イレギュラーは家族と共に 〜ハイスクールD×D'sバタフライエフェクト~ 作:シャルルヤ·ハプティズム
間違えて、執筆途中に投稿してしまいました。申し訳ございません。
クルルside
私には両親との記憶がない。いや、実際にはあるにはある。が、両親の顔だけはベールが掛かったようになって思い出せない。
幼い頃。それも、やっとまともに会話が出来るような頃までしか両親はいなかったのだが。
八幡に記憶を読んでもらっても、記憶のベールは一切紐解かれることはなかった。
アシェラ『────君の面倒を見てあげるよ。よろしくね』
クルル『うん!』
その人と初めて会ったのは5歳の時。頭を撫でられて気持ち良かったことは未だに鮮明に覚えている。
クルル『······おにいちゃんはおなまえなんていうの?』
舌っ足らずの口を懸命に動かして名前を聞いた。名前を聞くと、その人は私の目線に合わせてこう言った。
アシェラ『僕? 僕はアシェラって言うんだ。アシェラ・ツェペシ。君の名前は?』
その人はアシェラ······アシェラ・ツェペシという名前で。アシェラは私の名前を聞いてきた。
クルル『わたしはクルル!』
父と母が何度も丁寧に教えてくれた名前を口にした。
アシェラ『······そうかクルルか。よろしくね、クルル』
アシェラは満面の笑みで私に答えた。アシェラの笑顔を見て私の心は暖かくなったのを感じた。
この日、クルル・ゼクスタはクルル・ツェペシとして『帝ノ月』に迎えられた。
クルル『······わたしもお兄ちゃんみたいにたたかえるようになりたい!』
アシェラ『え······えええ?』
グレン『おい······これ大丈夫なのか?』
『帝ノ月』に来て1年くらいたった頃。私は兄さんにそう言った。そして、兄さん含めその場にいた全員をおおいに困らせた。特に、兄さんと、兄さんの部下だったグレンと深夜は、周りより更に困ったらしい。
小百合『グレン様、どうするんですか?』
グレンの従者である
グレン『どうするってもなぁ······あくまで決めるのはアシェラだからなぁ』
深夜『そうだねぇ······あくまで僕らはアシェラの部下だからねぇ······どうするの?』
アシェラ『う、う〜ん。どうしたものか······』
クルル『······だめ?』ウルッ
アシェラ『う、わ、分かったよ······ただし、少しだけだからね?』
クルル『やったぁ!』
この時の私は涙目+上目遣いで兄さんに頼んだと思う。勿論、この時はそんなテクニックなんて分かるわけがない。今だったら普通に八幡に対してならやっているが。
······と言うか、こんなことを頼む子供は普通はいないと思う。
『『『『『弱っ······』』』』』
兄さんは立場や仕事があったため、直接鍛えてくれるってことは中々なかったけど、そんな時は兄さんの部下達が代わる代わる見に来てくれた。
兄さんの同僚である
周りの優しい人達に囲まれながら、私は色々な物を吸収していった。
だが、そんな日々は何の前触れもなく崩れて消えた。
アシェラ『·····逃げるんだクルル』
クルル『やだよ!! 兄さんも一緒に!!』
その日、『帝ノ月』は襲撃を受けた。襲撃してきたのはたった1人の女だった。たった1人の女が、だ。
だが、その女の強さは異常だった。
暮人『······クソッ』
体中血塗れで倒れ伏す暮人。
グレン『······あ~くそ。体が動かねぇ。もう痛みも感じねぇ·····』
片目が潰れ、両足のないグレン。
深夜『ハハ······僕なんかもう意識が消えそうだよ······』
右手と左足が不自然な位置で途切れている深夜。
『······くふっ。ここま、で私を、追い詰め、たこと、は賞賛、に、値する、わ』
クルル『兄さん!! しっかりして兄さん!!』
そして、2本目の刀を握る右手以外がない兄さん。
自分の服を破って、止血しようとするが、兄さんは首を横に振った。
アシェラ『······ごめんクルル。僕達はもう······』
兄さんはそうこぼして自分の胸に刀を突き立てる。
クルル『兄さん!? 何やってるの兄さん!!』
アシェラ『クルル······』
兄さんは自分の胸に刀を突き刺した。
クルル『兄さん·····!! 兄さん!!』
兄さんは私の頬に手を添える。そして微笑んだ。
アシェラ『クルル·····ありがとう』
兄さんの体が刀に吸い込まれ始める。兄さんは自分を『
クルル『兄、さん·····? 兄さん!! 兄さぁぁぁぁん!!』
そして、兄さんは完全に刀に吸い込まれた。
クルル『兄さん······うぅっ、あぁぁぁぁぁぁッ!!』
兄さんが吸い込まれた刀を手に、死にかけの女に斬り掛かる。
『······ふふふ』
クルル『ッ!!?』
その時、女から感じたのは、圧倒的なまでの死の恐怖。死にかけとは思えないような圧倒的なまでの殺意。
だが、女は私を目にすると目を見開き呟いた。
『君、は、生かして、おいて、あげ、る。『世界の最果ての地』、で、待って、いる。私、の、名は『
そこで私は意識を失った。
意識を失っている間、夢を見た。
兄さんが、グレンが、
皆の『鬼呪装備』が、意識を失った私を守るように地面に突き刺さっていたことを知るのはすぐのことだ。
そして、私が次に目を覚ました時、ルシフェル様の夫である、
クルル『·······んん』
時宗『······お、起きたか?』
目を覚ました私に、短い黒髪の男性が話し掛けてきた。
クルル『······誰······?······ッ!!?』
時宗『·····おいおい落ち着け』
激しく取り乱しそうになった私を男性は優しく収めた。
クルル『あぁ······すいません。えっと、ここは?』
