イレギュラーは家族と共に 〜ハイスクールD×D'sバタフライエフェクト~ 作:シャルルヤ·ハプティズム
1ヶ月以上も空けてごめんなさいぃぃぃぃ。でも1mmの間違いもなく今年最後の更新ですぅぅぅ。
始皇帝の運用が思いの外難しいのがいけない。
なんでグッちゃんはあんな可愛いんだ······朕様は来たんだからグッちゃんもウチのカルデア来とくれよ。
ヴァーリside
鳶雄『────頼む、ヴァーリ。従ってくれ······』
幾瀬鳶雄が俺に銃を突き付けてから、体内時計でだいたい3時間が経った。
あの後、魔術的な細工がなされた枷が四肢に取り付けられた俺は、鳶雄とラヴィニアに、暗い建築物に連行された。一瞬、アザゼルが父さんに対して、何らかの裏取引の材料に使うために捕縛させた、のかと思ったが違った。
サングィネムから人間界のどこか────一瞬だけ見えた風景や周囲の人間から、アフリカのどの国かのスラム街であろうことは分かった。だがそれだけだ。せめて地元民の言語が分かれば、範囲の絞りようもあるのだが。
そしてその一角にあった廃墟────に偽装した建築物に、俺は連行された。
タイミングからして、クリフォトの残党である可能性は······いや、流石に早計だな。父さんと母さんはあらゆる勢力(のタカ派)から反感を買っているし、強襲作戦の直後で少なからず疲弊した瞬間を狙うのは必然だ。しかもウチは少数が基本だからな。
それに、クリフォトの生き残りと偽装して攻撃することも普通に可能だろう。俺が敵ならそうする。リゼヴィムの名前を使うのは癇に障るがな。
そして、今の俺はと言うと······
ヴァーリ「······はぁ。全く、これでは俺も、ざまあないな」
「······ヴァーリは、随分と余裕だね」
「余裕だな、ルシドラ先生は。日夜捕まった時の練習でもしてんのか?」
ヴァーリ「これでも焦ってはいるさ。俺には一切情報がないんだからな」
今現在俺をジト目で見ている
·······4人も一緒くたに放り込んでいるあたり、敵は人質の扱い方を弁えていないようだが。
······まぁ、流石に俺も焦っている。何せ、アルビオン───
────また、綱生も夏梅も紗枝も、俺と同じく神器及びそれに類するものを奪われている。
綱生「······まさか、俺達が揃って捕まるなんてな。信じられるか? あの金髪女、鳶雄の
夏梅「おまけに、パンチ一発でラヴィニアの氷姬を魔法ごと破壊した、のよ」
紗枝「グリフォン達も、吹き飛ばされたからね······」
······
······恐ろしいな。喩え2年前までは───『虚蟬事件』以前はただの高校生だったのだとしても、
······そんな存在が仕掛けてきているなら、多少は情報があるはず、だが······容姿は、金髪で(3人が見たところ)赤い瞳······パッと思い浮かんだのはギャスパーとヴァレリー、それに母さんだが、禍の団に参加した吸血鬼の可能性もある。そんな吸血鬼なら、情報がない筈が······
······待て。何で今、俺は母さんを思い浮かべた? 吸血鬼でなくとも赤い瞳だけなら人外には探せばいくらでも······
ともかく、今は脱出及び俺達の神器の奪還を最優先だな。次点で敵に分析された俺達のデータの抹消とこの場所の特定。壊滅させられたらそれに越したことはないが、恐らく無理、だろうな。父さん達が俺達の魔力の痕跡を追ってここを特定出来たとて、敵もそこまで馬鹿じゃないだろう。ここを放棄して逃げられるのが関の山だな。
────今は、耐えて、情報を集めつつ機会を見出すに専念しよう。俺が────あの人の息子であるこの俺が、ただ捕虜として救出されるわけにはいかない。これはチャンスだ。上手くいけば、ここ以外の残党の隠れ家も突き止められる。
リゼヴィムの人形風情が、俺を御しきれると思うなよ。
ヴァーリsideout
八幡side
桃花に要請して国内の警戒レベルを引き上げさせ、警備隊の人員を大幅に増加したあと。お義母さんを部屋に帰し、俺は休暇に出ていたやつら全員を呼び戻した。
ただ、退院したばかりのギャスパーと黒歌には、ヴァレリーとカルナと一緒に部屋から出ないように言い付けている。
クロウと三日月は、別の場所で警戒状態を維持したまま待機。病み上がりのクロウと家族計画中の三日月を呼び戻すのは気が引けたが、仕方がない。
クルルは、お義母さんの
勝永「────そうですか。ヴァーリが······」
勝永は考え込みながら続ける。
勝永「とにかく、今はヴァーリの消息を追うしかありませんか」
八幡「ああ、それについては······」
勝永「この場にいない、美猴ですね?」
八幡「あぁ」
既に、最初に戻ってきた美猴に要請していた。あいつは、
───と、今まで黙っていた束が口を開いた。
束「······はーくん。やっぱりさ、
腕を組んだまま黙って俺の話を聞いていた束は、顔を顰めながら言う。俺が666を
当然、俺だって
聖書全てを信じるわけではないが、彼女曰く、自分は神が用意した世界に対する破壊工作の準備の一つ。下手に殺そうものなら何が起こるのかも分からないし、失敗して敵対されようものなら俺達は一環の終わりだ。オーフィスと全面的に協力しても滅ぼせるか怪しいからな。
