イレギュラーは家族と共に 〜ハイスクールD×D'sバタフライエフェクト~   作:シャルルヤ·ハプティズム

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本当は6,000文字くらいで出すつもりだったんです。はい(結果10000文字という)。

サムネは今までの過去回が安直すぎたんでほんの少し捻ったら関連性が薄いものになるという。

1/6 読み返したら違和感が凄かったので加筆修正しました。



第33話 ようこそ我が家へ

 

 

ヴァーリside

 

 

ギャスパーが弟になって1年と少し経った。家にもすっかり馴染んだ。俺も『お兄様』と呼ばれるようになった。

 

 

そんなある日のことだった。ギャスパーが体中傷だらけの黒猫を拾ってきたのは。

 

八幡「······ギャスパー、その黒猫はどうした?」

 

ギャスパー「偶々、家の近くで見つけたんです」

 

八幡「······分かった。傷の処置してやるから客間に」

 

ギャスパー「はい。ありがとうございます」

 

若干苦しいような気もした父さんの言葉を疑問に思わなかったのか、、ギャスパーは黒猫を連れて客間に行った。

 

ヴァーリ「······父さん。今の猫絶対ただの猫じゃないよ」

 

八幡「流石に気付いたか」

 

気付いていたらしい。あの猫······ボロボロになっているのに纏っているオーラの量がかなり多かった。

 

クルル「·····この娘じゃない?」

 

母さんが携帯に表示させた写真を見せてきた。そこには、

 

『SS級はぐれ悪魔:黒歌』

 

という悪魔の使う文字と共に、俺と同じくらいの歳に見える女の子の写真が映っていた。

 

はぐれ悪魔とは、()()()()()眷属悪魔の中で主に危害を加えた者や、脱走した者のことを指す······

 

八幡「かもな」

 

ヴァーリ「SS級って最上級クラスでしょ? ······何であんなに?」

 

SS級ともなれば、単に脱走したのではなく大きな力を持つ───つまり、高い危険性があるということだ。

 

クルル「そう、ね······」

 

八幡「理由は何となく分かるが······」

 

父さんが言葉を濁した時に、玄関のチャイムが鳴った。

 

ヴァーリ「? 誰だろ」

 

八幡「俺が出るよ。クルルとヴァーリは先にギャスパーのとこ行っててくれ」

 

クルル「分かったわ」

 

母さんが了承したところで、父さんが玄関のドアを開けた(何故か幻術を発動して)。

 

母さんは意に介さず、救急箱を持って先に行ってしまった。俺はどうすればいいか分からず、立ち止まっていた。

 

「突然で申し訳ございません」

 

チャイムに鳴らしたのは若い女性で、その後ろには薄ら笑いを浮かべている男性がいた。

 

八幡「······何か?」

 

「この付近で黒猫を見かけませんでしたか? このような見た目なのですが」

 

女性は一枚の写真を父さんに見せてきた。遠目だが、写真にはさっきギャスパーが拾って来た猫が映っていたのが見えた。こんな猫どこにでもいると思うんだが······

 

八幡「見てないぞ。というかこんな猫、何処にでもいないか?」

 

「·····そうですか。お時間を取らせてしまい申し訳ございませんでした。失礼します」

 

女性と後ろにいた男性はそう言って去っていった。

 

 

ヴァーリ「······父さん、よかったの?」

 

八幡「何が?」

 

ヴァーリ「あの人達が捜してたのって、ギャスパーが拾って来た黒歌ってはぐれ悪魔でしょ?庇ったりしたらまずいんじゃない?」

 

SS級のはぐれ悪魔を庇ったりしたら父さんの立場がかなり不味いと思うんだけど······

 

八幡「ん~···まあ、大丈夫だろ」

 

ヴァーリ「どうして?」

 

八幡「後で説明してやる。とりあえずギャスパーのとこ行くか」

 

父さんは、黒歌という娘の事情を知っているようだった。

ヴァーリ「あ、うん」

 

 

 

クルル「······これで大丈夫よ」

 

ギャスパー「ありがとうございますお母様」

 

