イレギュラーは家族と共に 〜ハイスクールD×D'sバタフライエフェクト~   作:シャルルヤ·ハプティズム

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※繰り返しますが、あくまでも本作は二次小説です。原作とは展開が違うことをご了承ください。


今回は回想編。扱い的には閑話に近いので、とばしても多分大丈夫です。あと、UA1万突破!!ありがとうございます!!


2/24 大幅に修正しました。



第20話 バンパイアの少年(後編)

 

 

ギャスパーside

 

 

······どうして皆、僕を避けるのだろう。この眼がいけないのか。僕がハーフだからいけないのか。

 

────も、僕を一人にしていなくなった。

 

 

そして冬のルーマニアの山中に一人放り出された僕は、気付いたら病院にいた。

 

 

 

そこで、気絶していた自分を見つけたという後の両親に出会うのだった。

 

 

 

 

♦♦♦♦

 

 

 

 

 

八幡「······ギャスパー、お前は今日からここで住むんだ」

 

ギャスパー「······分かりました」

 

クルル「そんなかしこまらなくてもいいのよ。ここは今日からあなたの家でもあるんだから。困ったことがあれば何でも言ってね」

 

ギャスパー「はあ······」

 

 

連れてこられたのは、僕の家に負けず劣らずの豪邸だった。この人達は何故僕を引き取ったんだろう。そう思っていた。そしてそれ以上に、この現状(孤独)から逃げ出したかった。

 

 

 

 

 

♦♦♦♦

 

 

 

 

八幡「······食わないのか?」

 

どうせこの人達も僕を傷つける。でも、別にいいや。

 

 

そう思っていた。つまるところの自暴自棄だった。

 

 

クルル「食べなきゃダメよ。倒れちゃうわ」

 

ギャスパー「······別に。いいです」

 

八幡「ダメだ、食べなきゃ──」

 

ギャスパー「いりません!!」

 

そうして立ち上がった時に、僕はスープの入ったお皿に腕を引っ掛けて、ひっくり返してしまった。このスープも、体が弱っていた僕の体に合わせて作ってくれたものだったのに。

 

『パリィン!!』

 

ギャスパー「あ······」

 

そして、テーブルから落ちた陶器のお皿は割れてしまった。

 

八幡「全く······」

 

いけない。お皿を割ってしまった。流石に謝らないと。また殴られてしまう。

 

 

そう思った。本能的には、(当たり前だが)殴られるのは怖かった。

 

 

八幡「······怪我、してないか?」

 

ギャスパー「······え?」

 

怒らないの? お皿を割ってしまったのに。殴られないのが不思議だった。

 

八幡「どうした?」

 

その人は落ちたお皿を片付けながら言った。近くにいた人に雑巾を持ってくるように言っていたが、それを無視して聞いた。

 

ギャスパー「······怒らないんですか?」

 

八幡「······何で?」

 

逆に聞き返してきた。怒ることではないのか?

 

 

当時の僕には、気に障ることがあれば、怒られ、殴られ(或いは蹴られ)が当たり前だった。

 

 

ギャスパー「何で、って······お皿割っちゃったのに」

 

八幡「怒ることじゃないな。お前怪我してないんだし」

 

ギャスパー「でも······」

 

 

今でこそ一言謝って終わる話だが、当時はそうはいかなかったのだ。

 

 

八幡「皿を割っていいとは言わないが······態とじゃないんだろ?」

 

ギャスパー「そうです、けど······」

 

八幡「なら、次は気をつけろよ?」

 

そう言ってその人は僕の頭を撫でた。

 

ギャスパー「あ、ありがとうございます······」

 

八幡「それ、謝るほどのことか?」

 

クルル「ギャスパー、これ」

 

ギャスパー「これは·······」

 

クルル「まだ食べてないでしょ?食べなきゃダメよ」

 

その人が出したのは、湯気が上がるスープ。別の皿に装い直してくれたのだった。

 

ギャスパー「······ありがとうございます」

 

 

そのスープは凄い温かかった。────以外で、初めて『僕』を見てくれた気がした。

 

 

 

 

 

♦♦♦♦

 

 

 

 

 

「おい」

 

ギャスパー「······はい?」

 

養父達に馴染めず、一人でいたある時、街を歩いていると、後ろから声を掛けられた。

 

ギャスパー「·······あの、何でしょうか?」

 

「お前、『堕天魔』のところのハーフバンパイアだな?」

 

ギャスパー「!?」

 

どうしてこの人がそれを知っているんだ······!?

