イレギュラーは家族と共に 〜ハイスクールD×D'sバタフライエフェクト~   作:シャルルヤ·ハプティズム

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·······大変遅れてしまい申し訳ございませんでしたぁぁぁっ!!(スライディング土下座)

サブタイトル手抜きです。(白目)




第99話 白銀は舞い、闇は微睡む

 

 

 

ヴァーリ「はっ!!」

 

俺は迫ってきた膨大な銀色の魔力を、オーラの波動をぶつけて消し飛ばした。

 

ヴァーリ「······誰だ」

 

俺の前には銀髪の男性が降り立つ。

 

そして······その男性の右腕には見覚えのある赤い篭手。

 

「······これはこれは白龍皇ヴァーリ・ルシファー。初めまして。私、ユーグリット・ルキフグスと申します」

 

ルキフグス。俺をルシファーと呼んだその男はルキフグスと名乗った。

 

 

 

 

ルキフグス。冥界でその名を知らぬ者はまずいないだろう。ルキフグスは『番外の悪魔(エキストラ・デーモン)』の中の一つであり、代々ルシファーに仕えてきた一族。

 

ただ、現在のルキフグスは『銀髪の殲滅女王(クイーン・オブ・ディバウア)』グレイフィア・ルキフグス一人を遺して、アルビオンが父さんに滅された戦争で断絶したとされている。

 

 

目の前のこの男も、その戦争の際に行方不明となりMIA(戦争時行方不明)になっていた筈だが。少なくともうち独自のデータベースで見た時はそのようにまとめられていた。

 

────ルキフグスか。ルシファーの名は捨てたとは言え、俺も無関係とはいかないだろう。

 

 

ヴァーリ「······では、俺の声に現れた理由を聞こうか」

 

目の前の男──ユーグリット・ルキフグスに問う。男は隠す様子も見せず口を開いた。

 

ユーグリット「いえ、来たのならば一度会っておけ、とリゼヴィム様から勧められましてね。これの試運転にも丁度よかったものですから」

 

そう言って男は右腕に装着している赤い篭手を胸の前にかざした。

 

 

······『龍の手(トゥワイス・クリティカル)』か······?いや違う。あれはッ······!! まさか『赤龍帝の籠手(ブーステッド・ギア)』なのか!?

 

ヴァーリ「貴様······何故それを持っている······!!」

 

それを持ち得るのは本物の赤龍帝か父さんだけだ······!! そもそも神滅具(ロンギヌス)自体、本来なら複製出来るものではない!!

 

 

俺の内心を知ってか知らずか、ユーグリット・ルキフグスはほくそ笑みながら言った。

 

ユーグリット「······貴方は京都で英雄派が『堕天魔』にサマエルをけしかけたことをご存知でしょう?」

 

ヴァーリ「······?」

 

ユーグリット「······実は、あの時サマエルは『クリフォト』の研究所と繋がっていましてね。僅かですが赤龍帝の力を採取することに成功したんですよ。これはそれを元に作りまして·······まぁ、レプリカに過ぎないものですが。何故『堕天魔』はこのような形で二天龍を封印出来たのでしょうね······是非とも気になる所ですよ」

 

確かに、その時の話は聞いている。その時に父さんはルシフェルから移植された『権能』が封印から解放されたのだ。だが、向こうにディオドラが寝返ったのなら知っていてもおかしくない筈だが······もしディオドラが話していないのなら······

 

 

······やはりディオドラはギャスパーの言うように、何かを失ったのか失いそうなのか。例えば······人質のような。

 

 

ヴァーリ「······ユーグリット・ルキフグスと言ったな」

 

俺は『白龍皇の光翼(ディバイン・ディバイディング)』を解除しつつ接近すると、無防備だったユーグリット・ルキフグスに蹴りを食らわした。

 

奴の体はくの字に折れ曲がり、数十メートル先まで吹っ飛んだ。

 

この程度の蹴りであそこまで吹っ飛ぶのか······レプリカの持ち主はさして強いとは言い難いな。

 

