イレギュラーは家族と共に 〜ハイスクールD×D'sバタフライエフェクト~   作:シャルルヤ·ハプティズム

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12月一回しか投稿出来なかったお詫びの意を込めて、ちょっと頑張りました。が、多分、次の投稿は早くても月末になります。ごめんなさい。 





第141話 宙ぶらりんのヴァーリ

 

 

ヴァーリside

 

 

 

俺がラヴィニアと鳶雄に拉致されてから一夜が明けた。俺は、一緒の牢に放り込まれていた3人と、睡眠を取りながら交代で外の様子を観察していた。

 

 

そして、幾つか分かったことがある。

 

 

綱生「······あの女が、ここの戦闘員だってのは間違いなかったな」

 

単騎で刃狗チームを追い詰めたバケモノのような女は、確かにここの戦闘員だった。俺も綱生と一緒に自身の目で確認している。その時、何故かまた母さんを想起した。

 

ヴァーリ「そうだな。俺の神器(セイクリッド・ギア)は、あの女と一緒にいた······四鎌童子に抜き取られたわけだし」

 

3人と再開した直後、3人が言っていた《あの女》が、俺達の牢に来た。俺より前から入っていた夏梅達にとっては、戻って来たと言うのが正しいか。その女に同行していた四鎌童子も確認した。そして俺は『白龍皇の光翼(アルビオン)』を抜き取られた。

と言っても、その時は顔もオーラも完全に隠しており、後々再び現れた本人から告げられて分かったことだ。

 

······少なくとも今はアルビオンとお互いの位置を捕捉できているが、それもいつまでもつかは分からない。

 

 

夏梅「······ということは、ここはクリフォト或いはそれに協力する組織のアジト、って思っていい訳だよね」

 

夏梅が総括して、俺達3人は頷いた。尚、鳶雄とラヴィニアは別の場所にいるという。どういう待遇なのかは不明だ。まぁ······鳶雄の目的が紗枝の奪還で、その紗枝もここにいる以上、あまりいい扱いではないだろう。

 

 

極限の状態に追い込まれても、自分の状況を客観視する。束に嫌という程叩き込まれたが、こんなおかしな事態でも役立ってくれたようだ。

 

 

······そして今、最も疑問なのが、紗枝に宿った試作型人工独立具現型神器───ウツセミである『勇気を失った獅子(カウアドリ・レオ)』の存在だ。オズの魔法使い達が虚蟬(うつせみ)機関に情報提供という形で完成させた『三魔獣』の内の一体。これもまた抜き取られているが、今更データを取って何になるのか。

 

そもそも三魔獣に関しては、禍の団の前身の組織が、次元の狭間に国及び領域を持つオズの魔法使い経由で、データを獲得している。ヴァルブルガからもたらされた情報で、かなりのデータが禍の団に流れていたことが明らかになったからな。抜き取らずとも、使えなくするだけでいい筈だが。今更手に入れておきたいデータなどあるのか······?

 

 

夏梅「······ヴァーリも同じ意見?」

 

尋ねてきた夏梅に頷く。

 

ヴァーリ「あぁ······状況証拠から察するに、夏梅と同じ意見だ。まだ不鮮明な部分も多いが······」

 

そもそも、先日のクリフォト襲撃作戦の段階から不可解なことが多かった。参加した全員が口々に疑問を呈していたが······

 

何よりも、リゼヴィムをこの手で葬った筈なのに、俺の中の不安、というか違和感が消えない。リゼヴィムの死は確認されており、魂の消滅も確認されている。肉体は灰になって厳重封印された。それなのに、俺の不安は増大したと言ってもいい。

 

紗枝「不鮮明って、クリフォト襲撃作戦の時も含めて、で?」

 

東城紗枝は、察しがいいんだな。少なくとも3人の中で一番勘がいいらしい。

 

ヴァーリ「······あぁ。まず第一に────」

 

そこまで言った時、俺達のいる牢に接近する気配を感じて、4人全員が顔を上げた。

 

 

その気配の発生源は、刃狗を襲撃した《あの女》───

 

 

「······初めましてだな。お前がヴァーリ。ヴァーリ・ルシファーか」

 

女は、座り込む俺に目線を合わせると、俺を見て怪し気に微笑んだ。得体の知れん女、危険度で言えば四鎌童子の上を行くだろう。

 

この女が来た目的は、俺、か······? 俺の読みでは、俺を都合よく手に入れられそうな戦力(カモ)として拉致ったのだと踏んでいたのだが······

 

······俺のファミリーネームはルシフェルだ、と言っても聞き入れないだろうから訂正するだけ無駄か。

 

 

ヴァーリ「······だったらどうする。というか、そろそろお前も名乗ったらどうだ。曹操ですら俺達との初戦闘の際に名乗ったんだぞ」

 

まぁ俺がその場にいたわけでも、『曹操』は本名でも何でもないただの偽名だが······まぁ捕虜に言われたからと言って、名乗ったりはしないだろう。

 

