ここには普通の手段じゃ入れないからな。
それに、オーラの形跡も全く感知出来ないから、ここに来ていたとしても、かなり前にここから出て行ったと考えるのが自然だな。
ギャスパー「······お父様、この柩、術が掛けられてて普通にやっても開きそうにないですよ?」
八幡「そうだな······下手に触るとどうなるか分からんし······」
術の解除に時間掛かりそうだな。まぁ時間ならあるんだが。
ルシフェル《······それは簡単に開くわよ。『アグロ』って唱えてみて》
なんだその開けゴマみたいなのは······
ルシフェル《······悪かったわね。単純な思考してて》
別に悪いとは言ってないんだが。
八幡「······『アグロ』」
クロウ「······なんだそれは」
八幡「さぁ······お袋に言えって言われた。解除の呪文的な奴らしい」
すると、棺の蓋に切れ込みが入り、スライドして横に動き始める。
······俺は、開くだけでも数千単位の術を解除する必要があると思ってたが······
ルシフェル《······言っとくけど貴方とクルルだけよ。この言葉で解除出来るの》
そこまで考えて術に組み込まれてたのか。
ルシフェル《因みに、貴方の場合はクルルと
な、何故そんな面倒なことを······?
ルシフェル《貴方がクルルを好きだったことはクルル以外の殆どが分かりきってたからねぇ。あの時のクルルは八幡の護衛を第一に考えてたから気付かなかったんだろうけどね》
恥ずかしい······。
そんなことがあったのか、と恥ずかしく思いながら柩が開いていくのを見ていると、蓋は幾つかに分かれてスライドし、そして柩の横に落ちた。
柩の中には、クルルと同じ色の髪をした女性が眠っていた。この女性の周りには沢山の花が敷き詰められており、やはり先程入れたとしか思えないような状態だ。
クルル「母さん·····」
クルルが女性の顔を覗き込む。クルルの母、666さんはクルルによく似ている。いや、クルルが似ているのか。クルルは母親に似たんだな。
ギャスパー「この人が······」
ヴァーリ「俺の母方の祖母にあたるというわけか」
ギャスパーとヴァーリもクルルに続いて顔を見る。
束「······この花、相当時間が経ってる筈なのに一切枯れてない」
クロウ「······この状態で700年以上保存されているのかもしれん」
束「あ〜、なるほどー。そういう術もあったね~」
束とクロウは敷き詰められている花を見て、一切枯れていないことを不思議に思っていた。クロウの考えで正解なのだが。
······お袋、この人にはどれくらいの封印術式が掛けられているんだ?
ルシフェル《······神によって、数千はくだらない数よ。一応、神にバレない範囲で術を少しは解除しといたけど》
あんた天使長のくせして神への忠誠心なかったのかい。それはそれで驚きだわ。
ルシフェル《最初はあったわよ。最初は》
最初だけ············
八幡「······どうする? 見たところ
666さんを見てからクルルに尋ねる。
クルル「······そうね。それに、ここは元の世界との時間の流れが違う可能性もあるし、下手に長時間い続けるのは危ないかも。次元の狭間を通る必要もあるし」
八幡「そうだな」
その後、柩を一旦閉じて、俺達は『世界の最果ての地』を後にした。
尚、柩も調べたいので一旦運ぶ際に閉じたのだが、閉じる時の呪文的な奴は『カーユ』だった。お袋···いくら身内だからって単純すぎだろ。
一度冥界の屋敷に戻り、クルルより年上である、クロウ、ティア、メリオダスに666さんのことを一応聞いてみたが、3人とも『ヨハネの黙示録』や『創世記』などに記載されている以上のことは知らなかった。
又、広義的に見れば、黙示自体は『ヨハネの黙示録』以外でも何度も起こっているため、666さんが何故必要となったのかは、管理を任されていたお袋も知らなかった。
取り敢えず、何事もなくクルルが666さんと再開出来たことを今は喜ぶべきだろう。
八幡sideout