イレギュラーは家族と共に 〜ハイスクールD×D'sバタフライエフェクト~   作:シャルルヤ·ハプティズム

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一身上の都合で暫く不定期更新になります。更新速度は月2くらいになります。ご了承ください。




閑話 母の願い②

リーラ(ルシフェル)side

 

 

リーラ「······八幡偉いわ。母さんの代わりに小町のこと見ててくれたのね」

 

八幡「うん。お母さんお料理してて大変そうだったんだ。それに小町寝てるし」

 

全く、可愛いわねこの子達ったら······

 

 

 

私が堕天してから4年。堕天使組織───『神の子を見張る者(グリゴリ)』のトップをアザゼルに押し付けてから、三竦みのトップ陣営に気取られぬように生活していた私達には娘が産まれた。名前は小町。八幡より3歳年下だ。

 

 

 

リーラ「夕食にしよっか。父さん呼んできて」

 

八幡「分かったー」

 

そう言い残しまだ4歳の八幡はとてててと可愛く走りながら時宗の書斎に向かった。

 

私は基本家にいて、子供2人を見ている。時宗は、グレモリー卿の仕事の手伝いをしていた。住む場所まで提供してくれたグレモリー卿に申し訳ないと思い、好意に甘えさせていただいた。私も家で出来ることはやっているし、外での仕事も身分を隠して手伝っている。まさか、天使長だった時の真剣に逃げ出したくなるような量の事務作業を捌いていた時の経験がこんな所でも役に立つとは思わなかった。

 

料理をテーブルに並べて、小町の様子を見に行く。まだ寝ているようだ。

 

時宗「······今日も美味そうだな」

 

八幡「お母さんの料理は何時でも美味しいもん」

 

リーラ「ありがとう2人とも。早く食べよっか」

 

この時の私は間違いなく幸せだった。愛する夫と可愛い子供2人に囲まれて。

 

 

だが、それは束の間の幸福だった。

 

 

 

········いや、それは堕天した時点で、本能で分かっていたことだった。それでも、最後は家族と一緒にいたかった。

 

 

 

 

 

 

────突然だった。本当に、何の前触れもなく────

 

 

 

「天使長ルシフェル様とお見受けします」

 

リーラ「·····誰だ!!」

 

ある日、1人の男が訪問して来た。

 

 

·······唯一の幸いだったことは八幡がクルルと共に出掛けていたことだろうか······

 

 

「私、『(あまつ)の月』より要請を受けました。アリガルと申します」

 

リーラ「天の月······!!?」

 

その男の目を見た瞬間私は悟った。この男は私達を殺しに来たのだと。

 

天の月は、以前耳にしたことがあった。無数にある教皇下部の組織の中の、過激派だと。そして、事実上ウリエルの管轄下であることも。

 

ウリエルに、嗅ぎ疲れた······!?

 

 

小町「ママ、どうしたのー?」

 

騒ぎが聞こえて、お昼寝中だった小町が目を覚ましてしまった。

 

リーラ「小町来るな!! 時宗!! 急いで小町と逃げて!!」

 

時宗「どうし······!?」

 

一瞬、目を離したのがいけなかった。

 

アリガル「······なるほど。この子が天使の面汚しですか。報告では兄がいた筈ですが、あなた方が何処かにでも逃がしたのでしょう」

 

小町「あっ······がっ······」

 

その男──アリガルと名乗った男──が次に言葉を発した時、奴は小町の首を掴んで締め上げていた。

 

いつの間に······!!

 

時宗「お前·····!!」

 

アリガル「あなたがあの女の夫ですか·····ほう。滑稽もいいところだ!!」

 

奴は小町を適当に捨てるかのように放り投げて、時宗の懐に入り込んで時宗を切り裂いた。

 

時宗「があっ·······!?」

 

時宗が崩れ落ちる。

 

アリガル「クククッ·····アハハハハハッ!!」

 

リーラ「それはっ······!?」

 

私は奴が手にしている物を見て驚愕した。

 

奴の手に握られていたのは光の剣だった。

 

アリガル「改めまして私、座天使のアリガルと申します」

 

奴の背中には上級天使であることを示す4枚の純白の羽が生えていた。

 

リーラ「なっ······!?」

 

