イレギュラーは家族と共に 〜ハイスクールD×D'sバタフライエフェクト~   作:シャルルヤ·ハプティズム

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さぁ、回収する気ZEROだった伏線を(露骨)に回収しようかと思いますよ皆さん。




第107話 シ者

 

 

 

ギャスパーside

 

 

 

ギャスパー「······ここは······?」

 

 

ルーマニアから帰国して一月ほど経ったある日。『サングィネム』の屋敷で黒歌さんと談笑していた僕は、気付いたら全く知らない場所にいた。

どこかの会議場なのか、50畳はある講堂のような場所で中央には10人が囲めるようなサイズのラウンドテーブルが置かれていた。周りには古めかしいものの一目で上物だと分かる椅子が10脚置かれていた。

 

 

講堂にはアーチ型の窓が壁に等間隔で造られており、そこからは、すぐ側に純白の···白亜の城が、別の方を向けば、大きな城下町が広がっており、街の端は侵入者を拒むかのような、これまた純白で巨大な壁に囲まれていた。その外には果てが見えない砂漠が広がっていた。

 

 

「······あら、漸く気付いたのね」

 

ギャスパー「!! ··············」

 

突然背後に現れた気配に、振り向くと小柄な銀髪の女の子がラウンドテーブルに腰を掛けていた。彼女は質素な服を来て手にミスティルティンの杖を持っている。

 

彼女は、服の上からでは分からないが上半身が健康的な肌色をしているが、下半身は緑がかった黒なのだ······

当たり前だが彼女は服を着ているため膝下しか見えていないが。

 

 

「久しぶりじゃない。もう少し喜んで欲しいわ、ギャスパー」

 

僕が立ち尽くしていると、彼女はラウンドテーブルから降りて言った。

 

ギャスパー「······何が久しぶりなんだ。その姿をした人は消滅した」

 

───僕の手で。

 

 

何故このタイミングで姿を現したんだ······? ルーマニアに行く前に来た時はうんともすんとも言わなかったくせに。

 

 

ギャスパー「······その程度で騙せると思っているのか?」

 

「あら残念······」

 

全く残念そうに見えない顔で女がそう言うと、光に包まれた。若干眩しさに目を細めていると、やがて光は止んだ。

 

 

「······少し試してみたのだったが······やはり駄目だったな。我には感情というモノが未だに理解出来ない」

 

光が収まると、そこにいたのは銀髪の女性ではなく、金髪で碧眼、軽鎧を纏い、白いマントを肩に掛けた女性がいた。

 

ギャスパー「······それはそうだろう。お前が持つのは自身を揮うに足るかを選別する擬似的なシステムだけ。

 

······何故このタイミングで僕を()()()()()。お前は僕を切ったのではなかったか? ()()()()()()()

 

 

ロンゴミニアド······それは、かつて騎士王アーサー・ペンドラゴンが揮ったとされる聖なる槍。彼女──正確にはその容姿からそう呼んでいるだけ──は自身に何者かが埋め込んだシステムというかプログラムがあるらしく、それは自身を揮う者を見極めるのだとか。

 

ロンゴミニアドによれば、カムランの丘でアーサー王が叛逆の騎士モードレッドを討った時はエクスカリバーではなくロンゴミニアドを使ったのだとか。

 

 

失われたとされていたが、エクスカリバーを湖の乙女ヴィヴィアンに託されたお父様がヴィヴィアンに捜索を依頼されたもので、偶発的に発見出来たらしい。

 

 

ロンゴミニアド「······貴殿が分からないわけではあるまい。我の担い手を選別するシステムに再び貴殿が引っかかっただけのこと。こうして呼び出しでもしなければ、貴殿はもう我を揮うことはないと思ったのでな」

 

一時は切ったくせに勝手な······いや、目の前の女は人ではないし、そもそも僕に合わせて擬人化しただけだ。多少好き嫌いが激しいだけの強力な槍だ。

 

 

ギャスパー「······ならもう一つ聞くが、何故あの人の姿を真似た? 僕に嫌がらせをしたかったとでも?」

 