俺と父さんが部屋に着いた時には、母さんによって応急処置が終わっていた。一部包帯が巻かれていたが、回復魔法を掛けたのだろう。すぐによくなるだろう。

 

クルル「ギャスパーはこの子を見てて。私は夕食の準備をしてくるわ」

 

ギャスパー「はい」

 

八幡「俺も」

 

態とやっているかのように、父さんと母さんは部屋を出て行った。

 

ヴァーリ「······あ、えっと、何かあったら呼べよ」

 

ギャスパー「? はい」

 

何も知らないギャスパーと違い、寝ている猫がSS級のはぐれ悪魔だと知っている俺はいたたまれなくなり、部屋を出た。傷は回復していても、あの傷を負っていたならすぐには動けないだろうから、ギャスパーは大丈夫だろう。けど······

 

 

ヴァーリsideout

 

 

 

 

 

ギャスパーside

 

 

 

お父様とお母様が部屋を出ていった直後に慌てながら次いでお兄様が出て行った後も、傷だらけだった黒猫を看ていた。

 

ギャスパー「······綺麗な毛」

 

黒い毛並がとても綺麗だった。吸い込まれそうになるくらい綺麗だと思った。そっと撫でてみた。撫で心地がとても気持ちよくて、何時まででも撫でていれそうだったけど猫が起きたことで止めることにした。

 

「にゃ········」

 

ギャスパー「あ、起きた?」

 

「にゃにゃ!!!?」

 

目を覚ました途端、黒猫は飛び上がって僕を睨め付けた。

 

ギャスパー「こ、怖がらないで!!」

 

慌てたけど、初めて見た人間を怖がらない訳がない、と気付き一周回って僕が冷静になった。

 

ギャスパー「あ、ごめんね。ボロボロになって倒れてたからお父様に無理を言って連れて来たんだ」

 

お父様もお母様も負担だなんて思ってないだろうけど、突然連れて来た僕が言えることじゃない。

 

「にゃ······にゃ、にゃ」

 

ギャスパー「大丈夫、看病してるだけだよ」

 

実はさっきお父様達が話していることを聞いてしまった。少なくとも、お兄様は気付いてなかったようだけど。

 

ギャスパー「()()()()()()()()()ことだけは保証するよ。黒歌」

 

何となくだけど、はぐれ悪魔になったことには事情があると思う。でなければ、すぐに追い出す。SS級なんて僕如き一瞬では殺されてしまう。

 

「にゃ!? ······いつから気付いてたの?」

 

ギャスパー「僕が気付いてたわけじゃないんだけど······」

 

黒歌「?まあいいか。とりあえず、傷を治してくれたのは感謝するわ。でも、ここにいるわけにはいかない」

 

ギャスパー「······もう行くの? 君の主が君を捜してたよ?」

 

部屋の窓が空いていて、お父様が喋っていたのも全部聞こえていた。お父様が黒歌を知らないと言ってくれたのは助かった。でも、お父様はこれくらい見越していると思う。

 

黒歌「······もう主じゃない」

 

黒歌はそう言って起き上がり空いている窓から出て行こうとした。したが······

 

黒歌「······体が動かない」

 

ギャスパー「家の近くで倒れてたんだよ? 体中傷だらけだったし」

 

この辺りまで逃げて来たことを考えると、かなりの長距離を移動したことになる。そもそも今いるのは人間界で、冥界ですらない。

 

黒歌「······でも、動けるようになったらすぐに出て行くわ」

 

黒歌は強情で、それでも出て行こうとした。

 

八幡「悪いがそれはさせられないな」

 

それを止めたのは入ってきたお父様だった。おそらく、途中から話を聞いていたのだろう。お父様はそういうことを偶にやる。

 

 

黒歌「────何で」

 

八幡「気付かないか? この辺り一帯はお前の元主を始めとする眷属達がうろついてるぞ? 動けるようになったからってノコノコ出ていけば、今度こそ死ぬぞ」

 

黒歌「っ······でも、迷惑を掛けるわけにはいかないもの」

 

そこで反論に反論で返したお父様の言葉には、有無を言わさぬ説得力があった。

 

八幡「俺の目の前で死なせるわけないだろ。あと、お前の妹と思しき白猫ならサーゼクスが保護したらしいぞ」

 

黒歌「魔王ルシファー········それなら安心出来るの······?」

 

妹がいたんだ······もしかして、その妹の為に?

