イレギュラーは家族と共に 〜ハイスクールD×D'sバタフライエフェクト~ 作:シャルルヤ·ハプティズム
八幡「······着いたぞ、オーディン」
オーディン「おぉ、やっとかの。ジジイの老体には応えて仕方ないの」
オーディンは腰を擦りながらスレイプニルが引く馬車を降りる。
八幡「嘘つけ」
この程度で体に響くわけないだろうが······
俺はオーディンとそのお付きのヴァルキリーのロスヴァイセを連れて、2日ぶりに日本に戻ってきた。これなら、一昨日の秘密会談の後すぐに帰国しても良かったかもな。
そういや、そろそろソーナ達のレーティングゲームが始まる頃か?
八幡『······クルル、今日本に戻ってきたんだが、ソーナ達のレーティングゲームってもう始まってるのか?』
クルルに連絡を入れる。にしても、魔法使わなくても地球の裏側のやつと会話出来るとか、本当に便利な時代になったもんだな。携帯とかPCとか使う度に思うし。携帯ゲーム機ですらネット通信当たり前だからな。
それにしても、オーディンは何故レーティングゲームを観たいだなんて······オーディンからしたら、他所の国の若いのが喧嘩してるだけに見えてもおかしくないんだが。
クルル『·····まだ始まってないわよ。後20分くらいで始まるけど、観たいんなら早くしなさい。始まっちゃうわよ』
八幡『サンキュ』
もうそんな時間なのか······オーディンがスカイツリー見たいだなんて言わなきゃ、ゲーム前にオーディン含めた会談が出来たのになぁ······
クルル『それで、収穫はあったの?』
八幡『もちろん』
クルル『そう。学園で待ってるわ』
八幡『ああ』
そう言って通話を切る。
オーディン「······お主の妻か?」
隻眼の爺が、つまらなそうに聞いてくる。
八幡「まぁな。レーティングゲームなら後20分で始まるそうだ。良かったな間に合って」
オーディン「そうかの。楽しみじゃわい」
目に見えてオーディンの機嫌が変わるのが分かる。子どもか、こいつは。
ロスヴァイセ「オーディン様!! 遊びに来たわけではないんですよ!?」
そうだな。こいつ、日本神話とも同盟結びたいって言ったよな?
ロキの気持ちがよく分かるわこんなんじゃ······
オーディン「固いのぅ······だから彼氏の一人もできないんじゃよ」
ロスヴァイセ「······うぅっ、私だって好きで処女じゃないんですよー!!」
この2人いつもやってるな。飽きないのか?
オーディン「はぁ······」
八幡「あんたいい加減、お付きいびりやめてやれよ······はぁ、行くぞ」
オーディン「ほれロセ。シャキッとせんか」
この爺容赦ねぇな。ロスヴァイセも長くて後2、3ヶ月でお付きの仕事辞めるな、こりゃ。
ロスヴァイセ「ううっ······」
八幡「はぁ······元気出せよロセ。お前なら良い男すぐに見つかるだろ」
ロスヴァイセ「ううっ······ありがとうございます」
その後、5分で駒王学園に到着。終始ロスヴァイセは涙目だった。なんとか涙は収まったらしいが。
予め指定されていた部屋に入ると、壁にモニターが5つ設置されており、その部屋にはサーゼクス、セラフォルー、アザゼルがいた。いくつかある空席の一つは、ミカエルのものだろうな。
八幡「······よ、アザゼル、サーゼクス。1ヶ月ぶりだな。クルル、ただいま」
クルル「ええ八幡。おかえりなさい」
今日のレーティングゲームは、サーゼクスやアザゼルはここで観る。この場で他にいるのは、クルルだけ。グレイフィアは今回も審判なのだろう。
見当たらないグレモリー眷属とシトリー眷属でそれぞれ最後の打ち合わせでもしてるのか。因みに、後1時間したらミカエルも来るよう呼んである。
アザゼル「ああ······ってヴァルハラなんてお前は何を······何でオーディンが」
