イレギュラーは家族と共に 〜ハイスクールD×D'sバタフライエフェクト~   作:シャルルヤ·ハプティズム

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第119話 お前は甘い

ギャスパー「······何のつもりだ」

 

ギャー君が吐き捨てるように言う。こうも嫌悪感を隠そうともしないギャー君を見たのは、ルーマニアでの一連の騒動と今回くらいだ。

 

 

リゼヴィム「嫌だな~、そんな目で見られるなんておじちゃん悲しい」

 

リゼヴィム・リヴァン・ルシファー。白龍皇ヴァーリの祖父にして、前魔王ルシファー子息。現ルシファー様、ベルゼブブ様と同様、『超越者』と称されている。

 

そして、『クリフォト』を率いて、各地でテロリズムを繰り返す外道。

 

ギャスパー「お前らが情報を流さなければ······こんなことにはならなかった」

 

ギャー君は再びエクスカリバーを現出させる。

 

リゼヴィム「······イヤイヤ、未だにあの小僧は復讐心に囚われてるぜ?」

 

ギャスパー「利用したクセに抜け抜けと······!!」

 

ギャー君はエクスカリバーで斬り掛かる。リゼヴィムは赤黒いオーラを腕に纏い、エクスカリバーを受け止めた!!

 

ギャー君はエクスカリバーを2度3度揮うも全て受け止められ、鍔迫り合いに持ち込む。

 

リゼヴィム「おいおいギャスパーきゅん、全部おじちゃんのせいにしちゃだめだぜ? 天界(ここ)に単身乗り込んできてそこの男を殺そうとしたのが何よりの証拠じゃん。俺っちはほんのちょ~〜っと情報をあげただけよ」

 

ギャスパー「あの人に復讐は必要なかった!! やっと得られた安寧を、何故壊す!!?」

 

エクスカリバーがリゼヴィムの頬を掠める。それに、リゼヴィムは歪んだ笑みを浮かべる。

 

リゼヴィム「そりゃあ違うぜギャスパーきゅん。復讐しなきゃその先を見い出せない奴がいることぐらい分かんだろ? 同族同士、共感出来るものもあったんじゃねぇの? おじちゃん達は、そこに便乗する形で手を貸したっただけー」

 

ギャスパー「お前の身勝手で!! あの人は死んでいたかもしれないのにか!!」

 

ギャー君の蹴りがリゼヴィムの側頭部を捉える。リゼヴィムはオーラを纏っていたが、蹴りの威力に耐えきれなかったのか、何度かバウンドして吹っ飛んだ。

 

ギャスパー「はぁ·······はぁ······」

 

リゼヴィムは起き上がると目にも見えぬ速さでギャー君の目の前に現れ、ギャー君がしたように、ギャー君の側頭部に蹴りを入れる。ギャー君は間一髪両手をガードに回せたものの、地面に叩き付けられた!! が、すぐさま体勢を立て直して距離を取った。

 

リゼヴィム「うおいてて······流石に衝撃までは緩和しきれんかったか~」

 

リゼヴィムは後頭部を掻きながらギャー君を見る。

 

リゼヴィム「やっぱ神格でブースト掛かってる奴は違ぇなぁ······なぁギャスパーきゅん」

 

リゼヴィムはギャー君に問いかけた。ギャー君は何も言わずリゼヴィムを睨むのみ。

 

神格でブースト······? じゃあ、ルーマニアでのあの桁違いの能力はやっぱり魔神バロールの力······? でもそれなら、なんでギャー君は魔神の力を使えるの······?

 

リゼヴィム「ギャスパーきゅんはどうなのよ。()()復讐心はどう晴らす? どう癒す? 君の復讐心は······そう!! 君自身の後悔として今も残っている!! 君の友───女神ヘルを手に掛けた自分への復讐心さ!!」

 

 

 

小猫sideout

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

冥界『サングィネム』辺境にて。

 

 

束side

 

 

束「ほらほらどうしたの〜?」

 

束さんは、屋敷へ忍び込んで来たコソドロ······じゃなかった。四鎌童子を自分ごと研究区域に飛ばして、そのまま戦闘状態に持ち込んだ。

 

四鎌童子「うぐっ······」

 

束「あははっ、その程度でクーちゃん殺そうとしたなんて甘い甘い」

 

束さんの銃型の神器(セイクリッド・ギア)から放たれた光が四鎌童子の左腕を貫く。

 

特異異装(タクティクス・アーマード)』。束さんが身に宿した神器。

この神器は、所有者が初めて発現した時に強くイメージした武器へと変貌する。所有者によって初期形態はバラバラ。ただし、発現させるにはある程度は()()への強い意識が必要だった。束さんが······私が、この神器を発現させたのも、ある事件によってそうせざるを得ない状況に追い込まれたからだった。

