イレギュラーは家族と共に 〜ハイスクールD×D'sバタフライエフェクト~ 作:シャルルヤ·ハプティズム
コカビエルとの戦闘から翌日。
俺は今オカルト研究部の部室で、ゼノヴィアを新たに加えたリアス・グレモリーの眷属と、ソーナに囲まれている。
八幡「······最初に言わせてもらう。すまなかった」
頭を下げる。
リアス「頭を上げてちょうだい。続けて」
八幡「まず、神がとうの昔にいない件なんだが······シスター・アーシアとゼノヴィアは大丈夫か?」
俺が尋ねると、2人は表情を歪めながらも言う。
ゼノヴィア「······私は大丈夫だ。何より、尊敬すべき聖剣使いから主を失った教会の異端者になってしまったからな」
アーシア「······私も、大丈夫です。聞く覚悟を決めて来ました」
2人は、辛そうにしながらも、耐えて俺の言葉を待っている。
八幡「そうか······」
覚悟を決めてきたんだな······こいつらは俺よりもずっと強いらしい。
八幡「······昨日、コカビエルの言っていた通り確かに先の戦争で神は前代の魔王と共に死んだ」
アーシア・ゼノヴィア「「········ッ」」
アーシア「では·······私達の信仰はいったい······」
八幡「······システムが残っていたからそれを利用した。信者の祈りの力がなければ、天界は維持出来ない」
ゼノヴィア「·······何故君がそれを知っていたんだ?」
八幡「俺は先の戦争に参加していたからな······俺は二天龍を封印する直前まで、コカビエルと戦っていたんだが、その時にコカビエルがもらしたんだよ」
それにしても、あいつは何故そんなことを······少なくとも敵に教えるような情報ではない。今考えても仕方ないが。
八幡「それで、ミカエルは······システムを利用した。仕方なかった。信仰している大半が人間で、それを失うわけにはいかなかったから」
あの判断は正しかったのだろうか? 俺もその一端を担いでいるが、結果的にも正しいかの判断は付けられない。
八幡「それと······木場にも2つ謝らなければならないことがある」
裕斗「僕に······?」
八幡「一つ目はこれだ」
俺は魔法陣から2本の聖剣を出す。
裕斗「その2本は······エクスカリバー······?」
八幡「ああ。片方はフリード・セルゼンから奪ったものだ。紫藤イリナに本部に持っていってもらうべきだったが、あのあとこっちで少しゴタゴタしてな。返しそびれた」
片方は『天閃』の聖剣だ。そしてもう片方は······
ゼノヴィア「ずっと所在不明になっていた7本目か······?」
八幡「違う」
この剣は、ずっと秘匿されていた·····
裕斗「ならそれは······エクスカリバーは7本なんだろう?」
ゼノヴィア「ああ。その筈だ」
木場の問いに、ゼノヴィアが頷く。
八幡「これは······8本目の聖剣エクスカリバーだ」
「「「「「「!!!!!??」」」」」」
俺の言葉に、その場の全員が目を向いて驚く。
ゼノヴィア「どういうことだ!? 教会は破壊されたエクスカリバーの破片7つを元に、今のエクスカリバーを作ったのではないのか!?」
それは間違ってない。が、そもそもこれは
八幡「これは·······破壊されていない方のエクスカリバーだ」
リアス「その言い方だと、エクスカリバーは元から複数あったように聞こえるのだけれど······」
八幡「それであってる。元々、エクスカリバーは2振りあった」
ゼノヴィア「なっ!!?」
八幡「これは戦争で破壊されなかったものの、ゴタゴタで所在不明になってたものを俺が回収したものだ」
あの戦争で、教会はエクスカリバーを2本とも失うという大失態を犯した。7本に分かれたエクスカリバーの核になっている破片も、内2つは俺が回収したものだ。
湖の乙女に返しにいったら、あげると言われて今に至る。まぁ本当はそんな単純ではないが。
八幡「·······木場、すまなかった。」
俺に木場を止める資格はない。木場の感情は至極真っ当なものだ。
裕斗「僕は······そんなことしないよ。僕は1人じゃないんだ。まだ許せるとは言えないけど、今は復讐のためだけに生きてるわけじゃない」
八幡「そうか······」
そして、俺はこれを言わなければならない。出来れば、言いたくない。言えば、木場がどうなるか分からない。
八幡「俺が本当に謝りたかったのはこっちだ······俺は『聖剣計画』を止められなかった」
その言葉に木場も限界が来たのか、俺に詰め寄る。