オーディン「久しいのう悪ガキ。ま〜た小賢しいことでも考えとるのか?」
アザゼル「ハッ!! しきたりやら何やらで古臭い田舎神話と違って、若輩者は敵対意識より勢力の発展を優先したのさ」
何故こうもオーディンのじいさんは口が減らないのか。アザゼルも、何か知らんが敵対心を持ってるし。話がまるで進まないぞこれじゃ·····
サーゼクス「お久しゅうございます、北の主神オーディン様」
サーゼクスがオーディンに挨拶する。何故アザゼルはこんな風に出来ないのか。
オーディン「サーゼクスにセラフォルーか。1ヶ月ぶりじゃの」
セラフォルー「お久しぶりでございます、オーディン様」
サーゼクスに続いてセラフォルーが挨拶する。
サーゼクス「時にオーディン殿。何故このような場に?」
オーディン「何、お主らの身内同士でレーティングゲームをやるそうじゃが、わしも興味があっての。それを話したら此奴が案内してくれることになっての」
サーゼクス「そうですか」
セラフォルー「ハチ君······いつの間に?」
八幡「一週間前にな。まあ、少しあったんだよ」
旧魔王派壊滅させたり、オーフィスが脱退したりと、少しどころの話じゃないがな。でも旧魔王派壊滅させたのもまだ言ってねえや。このじいさんに言ったぐらいか。ウチの話聞くか、『
アザゼル「オーディン連れてくることの何処が少しだよ、ったく······」
八幡「お、始まった」
スクリーンには、両陣営が転移されたところが映された。
······さて、誰がどうなるか。見物だな。
八幡sideout
イッセーside
今回のゲームの舞台は、学園の近くにあるデパートを模したものだった。
両陣営の転移されたところが本陣らしい。俺達の本陣は2階の東側。会長達の本陣は1階西側。ここに来ると、『
尚、『今回はバトルフィールドを破壊し尽くさないこと』という特別ルールが設けられたため、俺、部長、朱乃さん、ゼノヴィアにとってはかなり不利だ。俺達の得意な面攻撃を封じられたに等しい。又、ギャスパーの眼は使えず、アザゼル先生特製の神器封印メガネを掛けている。
イッセー「······弱ったな。俺力抑えて戦う練習なんて一切してないぞ」
リアス「それについては仕方ないわね。ただし、
イッセー「はい」
キツイな······禁手化までの時間稼ぎ以前の問題かもしれないぞ? これ。木場みたいな戦い方が出来ればよかったんだけどな······アザゼル先生が言ってた『絶対』がないって意味がよく分かった。
リアス「攻めるのには吹き抜けのショッピングモールが厄介ね。立体駐車場もある」
朱乃「そうですね。屋上も注視する必要がありますわ」
木場「立体駐車場の車は存在するんでしょうか」
部長、朱乃さん、木場の主導で作戦会議を行う。
車······即席の盾とかにも使えそうだな。流石に、モール内を突っ切ったりは出来ないだろうけど。
リアス「裕斗は先ず屋上と立体駐車場を見てきてちょうだい。ギャスパーはコウモリに変化して、デパート各所に飛んで、逐一様子の確認を」
ギャスパー「はい」
ギャスパーは部長を許したらしい。昔何かしらあったらしく、八幡とクルルさんが険しい顔をしてたのはまだ記憶に新しい。あの顔は······俺もその場にいたけど、正直思い出したくない。
リアス「ゲーム開始は15分後。開始5分前になったら集合して。それまでは各々リラックスしていてちょうだい」
部長の言葉により、一度解散になった。が、俺だけ呼び止められた。
リアス「イッセー、禁手に至ったことで『兵士』の駒8個の力は全て解放されているわ。ただし、貴方の体はまだ追い付いていない。気を付けてちょうだい。赤龍帝の力は、使い方を誤ればあなたを滅ぼすかもしれないものよ」
イッセー「分かりました、部長」
今は無理でも、いずれドライグの力を使いこなせるようになりたい。元々、俺の駒8個分はドライグの価値も同然だ。ドライグの力を使いこなすことが俺の真価だ。肝に命じないと。
