イレギュラーは家族と共に 〜ハイスクールD×D'sバタフライエフェクト~   作:シャルルヤ·ハプティズム

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第29話 恨みのロキ

 

 

 

俺は、ロキを閉じ込めるために作った空間に飛び込んだ。

 

 

八幡「······よう。ロキ、久しぶりだな」

 

俺は宙から俺を見下ろしているロキを睨む。この殺意、俺を殺す気満々だな。当たり前だが。

 

ロキ「·······『堕天魔』。よくもやってくれたな」

 

今、この空間は果てしなく続く荒野だ。ロキにはただ別の場所に飛ばされたと思っているか、俺の神器であることに気付いているのか。

 

ロキ「我の邪魔はさせん!! 行けフェンリル!!」

 

ロキの命令を受けてフェンリルが俺に飛びかかってくる。

 

八幡「チッ······」

 

舌打ち混じりにフェンリルの攻撃を避ける。分かってた事だが、速いな。俺もこのくらいのスピードなら追い付けるが、ロキの魔術も加わるし、少々キツい。

 

 

ロキ「······来い」

 

そこでロキが地面に向かって光の束を放つ。煙が晴れると、今俺の目の前にいるフェンリルより1回りくらい小さいフェンリルが2体現れる。更に、ロキが指を鳴らすと空が雷雲に覆われ、雷が落ち、舞い上がった煙からは大蛇が現れる。

 

八幡「······ハティにスコル。更にはミドガルズオルムの模造品か。俺一人殺すのに、随分気合い入ってんな」

 

フェンリルの子、ハティとスコル。それに、五大龍王の一角でもあるミドガルズオルムの模造品(劣化品)。ミドガルズオルムの劣化品だけは一撃でいけるだろうが、他はキツいな。

 

ロキ「行け!!!」

 

フェンリルとハティとスコルが牙を覗かせて襲いかかってくる。更にはミドガルズオルムがブレスを放ってくる。

······フェンリル達だけでなく、ミドガルズオルムのブレスも厄介だな。視界が塞がる。なのでミドガルズオルムがブレスを吐き終わった瞬間に細切れにして、他に意識を戻す。

 

さて、1対4でどこまでやれるか。

 

八幡「ふっ!!」

 

魔法陣から取り出した2本のエクスカリバーでブレスを打ち消し、襲いかかるフェンリル、ハティ、スコルに『天閃(ラピッドリー)』2本分のスピードで回避しつつダメージを与える。更に、ロキにも懐に潜り込んでダメージを与えることに成功した。

 

けど、あんまダメージが入ってないな。

 

ロキ「·······エクスカリバーか」

 

因みに、左手に持つ8本目のエクスカリバーは『天閃(ラピッドリー)』より若干長い。

 

八幡「そうだ。お前も知ってるだろ」

 

ロキには一部の手がバレている。フェンリル対策ではないが、今回の改良が終わったアレも投入するべきか。

 

ロキ「だったらどうする!!」

 

ロキが無数の魔法を発動し弾幕を張りながら、フェンリルとハティ、スコルに命令し、俺を攻撃していく。

 

八幡「この程度で······!!」

 

弾幕を掻い潜りながら、長い方のエクスカリバーでハティとスコルを切り飛ばし、フェンリルの爪を受け止める。

 

グッ······スピードは俺が上回ってはいるが、フェンリルのパワーは俺よりも上だ。それに、獣特有の野生の勘とでも言うべきか、急所を狙った攻撃は防がれた。

 

八幡「なら······!!」

 

短い方のエクスカリバーをロキに投擲する。ロキは僅かに反応が遅れたのか、回避に失敗したが、宙を貫くエクスカリバーはロキの左足を切り裂くに留まった。そこをフェンリルに突かれて、腹を掻っ捌かれそうになったが、辛うじて回避出来た。

 

チッ·······せめて刺さっとけよ。

 

 