 

「暫く眠っていろ」

 

何かを嗅がされて僕の意識は真っ暗になった。

 

 

この時は考えが及ばなかったが、お父様達の敵に利用されたのだ。

 

 

 

 

 

 

 

ギャスパー「······ん」

 

「······まだ殺すな。奴らを誘き寄せる餌を失うわけにはいかん」

 

「······ハッ!! あんなガキで本当に来んのかぁ?」

 

次に目が覚めた時、僕は両手両足を縛られ地べたに転がっていた。

 

ギャスパー「んー!! んー!!」

 

口もガムテープで塞がれていた。それに、ヴァンパイア特有の蝙蝠化まで封じられていた。

 

「へぇ、起きたんか」

 

「残念だがお前は餌だということを、教えておいてやろう。奴らを殺すのに誘き寄せるための餌だとな」

 

そんな······あの人達が······!? どうして········!?

 

「何でだって顔をしてるな。冥土の土産に教えてやる。奴は危険だから、だ。女はついでだがな」

 

ギャスパー「んー!!」

 

殺す? あの人達は初めて僕を見てくれた、のに·······

 

「ちょい黙ってろガキ」

 

ギャスパー「んぅ!!?」

 

そいつは僕の腹を蹴った。凄い痛かった。そして凄い怖かった。

 

「へぇ。まだ泣く余裕があんのか」

 

僕を蹴ったそいつが言ってきた。あれ······僕は泣いてるの? 痛かったから? ······違う。あの人達がいなくなる恐怖からだ。

 

「うちの子泣かすとはいい度胸してんじゃねえか」

 

その時、突然僕を拘束した男達が吹き飛んだ。

 

「は!? がはっ······!!」

 

「帰りが遅いから迎えに来たのよ」

 

口と両手足の拘束を解きながら、その人は言った。

 

ギャスパー「何、で·······殺されるかもしれないのに······」

 

八幡「子供がピンチなのに死ねるかよ」

 

クルル「子供を迎えに来るのは親の義務なの。つまり、当たり前なのよ」

 

ギャスパー「·······っ!!」

 

その人達は死ぬかもしれないのに、僕を助けに来た。

 

「てめぇ······!! 丁度いい、死ねぇ!!」

 

八幡「遅えよ」

 

その人は一瞬で戻ってきた内の一人を倒した。鮮やかと言ってもいいほどだった。

 

「貴様は······!!」

 

もう一人は、剣を抜いた。

 

誰かが誰かに剣を向けるのを実際に見るのが初めてで、恐怖で涙がボロボロと出た。

 

八幡「お前、俺の子ども泣かしといて無事で済むとでも思ってんのか?」

 

その人は剣を抜いた男を一瞬で蹴散らしていた。

 

「がっ······」

 

そいつは意識を失ったらしく、力なく倒れた。

 

 

 

八幡「大丈夫か?怪我してないか?」

 

クルル「お腹を蹴られたのね········」

 

八幡「そうか······」

 

ギャスパー「どう、じ、て······」

 

涙で、上手く言葉を紡げなかった。

 

八幡「お前は俺達の子供だ。血がどうとか関係なしにな。誰にも文句を言わせない。理由なんてそれで十分だろ?」

 

ギャスパー「う·····う、うわぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!!!」

 

「「おいで」」

 

その2人は僕を抱き寄せた。それが何より温かかった。

 

 

 

 

 

 

♦♦♦♦

 

 

 

 

 

「······でよかったね」

 

「······だな」

 

ギャスパー「───ん」

 

八幡「起きたか」

 

いつの間にか眠っていた僕はその人に膝枕されていた。

 

ギャスパー「すいません!! すぐ降ります!!」

 

クルル「いいの。まだ万全じゃないでしょ」

 

ギャスパー「······は、はい」

 

その人は降ろしてくれなかった。

 

クルル「調子はどう?」

 

ギャスパー「······大丈夫です」

 

今気付いたけど、蹴られた筈のお腹が痛くない。

 

クルル「一応治療したけど、まだ安静だからね」

 

どうやら治療してくれたらしい。

 

ギャスパー「ごめんなさい······」

 