なので、あまり気が進むやり方ではなかったが、クルルをダシにしてこちらに抱き込んだ。アイツが今後落ち着いた時なんて言うかは、正直予想出来ない。
束「───束さんには、あの女をここに置いておくのは危険すぎるよ。単騎でこっちの戦力を上回りかねないバケモノには違いないけどさ。戦力が上回る敵を潰す方法なんていくらでもあるんだし、今からでも······」
まぁ、気持ちは痛いほど分かる。束からしてみれば、クルルの母親でしかない他所の
今までは対テロリズムとしてある程度他所の勢力から便宜を引き出せていたが、リゼヴィム・リヴァン・ルシファーの死亡を確認して、クリフォトの瓦解が認められた今、そんなに簡単には動けない。動く訳にはいかない。
八幡「束、流石に無理だ。俺達の手に余るのなら、他の勢力でも手に余る。ウチは、軍事力だけは
まぁ、俺達がこんな不毛な言い争いをしていることぐらい、お義母さんも想定出来ているだろう。その上でウチに大人しく居座っている。あの人にはどこにも行き場所なんてないし。俺としては、宙ぶらりんの今の状況を維持するのが最善なんだが······
八幡「······とにかく、今はヴァーリの捜索だ。敵の狙いは十中八九ウチの何かだからな。ヴァーリは人質だろう」
そこまで言って、一つ息を吐いた。
人質······だから、少なくとも今はまだアイツは生きている筈だ。だが、アイツが自力で脱出出来ない何かがあると見て考えた方がいいな。
······そうだ。アイツは今日、ラヴィニアとデートだった。失念していた。ラヴィニアがヴァーリと一緒にいたなら、ラヴィニアも······巻き込まれたろうな。ラヴィニアもあの歳じゃ考えられないほど異常な強さなのは違いないが、ヴァーリと比べても弱点は多い。そうなると、『刃狗』チームそのものが巻き込まれた可能性もあるな······
勝永「······ラヴィニア・レー二は、本当に休暇でヴァーリを訪れたのでしょうか?」
俺の思考が深みに嵌り始めた時、唐突に勝永が呟いた。
勝永「美猴の調査が終わらなければなんとも言えませんが、こんな情勢で二重兼業の彼女に休暇が取れるとは考え難いでしょう? どちらの組織とも別の意図でヴァーリの拉致、ないしはそれに加担したと考えられる」
八幡「······あぁ。確かにな」
有り得るな。無意識にその
と、そこで執務室のドアが開いた。ノックもナシに戻ってきたのは美猴。そして、何故か人間態のカマクラを連れていた。
美猴「戻ったぜぃ」
八幡「お疲れ美猴。なんでカマクラと?」
美猴は後ろにいるカマクラを親指で差しながら言った。
美猴「ヴァーリの魔力を最後に感知した場所から引き返してすぐの所で偶々会ったんだよ。
そこまで言うと、美猴は溜息を吐いた。
八幡「なるほどな。美猴、助かった。カマクラ、こんなタイミングで頼んで悪かった」
俺が言うと、カマクラは猫の姿に戻って俺に飛び付いて来た。俺が両手を前に出したら、分かっていたかのように······分かっていたんだろうがそこに収まった。
八幡「頼んだやつは?」
カマクラは目だけ向けて肯定の意思を伝えると、丸まって眠り出した。呑気なヤツめ。
八幡「お疲れさん」
俺はカマクラから美猴に視線を戻す。
八幡「······美猴。お前の報告も聞きたいんだが、その前に、ドアの陰に隠れてる
美猴「······だろうな」
美猴が言うのと同時に、魔法で作られた氷柱がドアをぶち破って俺の眉間目掛けて飛んで来た。簡単な術式で罠もないと分かったので、術式を狂わせ矛盾させて、インパクトの直前で崩壊させた。
束に敵意の視線を送られながら、女が出てくる。13世紀のイングランドで見られた貴族の纏うドレスを着た女が笑みを浮かべて言う。
「······全く。人殺しを覚えて以降どんどん可愛げがなくなったな、
束が腕を組んで一瞥した後、壁に寄り掛かって関わりたくないと目を閉じる。
八幡「そうですか。お帰りなら貴女が今入ったドアを通って左に行けば玄関です。もう歳なんですから無理は体に障りますよ?」
「嘗ては私に師事しておきながら随分な物言いだな、そんなに私が嫌か」
八幡「えぇ。この情勢下でアポもなくノコノコやってきた貴女
部屋を見渡してから俺に視線を戻して言う。
「まぁ、当然か」
と、勝永が俺の耳に口を寄せた。
勝永「······
聞こえないように小さい声で返す。
八幡「仕方ないだろ。玄関前で美猴に話し掛けたと思ったら、脅してきやがった。お前も遠見で見てたんだろ?」
さっき、屋敷に戻ってきた美猴だったが、玄関前で突如やって来たこのババァに脅された。カマクラもいたし、美猴に断るという選択肢を取らせないためだろうというのは遠見で見ていた俺達にもすぐに分かった。
勝永にそれだけ言うと、視線を戻した。
八幡「······貴女含めてもたった2人しかいないのに、『
────スカアハ。目の前のパッと見30代の女が、影の国の女王であり俺の嘗ての師だった。
スカアハ「はぁ······そんなわけなかろう、私はただの使いだよ。ルーのな。ホント、可愛げのないやつだな」
この作品のスカアハは、紫タイツでなければおっぺらすっちょんコーポレーションでもありません。ご注意を。