ヤバい·····()()()()()今の私ではこいつに勝てない······悪魔である時宗もまだ倒れてはいないが、今の一撃で相当なダメージを負った。

 

せめてクルルがいれば······いや、クルルにはこのまま八幡を連れて遠くに······小町······

 

 

アリガル「私、あなたを筆頭にあなたとあなたの御家族を始末するように頼まれておりまして」

 

奴の持つ光の剣が小町の背中に突き刺さった。

 

時宗「!!? ······おぉ前ぇぇぇぇえっっ!!!」

 

リーラ「なんてっ、ことをっっっ!!!」

 

私と時宗が同時に魔力を纏って飛び掛った。だが、向こうの方が早く、私達は蹴散らされた。時宗が更に切り付けられ玄関の方まで吹き飛ばされ、私も光の剣の餌食になってしまった。

 

リーラ「時宗、小町······がはっ」

 

奴の光の剣が私の背中に突き刺さった。奴は光の剣をぐりぐり捻る。その度に私の体には激痛が走る。

 

 

 

 

·······どれだけやられたか分からないが私の体はもう指一本も動かなくなった。

 

 

·······時宗、八幡、小町、クルル、ごめんね······あなた達は何も悪くないのに。私がここにいたせいで······

 

 

クルル·····せめて八幡だけでも連れて出来る限り遠くに逃げて······

 

 

自分の体が冷たくなるのを感じながら私は息絶えた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

リーラ「······ん、これは······」

 

私は目覚めた。あまりにも強烈な怒りと殺意を感じて。

 

 

·······私は八幡に厳重な封印を掛けていた。八幡の身に宿る()は到底1人が持てるものとは思えないほど強大だ。八幡には力に溺れて欲しくなかったため、ある条件下でのみ解除されるように設定して封印を掛けたのだ。それはヴァルハラで八幡にミーミルの泉の水を飲ませてからなので、大幅に寿命を削る禁術なのだ。解除条件は八幡に死の危険が迫った時にした。

 

そして、封印が解除される頃には、私はもういないだろうと分かっていたので、自分の意識の一部を剥離させて封印の制御装置にした。それも大幅に寿命を削るものではあったが、やらない選択肢はなかった。

 

目覚めた私は、剥離した意識の残りカスのようなものなのだ。

 

「······許さない」

 

リーラ「八幡······?」

 

「······殺す」

 

どうやら、八幡の強い感情が封印を中途半端に破壊したらしい。力が漏れ出ている状況だ。

 

八幡の視界を共有する。八幡は気付いてないだろうが。

 

八幡の強い感情が向く先にいたのは『ウェールズ』に出て来る赤い龍と白い龍だ。二天龍、と称されたムゲンの次に強いとされる圧倒的強者。

 

そして、八幡のすぐ側には血を流し続けているクルルがいた。それだけで八幡の怒りと殺意の理由は分かった。

 

······そう八幡。何をしてでも守りたい人·······一緒にいたい人を見つけたのね。

 

八幡『······汝らを我が名の下に······封印せしめん』

 

八幡は2体の龍を切り刻んで、一つは籠手、もう一つを鎧の破片に封印した。

 

 

八幡······漏れ出た力だけでここまでのことを······ごめんね。私は死んでもあなたを縛ってしまう。

 

でももうあなたは守りたい人、支えたい人がいるのね。もう、私の出る幕はなさそうね。

 

······クルル·····八幡の側にいてあげてね······八幡、クルルと支えてあげてね。2人とも、末永く生きなさいね。

 

 

そう思って封印の脆くなった部分を構築し直すと、私自身もまた意識を閉ざした。

 

 

 

リーラsideout

 

 

 

母は「生きて」と願った。死してなお子を想う母の、最後の願いだった。

 

 

 




『天の月』

天界の下部組織の一つであり、過激な思想をもつ者が集まりやすい組織である。主への信仰を裏切ったとして元天使長ルシフェルの抹殺を座天使アリガルに要請した。また、アリガル自身も天界では過激派思想をもつ者だった。



八幡に掛けられた封印は色々とおかしいところがありますが、流して下さいませ。

前話でルシフェルがヤハウェに言ってたことの大半は自分の堕天後の場所を誤解させるために言ったことです。ルシフェルは『神の子を見張る者(グリゴリ)』を創るだけ創って、後はアザゼルに押し付けて自分は雲隠れしました。

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