八幡「またそれか」

 

ギャスパー「だって僕のせいで······」

 

······巻き込まれて。

 

八幡「ギャスパー、お前は家族だからだ。それ以上でもそれ以下でもない」

 

クルル「もっと私達に甘えなさい。家族なんだから。あなたの親なんだから」

 

ギャスパー「······うっ、うぁっ、うわぁぁぁぁぁっ······」

 

また涙が溢れてきた。嬉しかった。実の親ですら一度も家族として見てくれなかったから。

 

 

 

 

ギャスパー「お母様······お父様······ありがとう······」

 

意図せずに口から言葉が溢れていた。あれ? 今なんて······

 

八幡「お父様、か·····」

 

クルル「お母様、ね········」

 

ギャスパー「あわわわわ、すいません!!」

 

八幡「それこそ何で謝んだよ。初めてお前にお父様って言われて嬉しいぞ俺は」

 

クルル「私もお母様って言われて悪い気はしないわね」

 

ギャスパー「ううっ······」

 

何で今言葉が出たんだろう。

 

八幡「俺達はさ、お前の本当の父親に自分から引き取らせてくれって頼み込んだんだ」

 

そうだったのか········

 

ギャスパー「どうしてですか?」

 

八幡「··········少し前にさ、街で1回だけお前を見たことがあってな。お前の目が昔の俺を思い出させたんだよ。俺はお前を1人にしたくなかった。俺の自己満足だ」

 

ギャスパー「そんなこと、ないです······お、お父様とお母様は僕を助けてくれた!! 僕はここが凄い温かいです!!」

 

八幡「そうか······なら改めまして、いらっしゃい、そしておかえりギャスパー」

 

クルル「おかえりギャスパー」

 

ギャスパー「ヒグッ······はい。ただいま!!」

 

僕は家族を得た。

 

 

 

 

 

 

 

 

それから、僕は幸せだった。お父様とお母様がいる。2人には、僕に宿る神器の制御方法も教えてもらった。頼りになる人がいっぱい出来た。好きな人が出来たりもした。

 

でも、それも、長くは続かなかった。

 

ギャスパー「どうしてですか······!? どうして僕だけ······」

 

八幡「ごめんギャスパー。それは出来ない」

 

クルル「危険なの。お願いだから分かって」

 

どうやら、異常事態であったらしい。ここも、危険かもしれないという話だった。

 

ギャスパー「······そんな······」

 

やっと得た家族と離れたくない。

 

八幡「ごめんギャスパー。必ず迎えに来る······から」

 

クルル「帰って来るから······」

 

2人は泣いていた。でも、僕は更に泣いていた。

 

ギャスパー「僕待ってますから······!!」

 

2人は何も言わずに僕を抱き寄せた。

 

 

 

 

 

八幡「······サーゼクス。ギャスパーを頼んだ」

 

「頼まれたよ」

 

この人がサーゼクスと言うらしい。魔王であるこの人の所のが安全だと。

 

クルル「ギャスパー······行ってきます」

 

八幡「そうだな。行ってきます」

 

ギャスパー「はい。行ってらっしゃい······!!」

 

僕は涙を堪えて笑顔で見送った。

 

 

 

 

サーゼクス「······この部屋を使いなさい」

 

サーゼクスさんにはここを使えと言われた部屋があった。

 

ギャスパー「ありがとうございます」

 

サーゼクス「何かあったら言って欲しいんだ。君に何かあってはいけないからね」

 

ギャスパー「はい」

 

 

 

 

 

 

ギャスパー「お父様······お母様·······」

 

2人が僕に危険が及ばないように、サーゼクスさんに僕を預けたのは分かっていた。それでも、溢れてくる寂しさが僕を押し潰した。

 

 

 

 

 

 

それから暫くして、僕は空っぽになっていた。僕にとって、あの2人が全てだった。子供だった僕には永遠の孤独に感じられた。だから、特に考えもせずにサーゼクスさんの妹の眷属にもなった。

 

リアス「······ギャスパーの神器ってどういうものなの?」

 

ギャスパー「そ、それは········」

 

僕は『停止世界の邪眼』を使えなくなっていた。使う度にあの2人が頭に過ぎって······あの家で囲んだ食卓を。特訓した日々を。怒られたことを。あの家で笑い合ったことを思い出して、寂しさに押し潰されないよう、考えないようにしていた。

