イレギュラーは家族と共に 〜ハイスクールD×D'sバタフライエフェクト~ 作:シャルルヤ·ハプティズム
黒歌side
D班、私とギャスパーは、C班の美猴・三日月と別れ、2人とは別ルートから下層の捕虜の収容所を目指す。わかってるだけの建物の構造は全部頭に叩き込んだ。あとは最短ルートを通るだけ。
束がセキュリティを一時的に落としたのが2分前。残り5分。それがすぎると、向こうのセキュリティが復活して外部からの接触を一切受け付けず、尚且つ敵側の幹部のパーソナルデータを直接入力しないと何も出来なくなるといういやなおまけ付き。
A班とB班が司令室を占拠して、完全にシステムを破壊出来ればそれに超したことはないけど、失敗する確率だってあるわけだから油断は出来ない。
黒歌「······あと3つ」
収容所エリアまであと3つのゲートを通れば辿り着く。配置された敵兵が思ったより少なくて助かった。無駄な戦闘をほとんど避けられたから。
ギャスパー「······そこに、捕囚された人達がいる。助けられれば僕達の勝ち······!!」
───と、ギャスパーが言ったその時、空中に殺気を感じて、その場を慌てて飛び退く。
次の瞬間、一瞬前まで私達がいた場所が弾け飛んだ。
危なかった······体がバラバラ死体になるところだった。
特に広いわけでもない廊下に粉塵が舞い上がるが、一瞬にしてそれは晴れる。いや、吹き飛ばされた。
ロキ「······よもや、其方から来てくれるとは思わなかったぞ。ギャスパー・ルシフェル」
吹き飛んだ粉塵の中から姿を現したのは、一見してヤバそうな杖を携えた悪神ロキ。
ギャスパー「ロキ······!!」
黒歌「なんでこんな所に······」
事前に齎された情報では、ここには幹部クラスは誰もいなかった······
スパイだからって内部事情を全て盗めるわけではないとは言え、まさかコイツがここにいるなんて······私達がここに来るのを読んでいた?
ロキは改めて私達を見据えた後、持っていた杖で床をトン、と叩いた。
··········ヤバい!!!!
私が銃型のレプリカブリューナク2挺を、ギャスパーがオリジナルのブリューナクを構え、魔法陣を展開して防御に全力を注ぐ。次の瞬間、私達は雷の嵐に襲われて、外壁ごと突き破って外に吹き飛ばされた。
黒歌「かハッ······」
ギャスパー「うぐぅッ」
すぐさま空中で姿勢を整えると、ロキは音もなく私達の前に移動した。
ロキ「······どうだ? 我にしてやられる気分は」
ギャスパー「良いと思うか?」
構えは解かず、ギャスパーが言う。
ロキ「そうであろうな。だが······我は今最高に気分が良い。貴様を我が手で滅ぼせるのだからな!!」
ロキが杖を天に掲げる。すると、ギャスパーとロキが強烈な光に包まれる────
黒歌「ぎ、ギャスパー!!」
ギャスパー「僕は大丈夫だから!! 先に行って!!」
次の瞬間、ギャスパーとロキの姿が共に掻き消えた······
黒歌「わかったにゃん。必ず帰って来なさいよ、ギャスパー」
私はロキに外に吹き飛ばされた時の穴を利用して再び侵入する。そこには、狭い通路にズラッと並んで、待ち構えていたクリフォトに傾倒した悪魔に堕天使、魔法使いetc······
たかだか女一人相手によくもまぁ······
黒歌「······そうだよね······ギャスパーにおかえりって言わないといけないもんね」
両サイドに鮮紅の銃口を向ける。そして、躊躇なく銃爪を引いた。
黒歌sideout
ギャスパーside
ロキに自分ごとどこかに飛ばされた僕は、ブリューナクを構えロキと対峙していた。
ギャスパー「何のつもりだ、ロキ」
ロキ「貴様の排除に決まっているだろう。ここは我が魔法で作り出した異空間だ。ここならば堕天魔や奴らの周りに邪魔されることもあるまい」
まんまと閉じ込められたわけか······
ロキが杖を翳すと、バチィッ!! と稲妻が走り、僕に迫ってくる。ブリューナクで薙ぎ払うと、第二第三と追従するように稲妻が追いかけてくる。ブリューナクを手放して、右腕を闇の巨腕に変えてロキを殴りつけるも、ロキは杖で容易く受け止めた。
