イレギュラーは家族と共に 〜ハイスクールD×D'sバタフライエフェクト~   作:シャルルヤ·ハプティズム

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第131話 ミッドナイト・サン⑧

 

 

ジンside

 

 

 

フリード「······にしても、マジで久しぶりッスねぇ。ジークフリートのアニキ」

 

光の剣を持つ手をだらんと下げるフリード・セルゼン。僕やシフラと同じくデザインベビーとして造られた男。

 

 

 

歴史に名を残してきた名だたる英雄を造り出そうという、『英雄再臨計画』。僕やシフラはその計画により造り出された。フリードはその計画で齎されたデータで発案された同機関の別の計画で造られたデザインベビーだ。

確か、フリードとほぼ同じ塩基配列で造られた女の子がいたはず。あの機関はクロウが潰滅させたけど、彼女はどうしているのだろうか。

 

 

フリード「にしても、驚きだぜ。アンタが今もジャンヌのアネゴと一緒にいたとはねー。堕天魔にでも保護されたんか」

 

鍔迫り合いながら、フリードは軽口を叩く。

 

ジン「まぁそんなところさ。フリード、お前こそリリンにでも拾われたのかい?」

 

確か、駒王で教会から強奪されたエクスカリバーを振ってたはずだ。その時はコカビエルの手足だったろうが、ヴァーリがコカビエルを回収しに向かった時にはどさくさに紛れて姿を消した、というのが分かっていた限りだ。

 

フリード「まぁな。センセももういねーしコカビエルのダンナも捕まっちまったしで、とりあえず逃げてたところをユーグリット・ルキフグスにスカウトされたっつーわけですよ。いやー、あんなに殺しまくったクソ悪魔にスカウトされるなんて、世の中分かんねーもんでさー」

 

と、別方向から殺気を感じて慌てて振り返ると、突如空間が避けてそこから剣が飛び出してきた。身を捩ってなんとか躱すも、フリードがその剣を掴んで振り下ろしてくる。

 

グラムに負けない聖の波動を放つ剣······知っているものだ。

 

 

『ガラティン』───アーサー王伝説に登場する太陽の騎士ガウェインが揮った剣。聖王剣コールブランドの姉妹剣。擬似太陽が収められているとされるほどの灼熱を操る日輪の剣。

 

記憶の限りでは、過激派の悪魔祓い(エクソシスト)のダヴィード・サッロがこれを持ち出して姿を消して以降行方不明だった。フリードが持っていたのか。

 

 

フリード「あー、会心の一撃だったんだがなー。まっさか見破られるなんて思わねーわ」

 

フリードは左手に持ったガラティンを遊ばせながら不気味に笑う。

 

ジン「伊達にグラムを使ってるわけじゃないさ」

 

借り物ではあるが。まぁ気難しいグラムを持っても一切嫌われなかったのは、きっと僕がシグルズと起源を同じくするジークフリートの遺伝子で造られたデザインベビーだからだろう。

 

フリード「けっ、案の定グラムかよその剣。めんどくせー。堕天魔はどっからんなもん入手したんだよオイ」

 

ジン「降参する気にでもなったのか? 今なら4畳一間で3食付きの一人部屋に入居出来るよ」

 

フリード「オイオイ、俺っちをブタ箱に放り込むとか」

 

ジン「分かってるじゃないか」

 

3次元的に飛ぶ魔剣のオーラで牽制しながらフリードと切り結ぶ。ガラティンの能力はある程度の予想はつくものの、攻撃範囲や直接的な攻撃力まではサッパリだ。

だが、斬り合いならグラムに分があるはずだ。何せ、切れ味と龍殺し(ドラゴンスレイヤー)だけで魔剣最強格足らしめる剣だ。

 

と言っても、斬り合ってるだけでそのうちガラティンが折れてくれるとかそういうことはない。フリードの右手にある、悪魔祓いなら誰でも持っている普通の光の剣なら、真っ二つに出来るだろうが、そんなこと分からないフリードではあるまい。

 

 

フリードの攻撃をグラムで捌いていくが、二刀流ならではの手数の多さは中々に厄介だ。僕に攻撃されないことを優先してだ。

 

ジン「はぁっ!!」

 

グラムのオーラを飛ばしながら距離を取る。シフラはもう司令室を占拠している。結界が張られていることから分かる。結界を破壊しないように力を調節すればいい。

 

フリード「チッ」

 

フリードがガラティンで、飛ばしたオーラを斬っていく。予想通り、右手の光の剣じゃグラムを受けるのは無理みたいだ。あいつがそう見せかけようとしてるのかもしれないが、それならそれで対処するまでだ。

 

追加でオーラを飛ばしながら、グラムで直接追撃をかける。左手だけでグラムを受けなければならないフリードに対して、両手でグラムを握る僕が押し切るのは簡単だ。

 

フリード「それで勝ったなんて思っちゃぁいませんかぁ!?」

 

ジン「クッ···」

 

右手の剣を手放してガラティンの両手持ちに咄嗟に変えたフリードが鍔迫り合いを拮抗まで戻す。

 

ジン「ならこれはどうだい!!」

 

敢えて込めていた力を弱め後ろに去がる。フリードが僅かにバランスを崩すしながらガラティンを振り下ろすのをスレスレで避けて、腹に膝蹴りをかます。更に、後ろに吹っ飛ぶフリードの右肩と二の腕を亜空間から出した拳銃で撃ち抜く。

 

フリード「ガッ······!! ならぁ!!」

 

フリードが床にガラティンを突き刺す。

 

ジン「(カハッ)······!?」

 

次の瞬間、僕を灼熱が襲う。熱帯とか鼻で嗤えるほどの暑さ······!!