 

俺は地面に落下したユーグリット・ルキフグスのすぐ側に降り立ち、見下ろす。

 

ユーグリット「ガハッ······何故、倍加はしていた筈······」

 

なんと。あれで倍加を掛けていたとは。弱すぎるな。

 

ヴァーリ「······ふん。その程度の倍加でよく通用すると思ったものだ」

 

ユーグリット「グッ······これでも一応、姉に劣っていると感じたことはないのですがね······」

 

姉······グレイフィア・ルキフグスか。しかし、旧魔王派はどこもゴタゴタしすぎだろう。あまり俺が言えたことではないが。

 

ユーグリット「······一つ聞きたいのですが、何故神器(セイグリッド・ギア)を解除したのです?」

 

奴は地に伏し、血を吐きながら尋ねてきた。

 

ヴァーリ「·······使う必要がなかったからだ。それに、アルビオンはお前を赤龍帝と認める気はないようだからな。さて、大人しくそれを手放し投降しろ。お前には聞きたいことが山ほどある」

 

亜空間から、母さんから借りているバルムンクを取り出し、オーラをチラつかせながら首元に突き付ける。

 

逃げようとするなら、『魔の鎖(グレイプニル)』で拘束するだけだ。

 

 

······と、案の定奴は転移の魔法陣で逃走を図ったので、『魔の鎖』で拘束し顎を蹴り上げると、奴は動かなくなった。

 

ヴァーリ「······もう一つ言っておく。俺を白龍皇と呼ぶなら勝手にすればいいが、二天龍とは呼ばないでもらおう。俺は赤龍帝ドライグは嫌いなんでな」

 

······と言っても、奴は既に聞いていないか。

 

 

 

俺はユーグリット・ルキフグスを亜空間に閉じ込め、黒いドラゴンの偽物を殲滅に戻った。

 

 

 

ヴァーリsideout

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ギャスパーside

 

 

 

クルル「······後は大人の仕事よ。よく頑張ったわね、ギャスパー」

 

黒いドラゴンのようなものの殲滅に向かおうとしたら、お父様とお母様に止められた。言われて初めて気付くと、僕は暴走寸前まで陥っていた。

 

お母様の手が僕の首に触れた。その瞬間、お母様に抱き締められているな、と感じながら僕の意識は暗転していった─────

 

 

 

 

 

 

 

 

 

突然だが、少し昔話をしよう。

 

 

 

時は遡ること5年前のこと。

 

 

良くも悪くも、あの日は僕のターニングポイントだった。

 

 

 

 

当時の僕はとある女性とよく会っていた。初めて会った時の彼女は僕より7、8歳ほど年上で、どういった経緯かも詳しく覚えていないのだが、何故か彼女に恋愛相談をしていた。恋愛相談、と言っても、(笑)ってつくぐらいのものだが。

 

 

その女性も、とある男性との所謂禁断の恋というものをしていた人で、その男性も含め、僕はよく相談に乗ってもらっていた。

 

······その類の話は年が近いお兄様にもしたことはあったのだが、お兄様はその類の話に関心がなさすぎて全く参考にならなかった、ということがあったりもしたのだが。

 

 

まぁ実際のところは、当時の僕には近所のお姉ちゃんお兄ちゃん、 といった風にしか見えて居なかったので、その2人には偶に遊んでもらっていたというわけだ。

 

 

 

 

 

だいたい、その2人に遊んでもらうようになって半年が経った頃だろうか。

 

 

その日こそが最初に言った、あの日だった。それはクリスマスイブだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

先程禁断の恋と言ったが、別に比喩でも何でもない。本当の意味で、本質的な意味で、ある、種の根源的な意味だ。

 

 

僕はそれを知らなかった。当時の僕は、テレビドラマでよくある両家の親に反対されているとかだと思っていた。

 

2人のうちの男性の方は、女性より2、3歳年上で、仕事でこの町に来ていると言っていた。20歳になるかならないかで凄い、と僕は漠然と思っていた。

 