 

八幡「あぁ。言っとくが、ギャスパーが連れてきた段階で家のやつは全員お前の素性を知っている。だが、俺はお前が望んではぐれになったのではないと考えている」

 

黒歌「······ここにいていいの?」

 

八幡「お前が望むならな。少なくとも、お前が回復するまでは、ただのボロボロだった猫を保護したって押し通せる」

 

ギャスパー「これからどうするんですか?」

 

八幡「とりあえず、サーゼクスから黒歌の妹のことをそれとなく聞き出しておく」

 

お父様とお母様は魔王ルシファー様と友人らしいが僕とお兄様は会ったことがない。

 

黒歌「······どうしてそこまでするの?」

 

八幡「ん? そうだな······ギャスパーがお前を信頼してるから」

 

ギャスパー「え?そうだったんですか?」

 

そんな理由だとは思わなかった。お父様もお父様で何か思うところがあったんだと思っていた。

 

八幡「そりゃ、それ以外にもあるが······信頼してるわけじゃないのか?」

 

ギャスパー「いえ、信頼はしてますけど」

 

直感的に、彼女は信頼出来ると分かった。今は僕達に敵意を向けてるけど、きっと······

 

黒歌「何で今日会ったばかりの私を信頼出来るの······?」

 

ギャスパー「悪い人には見えないし」

 

八幡「そういや、黒歌ってヴァーリより歳上らしいぞ」

 

ギャスパー「え!? すいません、同い年かと思ってました······」

 

猫の状態だと年齢分かんないし······

 

黒歌「別に今更。そのヴァーリってのはよく分かんないけど」

 

ギャスパー「僕のお兄様です。凄く強いんですよ」

 

お兄様の特訓風景は僕も偶に覗いている。お兄様は凄い強い。それでもお父様には全く歯が立たない。それに、もう禁手化(バランス・ブレイク)出来るらしい。僕は自分の中に眠る神器、『停止世界の邪眼(フォービトゥン・バロール・ビュー)』が怖くて使うことさえままならない。

 

黒歌「ふぅん······?」

 

と、お父様は黒歌······さんに尋ねる。

 

八幡「お前、飯はどうする? 食うか?」

 

黒歌「う······恥ずかしながら体が動きません」

 

黒歌さん、は恥ずかしかったのか顔を逸らしながら言う。

 

八幡「なら後でギャスパーに食べさせてもらえ。持ってきてやるから」

 

ギャスパー「僕がですか? ······あ」

 

流れ的にお父様が食べさせるのかと勝手に勘違いしていた。黒歌さんを連れてきたのは僕だ。僕がそれくらいの面倒を見ろ、と言うことだろう。

 

八幡「分かってるならいいが、ギャスパー、お前が連れてきたんだからな? 必要な物があるなら揃えるが、そこから先はお前がやるんだぞ?」

 

ギャスパー「分かりました」

 

八幡「うし。ならもう少ししたら持って来るからな。ちゃんと黒歌の分の飯も用意してあるから安心しろ」

 

お父様は、部屋のドアを開けながら振り向いて言う。

 

黒歌「ていうか、そこまでバレてるとは思わなかったにゃん」

 

八幡「オーラが明らかにそこらの野良猫のものじゃなかったからな」

 

それだけ言ってお父様は出て行った。

 

 

ギャスパー「······そう言えば、黒歌さんって何ではぐれになったんですか? あ、あの、良ければでいいですけど······」

 

自ら進んではぐれになるようには見えない。

 

黒歌「······ま、話してもいいか」

 

それから黒歌さんはぽつぽつと話し始めた。

 

黒歌「······きっかけは私の元主が原因だったわ」

 

 

 

ギャスパーsideout

 

 

 

 

 

 

黒歌side

 

 

 

きっかけは私の元主が原因だった。元主のたった一言だった。

 

 