この杖······
ロキ「白き槍を構えよ。ギャスパー・ルシフェル。大人しく殺されるというのであればそこになおっておれば良いがな」
ギャスパー「·······チィッ!!」
背後から飛んでくる稲妻を、巨腕化した腕で受け止める。が、稲妻が闇の巨腕を貫通し僕の右肩を掠めた。
ギャスパー「ッ······」
と同時に、稲妻が貫通したことに気を取られた僕の背後にいたロキに背中から蹴り飛ばされた。
放り投げていたブリューナクを引き寄せつつ、受け身をとって距離を取る。
ロキ「······どこまでも我を愚弄するか。生き汚く我の言う通りにしておれば、ここで死なずに済んだやもしれんがな」
次の瞬間、僕の体は切り刻まれていた。
ギャスパーsideout
ヴァーリside
7階。俺はジン、シフラと共に8階の司令室を目指していた。俺達の目標はそこの占拠、及び10階を目指している勝永と束と連携し、ここのシステムの完全破壊。
······そして、リゼヴィムとの決着。
ヴァーリ「······思ったより数が少ないな。10階に集まっているのか?」
通信では、ギャスパーと黒歌の方も少ししか会敵していないという。美猴達の方も、そんなに敵と出くわしていないらしい。勝永と束の方に回された?
ジン「かもね。奴らは捕虜にそこまで利用価値を感じていないみたいだし」
シフラ「だとしたら、何か別の意味があるのかもしれないわよ。向こうは堂々と宣戦布告したんだし」
既に別の場所に部隊を移動させているのかもしれないが······なら、こちらを攻めるのはチャンスか?
ヴァーリ「ここを開ければすぐに8階の司令室に行ける」
ただ、待ち伏せされている可能性は高い。向こうも、俺達が司令室を取りに行くことぐらい簡単に予想出来る。だが······
シフラ「罠って明け透けでも突っ込まなきゃいけないのが辛いところね······」
ジン「だね」
ヴァーリ「······あぁ。2人とも首尾は?」
ジン「オーケー。何の問題もないさ」
シフラ「私も。いつでもいいわ」
ヴァーリ「······よし。突入する!!」
8階。知る限り、司令室がある以外はそこまで何かがあるわけではない。だからこそ、俺達が知らない何かがあるのではないか、という不安に駆られる。
ヴァーリ「······妙だな」
先知の状態では、このフロアはかなり強固な警備だったはずだが······
ジン「あぁ。人の気配がほとんどない。ここの警備はいったいどうなって······」
周囲を注意しながらあと僅かな司令室に向かって進む。
シフラ「待って。これは······」
シフラが立ち止まる。彼女の目の前にあるのは何の変哲もないドア。これと言った特徴はない。
ヴァーリ「───ッ」
この部屋に······いや部屋と言っていい大きさではない。吸血鬼カーミラ領の、本城の大広間と同じくらいの大きさがある······!!
そして、その中からよく知った気配を感じる······!!
ヴァーリ「2人とも、先に行け」
ジン「······いるのか? その中に」
ヴァーリ「······あぁ」
声が震える。
シフラ「なら、行った方がいいわ。元々、私達は別行動も取れるように他と違って3人で組んでるんだし」
ヴァーリ「あぁ······!!」
俺が答えると、ジンとシフラは顔を見合わせ、そして俺に言う。
ジン「シフラは僕と司令室に向かおう。もう時間もない」
シフラ「了解」
ジン「······ヴァーリ、僕達はヴァーリとオーフェリアさんに何があったのかよく知らない。けどこれだけは言えるよ。
······行くよシフラ」
シフラ「ええ······ねぇ、ヴァーリ。これは私の独り言だけどさ。今もまだ
2人はそれだけ言って、司令室へ向かった。
ヴァーリ「······分かっているさ」
周囲を警戒しながら、突入する。
リゼヴィム「······よぉヴァーリ、おじいちゃん待ちくたびれたぜ。少しは楽しませてくれるんだよなぁ?」
ヴァーリ「知るか。俺は···········
ヴァーリsideout