裕斗「君は······知っていたのか!? ······どうなんだ!!」
イッセー「ちょ、おい!! 木場!」
木場が俺の胸倉を掴む。
八幡「知っていた·······計画に上がっていた段階で」
裕斗「ならどうして·······」
八幡「人質に取られたんだよ·······」
アレは、中々にクソだったが呑まなければ取り返しのつかない被害が出ていた。
ゼノヴィア「人質?」
八幡「あぁ······ウチの領には、孤児院がある。だが、邪魔をすればうちの領に、しかもよりによってあそこに襲撃をかける、と」
それだけは防がなければいけなかった。俺と眷属だけならなんとでもなるが、そんな楽な話ではない。しかも、最初に襲撃をかけると脅された場所が場所だった。
ゼノヴィア「何!? ······教会はどこまで······!!」
裕斗「でも······君も君の眷属の方々もあんなに強いのに······?」
ソーナ「っ!!·······確か········」
ソーナだけは分かったらしい。
八幡「そうじゃない······うちの領にはサーゼクスとセラフォルーも設立に協力してくれた、冥界で最大規模の孤児院がある。最初の襲撃場所をあそこにするとも言われた」
俺達だけでは、あそこにいる子供達全員を守りきれるとは限らない。だから聖剣計画を見なかったことにした。あの子達の笑顔を守るためだ。俺には両方を取るほどの力はない。
ソーナ「私も一度だけ訪れたことがありますが······あの孤児院には、数百を優に超える身寄りのない子供達が引き取られていました······しかも、あそこには種族関係なく天使の子供も悪魔の子供も人間の子供がいた······皆笑顔だったのを覚えています」
うちの領は、シトリー領やグレモリー領ともそれなりに近いが、完全に防御が出来るとは言えない。現に俺がそうだったのだから。
確か、ソーナはセラフォルーとシトリー卿に連れられて、孤児院に来たことがあった筈だ。
裕斗「ッ!! ······ごめん、取り乱した」
八幡「いや、止められなかった俺にも責任はある」
結局······聖剣計画の被験者は殺処分にされた。
裕斗「事情があったのなら、責めはしないよ」
八幡「すまなかった······ありがとう。今度招待する」
こいつは優しいな。会ったこともない孤児院の子供達に、自分を重ねたのかもしれない。
裕斗「ありがとう······君達が守った子供を見てみたい」
八幡「そうか。いつでも言ってくれ。喜んでくれるだろうよ」
裕斗「あとで、行ける日を教えるよ」
そこで、唐突にあることを思い出す。
八幡「ああ······そう言えばイッセー」
イッセー「? 何だよ?」
八幡「お前、アザゼルに会ったんだろ? 何か言われたなかったか?」
なんかこの前会った時に「今代の赤龍帝は面白い」って言ってたからな······アザゼルはイッセーがお気に召したようだ。一緒にゲームしたとか言ってたな······この前も絵をあげたとかなんとか。お前この街に何しに来た。俺が会った時釣りしてたしよぉ······
リアス「アザゼルですって!!?」
ソーナ「この街に·······?」
イッセー「アザゼル、って······?」
小猫「堕天使の総督······一言で言えば、堕天使で一番偉い人です」
イッセー「はぁぁぁぁっ!!?」
八幡「落ち着け。あいつは別に敵対するつもりでこの街に来てるわけじゃない(多分)」
まあ個人的に『赤龍帝の篭手』に関心を示しはするだろうが。
リアス「堕天使の総督が私の縄張りに······!!」
八幡「今んとこ何もしなくていい。アザゼルは神器マニアってだけで、手を出したりはしない······筈だ」
イッセー「っておい最後!!」
兵藤のツッコミも、今回ばかりは反論の余地がない。
八幡「まぁ来るのはこれのためだ。まだ情報は来てないと思うが」
俺は一枚の紙を出す。各勢力の首脳会談だ。当然の如く俺も出席。というか、各勢力の首脳+俺という感じである。
リアス「三大勢力の·······首脳会談!!?」
八幡「そうだ。この街でやることになった。多分この様子だと、会場はここだろうな」
イッセー「何で八幡が知ってんの!!?」
八幡「俺も出席するから」
「「「「「はぁぁぁあ!!??」」」」」
そういう取り決めになってんだよなぁ······でも、これなかったら俺はどっかの勢力に拘束されているだろうからなぁ。めんどくさいなぁ······はっ!! これがあるということはセラフォルーが······やだ、帰りたい。
孤児院の名前は百夜孤児院·······多分本編に出ない。