だが、女は立ち上がると、意外なことに、俺を見下ろして───名乗った。

 

 

「私はルエルト。ルエルト・グレイヴィー」

 

ヴァーリ「·······」

 

 

ルエルト・グレイヴィー······全く知らない名前だな。クリフォトのメインコンピュータにクラッキングした束とシフラからもたらされた情報に、そんな名前は無かった。保護した者達の中にも、当然そんな名前はない。偽名か。

 

 

······クソっ。それにしてもなんなんだろうか。さっきからこの女には妙な既視感と違和感を感じているのは。これはいったい······

クリフォト襲撃作戦とは関係ない違和感だ。敵意を抱けないというか、疑心が薄れていくというか······術をかけられた様子はない。それらに対する感知と対処くらいなら、両手両足に魔力封じの枷を嵌められた今の状態でもなんなく行使できる。

 

 

······何故、母さんの顔が脳裏にチラつくのだろうか。この既視感の正体が分かれば、違和感も消えるのか?

 

 

ルエルト「ヴァーリ・ルシファー。やっと話が出来るな」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ルエルト・グレイヴィーと名乗った女に牢から出され、拷問部屋のようなコンクリの部屋に、俺一人だけ連れて来られた。他の3人は女の興味の対象外だったらしい。

入室した瞬間から、僅かだが、部屋から血の匂いがする。掃除が行き届いていないのだろう。横を見れば、壁にはうっすらと血を拭き取ったような跡があった。

 

その部屋には、四鎌童子の姿もあった。ふむ······さしずめ、俺を拷問してサングィネムが隠している情報を吐き出させる腹積もりか。四鎌童子の目的が母さんの殺害だと言うことは知っている。バレないように、情報を吐かないように、先に痛覚を遮断し(切っ)ておくか。

 

 

ヴァーリ「······で、俺をここまで連れ出して何の用だ」

 

······電気椅子か。こんなものまで用意しているとはな。

 

ルエルト「まぁ座れ。私は、お前と話がしたかったんだ。待ちくたびれたよ」

 

ヴァーリ「そうか」

 

大人しく電気椅子に座って、一瞬だけ目だけ動かして部屋を見渡す。分かってはいたが何もないな。四鎌童子が監督官のつもりなのかは知らないが。

まぁ電流を感じたら激痛を感じている体で、呻き声でもあげればいいだろう。

 

 

ルエルト「······さて、私の目的から最初に説明しておこう」

 

四鎌童子が視線だけこちらに向けてきていた。

 

ルエルト・グレイヴィーと名乗ったこの女の目的、か。四鎌童子がいる以上、母さんに関することの可能性は高い。実は協力者なのかもしれない。

 

ルエルト「私の目的は、そこな四鎌童子と一応は同じくして、クルル・ツェペシの殺害だ」

 

······ノーリアクションを貫く。まぁ、予想の範疇だ。阻止するにも、情報が足りない。嘘の情報を喋る可能性も高い······というか本音を話す訳がないが、それならそれで一応の手掛かりにはなる。幼少期の経験もあって、それなりには嘘に敏感だと自負している。

 

ヴァーリ「······で、それを俺に話すのに何かメリットがあるのか? 俺がはいはい手伝いますとばかりに大手を振って、協力するとでも?」

本人でもなく、父さんやメリオダスでもなく、今や捕虜である俺に言う。俺を人質にして身柄の交換の要求でもするのだろうか。多分、父さんはその要求に応じないだろうな。

 

ルエルト「思わんさ。目的は一緒でも、四鎌童子とは理由が違う」

 

四鎌童子の目的は、本人が言うように、家族や故郷が焼き尽くされる原因となった666とその娘である母さんへの復讐であろう。八つ当たりに近いと思っているが、四鎌童子しか知らない何かがある可能性もある。だが、ルエルト・グレイヴィー(偽名の可能性高)は違うらしい。

 

 

そんな俺の訝しむ目を何処吹く風とばかりに受け流すルエルト・グレイヴィーは、言った。

 

 

 

ルエルト「────気に食わないからさ。()()()()()()()()()()、のうのうと日常を暮らしているあの女の存在が。

 

 

どうだ······単純だろう?」

 

 

 

────女の口は、今もまだ不気味に歪んでいた。

 

 

 

 

ヴァーリsideout

 

 






ルエルト・グレイヴィー······彼女はいったい誰なんでしょうねー。既にお気付きの方もいるかもしれませんけど、ヒント言うと、四鎌童子の母親でも娘でもありません。クルルに実は姉妹がいた、ってわけでもありません。でも、ヴァーリの既視感と違和感は、思い過ごしではありません。

ここまで言えば、流石に分かるかな───。

分かったとしても、まかり間違っても感想に書いたりしないでくださいねっ。(この後書きまで読む人がいたらだけど)


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