イレギュラーは家族と共に 〜ハイスクールD×D'sバタフライエフェクト~   作:シャルルヤ·ハプティズム

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第30話 里帰り

 

 

 

八幡「······着いたな」

 

クルル「はぁ······やっとね。入国審査、こんなに複雑だっけ?」

ロキとの戦闘から2日後。グレモリー邸を後にした俺は、クルル、ギャスパーと共に自分の領に帰省していた。

 

ギャスパー「······いつ見ても凄いですね」

 

入国審査を済ませ、呼んでおいた車に乗る。

 

 

橋を疾走する車窓には、冥界でも一番発展しているとも言われている"都市”が広がっている。

 

 

『未来都市サングィネム』

 

 

俺の領はこう言われている。他に比べて技術や生活の水準が高すぎるという。そこまでかどうかは分からないが、実際は科学と魔法を融合させて上手いこと遣り繰りしてるだけだ。

 

 

領の中心にはクルルが院長をやっている「百夜孤児院」があり、そこから少し離れた所に俺の家がある。その辺りを中心としてビル群が立ち込め、更には円を描くようにゆっくり浮遊し続ける多数の建造物。未来都市の一番の由来はこれだろう。実際は、俺の眷属でも指折りの魔法使いが建物に魔法を掛けただけだが。

 

 

ギャスパー「······あの浮いてる建物って、魔法でしたっけ?」

 

八幡「ああ。最近は浮かす建物を増やしてるとか言ってたな。事後報告で」

 

クルル「またあいつは······」

 

 

都市の中心から離れるとそこには雄大な自然が広がっており、そこには使い魔の森(幾つかある中の一つ)や、ドラゴンの生息地などがある。又、ドラゴンの生息地もあり、その一部にはタンニーンと協力して開発した『ドラゴンアップル』の群生地がある。

出荷用と品種改良用があるが、最近、民間企業と提携して医薬品の材料に使えないか研究してるって言ってたな。色んな分野で活躍する果物であったらしい。

 

 

八幡「どうする? 家に戻るか、先に孤児院に行くか」

 

クルル「今日は家に帰って、明日孤児院でいいんじゃない?」

 

ならそうするか······久しぶりの我が家で寛ぐのもいい。サングィネムには時々仕事で戻ってはいたが、寛げてなかったし。やっぱ、赤龍帝の監視があるからって、学校潜り込むのはダメだな。あんなに拘束される時間が長い······というか、精神的に疲れるとは思ってもみなかった。

 

八幡「んー······そうだな」

 

 

 

 

 

八幡「······最後に帰ったのって何時だっけ······?」

 

クルル「半年前に帰らなかったっけ」

 

運転手に車庫入れを任せて、先に家に入る。

 

俺の家───というより屋敷はグレモリーの本邸より更にデカい。まあ住み込みの使用人の部屋とかもあるし、眷属で暇してる奴が暴れてもいいような施設を造ったり、その他にも敷地内に色々な生物を飼ってるからなんだが。犬猫からドラゴンだの魔獣だの。

 

 

ギャスパー「やっと帰ってこれました······」

 

そうか······ギャスパーはもう3年近く帰ってないのか。サーゼクスに預けたのは失敗だったか······よくよく考えれば、眷属以外にも腕が立つ奴がいるんだからそいつにギャスパーを任せれば暴走もしなかったかもしれない。今頃言っても仕方ないが。

 

「おかえりなさいませ。八幡様、クルル様、ギャスパー様」

 

玄関から使用人が出て来る。メイド長である彼女とも、だいぶ長い付き合いだな。

 

八幡「ああ。ただいま」

 

クルル「ただいま」

 

ギャスパー「ただいまです」

 

「ヴァーリ様と黒歌様がお帰りになっておられます」

 

ヴァーリと黒歌はどうやら帰って来ていたらしい。急だな。一言言えばいいのに、と思う。ギャスパーの目が輝いているのが一瞬で分かった。当然か。黒歌もそうだが、ギャスパーはヴァーリと会うのは本当に久しぶりだ。

 

八幡「どこにいるんだ?」

 

「八幡様の私室にてございます」

 

あいつら自分の部屋あるんだからそこで休んでりゃいいのに······呼びに行くぐらいするぞ?