『お前の妹使えそうだな······よし、『僧侶』と『騎士』は埋まってるから『戦車』にでもするか』

 

薄笑いを浮かべながら言うその姿に、どうしようもないほどの危機感を覚えた。

 

『どういうことよっ!? 妹には手を出さない契約だった筈よ!!』

 

『ククッ···眷属にするだけだ。特に問題ないだろう?』

 

 

それを聞いた私は即座に元主を攻撃して、妹の手を引いて逃げ出した。

 

私の元主は周囲の者に知れ渡るくらいの乱暴者で、眷属はいつも乱暴されていた(『女王』だけは例外だったけど)。妹である白音だけは、乱暴されずにいたのは幸運だった。

 

私は、白音の手を引いて走り続けていた。しかし、私は追手からの攻撃で吹き飛ばされそのまま白音とはぐれてしまった。止む無く、追手の部隊を全滅させ白音を捜しに引き返したが、そこで力尽き────

 

 

 

黒歌「······ギャスパーに拾われた、ってわけ」

 

話し終えて、嘆息をついた時に気付いた。

 

黒歌「······ギャスパー?」

 

ギャスパーに頭を撫でられていた。

ギャスパー「え?あ、すいません!! ······いつもお父様とお母様がこうしてくれると落ち着くんです」

 

どうやら、無意識の内に体が震えていたようだ。

 

······確かに、怖かった。下卑た男の笑い声も、そいつらが放つ魔力も。

 

 

黒歌「気にしなくていいわ。でも、もう少しだけお願い出来る?」

 

私は無意識の内に強ばっていた体から力を抜き、頭を少し下げた。

 

ギャスパー「こ、こうですか?」

 

そう言って、ギャスパーはまた私の頭を撫で始めた。

 

ギャスパーに撫でられたのはとても心地よかった。幼い頃母親が撫でてくれたのを思い出して、心が温まる感じがした。

 

 

そして私の意識は再び沈んでいった。

 

 

黒歌sideout

 

 

 

 

ギャスパーside

 

 

 

ギャスパー「·······黒歌さん?」

 

 

撫で心地がよくて撫で続けていたら黒歌さんはまた眠っていた。お父様やお母様が撫でてくれるようにやってみたのだが、本当に安らぐ効果があったみたいだ。

 

八幡「······夕飯出来た·······が」

 

お父様が呼びに来たけど、首を横に振る。

 

八幡「ギャスパーは夕食どうする?」

 

お父様が小声で聞いてきたけど一瞬考えた。

 

ギャスパー「······黒歌さんが起きてから一緒に食べます」

 

と答えた。きっと、一人で食べるよりは落ち着く。今は黒歌さんを一人にしない方がいいと思う。無理して出て行きそうだし、出て行っても見つかるだけだから。

 

八幡「······分かった。クルルとヴァーリにはそう伝えとく。後で2人分持っていくからな」

 

ギャスパー「ありがとうございます。そう言えば、黒歌さんのはぐれって取り消せるんですか?」

 

黒歌さんは仕方なくはぐれ悪魔になったのだ。事情を伝えればはぐれ悪魔としての認定を取り消せるかもしれない。

 

お父様は、少し考え込んでから言った。

 

八幡「出来ないってわけじゃないが······証拠が足りない」

 

ギャスパー「······そうですか」

 

やはり難しいらしい。しかもSS級の認定をされてしまった。かなり困難なのかも。

 

八幡「······だから今証拠を探ってる。既に桃花と勝永に調査に向かってもらった」

 

ギャスパー「!! ······ありがとうございます」

桃花さんと勝永さん。お父様の眷属の人達だ。実力は折り紙付きで、最上級悪魔以上らしい。

 

八幡「シッ。黒歌が起きちまう」

 

ギャスパー「あ······」

 

八幡「にしても、やけに黒歌に入れ込むな」

 

ギャスパー「そうですか?」

 

自分ではそんな風に考えてなかったけれど······

 

八幡「惚れたか?」

 

ギャスパー「んぅ!!?」

一瞬大声を上げそうになった口を手で塞ぐ。

 

