イレギュラーは家族と共に 〜ハイスクールD×D'sバタフライエフェクト~   作:シャルルヤ·ハプティズム

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第98話 火の海の中、

 

八幡side

 

 

 

アポプスとアジ・ダハーカの撤退のすぐ後、クルルと合流した俺は、ゴミ屑の気配が消えた地下の祭儀場に向かっていた。入口のドアが破壊されていたが、ギャスパーか黒歌がやったのは想像がつく。

 

クルル「ギャスパー!! ヴァーリ!! 黒歌!!」

 

黒歌「······あ、クルル······」

 

 

祭儀場にヴァーリが転移していたのは気配で分かっていたが、ヴァーリは地面に倒れ伏していた。

 

黒歌はヴァレリーの頭を膝に乗せたまま、手元に魔法陣を展開してヴァーリを手当てしており、当のギャスパーはブリューナクを左手に持ったまま呆っと突っ立っていた。

 

 

ヴァーリ「······ああ、父さんか」

 

ヴァーリがふらふらと立ち上がりながら言った。さっき黒歌が展開していた術式から見るに、一時的に対象の体から制御権を奪う術式だろう。この系統の術式は現在では禁止指定だ。

 

一応、黒歌には俺達がいなくても()()()()()()()()()()()()()()ように、教えておいたのだがこんな所で役立つとはな。

 

八幡「······おい、大丈夫か?」

 

ヴァーリ「······やられたよ。奴相手に遅れをとってしまった。その上むざむざ見逃すとは······!!」

 

ヴァーリの顔が怒りで歪む。身体的なダメージはそこまで負ったようには見えないが······そうか、あのゴミも撤退したのか。

 

 

 

ギャスパー「クソッ······!!」

 

ギャスパーはブリューナクを握り、吐き捨てるように言った。ギャスパーがあんな口調で喋るのは珍しいな······多分、言ったのは他には《5年前のあの日》ぐらいだと思うが······

 

そのギャスパーはクルルに宥められていた。

 

クルル「落ち着きなさいギャスパー。今は反省は後よ」

 

 

 

ヴァーリ「······案の定、ヴァレリー・ツェペシュの聖杯の内の一つは奴に抜き出されていたよ。そのまま持ち去られた」

 

ヴァーリは目を薄めてギャスパーとヴァレリーを交互に見ながら言う。

 

やはりか······3個でワンセットだから2つ抜き出されている場合も想定していた。2つ目はあのゴミが気付かなかったのか故意に抜き出さなかったのか知らんが、流石に一つは抜き出されてたか。てことは2つ残ったのか。これをラッキーと見るかどうかは······外の様子を見れば言うまでもないか。

 

八幡「ヴァーリ。お前はあの黒いのをドラゴンと見るか?」

 

俺がそう問うと、ヴァーリは一瞬きょとんとした表情をした後、すぐさま表情を険しくして言った。

 

ヴァーリ「······まさか。俺はあんな作り物をドラゴンだと認める気はない。ドラゴンは、すべからく誇りを持っている。だが、奴らには破壊衝動しかない。俺はあんなものをドラゴンとは認めない······!!」

 

ゴミが出したのであろう立体映像で見ながら言う。

 

ありえないことが、ヴァーリが認めた場合は消さずにおこうとは思っていたが、その考えは杞憂だったらしい。

 

 

ならば、だ。

 

八幡「よし、全部潰すぞ。異論は?」

 

ヴァーリ「ないね。俺はあんなものを残したくはない」

 

決まりだな。取り敢えず俺とヴァーリで上にいるクロウ達と黒いのを殲滅して·······後は住民の避難誘導だな。

 

八幡「クルル、俺とヴァーリは地上に出た黒いのを、クロウ達と分担して一匹残らず潰してくる。クルルは、ギャスパーと黒歌とここに残ってくれ。後の判断は任せる」

 

ギャスパーを宥めているクルルに言う。

 

ギャスパー「お父様······僕も行きます。このままじゃ何も出来ずに終わってしまう······」

 