ロキは、掴んだエクスカリバーを俺に投擲し返しつつ、自身も魔法で剣を作り出し、フェンリルと連携しつつ俺を挟撃する。咄嗟に亜空間から塵外刀真打を出して、エクスカリバーを弾きつつロキの剣を受け止める。

 

八幡「グゥっ······!!」

 

ロキ「そうだ、このまま八つ裂きにしてやる」

 

八幡「·······誰が!!」

 

剣を反らして2方向からの力を流しつつ、ロキの剣を蹴り、挟まれていた状況から強引に離脱する。

 

流石に危なかったな。体がバラバラにされるところだった。塵外刀真打を亜空間に戻しつつ、エクスカリバーを構える。

 

ロキの魔法の弾幕を俺の弾光の矢の弾幕で打ち消しながら、ロキにエクスカリバーを振り下ろす。ロキは魔法の剣で受け止めるも、俺とエクスカリバーの方が上回ったようで、ロキの魔法の剣は砕け、ロキを袈裟に切り裂いた。そのまま新たにできた傷口を蹴り、地面に叩き付けた。

 

ロキ「ウグあッ······!!」

 

ただ、これでも致命傷は躱されてしまったらしい。運のいい野郎だ。

そして、背後から俺を噛み砕こうとしたフェンリルの牙を辛うじて躱し、顎を蹴り上げ、更にその隙を突いて両前足を切りつけつつ、フェンリルの腹に直接触れて、魔法を発動する。

 

八幡「爆ぜろ······!!」

 

俺が触っている辺りのフェンリルの腹が爆発し、宙に投げ出される。

 

躱しきれなかったのと魔法の反動を軽減させるのを忘れたため、右腕がまともに動かなくなっていたが、簡単に出来る(時間がかからずに済む)治癒の魔法だけかけて、左手に持ち替えながら、爆煙を突っ切ってエクスカリバーをフェンリルの腹に突き刺した。

 

八幡「······大人しく、していろ!!」

 

支配(ルーラー)』の力で体の制御を奪いつつ、背中側にもう一発爆裂魔法を打ち込んで、フェンリルを地面に叩き付ける。叩き付けられて動かなくなったため、気絶したのだろう。

 

······危なかったな。少しズレてたら、3回は軽く死んでいた。

 

八幡「······ロキ。悪いが、フェンリルは俺が頂いた」

 

エクスカリバーの力で完全に制御権を奪ったフェンリルを、転移魔法陣で、ひとまず待機してるの俺の眷属(部下)に送り付ける。

 

ロキ「何······!? チッ······貴様も白龍皇も、初めからそのつもりで······!!」

 

ロキは、新たに魔法の剣を作り出し、傷から出血しているのも厭わずに俺に斬りかかってくる。

 

八幡「悪いな。こっちも戦力的にキツキツなんだよ」

 

ロキ「本気で我に殺されたいようだな!!」

 

ロキが鍔迫り合ったまま魔法を放ち、自分諸共魔法の弾幕の餌食にする。慌てて避けようとしたものの、回避は間に合わず、右腕と右足にいくつか穴が開いた。

 

八幡「······死にたいわけないだろ。だけどな······」

 

ロキ「調子に乗るのもいい加減にしろ······!!」

 

ロキが魔法陣数十枚を重ねて空に向ける。そこから光が放たれ、上空まで届いた光は多数に分裂し、地面に向かって雨のように降り注ぐ。

 

八幡「」

 

光の矢で雨のような弾幕を迎え撃ちつつ、飛び回って弾幕を掻い潜りながらロキの懐に潜り込む。エクスカリバーでロキを一突きで······

 

ロキ「何!?」

 

······が、ハティとスコルの爪によりそれは防がれる。

 

チッ······もう戻って来やがった。流石フェンリルの子だな。少し甘く見ていた。

 

ロキ「······!! 行け、ハティ、スコル!!」

 

ロキは劣化のミドガルズオルム数十体を一瞬で召喚すると、再び魔法の弾幕を張って攻撃してきた。

 

八幡「チッ······」

 

ハティとスコルから距離を取りつつ、弾幕を回避する。

 

ロキ、その傷でどこにそんな力が······

 

ロキ「───墜ちろ······!!」

 

ロキは俺の背後に転移し、魔法を接射した。強引に体を捻って避けたようとしが、右足の穴が更に広がった。流石に、痛みに慣れすぎて骨折ぐらいじゃ痛いとすら感じなくなったとはいえ、これは······!!