八幡「お前の人生だからな。ダメなんて言わないよ」

······黒歌さんの話を聞いて、好きとかそういうの抜きで、黒歌さんを支えられたらって思った。

 

ギャスパー「······? 分かりました」

 

八幡「ならいい」

 

お父様は僕の頭をワシャッと撫でてから部屋を出て行った。

 

 

結局、夕食を食べたのは10時前になったけど黒歌さんの話を聞けたから、その選択は成功だったと思う。

 

 

 

 

ギャスパーsideout

 

 

 

 

 

 

 

八幡side

 

 

 

ギャスパーが黒歌を家に連れてきてから、一週間が経った日。

 

 

俺は勝永と桃花を呼び戻して、報告を頼んだ。

 

勝永「······あまり時間が無かったものですから、この程度しか集められませんでした」

 

桃花「八幡、本来ならもっと時間を掛けるものなんですが」

 

溜息を漏らしながら桃花は言う。

 

八幡「いや、こんだけ揃ってんなら十分だ。悪かったな。無理言って」

 

ここ一週間、勝永と桃花には黒歌の元主が黒歌、及び妹の白音に何をしたのかや、元主の眷属に対する処遇などを調べてもらっていた。

 

桃花「それにしても急ですね。何かありましたか?」

 

あったあった······惚れたかとか適当に言ってみたが、ギャスパーは、黒歌を()()()重ねていたんだろう。

 

八幡「ああ。ギャスパーがな」

 

『ガタッ』という音と『そんな······』というクルルの声がしたのにも気付いてない。

 

勝永「彼ももうそんな年頃ですか」

 

八幡「"普通の”子供ならこれくらいの歳には初恋ぐらいするだろ」

 

俺はもっと小さい頃だったと思うが。

 

桃花「······そんなこと今はいいでしょう。それより、はぐれの認定解除はどうするんですか?」

 

八幡「ああ、明日にでも黒歌の元主に話をつけに行く」

 

桃花「話で分かるならこんな事態になってはいないと思いますが」

 

八幡「だろうな。そこはメリオダスとミカに頼む」

 

 

うちの眷属でも指折りの武闘派の2人だ。特にミカ。完全な戦闘屋だ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

翌日。俺は黒歌を連れて黒歌の元主の下を訪れていた。

 

 

 

八幡「······帰っても大丈夫だぞ? 俺一人でもやりようはあるし」

 

 

メリオダスとミカはいつでも出れるように幻術で姿を晦ましながら待機している。

 

黒歌「······だ、ダイジョブよ。白音も無事に保護されたって言ったのはあんただし。とりあえずはあんたを信じることにする」

 

黒歌は若干震えながらも、深呼吸してしっかりとした口調で答えた。

 

八幡「そうか。なら行くぞ」

 

黒歌「う、うん」

 

 

俺と黒歌は、元主とやらが所有する屋敷に入っていった。

 

 

 

 

八幡「······ジェロマ・リバートリンだな」

 

ジェロマ「ええ。私がジェロマ・リバートリンでございます。堕天魔殿」

 

俺の目の前に座っている、胡散臭い笑みを浮かべた金髪の初老の男。黒歌の元主のジェロマ・リバートリン。

 

リバートリン家は、確かナベリウスの分家に取り入った家だった筈だ。そのナベリウスもネビロスの配下だが、俺が言えたことではないがきな臭い噂が絶えない。

 

八幡「早速だが本題に移ろう······こちらが要求するのは、黒歌のはぐれ悪魔の認定の取り消しだ。無論、そちらの要求も出来る限り呑むつもりだ」

 

とりあえず口上を述べる。目の前の男が実際はどんな性格をしてるのかまだ計り兼ねている。

 

ジェロマ「そうですか······なら、こちらの要求は黒歌の身柄」

 

黒歌「っ!!」

 

八幡「······あ?」

 

······は?

