イレギュラーは家族と共に 〜ハイスクールD×D'sバタフライエフェクト~   作:シャルルヤ·ハプティズム

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第60話 クルルの後悔

 

 

 

 

 

クルル「······精神空間?」

 

八幡「ああ、俺の精神空間に潜ってくれ」

 

日本神話、須弥山、悪魔が会談によって協力態勢を敷いた翌々日。

 

俺はクルルにそう切り出した。

 

八幡「詳しい話はそっちでする。お袋に掛けられた封印が解かれたんでな」

 

クルル「?······何かこっちじゃ出来ないような話があるのかしら?」

 

八幡「······まぁそうだな」

 

京都から駒王に帰って来、今家にいるのは俺達2人だけだが念のため。

 

クルル「······分かったわ」

 

クルルは右手に黒い鞘に納められた刀を手に持ち、俺の肩に逆の手を置き目を閉じる。

 

 

 

精神空間に潜るには、『鬼呪装備(きじゅそうび)』という物が必要である。

 

『鬼呪装備』とは、簡単に言えば、『鬼』と呼ばれる特殊な種族になるための儀式を経た人間を武器に封じ、『鬼呪(きじゅ)』という特殊な力を宿した武器のことを指す。又、『鬼呪装備』は言ってしまえば、封印系の神器(セイクリッド・ギア)に近い。

 

『鬼』となり『鬼呪装備』の中に封じられた者も意識はしっかり存在し続けており、『鬼呪装備』の所有者の精神空間を形成することが可能になる。これも一部の神器とほぼ同じ。

 

所有者は『鬼』と契約を交わすことで、『鬼呪装備』の力を引き出せるようになる。尚、一つの『鬼呪装備』でも契約を交わせば何人でも使うことが可能だが、契約を交わさず使おうとすると、精神を破壊される。

 

『鬼』と契約を交わしている者は、『鬼』が複数の人物と契約している場合に限り、自分以外の『鬼』との契約者に触れることで、『鬼呪装備』を介して他者の精神空間に潜ることが出来る。

 

クルルが持った刀は、『鬼呪装備』の中でも屈指の力を持ち、最高位にあたる『黒鬼』の『阿修羅(あしゅら)(まる)』だ。封印されている『鬼』はクルルの義兄(あに)であるアシェラ・ツェペシ。

 

彼はクルルを守るため、自ら『鬼呪装備』の中に封印された。それについてはまたいつか······

 

 

 

 

八幡「······クルルは気分大丈夫か? 普段は俺がクルルの精神空間に(勝手に)引っ張りこまれてるが、こうして俺の方に来ることはほぼないからな」

 

クルル「······ええ、大丈夫よ」

 

クルルを俺の精神空間に潜らせた。後はお袋が寝てなければ、お袋に一部説明してもらいたい(お袋は意識体のくせに普通に眠る)。

 

「お〜い。僕を忘れてイチャイチャしないでくれるかい?」

 

そこにもう1人の声が響く。振り向けば、黒い長髪に、クルルと同じ赤い瞳の男······クルルの義兄で、『阿修羅丸』に封印されている『鬼』のアシェラ・ツェペシがいる。

 

八幡「忘れてない忘れてない。義兄さんのことなんてこれっぽっちも忘れてないから安心しろ」

 

アシェラ「······そんな棒読みで言われてもねぇ。説得力皆無だよ八幡」

 

クルル「まぁ、兄さんも途中から来たのがいけないのよ。最初から私達と一緒にいればいいのに」

 

アシェラ「あれ······多少気を使おうかと思った矢先に、妹夫婦が辛辣だよ」

 

義兄(にい)さんは毎度毎度似たようなことをやっている気がするが······妹に強く当たられて喜ぶ性質(タチ)なのか?

 

アシェラ「違うよ!?」

 

一々心を読むな。読めるからって。

 

アシェラ「······で、態々ここにクルルを呼んだ理由はなんなのさ。自分の口から言いたいだけなら、遮音の結界張るだけでもいいだろ? まぁ八幡の記憶から、僕は何がしたいか分かってるけどさ。クルルに教えてあげなよ」

八幡「すぐに分かるって······お袋」

 

俺が今日ここに態々クルルを連れてきた理由······それは、お袋をクルルに会わせるためだ。

 

ルシフェル《······ふぁ。呼んだ八幡?······って、クルルじゃないの。久しぶりね。未だに八幡はクルルに世話になりっぱなしみたいね》

 

お袋を呼ぶと、お袋は欠伸をしながら現れる。ここは俺の精神空間なのに、お袋はこの中で割と勝手にしている。そして、意識体のくせに睡眠が必要らしい。生前の習慣がぬけなかったのか。

 

クルル「······う、そ」

 

アシェラ「······やぁルシフェル。700年ぶりかな? 今ではお互い肉体を失っているとはね。ビックリだ」

 

お袋を見て目を見開くクルルと、目を細める義兄さん。

 

ルシフェル《······そうね。久しぶりアシェラ。そしてクルル、久しぶりね。八幡を支えてくれたこと、感謝してもしきれないわね》

 

······? お袋は義兄さんと会ったことがあるのか?