 

八幡「グゥあっ!! ······お前が、墜ちろ!!」

 

エクスカリバーをロキの腹に突き刺す。フェンリルの血が付いて多少は神殺しが効いているかもしれない。

 

ロキ「堕天魔ぁぁぁっ······!!」

 

八幡「······終わりだ。ロキ······!!」

 

ロキが魔法を発動するよりも早く、俺がエクスカリバーを引き抜いた。

 

 

 

······ロキは、魔法を維持出来なくなって、地面に落下する。

 

ロキ「貴様も、ギャスパーも、いつか、我が必ず······」

呻くように言うと、ロキはそのまま意識を失い、地面に展開した北欧がよく使う魔法陣に吸い込まれて消えた。

 

 

気絶したロキが北欧側により転移した後。

······スコルとハティは、ロキが魔法陣に呑まれた所に歩いていくと、頭を垂れた。まるで、敗北したロキへ最大限の敬意を払うかのようだ。

 

八幡「······お前らは、まだ戦うか? ハティ、スコル」

 

ハティとスコルは顔を上げ、俺の方を向く。祖父であるロキを倒した俺を、憐憫の目で見つめるハティとスコルは、首を横に振った。

 

八幡「······そうか」

 

正直、この状態で戦ったら、どこぞのプルデュエルみたいになりかねない。投降してくれるんならありがたい。

 

フェンリルを送った所と同じ所に転移先を指定した魔法陣を開く。俺は魔法陣を指差す。

 

八幡「お前らがどう感じるはわかんないが······北欧に投降してロキと一緒に罰を受けるか、俺に降るか、選んでくれ。俺に降るんなら、条件はあれど丁重に扱うし、拘束もしない······」

 

俺が言うと、ハティとスコルは魔法陣の上に乗った。転移させる(飛ばすぞ)、と言うと2頭は頷いた。

 

 

転移の光に呑まれる中、ハティとスコルが見せたのは───俺が憐憫だと思った目は、何かを憂うような目をしていた。

 

 

 

八幡「······ハティとスコルにまで同情みたいな目されるなんてな」

 

アイツらも、アレを目の当たりにしてるから、俺を······というよりギャスパーとヴァーリにでも同情したのかね。

 

 

大小様々な体の傷を禁術で治し、服の汚れを魔力で払って、俺もレセプション会場に戻った。

 

 

 

 

 

 

 

八幡「······ただいま」

 

クルル「······おかえり八幡」

 

ギャスパー「お父様······」

 

先程、転移した場所にまた戻って来た。時間で言えば、30分とかそんなもんだと思う。

 

八幡「おうただいま。俺が転移してからどんくらい経った?」

 

俺が尋ねると、クルルは腕時計を見て言う。

 

クルル「······1時間半くらいね」

 

八幡「マジか······」

 

まぁ、俺の体内時計なんてアテにならんしそんなもんか。

 

アザゼル「······この短時間でロキを倒すなんてな。それなりに激戦ではあったみたいだが」

 

八幡「そりゃそうだろ。相手は神様だからな」

 

それに、ロキ相手だしな。ロキとは親交があった時期があるし、多少の同情くらいは湧く。

 

八幡「にしても、やってから言うのもどうかと思うが良かったのか? オーディン」

 

オーディン「何がじゃ?」

 

八幡「ロキはそっちの神話の重要な神の1人だろ。柱神だしな」

 

基本的に悪神ではあるが、ロキも北欧神話の重要な神の1人だ。それに、ロキは北欧神話の中心的な存在の一人だ。

『禍の団』と繋がっていた可能性があるから、オーディンその他に『神々の黄昏』共々危惧されてはいただろうが。

 

オーディン「······構わん。時代は変わらねばならん」

 

オーディンは遠く見て、右目を閉じる。

 

八幡「······そうか。時代······か」

 

 

アイツも、変わる時代の中で生じた、歪みの被害者の一人とでも言うべきなのか······?