 

朱乃「·······初めまして。リアスの『女王』の姫島朱乃です。よろしくお願いします、ギャスパー君」

 

サーゼクスさんの妹······リアスさんの『女王』の朱乃さんに会った。僕は変異の駒(ミューテーション・ピース)の『僧侶』らしい。それもどうでもよかった。

 

 

 

 

 

リアス「────ギャスパー、使いなさい」

 

神器の行使を拒否し続けていた僕も、限界がきていた。リアスさんも我慢の限界だったらしい。

 

ギャスパー「いやだ······」

 

怖かった。神器で止まった人を見るのは。

 

トラウマがフラッシュバックして、失神しそうなほど怖かった。

 

リアス「·······使いなさい」

 

ギャスパー「いやだ·······」

 

寂しい。帰って来て欲しい。

 

朱乃「ちょっと、リアス·······」

 

 

 

リアス「使いなさい」

 

 

 

ギャスパー「いや、だ·······いやだぁぁぁぁぁっ!!!」

 

朱乃「······!!?」

 

そうして、僕は暴走した。

 

サーゼクス「すまないギャスパー君······すまない。八幡、クルル」

 

サーゼクスさんは僕を気絶させた。そして、僕はあの部屋に封印されるに至った。

 

 

 

 

 

 

 

どうでもよかった。封印されても、あの2人がいないから。封印は夜限定で解除されるけど、あの2人がいないなら出る意味がない。そして封印が解かれた。

 

リアス「·······御機嫌ようギャスパー。封印が解けたのよ」

 

朱乃「さあ、私達と一緒に······」

 

ギャスパー「いやです!!外怖い!!」

 

あの2人がいないと寂しさで潰れてしまうから。

 

「ギャスパー。久しぶりだな。ごめんな、一緒にいれなくて」

 

········懐かしい、それでいて温かい声が聞こえた。

 

ギャスパー「··········え?」

 

「久しぶりだねギャスパー。ごめんね、勝手に置いてって」

 

間違えようがない。あの2人の声。

 

ギャスパー「う·····うわぁぁぁぁぁぁん!!!」

 

僕は2人に飛びついた。

 

八幡「おっと」

 

クルル「久しぶりの感覚ね」

 

温かい。家族の温かさがあった。

 

ギャスパー「うぇぇぇぇん!!!」

 

クルル「頑張ったわね」

 

お母様が僕の頭を撫でる手が温かい。僕は2人に頭を撫でてもらうことが何よりも好きだった。

 

ギャスパー「会いたかったです······!! お父様!!お母様!!」

 

八幡「俺もだぞギャスパー」

 

クルル「私もだよギャスパー」

 

おかえりなさい。お父様、お母様。

 

 

 

 

 

♦♦♦♦

 

 

 

 

 

 

ギャスパー「······ぅん?」

 

あれ?確かお父様とお母様と制御の特訓をしていて·····リアス部長が来て······それから······!!

 

八幡「起きたか?」

 

クルル「あ、起きたみたいだね」

 

お父様の顔が真上にあった。あ、そっか。僕はお父様の膝を枕にして·····

 

ギャスパー「はっ!!」

 

飛び上がるように起き上がる。

 

クルル「大丈夫?」

 

ギャスパー「だいぶ魘されてたわよ。途中から」

 

魘されてたのか······

 

ギャスパー「そうですか······そう言えば、特訓は······?」

 

八幡「中止した。お前が第一だよ」

 

ギャスパー「その、ごめんなさい······」

 

八幡「全く······お前はもっと甘えろよ」

 

クルル「前も散々言ったのにね」

 

ギャスパー「はい·····」

 

その時、2人にこれをまだ言っていなかったことを思い出す。

 

ギャスパー「おかえりなさい。お父様、お母様!!」

 

八幡・クルル「「ただいまギャスパー」」

 

 

······きっと、僕は幸せだ。だって、自分に温もりをくれるひと達が、すぐ側にいてくれるんだから。

 

 

 

ギャスパーsideout

 






作者は別にリアスが嫌いではありません。色々見通しとか甘そうだな、とは思いますが。そこは(早すぎる)展開の都合でございます。

ギャスパーの呼び方

八幡:その人→お父様

クルル:その人→お母様


誘拐した人達:そいつ(複数人いますが、まとめてそいつです)


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