 

 

だが、その仕事というのが問題だったのだ。正確言えば、彼女の()()()()()()()()()()も大きな一因だった。

 

そして当時の僕は、()()()()()()を本当の意味で知らなかった。

 

 

 

 

 

『······どけガキ。死にたくなきゃ失せろ』

 

ギャスパー『い、 いやだ······!!』

 

今でも目を閉じるだけで思い出すその光景。あれを闇と言わずして何と言うのか。

 

 

ギャスパー『何でこんなことをするの!!? 2人は何も悪くないのに!!』

 

光を放つ剣を持った男の殺気に怯えながらも、僕は言った。

 

 

子供だから仕方なかった。とは言いたくないのだが、結局はそれだ。僕は本物の殺気というものを知らなかった。その当時から既に色んな人に鍛えられていたが、殺し合いというものを経験したことはなかった。

 

 

 

『······お願いします────。せめてこの2人は·······!! 悪いのは自分ですから······』

 

その男性は僕の前にいる男の後ろにいる男の名を呼んだ。微かな望みだけを頼りに。だが、呼ばれた男は瞑目して、無言で首を横に振るだけだった。

 

男性の顔は悲嘆と絶望に歪んだ。

 

『そんな·······』

そして、僕の後ろで大怪我を負って壁に寄り掛かっていた女性は僕に言った。

 

『に、逃げてギャーちゃん······逃げれば、ギャーちゃん、は、助かる、から······』

 

息も絶え絶えになりながら言う女性に、僕は必死に拒否した。

 

ギャスパー『だ、ダメだよ!! そんなことしたら─────死んじゃうよ!!』

 

『大丈夫、またいつか、会えるよ』

 

その女性は完全に諦めていた。死を受け入れようとしていた。

 

 

ギャスパー『そんなのダメだよ!! 死んじゃったら何も───グッ!!?』

 

『いい加減どいてろよガキ』

 

先程僕僕は後ろから脇腹を蹴り飛ばされ、数回地面をバウンドした後受け身も取れず壁に打ち付けられた。

 

ギャスパー『うあっ······!!』

 

僕には、壁にぶつかった瞬間に肺の中の空気が全て吐き出されてしまったかのような感じられた。

 

 

 

『······悪いな───、これも仕事なんだよ』

 

僕を蹴り飛ばした男が、光を放つ剣を振り上げる。男の目の前にいたのはさっきまで僕の近くにいた女性。

 

『頼むよ···········殺すなら僕だけじゃダメなのか······?』

 

身を捩って這いずりながら女性の所に向かおうとする男性は、男に問い掛ける。

 

『悪いな······お前は仲間だと思ってたが、俺は神の名の下にお前を断罪する。この女と出会ったのが運の尽きだったな、───』

 

剣を持った男は女性から目を話さずに返した。その目は凍えるように冷たい。

 

『お前もだ女。───に出会わなければ死なずに済んだものを』

 

男は光を放つ剣を強く握り、振り下ろす。

 

ギャスパー『や、やめっ·······』

 

振り下ろされる光を放つ剣を前に、女性は死を前に目を閉じた。

 

 

 

 

────だが、その剣が女性を斬ることはなかった。

 

 

 

 

バリィン!! という音と共に建物の高窓が粉々に砕け、黒いローブを纏った人が2人侵入してきたからだ。

 

 

『だ、誰だ!!?』

 

突如現れた人物を前に困惑する者達だったが、叫んだ人物はローブを纏った内の一人に壁際まで吹き飛ばされ気絶した。

 

 

もう一人のローブを纏った人物は僕に駆け寄ってきた。そして、僕を抱き締めた。

 

『ギャスパー!! よかった······!!!』

 

フードの下から覗き込む格好で、顔が見えた。

 

ギャスパー『黒歌、さん······?』

 

侵入してきた内の一人は黒歌さんだった。気配を探ったところ、もう一人はお父様だと言うことがすぐに分かった。

 

