イレギュラーは家族と共に 〜ハイスクールD×D'sバタフライエフェクト~   作:シャルルヤ·ハプティズム

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今回は絶対に万人受けしないだろうなぁ(今までと対して変わらないけど)。

あと、設定で、鬼呪装備は(ブラック)トリガーみたいな物って最初書きましたが、紆余曲折の結果原作通りの設定に戻っております。大変申し訳ございません。

尚、閑話を読んだ上で読むことをお勧めします。



第56話 心の光

 

 

 

クルルside

 

 

クルル「······危なかった」

 

九重「······クルル?」

 

ぎりぎり防御が間に合った私は、九重を抱えて八坂から距離を取る。まさか、『魔の鎖(グレイプニル)』で力を押さえ付けているのに、あそこまで力が出るとは思わなかった。

暴走させた際に何か別の術を掛けたのか、元々八坂の力を見誤っていたのか。

 

クルル「九重、この際貴方がどうしてここにいるのかは聞かない。貴方も八坂を助けに来たんでしょ?」

 

九重「も、もちろんじゃ!! 母上は私が救いたい!!」

 

クルル「······分かったわ。なら、八坂を取り敢えず押さえないといけないわね」

 

九重を地面に降ろし、魔法を発動する。

 

クルル「『光矢伝達(ブロードキャスト)』」

 

八坂に向けた右手の指から光が飛び出し、八坂の頭に繋がる。反対の手でも発動し、こちらは九重の肩に手を置く。

 

クルル「九重、心の中で八坂に語りかけなさい」

 

九重は、不安がりながらも頷き、瞑目した。

 

九重『母上······母上······!! 聞こえますか、母上!! 九重です······』

 

九重が八坂に語り掛ける。『光矢伝達』を通して仲介している私にも九重の声が聞こえてくる。ただ、八坂からは反応がない。暴走して自我が飲まれているという可能性もある。

 

九重は涙混じりに続けた。

 

九重『もう、我が儘は言いません。嫌いな魚だって食べます。夜中に京都に飛び出すことももうしません···········だから、どうか、いつもの母上に戻って下され······九重を、許して······母上······』

 

九重は何度も何度も八坂に謝り続ける。

 

······というか、この子、夜中に京都に飛び出すとかやんちゃしすぎじゃない? それとも、このぐらいの年の子はそれぐらいが普通なのかしら?······オーフェリアもヴァーリもギャスパーもそんなことなかったから······いやヴァーリは違うか。

 

クルル『八坂···私からも頼むわ。九重を許してあげて。そして、この子を抱き締めてあげて』

 

九重『クルル······』

 

その時だった。

 

『······九、重』

 

微かにだが、八坂の声が私達に、確かに聞こえた。

 

九重『母上!! 九重はここにいます!! 母上!! また歌を歌って下され!! また舞を教えて下され!!······また母上と一緒に、京都を、この都を歩きたいのです······!!』

 

その時、九重と八坂を淡い光が包み込んだ。そして、八坂の体は光を発しながら、徐々に人型に戻っていった。

 

倒れそうになる八坂の体を支える。序でに、『魔の鎖』も解除した。

 

八坂「ここは······クルル? お主いつの間に京都に来たのじゃ?」

 

クルル「はぁ、よかった。意識もある」

 

八坂「?」

 

そこに、九重が八坂に駆け寄り、抱きつく。

 

九重「母上ぇ······母上ぇぇぇっ!!」

 

八坂「九重どうしたのじゃ······全く、お前はいつまで経っても泣き虫じゃのぅ」

 

八坂は九重を優しく抱き締め、そっと頭を撫でた。もう大丈夫だ。私は、八坂から少し離れて地面に座り込んだ。

 

八坂「それにしても、いったい何がどうなっておる? 確か······天帝の使いと対談しにいった筈······」

 

クルル「ああ、それは······」

 

そこまで言いかけた所で、突如、とてつもないオーラを感じた。寒気がするような、この感じはまさか······サマエル!?

