イレギュラーは家族と共に 〜ハイスクールD×D'sバタフライエフェクト~ 作:シャルルヤ·ハプティズム
八幡side
······オカルト研究部はギャスパーが封印されている部屋の前に来ている。どうやら、リアス・グレモリーもサーゼクスの提案を受けていたらしい。
······そもそも、昔は制御出来ていた筈なんだがどうしてこうなった?サーゼクスに聞いたら、いつの間にかまた制御出来なくなったとしか言われなかったが。
クルル「······拒絶されたらどうしよう······」
八幡「サーゼクスのお墨付きもあるし、大丈夫だ」
クルル「うん······」
リアス「扉を開けるわ」
そんな俺達の会話を他所に、リアス・グレモリーが扉を開けた。
と、中から悲鳴が俺達の耳を掠めた。
ギャスパー「何事なんですかぁぁぁっ!!!?」
······そこまでになってたのか······クソ、何が家族だよ。自己満足も甚だしい───
イッセー「何だ!?」
リアス「御機嫌ようギャスパー。封印が解けたのよ」
朱乃「さぁ、私達と一緒に······」
ギャスパー「い、嫌です!! やめてください·····!!」
八幡「······ギャスパー。久しぶりだな。······ごめんな。一緒にいれなくて」
顔を覗かせる俺達を見て、ギャスパーは悲鳴を上げるのも忘れて呆ける。
ギャスパー「······え?」
クルル「久しぶりねギャスパー。······ごめんね。勝手に置いてって」
ギャスパー「······う······うわぁぁぁぁぁん!!」
ギャスパーが俺とクルルに飛びついて来た。寂しい思いをさせたな。
······ごめんな。
八幡「おっと」
クルル「久しぶりの感覚ね」
小柄とはいえ、 あん時より随分大きくなっていた。バランスを崩さないように踏ん張って、しっかり受け止める。
ギャスパー「!!」
クルル「······よく、頑張ったわね」
クルルが、泣くのを堪えながらなんとか言葉を紡ぐ。
イッセー「······部長、こいつがもう一人の『僧侶』なんですか?」
リアス「ええ······でも、ここまで人に心を許しているのは初めて見たわ」
リアス・グレモリーにはまだ気を許してないのか······リアス・グレモリーはこいつを封印するしか出来なかったと。俺がもっとしっかりしてればこんなことにはならなかったのになぁ······
アーシア「何だか······家族というような?」
嬉しいこと言ってくれる······
リアス「え、ええ」
ギャスパー「会いたかったです······!! お父様!! お母様!!」
こう呼ばれるのも久しぶりだな······
八幡「俺もだぞギャスパー」
クルル「私もだよギャスパー」
本物の家族に、今度こそ────
イッセー「······お父様?····お母様?」
「「「「「「え?······えぇぇぇぇぇえっ!!!?」」」」」」
八幡「······こいつはギャスパー。元は人間とバンパイアのハーフだ。とある強力な神器を持っていてな。制御を見誤って暴走した、らしくてな······」
場所は変わってオカルト研究部の部室。ギャスパーはクルルの膝の隣に座っている。移動中も、俺とクルルにくっ付いて離れなかった。
イッセー「その神器はどういう能力なんだ?」
クルル「簡単に言えば、対象の時間を止めることが出来る。条件はあるけどね」
アーシア「時間を止める······ですか。凄いですね!!」
それはシスター・アーシアにも言えることなんだがな。
イッセー「でも何でお父様お母様? 本当に2人の子供とか?」
いや、本当の子供をリアス・グレモリーに、というかサーゼクスに預けたりしない。本当は預けるつもりはなかったんだが。
八幡「······3年前まで、俺達がこいつの親代わりをしてたからな」
そう言って、ギャスパーの頭を撫でる。昔はこれされると凄い喜んでいた。そんな日々が思い出されて、また悲しくなる。
リアス「······」
ギャスパー「本当に帰って来てくれた、んですよね······?」
あぁ、ここまで寂しい思いをさせてたのか······
八幡「······ああ。ついでに、またお前の神器の制御も出来るようにしてやる」
ギャスパー「本当ですか?」
八幡「ああ。お前のことも理解してるつもりだが、少しくらい外に出れるようになりたいだろ?」
ギャスパー「······お願いします」
イッセー「ええと、ギャスパーだっけ?兵藤一誠だ。よろしく!」
兵藤が手を差し出す。
ギャスパー「え、えっと······よ、よろしくお願いします······」
ギャスパーは恐る恐るその手を握り返した。
イッセー「おう、よろしく!!」
アーシア「アーシア・アルジェントです。よろしくお願いします」
ギャスパー「よ、よろしくお願いします」
続いて、シスター・アーシアとも握手する。
八幡「ギャスパー、何で神器の制御が出来なくなったんだ? 昔は出来てたろ」
ギャスパー「あ、その······お父様とお母様がいなくなってから、ずっと1人で······寂しくて······そしたらいつの間にか制御出来なくなってしまって······」
······俺達のせい、だな。緊急事態だったとしても一緒にいれはよかったのか······いや、こうなると分かってても、俺達はサーゼクスにギャスパーを預けたろうな。より安全な所にいて欲しいのが、せめてもの親心だった。
八幡「······そうか。これは俺達の責任でもある。俺達もついてるから、頑張ろうな」
ギャスパー「ありがとう、ございます······」
目を涙ぐませながら言うギャスパーに、俺も泣きそうになる。
八幡「それでいいだろ?」
リアス「······え、ええ、お願いするわ」