 

ジェロマ「聞こえませんでしたか?ならもう一度言いましょう。こちらの要求は黒歌の身柄。黒歌を引き渡すならはぐれ悪魔としての認定を解除しましょうということですよ」

 

そういうことね······結局は、黒歌は立場をいいことに利用され続けていたと。そして、妹の白音に利用価値を見出したこの男から白音を守るために黒歌は脱走したと。

 

······つまり、こちらの交渉に応じる気は毛頭ないわけだ。

 

八幡「······それは無理だな」

 

ジェロマ「おや?何故です?」

 

八幡「条件に追加しなかった俺も悪いが·····その要求には『黒歌の心身の安全』が含まれていない。白音のもな」

 

黒歌を引き渡した後でこいつが黒歌に乱暴するかもしれない。いや、もうされている可能性も······

 

ギャスパーは、()()()()()()()()()()()って聞いたらしいし。

 

 

ジェロマ「······ならどうします?たった2人でノコノコ敵陣のど真ん中にいるのに······まあいいでしょう。あなたの首を取って上層部に差し出せば、私の立場は不動の物となる」

 

黒歌「お前っ!!」

 

ジェロマ「さあ行けっ!! 愚かな男の首を取れ!! 金なら追加でいくらでも払う!!」

 

こいつの狙い俺の首かよ······まあいいや。お陰で楽に証拠集めも出来たことだし。

 

八幡「······残念だったな」

 

ここの応接室の扉が開き、メリオダスが入ってくる。

 

メリオダス「八幡、何か武装してる奴が50人くらいいたから全員気絶させといたけどよかったか?」

 

2人の後ろには倒れている男が多数。どうせ目の前の奴が雇ったのだろう。悪魔以外の気配もするし。

 

八幡「ああ、サンキュー」

 

「······殺さないって命令だけど、いいの? 起きたらまた殺しに来るよ?」

 

八幡「それは問題ない」

 

2人の後ろに転がっている奴等に光の矢を降らせる。何も直接当てるわけじゃない。脇だの股だの等の隙間に降らせるのだ。当然、少しでも動けば、特に悪魔なんか触れた部分から消滅していく。

 

「なら問題ないね」

 

そう言って、ぶかぶかのジャケットから木の実を取り出して食べ始めたミカ。

 

三日月・オーガス。訳あって俺の『兵士』に転生した元人間だ。うちの眷属の中では中堅の実力だが、いざ戦闘になれば、巨大なメイスで敵をなぎ倒し、太刀を振るって敵を切り裂き、神器も使って敵を駆逐していく。うちでは、メリオダスとよく組手をしていたりする。

 

 

八幡「······どうやらお前が雇った奴等は全員のびているようだが?」

 

ジェロマ「なっ!! ······こうなったら私が!!」

 

八幡「無理だな」

 

ジェロマ「!!?」

背後に回り込んで『塵外刀(じんがいとう)(しん)(うち)』をこいつの首に突き付ける。塵外刀変化はしていないので、俺の身長よりデカい刀を突き付けていることになる。

 

 

八幡「さあどうする?黒歌のはぐれを取り消して2度と近付かないことを誓うか、今この刀の錆になるか、好きに選べ。一つ言っとくが、先に手を出したのはそっちだ。これは正当防衛にあたる」

 

ジェロマ「クッ·······そちらの要求に従う」

 

その言葉を聞いて、殺気をぶつけつつこいつから離れる。

 

八幡「そうか。いい返事が聞けて俺も満足している」

 

そう言って、懐から『僧侶』の駒を放り投げる。

 

八幡「『僧侶』のトレードだ。黒歌は俺の眷属という名目で俺の保護下に入れる」

 

ジェロマ「······いいでしょう」

 

念には念を入れる。元はぐれだろうがなんだろうが、これで次こいつが攻撃を仕掛けて来た時に、正当防衛で眷属を守るという大義名分を得た。

 

八幡「3人共、帰るぞ」

 

メリオダス「おう」

 

三日月「······つまらなかったな」

 

黒歌「えっ、ちょっ待っ」

 

俺にメリオダスとミカが。遅れて黒歌が付いて来る。

 

と────

 

ジェロマ「クソッ······クソックソックソォォォッ!!!」

 

突然叫び出したジェロマ・リバートリンが魔力で攻撃してきた。それは冷静さを欠いてるからなのか、刀を振って簡単に消せる程弱い攻撃だった。

 