 

クルル「八坂、話は後よ。暫く九重とここにいて。メリオダス!!」

 

メリオダス「ああ!!」

 

進路上にいた、(たばね)が戦っていた図体がデカい男······ヘラクレスを思いっきり殴り飛ばしつつメリオダスと、サマエルのオーラを感じた所に向かって駆けた。

 

束「······うん。相変わらずくーちゃん容赦ないな〜」

 

 

 

クルルsideout

 

 

 

 

 

 

 

 

八幡side

 

 

 

「······ん。は······ん。起きなさい八幡」

 

八幡「······ぅん?」

 

誰だ······? 俺はサマエルに飲み込まれた筈だ······というか、サマエルに飲み込まれたのは俺1人の筈なのに、何で誰かいるんだ?

 

「やっと目覚めたわね。大丈夫? 八幡」

 

八幡「······お袋?」

 

目覚めた俺の視界に入ったのは金髪の女······忘れもしない、俺の母親のルシフェル(リーラ)、その人だった。周りとの光量もあって、顔が見えるまで少しフリーズした。

 

······色々聞きたいことはあるが、先ず第一に、お袋の顔がこの位置にあるってことは、俺はお袋に膝枕されてるのか······この歳にもなって。いや恥ずいわ。

 

取り敢えず起き上がる······誰に見られているわけでもないが、あのままだと恥ずかしくて俺の精神が削られそうだ。

 

ルシフェル「貴方······いつまで寝ぼけてるの? 貴方には私以外の誰かに見えるの······って、ちょっと。何で泣いてるの?」

 

八幡「······は?」

 

自分の頬を触ってみると、俺は泣いていることが分かった。

 

ルシフェル「どうかした? ここは貴方の精神空間だけど、私がいて何か不調でも出た?」

 

八幡「あぁいや、嬉しいんだよ。死んだお袋に会えるなんて夢にも思ってなかったから······

 というか、やっぱここ俺の精神空間なのか。どうりで見覚えがあると思った」

 

前後左右上下の概念が一切ないこの真っ白な空間に、俺はいた。

 

 

ここは俺の精神空間だ。鬼呪装備(きじゅそうび)の中でぐうたらしてる鬼達によく引きずり込まれる。クルルのとこではやらないくせに。だが今回は、俺とお袋しかいないらしかった。

 

八幡「······色々聞きたいこととかあるが、取り敢えず、お袋、ごめん。すまなかった」

 

お袋に土下座して謝る。俺は、お袋に謝らないといけない。

 

 

そして、俺はずっと謝りたかった。

 

 

ルシフェル「······何が? 貴方私に何か謝らないといけないようなことでもしてた? 貴方の中から見てる限りそんなことしてなかったけど」

 

八幡「お袋が死んだあの日、俺はのうのうと遊んでた。お袋が、親父が、小町(こまち)が、死の恐怖に飲まれていたあの時俺は1人のうのうと······」

 

涙をボタボタ溢しているが気にせずもう一度謝ろうとした時、俺はお袋に抱き締められていた。

 

ルシフェル「······バカねぇアンタ。それを言うなら、原因である私が謝らなきゃいけないじゃない」

 

八幡「お袋······?」

 

 下手くそな作り笑いを浮かべて、お袋は言う。

 

ルシフェル「私が死ぬのは、八幡が生まれるより前から決まってたのよ。貴方のせいじゃない。一番悪いのは······時宗(ときむね)と小町を道ずれにした私ね」

 

八幡「そんなこと······」

 

ないだろ。言おうとしても、お袋は首を横に振った。

 

ルシフェル「今言った通り、私は死ぬことが決まっていた。それでも時宗が私を選んでくれて、貴方と小町が生まれた。私にはそれだけで十分」

 

だからね。と言ってまたお袋は続ける。

 

ルシフェル「生き残ってくれた貴方に残した力を、今解き放つわ」

 

八幡「それってオーディンも言ってた、俺に掛けた封印か?」

 

あのじいさんは、以前俺に封印が掛けてあると言っていた。

 

ルシフェル「ええ。と言っても、消滅する筈だった私の断片がこうして存在している段階で、貴方に必要だったのか分からないけどね」

 

そう言ってお袋は俺の頬にそっと触れる。

 

八幡「······!!」

 

その瞬間、俺の頭の中に膨大な情報が流れ込んできた。

 

お袋から俺に継がれた『権能(・・)』。

 

闇に葬られた禁術、秘術。

 

聖戦(せいせん)、今やほぼ死に絶えたと言ってもいい魔神族、女神族。

 

蒼き革新の箱庭(イノベート・クリア)』と、『究極(テロス)の羯磨(・カルマ)』の能力と特性。

 

神とお袋、ミカエル、アザゼルによって封印された『黙示録の皇獣(アポカリプティック・ビースト)666(トライヘキサ)······っておいおいマジかよ。

 

しかも、力が溢れてくる······? これは封印されていた本来の俺の力······?