イッセーsideout
八幡side
グレイフィア『開始のお時間となりました。このゲームは制限時間の3時間の
グレイフィアのアナウンスが入り、ゲームが始まる。
今回は短期決戦か。ルール的にグレモリー側の勝ち目はないに等しいと言える。
ギャスパーには、あんま無茶して欲しくないんだがな······
サーゼクス「リアス·······」
セラフォルー「ソーナちゃん·······」
シスコン'sは妹が心配らしい。斯く言う俺も、ギャスパーが心配だ。もしリタイアしたらどうなることか。そういや、このゲームは冥界にも放送されてるけど、黒歌は見てんのか? あいつ、今仕事ないしな。
オーディン「······にしても、大事な親友同士というのにぶつけおって質が悪い。流石は悪魔じゃの」
サーゼクス「酷ではありますが······このぐらい突破してもらわないと悪魔の未来が危ぶまれるというところです」
妹関連なら、すぐに見境なしになるとばかり思っていたが、意外に冷静だな。
セラフォルー「うちのソーナちゃんが勝つに決まってるわ」
オーディン「頼もしいのぉ」
リアス・グレモリー側は各自動き出す。イッセーと塔城が店内から。木場とゼノヴィアが立体駐車場を経由か。ギャスパーはコウモリになって監視。頑張ってんな。リアス・グレモリーと姫島とシスター・アーシアは待機している。
イッセーと塔城は物陰に隠れながら進んでいく。走らないようにしているのは足音を押さえるためだな。まだまだだが。木場とゼノヴィアは、立体駐車場を車を陰にしながら移動している。
匙『───兵藤か!! まずは一発だ!!』
慎重に進んでいた兵藤と塔城に、ラインをターザンのように利用した匙が2人に奇襲をかける。兵藤はそれを籠手でガード。匙の背には生徒会の1年がくっついていた。
兵藤は蹴られた衝撃でぐらついている。ぎりぎりで気付いたところを見ると、2人とも魔力の感知は大の苦手らしい。塔城も仙術は使ってるだろうが、まだまだ甘い。黒歌に比べたらな。
匙『よう兵藤』
イッセー『よぉ匙』
兵藤の籠手にはラインが繋がれており、既に力を吸われ始めているのだろう。兵藤の右手にも繋がっているが、それは匙ではなく別の所に繋がれていた。兵藤は、自力での破壊は断念したらしく、意識を匙本人に戻していた。
しかし、呑気にも匙と睨み合いながら話している。ラインはどこに繋がって······あぁなるほど。そんな手があったのか。
この勝負、グレモリーの負けがほぼ確定したんじゃないか? グレモリー側は、兵藤を落とされた時の作戦の立て直しが甘そうだしな。
その時、グレモリー陣営の『僧侶』がいきなりリタイアした。リアス・グレモリーの所にシスター・アーシアがいる。ということは······ギャスパーか!! さっきの様子だとニンニクを利用されたっぽいな。
夏休みの特訓は人に慣れることと『
で······ギャスパーをリタイアさせた奴後でちょっと面貸せ。殺さないでやるよ。
その一方、兵藤は禁手化のためか、籠手に数字が表情された。クルルの話によると、兵藤は禁手化するまで2分も要するらしい。まあ歴代も最初はそんなもんだったな。寧ろ、歴代では短い方か。兵藤は距離を取って時間稼ぎをしようと考えたようだが、ラインに阻まれた。そのまま、匙はラインごと兵藤を引っ張り、思いっきり腹に蹴りを食らわせた。
その直後、匙にくっついていた1年───仁村というらしい───が匙にサングラスを投げ渡した。何かと思ったら、匙がラインを、近くの家電屋のライトに繋いで、即興の閃光弾にした。その直後、匙のアッパーがイッセーに刺さった。
その一方、木場とゼノヴィアは立体駐車場を進んでいた。そして、長刀を持つ副会長、ソーナの『
椿姫「ごきげんよう木場君、ゼノヴィアさん。御二方はここに来ると思っていました」