ガラティンの能力か······!!

 

一瞬で脂汗が吹き出す。

 

フリード「立てねぇだろ? オレもセンセにやられた時は死にかけた」

 

座標指定で熱を発生させられるのか···?

空気が揺らいで、屋内なのに蜃気楼が見えそうだ。

クソ。暑さで声すら出ない···

 

フリードのガラティンをグラムで受ける。フリードは暑そうな素振りを見せないから、所有者には無効化されるのか。

 

驚くほど体力が消費される。魔法でブーストして強引にフリードと体を入れ替えながら灼熱の檻を脱する。

 

ジン「カハッ······!!」

 

漸く呼吸が出来る······

 

フリードが光の銃で撃ってくる弾をグラムで弾きながら、もう空気の揺らぎのない床を突っ切って、フリードをグラムで壁まで押し込む。

 

フリード「いつっ······」

 

ジン「降参しろ。でないとお前を殺す」

 

壁まで押し込めて喉に剣を突きつける。

 

フリード「のヤロゥッ······!!」

 

フリードは左手一本でガラティンを逆手に持ち、片手とは思えない速さでグラムを弾く。

 

ジン「チィッ!!」

 

そのまま順手に持ち替えて高速で揮われるガラティンと切り結びながら、片手で振るうことにより大きくなった隙を突いて、今度はガラティンを受けながらもう一度壁に叩きつけた。

 

フリード「ウッ······!?」

 

呻き声を上げるフリードの襟と右腕を掴んで、一本背負いの要領で床に叩きつけ、そのまま闇の鎖(グレイプニル)で床に縫い付ける。そして、左手首を踏んでガラティンを手から離させる。

 

はぁ······フリードが僕を剣をメインに使うと思ってくれて助かった。必要以上にグラムに意識を集中させてくれたおかげで、楽に攻撃が出来た。

 

フリード「いっづ······グラムは囮かよクソが······」

 

ジン「あぁ、グラムに気を取られたおかげで、楽にお前を制圧出来た」

 

周囲に気配がないのを確認してフリードに問う。

 

 

ジン「じゃあ聞かせてもらおうか。なんで僕らはこんなに()()()()誰かと戦ってるのかね」

 

 

 

ジンsideout

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

八幡side

 

 

 

八幡「オ、ラァ!!」

 

コマチ「こんのッ!!」

 

俺がコマチの頬を殴ると同時に、コマチのアッパーが俺の顎を捉える。一瞬気を失いかけるのを強引に繋ぎとめながら脇腹を蹴り飛ばそうとするも、コマチが右足で合わせてきて拮抗状態になるが、向こうにパワー負けして一瞬で押し負ける。

 

姿勢が崩れた所に追い撃ちとばかりに放たれた蹴りを両手をクロスさせてガードしつつ、そのまま足を掴んで蹴りの勢いを利用して地面に叩きつける。

 

 

あんなちっこい癖に、体のどこにクルル並のパワーがある···? 魔法での強化じゃこうはならない。やはり、666(トライヘキサ)さんの力は奪われてるのか?

 

八幡「降参は!」

 

コマチ「ない!!」

 

パンチを受け止められ、コマチのパンチを受け止める。クソ、相手のレンジに入られると威力が乗らない。

 

八幡「死にたくないんだろ!?」

 

受け止められた右手を強引に引き剥がしつつコマチの右腕を掴んでもう一度コマチを投げて地面に叩きつける。普通なら、これで体の骨の8割を粉々に出来るが、俺を狙っていただけに、これくらいじゃそこまで大きなダメージにならない。

 

コマチ「お前についていってもどうせ死ぬ!! だからァ!!」

 

コマチは俺の足を掴むと、そのパワーで強引に俺をブン投げた。姿勢制御もままならずに壁に叩き付けられる。

 

八幡「ガッ······!!」

 

一瞬でコマチが距離を詰めてくる。即座に立ち上がって、光力を纏わせた貫手でコマチの左腕を切り落とすが、コマチのパンチが顔······詳しくいうと右眼の辺りに直撃して、また壁に叩きつけられた。

 

 

クソが······!! 利き目をやられた!! ······右眼破裂したなこりゃ。俺だけじゃ禁術でもすぐには治せないし、暫く片目で生活かよ。

 

 

光の剣を薙いで、コマチに距離を取らさせる。コマチは飛んだ左腕を横目で見つめながら左肩を押さえる。

 

斯く言う俺も、破裂した右眼を押さえながら片目でコマチを睨めつける。あの左腕を繋ぎ直されるのも厄介だ。消し飛ばすに限る。

 

 

光の剣を投げてコマチを落ちた片腕から引き離しつつ、もう一本作り出してコマチに切りかかる。コマチは腕によく分からない色のオーラを纏って、剣を受け止めた。

 

そして、コマチが剣を受け止めている間に炎でコマチの左腕を灰にする。

 

コマチ「······!!」

 

八幡「ゼア''ァ!!」

 

限界まで剣に力を込めて、コマチを押し込む。高さもあってコマチが膝をつく。

 

八幡「これ、で······!!」

 

 

 

······だが、押し切れる寸前で飛んできた()()に気付いて、俺はコマチから離れつつそれを受け止めるしかなかった。

 

八幡「黒歌······!?」

 

 

 





ミッドナイト・サンはまだ5話続きます(予定では)。ぐだりそうだなー、とお思いの方も多いでしょうが、お付き合いいただければ幸いです。


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