 

 

 

 

もう何十年も昔。

束さんが裏の世界を知らない純粋な、ちょっと人より頭が良かっただけの人間だった頃。

 

 

束さんは走っていた。幼馴染の年の離れた弟を抱えて、ただひたすら走っていた。

 

 

 

 

当時、剣術道場を営む父と母に反発して度々幼馴染の家に入り浸っていた束さんは、ある日夢を見る。その夢は、不思議な鎧を纏った自分が拳銃を持ち人に発砲しているというもの。その当時、いくら束さんの実家が片田舎にあったとは言え、第一次大戦中だったからその影響だろうとしか考えていなかった。

 

自分が夢の中で銃を持っていたことにもなんの感慨も抱かなかったことに、その時は気付いていなかった。

 

それより、自分が夢の中で纏っていた不思議な鎧をもっと······目で、手で、確かめたくなった。

 

 

元より細胞レベルでオーバースペックを自称していただけあって、頭は良かった。すぐさま、研究に取り掛かった。この時、自分がやっていることは、当時の技術から逸脱していたことには気付かなかった。

 

だから、それが元凶だったなんて、思うはずもなかった───。

 

 

研究を初めて暫くして、束さんの下に妙な男が訪ねてくる。日本人には全くそぐわない髪色、彫りの深い顔、日本人男性の平均よりかなり高い身長。

その男は、自分に研究成果を売って欲しいと言った。とは言え、一般人が満足な研究施設なんて持てるはずもないから、一から建造、そして研究の流れだったため、そこまで研究も進んでなかったし、適当に断った。

なんで研究してることがバレてるのか気になったけど、それより研究。何よりも研究。山の中に作った研究施設は滅多なことで邪魔も入らないもんだから、益々のめり込んでいった。

全く、当時の自分の脇の甘さと来たら、全力でぶん殴ってやりたい。

 

 

それから暫くして、またその男が訪ねてく来た。またか······と思ったけど、また来られるのも面倒だから、てきとーに資料作って渡した。

 

けど、実はその男が狙っていたのは、束さんの研究成果じゃなくて、束さんの研究技術そのものだった。実は、当時は周りなんて何処吹く風でやってたせいで全く気付きもしなかったのだが、当時研究用に組み上げた機材が現代の中国のスパコンぐらいの性能だった。

 

 

······まぁそんなものがあるのが分かれば狙われるのは当然なわけで······

 

 

結果から言うと、束さんの研究(興味本位)は、周りからほぼ全てのものを奪った。そして冒頭に戻る。

 

両親と妹は今も行方不明。幼馴染は私を庇って凶弾に倒れた。狭い世界で生きていた私に残ったのは、幼馴染の弟だけだった。

 

 

そんな時に、はーくんとクーちゃんと出会った。行き場も分からず、彼の手を引いて逃げ惑っていた時に、2人に保護されたことが切欠だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

束「つまんないの」

 

四鎌童子「······うぐっ」

 

呻き声をあげて倒れ付す四鎌童子を冷ややかに見下ろす。

 

束「······ねぇさぁ、ほんとにこんなんでクーちゃん殺せると思ってんの?」

 

四鎌童子「う······」

 

腰下ろして、うつ伏せになってる四鎌童子の髪引っ掴んで強引に顔を上げさせる。

 

よくそんな実力でうちに単独で忍び込んで来たもんだねぇ····ま、単独じゃなかったとしても眷属内で最強のメリーが待機してるから無駄なんだけど。うん、やり方次第で、はーくんとクーちゃん両方抑え込めるメリーなら何の問題もないね。

 

 

と、そこで、突然束さんの背後に魔法陣が展開された。

 

 

 

束sideout

 

 

 




補足設定。

・『特異異装(タクティクス・アーマード)
所有者のイメージに引っ張られる形で発現する神器。他の神器とは違い、所有者の初発現の際に形状が固定化される。そのため銃や剣、槍、籠手、盾等々所有者によって形状はバラバラ。また特性も異なる場合がある。
属性系と創造系の中間に位置する神器。割と数自体は多いが、その特性故に他の神器と誤認される場合も多い。

束の場合は、初の発現時に銃を向けられていたことからそのまま銃となった。この他、三日月・オーガスもこの神器を所有。三日月のそれについては、オルフェンズ原作におけるルプスレクスのテイルブレードを参照。



やっと出せました。設定は束が初登場した時からあったにも関わらず、戦闘回ではなかったため設定記載を見送りにされております。
尚、束の神器は本作品が終わるまでに後2回出番があればいい方です。



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