三日月「あ〜あ」

 

八幡「型式『揚羽』」

 

持っていた『塵外刀・真打』が細身の黒い刀身に変わる。

 

八幡「『黒丸(こくがん)』」

 

周囲に浮いていた鉄粉が幾つかの球体を形成し、一斉に飛んでいく。奴は『黒丸』を攻撃するも、全て避けられ、『黒丸』の直撃により、ダメージを食らう。殺しはしないが。

 

三日月「殺さなくていいの?」

 

三日月が冷たい目であいつを見下ろしている。まあ気持ちは痛いほど分かる。

 

八幡「いいんだ。こいつには黒歌のはぐれを取り消させるっつー大事な仕事がある。それまでに殺すと俺達がお尋ね者になっちまうからな」

 

三日月「分かった。そう言うなら」

 

八幡「······悪いな」

 

パッと見敵への容赦が微塵もないミカだが、本人はそうしないと真っ先に撃ち殺される戦場を駆け抜けてきたのだ。何も間違ってないと俺も思う。

 

八幡「······さて、ジェロマ・リバートリン。これでもまだ黒歌のはぐれを取り消せないか?」

 

勝永と桃花に集めてもらった証拠を目の前に出す。コピーのプリントだがな。

 

ジェロマ「······っ!?」

 

八幡「······この件は既に通報済みだ。お前一人で反抗しようが、結果は何も変わらない。大人しくしておくんだな」

 

そう言って、這いつくばってるこいつの目の前に光の矢を突き立てる。

 

通報と言っても、上層部じゃない。全く信頼出来ないし。俺が通報したのは、魔王ベルゼブブであるアジュカだ。政治(面倒事)が絡む時は、サーゼクスよりも信頼出来る人物だ。

 

因みにだが、今までの話は全離れた所にいるて美猴に録画させている。向こうの、俺の首云々の話などを出せば簡単に勝てる。

 

 

俺達はジェロマ・リバートリンの屋敷を後にした。

 

 

 

そして更に翌日、黒歌のはぐれ悪魔の認定は取り消された。又、ジェロマ・リバートリンが逮捕された。元眷属達は保護されたらしい。

 

八幡「······さて黒歌。お前はどうしたい?」

 

黒歌「どうって?」

 

八幡「名目上トレードで俺の眷属入りしたわけだが、俺は別にお前をどうもしない。ここに残るもよし。妹を迎えに行くのもよし。お前の自由だ。妹を迎えに行って悪魔自体から離れるのなら、こっちで多少の支援はしてやれる」

トレードはただ単にそれが引き抜くのに楽だったからそうしただけだ。俺は黒歌を縛り付けようとは思わないし。まぁ何かの縁だ。もうちょい面倒見るくらいなら訳ない。

 

 

黒歌「······ひとまずここに残る。白音は今は精神的に不安定なんでしょ?それにあんた達には助けてもらった恩があるから」

 

八幡「そうか。なら歓迎するよ、よろしくな」

 

黒歌「ありがと。これからよろしく頼む」

 

 

 

 

そうして、俺の眷属に『僧侶』の黒歌が加わった。

 

 

 

八幡「あ、俺の眷属ってお前より強い奴しかいないからな」

 

黒歌「·······マジ?」

 

八幡「マジだ。今度ボコボk······鍛えてもらえ」

 

黒歌「今ボコボコにされろって言った!!?」

 

八幡「言った」

 

黒歌「······そこは嘘でも言ってないって言ってよ」

 

 

 

 

 

 

八幡「この12年間はかなり波乱だったな······」

 

見舞いに行く傍ら、久しぶりに回想に耽りながら病院に向かっていると、ふと思い出したこの12年間に対して言葉が漏れた。

 

ヴァーリ「······父さんがそれを言うのか?」

 

八幡「いやどういう意味だよ」

 

俺にしてみれば、戦争の時と同じくらい色々あったって印象なんだが。

 

ヴァーリ「父さんはずっと昔から巻き込まれ体質なんだろ? メリオダスから聞いたよ。ほとんど笑ってたけどな」

 

八幡「間違っちゃいないんだろうが······メリオダスめ。余計なことを」

 