と言っても、そもそも槍であるロンゴミニアドには人としての容姿なんて本来ない筈だから、今の姿も誰かしかを真似たものなのであろうが。

 

 

ロンゴミニアド「ただの気まぐれ、というやつだ。深い意味はない。貴殿が初めて我で屠ったのがあの()()だっただけのこと。これは『堕天魔』が初めて我を手にした時も同じことをした。奴は我の姿を見るやいなや、問答無用で我の首を刎ねようとしたがな」

 

気まぐれ···深い意味はない···以前僕が持った時は人を手にかけたことがなかったからやらなかったというのか。それにしても、そんなことをする必要はどこにもないと思う。

 

 

ギャスパー「······そうか。なら二度と同じことはするな。次やれば······お前を闇で飲み込んで消滅させる」

 

右腕を闇に変質させる。が、ロンゴミニアドはそれを見ても全く動じなかった。

 

ロンゴミニアド「······肝に銘じておこう。何せ、かの女神は貴殿が───」

 

ロンゴミニアドがそこまで言ったところで、僕はロンゴミニアドの首に闇で変質させた右手をかけていた。

 

ギャスパー「それ以上言ったら───」

 

ロンゴミニアド「───まぁ良かろう。では、また良い関係を築けることを願うぞ、ギャスパー」

 

 

それを聞いた直後、僕の視界は安定した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ギャスパー「······あれ、ここは······」

 

気がつくと、僕は『サングィネム』の屋敷の地下にある、宝物庫にいた。そして、手には『魔の鎖(グレイプニル)』から解放されやわらかな光を放つ純白の槍が握られていた。

 

 

だいぶ思考がまとまらない······さっきまで黒歌さんと話してて···いつの間にか何処かに転送されていた筈······あれ、何だっけ?

 

というかなんでここにいるんだろう? ロンゴミニアドって僕を切って勝手にスリープモードに入ったってお父様が······

 

 

ああそうだ。ロンゴミニアドがまた何とか言って勝手に僕を主として認めたんだっけ。確か僕は何かが理由でロンゴミニアドを脅した気がするけど······理由が思い出せない······ほんとに何で脅したんだっけ?

 

 

ギャスパー「あ〜、ダメだ。頭がぼんやりする。とりあえず黒歌さんに謝らないと」

 

 

とりあえず、この槍はあまり信用しない方がよさそうだ。念のため『魔の鎖』を掛け直して亜空間に放り込んだ僕は、宝物庫を出た。

 

 

 

この時、僕は5年前のあの男と出会うことになるとは露ほども考えていなかった。

 

 

ギャスパーsideout

 

 

 

 

 

 

 

黒歌side

 

 

 

黒歌「······あれ。何ここ」

 

気がつくと私は、真っ白で何もない空間にいた。さっきまでギャスパーと話してた筈なんだけど·······

 

「申し訳ありません。突然ですが、貴方を呼び出させてもらいました」

 

黒歌「······アンタか」

 

声がした方を見ると、そこには質素な服を着た銀髪の女の子が立っていた。そして何よりも目を引くのが······緑がかった黒に染まった足······服で膝下までしか見えていないが、それは腰のあたりまでそうなっている。

 

「お久しぶりです黒歌さん。こうして会うという意味では初めましてでしょうか?」

 

黒歌「ヘル······」

 

ヘル······北欧の冥府の()()()。4年前まで八幡に対する北欧神話の特使だった女神。

 

黒歌「······ってことは······そっか。ギャスパーがロンゴミニアドに呼ばれたのね」

 

そう呟くと、ヘルは頷いた。

 

 

 

ヘルは······ギャスパーが初めて手にかけてしまった人。ギャスパーが助けられなかった人。そして、ギャスパーに恋をしてしまったために永劫の虚無に落ちた女の子───

 

·······確か、彼女の神性の一部がロンゴミニアドに引っかかったとか八幡に聞いたことはあったけど、引っかかった方の本人が望んで封印されたんだっけ。ギャスパーがそれを知ってるのかどうかは分からないけど。