 

 

 

 

 

 

ギャスパー「······お父様、それでハティとスコルはどうするんですか?」

 

レセプションが終わり、自室(グレモリー邸の俺達に与えられた部屋)に戻って来た俺達。俺に降ったハティとスコルに、ギャスパーは疑問を持ったようだった。

 

ハティとスコルは、『サングィネム』の屋敷で検索を受けて、一度こちらに呼び戻していた。

 

八幡「ああそれか······お前、2頭を使い魔にしないか? フェンリルの子だ。強さはお前も知ってるだろ?」

 

ギャスパー「使い魔······ですか? ハティとスコルを?」

 

ギャスパーの問いかけに、頷いて続ける。

 

八幡「お前に危害を加えることはないから安心していい。常に俺達が守れるとは限らないってのもあるしな」

 

······正直なところ、俺達もこれから激化する戦闘でギャスパーをずっと守ってやれないし、護衛をつけるにもウチは最低限の人数でやってるから、人手がまるで足りない。

 

ギャスパー「そうですか······よろしくね。ハティ、スコル」

 

ギャスパーの答えにハティとスコルは喉を鳴らした。

 

 

クルル「······にしても、よく素直に投降したわね」

 

ギャスパーとじゃれるハティとスコルを見ながら、クルルが言う。

 

八幡「多分、ギャスパーが心配だったんだろ」

 

クルル「······そう、かもね」

 

 

そこで、電話が掛かってきた。画面に表示されていたのは、ヴァーリの名前だ。

 

クルルとギャスパーに一言断って、部屋を出て電話に出る。

 

八幡「······どうした?」

 

『······ロキ、そっちに行ったんだろう? どうだった?』

 

どうって言われてもな、お前······

 

八幡「どうもこうも、予想通り恨まれてた。それだけだ」

 

『······やっぱりか』

 

何がやっぱりか、だ。こっちは大変だったんだぞ。

 

八幡「俺もお前も、随分恨まれてたよ。なんであんなことしたんだお前」

 

ヴァーリもロキが俺達をどう思ってるかなんて分かってるだろうに。

 

『······()()()()()を見ていたフェンリルに少し情が湧いた。ただ······それだけだ』

 

······なるほどな。フェンリルの方が理由か。

 

八幡「そうかい。だが、もう二度とやらんでくれよ?」

 

かなり危なかったんだからな。にしても、死にかけたのにこれで許すあたり、俺もめちゃくちゃ甘いな······

 

『······俺も事態を軽く見すぎていた。ロキの恨みがそこまでだとは、俺も予想出来なかった。次からは気をつける』

 

八幡「はぁ、当たり前だ。で、フェンリルだが俺との戦闘で負った怪我の治療中だ。合流したかったら、一回ウチに戻って来い。偶には顔見せろ」

 

そう言って通話を終了した。

 

 

ギャスパー「誰だったんですか?」

 

八幡「ん? ヴァーリだよ」

 

ギャスパー「······あぁ」

 

ギャスパーはヴァーリ達が『禍の団』に潜入していることを知っている。出来るだけお互いに知らないふりをするように頼んでいるが。

 

 

ギャスパー「じゃあフェンリルもお兄様(・・・)が?」

 

八幡「ああ。とんでもないものをねだったがな」

 

ギャスパー「······随分、思い切ったことしましたね」

 

八幡「だな······全く」

 

 

 


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