だいたいは酒の肴になってんだろうな······

 

 

クルル「仕方ないわ。八幡はそういうのを放っておけない(タチ)だから。巻き込まれに行っているようなもの」

 

黒歌「私もギャスパーもヴァーリもそれで救われたもんねぇ」

 

八幡「あのなぁ······」

 

別に好き好んで巻き込まれたいわけじゃないぞ·······ただ見過ごせなかっただけだ。同じではない。

 

それに、ギャスパーを助けたのはクルルだろうに。俺はほとんど何もやってないからな。

 

ギャスパー「悪いことじゃないですし、いいじゃないですか。お兄様も黒歌さんも、お父様に救われたんですし」

 

八幡「黒歌に関してはお前だと思うけどな」

 

クルル「そうね」

 

ギャスパー「そうですか?」

 

ギャスパーは首をコテンと傾けた。それを見ていた俺達4人は心の中でガッツポーズをしている·····と思う。少なくとも俺はそう。俺の天使(癒し)である。異論反論抗議は頑として認めない。

 

ヴァーリ「いや、そうだと思う」

 

黒歌「·······確かに、私がギャスパーと一緒にいる時間がこの中で一番多いと思う」

 

クルル「そうね。何処に行くにも猫の姿になってギャスパーにくっついてたものね」

 

黒歌「ちょっ、それは言わないで」

 

家に迎えてから、黒歌は常にと言っていいほど、ギャスパーと一緒にいた。風呂にも一緒に入ってた(黒歌が押しかけた)くらい。

 

黒歌「今思い出したら恥ずかしいにゃ······」

 

そう言って黒歌は猫の姿になってギャスパーの頭に飛び乗った。黒歌は猫の姿の時はギャスパーの頭に乗っかるのが定位置だったのを思い出す。

 

クルル「······着いたわよ」

 

話に華が咲いているうちに病院に着いたらしい。

 

ヴァーリ「姉さんに最後にお見舞いに行ったのは一月前か······」

 

八幡「はぁ。俺も呼べよ」

 

本当なら最低でも毎週は来たいのだが、忙しくて中々そうも出来ないのだ。

 

ヴァーリ「父さんと母さんはグレモリー領にいただろ」

 

八幡「そういやそうか。やっぱ冥界来てすぐに行くべきだったか」

 

そうこうしていると、病院の受付の女性が話し掛けてきた。

 

「あの、八幡様······動物は······」

 

黒歌「······」

 

黒歌は猫の姿でギャスパーの頭に乗ったままだった。

 

 






八幡が八幡じゃない? 何を今更。

ギャスパーのキャラ崩壊についてですが、

『家族』という精神的支柱を得て、心に余裕が出来た。又、同様に『家族』と離れ離れになり精神的支柱を失ったことで、精神の安定を大きく欠いた。

という話です。

黒歌の元主等の情報が原作で出てたらごめんなさい。


眷属更新

『王』
比企谷 八幡(俺ガイルより)


『女王』
クルル・ツェペシ(終わりのセラフより)


『戦車』
メリオダス(七つの大罪より)
※駒2つ消費


『僧侶』
四条 桃花(魔法戦争より)

黒歌(原作キャラ)


『騎士』
???

???


『兵士』
毛利勝永(常住戦陣!!ムシブギョーより)
※駒2つ消費

三日月・オーガス(機動戦士ガンダム 鉄血のオルフェンズより)

美猴(原作キャラ)

???

???


八幡は何かあった時のために、トレードでリアスからギャスパーを引き離せるように駒を一つ予備で持ってます。

八幡の眷属の中で一番扱いが軽いのは美猴。次に軽いのは黒歌。


報告が2つあります。

一つ目は、比企谷家のミドルネームのルシファーを『ルシフェル』に変更します。魔王ルシファーとの差別化のためです。

2つ目は、この作品から作品名のタグを消して、キャラ名のタグに変更します。

例:メリオダスだったら、タグは『七つの大罪』→『メリオダス』という感じです。D×D以外の要素が薄すぎたので、このような措置を取らせていただきます。ご了承ください。



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