 

 

黒歌「······どうしてここに? ロンゴミニアドが何考えてるかは興味ないけど、どうして私を呼んだの?」

 

ヘル「少しお話がしたかったのです。自らとは言え···孤独というものが───」

 

黒歌「······辛かった?」

 

私がそう言うとヘルは俯いた。肯定と見なしていいのだろう。

 

 

ギャスパーに恋をしたという意味ではライバルだけど······容姿も相まって、彼女に冷たくあたったりするのは気が引ける。彼女の生前は多少面識があったため、あまり無下にしたくない。

 

それに、最初にギャスパーに好意を抱いていたのはヘルの方だから······

その時の私は、ギャスパーを弟のように認識していた。私がギャスパーに異性としての明確な好意を抱いたのはもっと後。

 

黒歌「そう······ちょっとこっち来なさいな」

 

ヘルが不思議そうな顔して私の前まで来る。

 

 

 

私は目の前に来たヘルを抱き締めた。

 

黒歌「······寂しいなら、またいつでも呼びなさい」

 

冷たい体·········生と死の狭間を司ってるだけに、彼女からはほとんど生気が感じ取れない。

 

 

ヘル「ですが······」

 

抱き締めている上に身長差があるから表情は全く見えないけど、喜びと躊躇いが入り交じっているように聞こえた。

 

黒歌「······別にアンタがギャスパーに恋心持ってたとか気にしないし、私。本当はギャスパーには私だけを見てて欲しいけど、最悪正妻ポジでちゃんと愛してもらえるなら、アンタくらいはまぁ······」

 

ヘル「·······ありがとうございます」

 

黒歌「···私が言うのも何だけど、負けませんくらい言いなさいよ。そっちの方が私にも張り合いあるし。負ける気なんか皆無だけど」

 

こうなりゃヤケよヤケ。この娘は八幡との特使になるまでは、話相手が偶に様子を見に来るオーディンのエロジジイだけだったとか ただ義務を熟すだけの機械だったって聞いてるし、ギャスパーに会って初めてアイデンティティーを意識するようになったとか聞いている。

 

 

ギャスパーは女性を惹き付けるみたいなタイプだからライバルがいるのは仕方ない。この娘以外にもグレーゾーンがいないわけではないし······

 

私が正妻戦争で勝てばいい。ただ、この娘も報われるような結果にどうにか出来ないものか······

 

ヘル「 ······ありがとうございます黒歌さん。私負けません。ギャーちゃんの正妻ポジ? も」

 

顔を上げて私に笑顔でヘルはそう言った。あれ? この娘の体少し温かくなった? にしても、身長差で上目遣いになったらキュンときたし侮れないわね······

 

尚、ギャーちゃんという呼び名はどうも流行っているらしい。この前他にそんな呼び方するのに会ったばっか。

 

 

 

ヘル「······ふぅ、今日は私のお話に付き合っていただいて、ありがとうございました。槍の意思のギャーちゃんとのお話は終わったようです」

 

黒歌「······槍の意思? ロンゴミニアドのこと?」

 

あれは担い手を選別するシステムだけじゃなかったっけ? 見方によれば、それが意思とも取れるけど······

 

ヘルは私の考えてることが分かったらしく、首肯して続けた。

 

ヘル「はい······ロンゴミニアドにはシステムなどでなく、明確な意思が存在しています。ギャーちゃんはじめ、今まで誰も気付かなかった···いえ、気付かせなかったようですけど」

 

 

黒歌「気付かせなかった? 何で?」

 

ヘル「おそらくですが────」

 

 

 

黒歌sideout

 

 

 

 

 





ギャスパーと黒歌の間に生まれる娘がヘルの生まれ変わりだった(それと同時にロンゴミニアドに引っかかった神性が消滅する)、って設定も考えはしたけどそんな未来の話書くか不明。

もしこの作品が完結を迎えたまでに作者が書かないって決めちゃったら他の人が書いてもオッケーです(こんなの書く人いないでしょうが)。自分より物書きに向いている方なんていくらでもいるでしょう。



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