時宗『お前が倒れてたからな······ここは冥界の俺の家だよ。ああ安心してくれ。お前には決して何もしていない』
どうやらここは私を保護した男性の家らしい。
クルル『ううっ······』
そうだ······寝惚けた私を優しく起こしてくれる兄さんも、一緒に巫山戯てくれる友達も、一緒に特訓してくれる人も、もういないのだ。
ここの部屋を見渡してそう思った。思わずしていられなかった。これからは独りを受け入れざるを得ないのだ。
·······寂しさで潰れてしまいそうだ。
兄さん······皆·······
時宗『お、おいどうした? どっか痛むか?』
クルル『いえ······何でもありません。すいません······』
何とか涙を堪えて、男性の問に答える。
時宗『そうそう、いきなりで悪いんだけど、あんたが気絶してた周りに色々突き刺さってきたから全部持ってきたんだけど、マズかったか?』
男性が立て掛けてあった袋の口を開ける。
そこにあったのは、漆黒の、刀や銃や斧や槍や······
そこで私は夢の内容はこのことを指しているのだと気付いた。
クルル『ううっ、うあぁぁぁ······』
大粒の涙が溢れた。
時宗『え? あれ? 持って来ちゃまずかったのか?』
そう言ったが、男性は私が泣き止むまで、それ以上は何も言わなかった。
クルル『······いえ。持ってきていただいてありがとうございます。これは私が預かってもいいですか?』
時宗『あ、ああ。それは勿論だ。それより、何で彼処に倒れてたか聞いてもいいか? 彼処は先日壊滅した『帝ノ月』っていう組織があったと聞いているが······』
クルル『はい。私は······』
嘘を付いている様子もなかったので、私は何があったのかを話すことにした。
時宗『そうか······そんなことが······』
クルル『·······はい。あまり聞いていて面白い話でもないでしょうが』
私が今まで過ごしてきたこと。『帝ノ月』がどうあったのかを、全て話し終えた。
時宗『いや、軽率に聞いちまった俺が悪いな。すまない』
クルル『いえ······』
男性は顔には出していないものの、心中では複雑だろう。この話は聞いていて面白いなんて普通なら言わないだろう。
時宗『それと、あんたこれからどうするんだ? あまり言いたくないが······聞いている限りだと、あんたもう帰る場所ないんだろ? アテがあるんなら、送っていくぐらいはしてやれるが······』
男性の問に、無様に生き残った自分のことが、頭から完全に抜けていたことに気付いた。
これからどうすればいいだろう。
私は、生かしてくれた兄さん達の分まで生きなければならない。
だが、生きるためには、当たり前のことだがお金が必要だ。今の私には収入がない。『帝ノ月』と親交が少なからずあった組織に雇ってもらう? おそらく無理だ。それに、あの女が『帝ノ月』以外の組織も襲撃する可能性がある。
······絶対に自殺はしない。したら、兄さん達の頑張りを全て無駄にしたことになる。
時宗『······ないんならうちに来るか? うちにはちっちゃい子が2人いるから相手してくれれば助かるんだが。下の子はまだ赤ん坊だしな』
悩んでいると、男性から驚くような提案をされる。
クルル『それはありがたいですが······』
そこまでしてもらうのは罪悪感がある。この人は何故ここまでしてくれるのだろうか。
時宗『ならこうしよう。あんたには、あんたの家族が宿った武器で、うちの息子の護衛をして欲しい。当然見合った報酬は出すし、この部屋をそのまま生活に使ってくれて構わない』
クルル『······分かりました。そこまで言われてしまった以上、ありがたくその話を受けさせていただきます』
そこまで言われると、断ることも出来そうにない。
時宗『改めまして、比企谷時宗だ。これから宜しくな、クルル』
そして、私は護衛という名目で、比企谷家に迎え入れられた。
更に、後の夫である八幡ともこの時に出会った。
ここが、私の新たな原点となった。
八幡「······クルル、そろそろ行くぞ」
兄さんとルシフェル様から自分の真実を聞かされた。
改めて自分がこうして生きていることを噛み締めながら、思い出に耽っていた。
クルル「······分かったわ八幡」
八幡に呼ばれて、八幡に駆け寄る。
八幡「どうかしたのか?」
クルル「何でもないわ。少し昔を思い出していただけよ。ご主人のが······時宗様が私を迎え入れてくれた時とか」
八幡「······そっか」
クルル「······ええ」
八幡「行くか」
クルル「母さんに会いにね」
私は、これから『世界の最果ての地』に封印された母に会いに行く。
『四鎌童子』との因縁を果たすことになるかもしれない。母を滅しなくてはならないかもしれない。
覚悟はある。
でも、本心を言えば ······母に会って、私を生んでよかったのかを知りたい。
少しは立派になったと自慢したい。
そして何より────
───大好きな家族の自慢がしたい。
クルルsideout
???side
「うひゃひゃひゃひゃひゃひゃ。でぇ? この俺に会いに来たっつー理由は何~? つーかあんた誰?」
「ねぇ、私は興味ある娘がいるんだけど、その娘を殺したいの」
「ふ〜ん。その娘って誰。ってか、先ず名乗れよあんた」
「その娘の名は『クルル・ツェペシ』。いや······『クルル・ゼクスタ』」
「おっ、まじでー? クルルちゃんか~」
「そして私の名は────『四鎌童子』」
???sideout
実は次回の展開が決まっておりません。拍子抜けするような展開になるかもしれないです。