 

お袋が俺の肩に手を置きながら言う。

 

ルシフェル「······色々聞きたいこともあるだろうけど、それは後でね。貴方の肉体は『光』で保存されてるから安心して。でも八幡、一つだけ約束して。貴方もさっき分かっただろうけど、クルルはあいつと人間の男との間に生まれた()()()なの。あの子は、バケモノと謳われた者の子。絶対にクルルの手を離さないで」

お袋は不安そうに俺に言ってきた。

 

 

 愚問だな。

 

八幡「······そんなこと百も承知だ。別にお袋に言われなかろうがクルルが何者だろうが、俺がクルルから手を離さないことは変わらん。俺とクルルは夫婦で、俺からあいつから離れることは絶対にない。逆も然りだ。それに、クルルはバケモノなんかじゃねえよ」

 

ルシフェル「······そう。なら良かった。じゃあ貴方は戻りなさい。取り敢えず、馬鹿やった子供にお仕置きしてきなさい。

聞きたいことがあったらまたここに来ればいいわ。本当なら、封印を解除したら私は消滅する筈なんだけど、貴方の力が強すぎたせいで、意識の断片でしかない私もある程度意識としては貴方の精神空間限定で存在を確立してるようなの。そうそう、鬼呪装備を経由すれば八幡以外もここに来れる筈よ」

 

 何で鬼呪装備が必要なのかは知らないけど。とお袋は続けた。

 

八幡「······ああ、分かった」

 

封印の際に、お袋は自分の意識を2つに分割して、片方を俺に掛ける封印の制御装置にしたらしい。本来、この封印が消滅すると、お袋の意識の断片も一緒に消滅する筈だったらしいのだが、俺から流れた力が封印とお袋の意識にも影響を与えて、不安定だったお袋の意識の断片は存在が安定したとか。

 

八幡「·····んじゃ、行ってきます」

 

ルシフェル「······行ってらっしゃい」

 

視界が光で染まる。俺は精神空間から現実に引き戻された。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

八幡「······サマエルの毒が消えた?」

 

俺が目を覚ますと、そこは再びサマエルの舌の中。だが、さっきまで感じていた意識が飛ぶような激痛はもう感じない。お袋が光力か何かで、防御膜でも張っていたのだろう。

 

······今思ったが、意識体のお袋は俺の力に干渉出来るのか。存在が確立されたからか? まぁ、今はありがたい。

 

手からすり抜けたエクスカリバーを掴み、エクスカリバーに聖剣の因子を流し込む。

 

八幡「よし、ここ破壊して······!!」

 

 サマエルの舌で形成された球体を切り刻む。真っ黒だった空間は呆気ないほど簡単に切れた。毒が効かなければ、所詮はその程度だ。

 

 

曹操「この短時間でサマエルの毒を克服したのか!!?」

 

曹操とゲオルクが俺を驚愕の目で見ている。シャルバとクルゼレイは気絶している。俺が意識を失ったせいで『魔の鎖』の拘束は消えているが、2人は出血多量で卒倒したのか? だが意識はないようだし気にする必要もなさそうだ。

 

セラフォルー「······ハチ君?」

 

ガブリエル「あれは······」

 

アザゼルとコカビエルの戦いは決着が付いたらしく、コカビエルは倒れ伏していた。アザゼルも鎧がかなり損傷していたことから短時間で、相当切迫した戦いだったようだ。消耗しているのが見て取れるほどに。

 

八幡「······さて曹操。覚悟はいいな?」

 

曹操「そう思い通りにはいかないか······」

 

 

 

俺はエクスカリバーを曹操達に向けた。

 




八幡に掛けられた封印ですが、話の中で説明されたことで全てです。(それ以上の設定を決めなかったとも言う)

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