 

後で聞いたことだが、僕の帰りが遅いので心配になって皆で探しに出たところ、ここに僕の気配を感知したらしい。この時は気付かなかったが、外でお母様とお兄様が待機していたとも聞いた。

 

 

ギャスパー『ごめんなさい······!!』

 

黒歌『いいの、ギャスパーが無事だっただけで私は······それより······』

 

黒歌さんの視線を追うと10人ほどいた襲撃者達は一人を残して全員が倒れ伏していた。

 

 

 

八幡『······さて、お前はここで何をしている?』

 

お父様は最後の一人の首を掴み上げる。フードを取っていないためこちらは表情を見ることは出来ないが、見たことがないほどの怒りを抱いているのが感じ取れた。

 

『うぐっ·······』

 

男が呻き声を上げると、お父様は男を投げて壁に叩き付けた。お父様は投げた男に足を向けて、歩き出したかと思ったらふと足を止めた。

 

八幡『······あぁなるほど、あの2人がそうなのか。耳にしたことはあったが······そうか。あの2人が······』

 

ギャスパー『······?』

 

お父様は何やら呟いていたが、黒歌さんを見て言った。

 

八幡『そこの2人は連れ帰って治療する。手伝ってくれ』

 

ギャスパー『······!!』

 

 

黒歌『······了解。ハァ、折角のクリスマスイブだってのに物騒ねぇ······ギャスパー、立てる?』

 

黒歌さんは僕の服を軽く叩いて服についていた汚れを落としてくれた。

 

ギャスパー『······うん。ありがとう黒歌さん』

 

 

 

その後、重症を負った2人を『サングィネム』の治療施設まで連れて行った。下手したら死んでいたかもしれない傷を負っていたが、2人とも命を取り留めたのは何より幸いだった。

 

 

更にその後も、一悶着では済まないであろう騒動が起きたりしたのだが、それはまたの機会に語るとしよう。

 

 

 

 

 

 

·

 

 

 

 

 

 

黒歌「······起きた?」

 

ギャスパー「·······うん」

 

目が覚めると、黒歌さんが目の前にいた。いや、黒歌さんが僕を覗き込んでいるのか。というか、膝枕されているんだ。

 

ギャスパー「······ごめんね、膝借りちゃって」

 

黒歌「気にしないでいいにゃん。好きでやってるんだし」

 

周囲を見渡すと、さっきまではいたお母様がいなかった。上に向かったのだろうか?

 

 

·······暴走が完全に収まっている。きっと、お母様が僕を眠らせた隙を衝いて()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

ギャスパー「黒歌さん、僕も地上に出てみるよ」

 

僕は立ち上がりつつ言う。

 

黒歌「······暴走は? 体はもう大丈夫なの?」

 

黒歌さんは僕の体をぺたぺた触りながら言う。僕もうそんな歳じゃないんだけど·······って言っても説得力なかった。

 

ギャスパー「うん。ブリューナクを外に出さなければ大丈夫」

 

ブリューナクは体内に戻っている。きっとルーさん側から操作したのだろう。

 

黒歌「······そう。行ってらっしゃい」

 

ギャスパー「行ってきます」

 

 

僕は転移用の魔法陣を展開し、そこに飛び込んだ。

 

 

 

ギャスパーsideout

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

黒歌「······ねぇ、いつまで眠ったフリしてる気?」

 

ヴァレリー「うふふっ。いえ、2人の邪魔をするのもどうかと思いまして」

 

黒歌「ギャスパーが地上に出る前に少しぐらい声掛ければよかったのに」

 

ヴァレリー「······今のギャスパーに一番必要なのは貴女でしょうから。弟の恋を邪魔するほど無粋な真似をしたくはないですわ。弟と言っても従兄弟ですけど」

 

黒歌「······そ。何か聞いたこっちが恥ずかしくなってきたにゃん」

 

ヴァレリー「ふふっ」

 

 


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