 

八幡「分かった。他のやつは誰かいるのか?」

 

「桃花様以外は、各々方の都合でおりません」

 

八幡「あいよ」

 

「それでは。失礼致します」

 

ヴァーリと黒歌が『禍の団(カオス・ブリゲード)』に潜入していることを知っているのは、使用人の中では彼女を含めて数人である。信頼出来ない奴に教えるのは流石にマズいしな。

 

八幡「ああ······じゃあ行くか」

 

ギャスパー「はい」

 

 

 

 

俺の部屋に入ると、ヴァーリと黒歌はコーヒーを飲んで寛いでいた。

 

ギャスパーは自分の部屋に戻って荷物の整理をしているが、すぐに戻って来るだろう。

クルルの部屋は、物で溢れかえってるせいでクルルのクローゼットは俺の部屋にあるから、俺と一緒だが。

 

ったく。荷物を持ち込むなヴァーリ。

 

八幡「はぁ······お前ら自分の部屋あるだろ······」

 

黒歌「別にいいじゃない。別に減るわけでもないでしょ?」

 

ヴァーリ「そうだ。というか、いても文句言わないだろ?」

 

ヴァーリも黒歌も、済まし顔して当たり前のように言うが、土産だとか言ってよく分からんもん持ち込みやがって。というか、俺の部屋は集会所じゃないんだぞ。

 

······もう慣れたけどさ。見られて困るもの置いてるわけでもないし。

 

八幡「まぁいいけどよ。物持ち込むなよ」

 

いつの間にかコーヒーメーカーあるけどな、テレビも無かったのにいつの間にかゲーム機とカセットが積まれてるし。誰だ持って来たの。

まぁ黒歌だろうが。

 

ギャスパー「お兄様(・・・)、お久しぶりですね」

 

ヴァーリ「ああ。久しぶりだなギャスパー」

 

ギャスパーの頭を撫でるヴァーリは、駒王の会談の時みたいな妙なキザオーラは出していない。こいつも一時期サングィネムから離れてた時期があったが、何とか戻って来れたんだよなぁ······

 

黒歌「私はこの前会ったけどねぇ」

ヴァーリに撫でられるギャスパーを見ながら、黒歌が呟く。

 

ヴァーリ「何?」

 

黒歌の一言にヴァーリが黒歌を睨む。

 

黒歌「えぇ······」

 

ギャスパー「まぁまぁ」

 

懐かしい光景だな······ヴァーリと黒歌がいると、時々ギャスパーの取り合いが起こる。それを当の本人のギャスパーが止める。なんだかんだ皆ギャスパー大好きだからな。

 

ヴァーリ「ギャスパーが言うなら」

 

黒歌「······皆ギャスパーに甘くない? 私が言えたことじゃないけど」

 

ギャスパーが宥めるとあっさり引いたヴァーリを見て、また黒歌がボヤく。

 

八幡「俺は、お前が一番甘いと思っている」

 

クルル「そうね。黒歌が一番甘いわ」

 

ヴァーリ「そうだな」

 

ギャスパー「え?え?」

 

黒歌はこの家にいる時間が俺達と同じくらい長い。昔、ギャスパーの神器の訓練は黒歌とヴァーリもいたが、俺やクルルがいない時でも黒歌はずっと付き添っていた。ギャスパーの告白をほぼ受け入れているが、弟のようにも見ているのだろう。

 

黒歌「ん~······まあ否定はしないかな」

 

八幡「だろうな」

 

黒歌はギャスパーに救われてるしな。当然って言えば当然か。

 

クルル「······そういえば、2人とももう()()()()行ったの? 長いこと空けてたでしょ」

 

ヴァーリ「いや、どうせすぐ来るのは分かってたから待ってたんだ」

 

八幡「なら、今から行くか」

 

ヴァーリ「以外だな。戻って来てすぐに孤児院に向かうのかと思ってたが」

 

前回帰省した時はそうしたっけな。こいつ、よく、そんなこと憶えてるな。

 

八幡「クルルが一日寛いでから行こうって言うしな。院長がそう言うなら、それでいいんだよ」

 

ヴァーリ「なんだ。やっぱり何時も通りか」

 

そりゃな。いつも通りだよ。それが一番いいに決まってる。

 

八幡「あれから、もう12年か······」

 

壁に掛けてあったカレンダーを見て呟く。2016年······8の上に書かれたその4文字に不思議な思いが芽生える。

 

ヴァーリ「そうだな······」

 

クルル「もうそんなに経つのね」

 

 

あの日、ヴァーリのSOSを偶々聞き付けられたお陰で、ヴァーリ()を助けることが出来た。あの時、俺が助けられなかったら、ヴァーリはどうなってたんだろうなぁ······やめよ。考えたくもない。

 

 

それは12年前まで遡る──────

 

 

 






真のタイトルは

『里帰り、その②』

理由はグレモリー領が八幡の生まれ故郷だからというありきたりな理由です。



次回、ヴァーリと八幡の過去。

そして、ヴァーリの○○が登場。

投稿は未定です。

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