更に2名、『
木場は聖魔剣、ゼノヴィアはアスカロンを抜いて構えた。その次の瞬間、木場と副会長、ゼノヴィアが『騎士』と剣を交えた。『騎士』はゼノヴィアの持っているアスカロンに気付くと、一旦即座に後退した。
中々いいな。ゼノヴィアはデュランダルに頼った戦い方だが、今回のルールには適さない。まだデュランダルのオーラを制御出来ないだろうし。イッセーの所にアスカロンがないことがどう影響するのか見物だな。
そのまま攻防は続く。グレモリー側の2人は一太刀浴びせるだけで勝てるため大幅に有利だが、そう簡単にはいかないだろう。ふと、ゼノヴィアが空間に穴を開けた。なるほど。デュランダルの性質を利用するのか。ゼノヴィアは、アスカロンにデュランダルのオーラを纏わせる。
ゼノヴィア『くらえっ!!』
ゼノヴィアが一瞬の隙を見逃さず詰め寄るが、ソーナの『戦車』が間に割って入って、ゼノヴィアに向かって両手を突き出した。
由来『
ゼノヴィアはアスカロンを振ったが、聖のオーラが消えて、魔のオーラに変化した。どういうことだ? 堕天使はまだ、『反転』はまだ研究段階だった筈だが······
八幡「アザゼル、いつの間に『反転』を実証段階まで持ってったんだ?」
アザゼル「俺はまだ研究段階だ。俺がアレを渡したわけじゃない」
八幡「うぅん······?」
じゃあ誰だ?『
······それとも、危険だと最初から分かっているから外部の者を実験台にしてデータ収集ってか。だが、それならこいつらじゃなくてもいくらでも······
裕斗『───デュランダル・バース!!!』
考え事をしていたら戦闘が進んでいたらしく、木場の背中側に空いた空間の穴から漏れ出している聖のオーラが『
状況の不利を察した女王は、撤退を決め込んだ。
ゼノヴィア『木場······いい、攻撃だった』
裕斗『ああ、僕達2人なら、また聖なる剣の華を咲かせられるさ』
木場に抱えられたゼノヴィアの体が光り出し、粒子になって消えた。
グレイフィア『リアス・グレモリー様の『騎士』一名、リタイア』
木場が女王を撤退に追い込んだ直後。
匙『······俺達の夢は笑われるために掲げたわけじゃないっ!!』
ボロボロになりながらも匙は兵藤に殴りかかっていく。その度に禁手化が間に合ったらしい兵藤に殴り飛ばされる。匙の顔は腫れ上がっており、歯はボロボロ、口からは血が垂れている。
それでも、自分達の掲げた夢を笑われた屈辱から立ち上がり、また殴りかかっていく。
イッセー『俺は笑わない!! 命かけてるお前を、笑うわけねえだろ!!』
匙『───俺は!! お前を超えていく!!』
殴りかかっていく匙をイッセーは迎え撃つ。何十発も撃ち込まれたが、匙は膝を付かない。眼光は依然として全く鈍らない。
オーディン「面白いのぉ······ヴリトラ系神器所有者か。彼奴のようなやつが強くなる」
クルル「将来、大物になりそうね」
八幡「そうかもな」
クルルとオーディンの呟きに軽く首肯する。逸脱したとも言える程の匙の気迫。自分の命を削ってまでここまで出来るやつは今時そうはいない。居られても困るが。
イッセー『来い匙ィィィッ!!! こんなところで終わりか!? 俺達に出来ることなんて突っ走るだけの筈だ!!』
匙はそれに答えるように1歩ずつ前に進んでいく。
イッセー『匙······俺はお前を倒す!!!!』
匙は折れ曲がった腕を懸命に振るい、パンチを繰り出した。イッセーはそれを最小の動作で避けて、匙の顔面にカウンターを食らわした。しかし、意識を失い、体が倒れながらも、両の腕でイッセーの右腕を掴んでいた。そして、右腕から手を離さないまま、匙の体は光に包まれ、消えた。
グレイフィア『ソーナ・シトリー様の『兵士』1名、リタイア』
────この場にいる全員が匙 元士郎の戦いから目を離すことはなかった。
作者はイッセーよりも匙が好き。