 

クルル「······ルシ、フェル、様、どう、し、て······?」

 

ルシフェル《様なんて付けなくていいわよ······今の私は、生前の(ルシフェル)が八幡に掛けた封印の制御装置にすぎない。単なる残りカスが八幡の力を受けて消滅せずに残っただけよ。こうでもしないと、八幡以外には会えないような矮小な存在》

 

お袋は目を細めて言う。

 

クルル「そんなこと·········ッ、ルシフェル様······申し訳ございません。あの時私がいれば、ルシフェル様は······」

 

「「《!?》」」

 

クルルはお袋に謝罪の言葉を口にした後、土下座してお袋に謝罪した。突然のことに、俺達は驚いた。

 

クルルが謝ることじゃない。クルルは俺から離れられないのに、お袋達から離れた俺が悪いのだ。それを言おうとして、先にお袋が口を開いた。

 

ルシフェル《はぁ······貴女も八幡と全く同じことを言うのね。クルル、頭を上げなさい。いい? 私が死ぬことは貴女が生まれる前から決定していた。貴女はそれを承知の上で八幡の護衛を引き受けた。今更私のことなんて気にしないでいいの》

 

クルル「ですが······」

 

八幡「クルル······そんなこと······」

 

アシェラ「はぁ、クルル、ルシフェルがここまで言ってるんだから、頭上げなよ。これ以上言ったら君に八幡を託したルシフェルに失礼になるよ」

 

呆れたように義兄さんが言って、やっとクルルは頭を上げた。

 

ルシフェル《こっちを見なさいクルル》

 

クルル「······え?」

 

お袋はクルルをそっと抱き締めた。子供を優しくあやすように。 それに対して、クルルは何が何だか分からないとでも言うような表情を浮かべる。

 

ルシフェル《貴女には感謝してる。貴女は自分が一番辛い時期なのにも関わらず、何も言わずに八幡の護衛を引き受けてくれた。感謝しかないの。私なんかに頭下げちゃだめよ》

 

クルル「ルシフェル様······はい」

 

ここにクルルを呼ぶ前にお袋から聞いた。

 

当時は分からなかったが、昔のクルルは俺達家族に対して一線引いていた。それは、お袋を仕事の上司として見ているからであり、クルルが自分の感情から目を背けていたからであり、ある種の自己防衛だという。

 

ルシフェル《······もう一つ、貴女に言わないといけないことがあるの》

 

そしてお袋は更に切り出した。

 

クルル「?」

 

アシェラ「ルシフェル、それは僕から言わせてもらってもいいかい? 兄として、僕がクルルに伝えなきゃと思うんだ」

 

ルシフェル《······分かったわ。お願いね》

 

八幡「······俺が言わなくていいのか?」

 

俺が言うべきかと迷っていた。

 

ルシフェル《これは貴方ではなく、私やアシェラが直接伝えなければならないこと》

 

アシェラ「そうだね。肉体をも失った僕に出来る数少ないことだからね」

 

クルル「八幡は知っているの? 兄さんが何を言うつもりなのか」

 

八幡「ああ······昨日お袋から聞いた」

 

この場においてクルルだけが知らないこと······昨日までは俺も知らなかったことだが。

 

アシェラ「クルル、君の両親のことだよ」

 

クルル「······ッ!!」

 

アシェラ「ずっと黙っていたことなんだけどね······君に話すよ。あれはもう700年も前─────」

 

義兄さんはそうして語り出した。

 

 

クルル・ツェペシは如何にしてツェペシとなったのか。

 





ここで一旦切ります。次回はクルルの過去回。クルルの両親が判明します。まぁ、間接的に答えを書いていたので、分かってる人が大半だと思いますが。

次回はルシフェル視点かアシェラ視点になる予定。


補足説明

鬼呪装備(きじゅそうび)

700年以上前に活動していたとある組織によって研究されていた対人外用の装備。

特殊な儀式によって、『鬼』という種族になった人間が封印されており、『鬼呪』という特殊な力が宿っている。所有者は『鬼』と契約することによって、装備ごとに様々な力を引き出すことが出来る。
又、『鬼』は複数の者と契約することが可能。

人工神器(セイクリッド・ギア)に近い。

尚、『阿修羅丸(あしゅらまる)』以外にも『鬼呪装備』は複数あるが、現在は現存する物全てをクルルが所有。


キャラ設定

アシェラ・ツェペシ

クルルの義理の兄。彼はある事件で死にかけ、自ら『鬼呪装備』となったのだが、詳しくは次回。


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