······なんでかは興味ないが、リアス・グレモリーは少し間を置いてから答えた。
クルル「大丈夫?ギャスパー」
ギャスパー「は、はい······2人がここまでしてくれるのに、しないわけにはいきませんから」
そう言って微笑んだギャスパーは······とても痛ましかった。
その日の夜。俺とクルルは、自領の屋敷にある訓練室にギャスパーを連れてきていた。昔は、ここで、ギャスパーを鍛えていたのが懐かしい。ギャスパーも懐かしく感じて、郷愁を味わっていた。
途中、ギャスパーを見たウチのヤツらは様々なリアクションを返してきたが、皆喜んでいたのを見て、俺達もまた泣きそうになった。
八幡「────じゃあ、早速始めるぞ。今日使うのはこれだ」
ギャスパー「ボールですか?」
俺が取り出したのは、倉庫から持ってきたボール。
八幡「あぁ。ひたすらこのボールの動きを止めるを繰り返すんだ。俺達が傍にいるから安心してくれ」
ギャスパー「はい!! ······でも、それでいいんですか? 昔は······」
ギャスパーは疑問を呈す。だが、もちろん、
八幡「ああ。昔は制御出来てたからな。昔の感覚を掴み直すことを中心にやろう」
ギャスパー「なるほど······」
······神器『
八幡「じゃあいくぞギャスパー。ボールの動きを止めてみてくれ」
そう言ってボールを軽く上に投げる。
ギャスパー「はい!! はっ······」
目に力を込めるギャスパー。しかし、
ギャスパー「あてっ」
ボールを止めることが出来ず、顔に直撃した。
······随分、焦ってるな。無理もない、か。
クルル「落ち着きなさい。いくらでも付き合ってあげるから」
ギャスパー「······ありがとうございます」
ここで、無理をしても何にもならない。本来はゆっくりやるものだ。だが、それではギャスパーの焦燥を煽るだけかもしれない。
八幡「ギャスパー、今日いきなり無理する必要はない。けど、それでもまだやるか?」
ギャスパー「······はい!!」
リアス「······特訓の成果はどうかしら?」
朱乃「どうも皆さん。今日は私達も見させていただいてよろしいでしょうか?」
八幡「別に構わないが」
翌日。昨日と同じようにやっていると、リアス・グレモリーと姫島が見に来たいと言ったので、出来るだけ他の施設を見せないようにしながらオカ研の奴らをウチにある訓練室に連れてきていた。部室から訓練室に直接転移しただけだが。
八幡「そうだな。成果で言えば······まあ、順調だな」
俺達がいるってのもだろうが、ギャスパーは少しずつ制御が出来るようになってきた。この類の神器は所有者の精神状態によってはかなり危険だからな。細心の注意を払ってやらねばならない。
と、ギャスパーがリアス・グレモリーを見て震え出した。
ギャス、パー······?
ギャスパー「や············やだ」
クルル「ギャスパー?」
八幡「ギャスパー、どうした?」
見るとギャスパーが怯えていた。リアス・グレモリーが来た瞬間にこれとは、何があったんだ?
イッセー「おい、大丈夫か? ギャスパー」
ギャスパー「イヤだ·······」
それを最後にギャスパーは糸が切れたかのように倒れた。幸い隣りにいたクルルが受け止めたが。
クルル「ギャスパー!?」
八幡「お前······こいつに何をした!!?」
場合によっては、武力行使でこいつを排除するのも辞さない。子どものために、出来ることは全部やる。
リアス「わた、しは······」
リアス「────ということなの」
八幡「······お前、ふざけてんのか」
リアス「······ッ!!」
ギャスパーをウチの屋敷のギャスパーの部屋で寝かせた後、クルルに任せて、オカ研の部室に戻ってきた俺はリアス・グレモリーに事態の説明を要求した。
その昔、ギャスパーを眷属に引き入れたばかりの頃に、リアス・グレモリーがギャスパーに無茶をさせたらしい。無理に能力を使わせようとしたとか。もしかして、能力の制御が出来なくなった原因の一端はこれかもしれない。
ギャスパーは、元々人付き合いが得意なタイプじゃなかった。前までは、周りには大人が多かったからおかしな事態に陥るようなことはなかった。だが、あの時は、ただでさえ信頼出来る人物が誰もいない上に、その少し前に起きたことで精神が既に限界だった。
それに加えて、自分を追い詰める要素が増えた。あの時のギャスパーが、どんだけ苦しんだのだろうか。俺が想像出来るものではないのかもしれない。
八幡「慈愛のグレモリーの姫様は、自分の眷属を追い詰めるのか。いいご身分だな」
リアス「なっ·····!!」
こいつ一人のせいではない。預けた俺のせいでもある。だが、それでもこいつは許せない。
八幡「眷属はお前にとってはただの駒なんだろうな。お前の立場だったら、俺はそもそもギャスパーを眷属に誘ったりしないが」
こいつはギャスパーに能力を使用することを強制したのだろう。精神状態が不安定なギャスパーが無理強いされれば暴走するのも無理はない。
こいつもこいつなりに何かしようとしたのかもしれないが、結果はこれだ。
リアス「······私、は、ずっと一人でいたあの子と仲良くなりたくて······」
というか、何故サーゼクスが制御に手を貸さなかったのかも気になるが、一番はサーゼクスに預けた俺だ。あの時、サーゼクスに預けた時のギャスパーの顔が頭に浮かぶ。ギャスパーが力を使わない間も力が強くなっていったのも原因かもしれないな。
八幡「そうかよ」
はぁ、ガキ相手に何してんだ俺は······こいつを責めるのは時間の無駄だ。
今は、ギャスパーのメンタルケアが何よりも大切だ。それ以外は後でいい。
八幡とクルルには、話が進むにつれて少しずつ罪悪感が蘇っていっていきます。