八幡「却下だ。自分の今の状況を鑑みろよ?」

 

ギャスパー「······ッ!?」

 

 

ギャスパーがヤバい。ギャスパーの左目の周りには血管を模したような黒い模様が浮き出ており、それは徐々に広がっていっている。

 

これは謂わば暴走であり、ギャスパーからブリューナクの制限が完全に離れた時に稀に現れるのだ。

 

今回は仕方ないのだが······これ以上になると、ギャスパーが神格の力を暴走させ、ルーマニアを闇で丸ごと呑み込んで地図から消す可能性すらある。

初めてギャスパーが暴走した時は、ルーの神格を埋め込まれた時にバロールの意識が強く共鳴して暴走し、闇が『影の国』にまで及んだ。

 

あの時はギャスパーに宿った方のルーの神格の一部と復活したバロールの神格の一部をブリューナクで仲介することにより共鳴を止めることが出来て事無きを得た。

 

それ以降も、一度だけ暴走したことがあったのだが······まぁそれは今はいいだろう。

 

 

クルル「······了解よ。もし八幡達で対処出来なくなったら私も出るわ」

 

そう言いつつ、クルルはギャスパーの背後に回ってギャスパーの首に軽く触れた。

 

その瞬間、ギャスパーの体は崩れ落ち、地面に伏す直前でクルルが抱き留めた。仙術の応用で、ギャスパーを動けなくさせたのだ。これは以前京都で九重にやったこととほぼ同じものだ。

 

ギャスパー「まだ動けます······」

 

クルルに抱きとめられた瞬間、ギャスパーが握っていたブリューナクは深紅の粒子となって霧散し、先端に鏃の付いた鎖の形になると吸い込まれるようにギャスパーの胸の中に入っていった。

 

クルル「ダメよ。ブリューナクの制限が離れて暴走仕掛けているじゃない」

 

ギャスパーはクルルから離れようと弱々しくもがくが、クルルに抱き締められたまま動けずにいた。

 

クルル「······よくやったわギャスパー。後は大人の仕事よ」

 

クルルが呟き、そっとギャスパーの頭を撫でると、ギャスパーは微睡みの中に落ちていった。

 

黒歌「······むぅ、ずるい」

 

クルル「あら、貴女にはまだ『お母様』の役は早いわよ?」

 

 

 

八幡「······さて、ギャスパーの暴走も未然終わったことだし、俺達は行くか」

 

ヴァーリ「ああ」

 

俺が転移用魔法陣を展開すると、俺とヴァーリは間もなく光に包まれ、地上に転移した。

 

 

 

 

 

 

俺とヴァーリが地上に転移すると、既に街のあちこちで黒いドラゴンもどきが暴れ回っていて、一面火の海となっていた。

 

八幡「······ヴァーリ、悪いがまだ避難出来ていない市民を見付けたら、東門の先に避難するよう促してくれ。カーミラ側からの情報提供には、その少し先に地下シェルターがあるんだと」

 

ヴァーリ「······分かった。と言っても既に、クロウ達が動いているこの状況で、逃げ遅れた者がいるようには見えないが」

 

まあそりゃな······さっき、クロウ達は既に避難誘導とドラゴンもどき殲滅を始めたって連絡来たし。

 

八幡「ま、頭に入れといてくれ」

 

ヴァーリ「分かったよ」

 

八幡「じゃあ俺達は別れて行動しよう。ヴァーリ、程々に暴れていいぞ。あの黒いもどきを片っ端から潰せ」

 

ヴァーリ「······無論だ」

ヴァーリは『白龍皇の光翼(ディバイン・ディバイディング)』を発動させる。

 

俺達は目だけで合図を交わすと、それぞれ別方向に飛び立った。

 

 

 

 

ヴァーリと別れて行動を開始した俺は、上空を飛び回りながら、地上で暴れているドラゴンもどきをエクスカリバーを揮って消していった。

 

やはりと言うべきか避難に遅れた市民はおり、ツェペシュ側もカーミラ側もエージェントを出して対応に当たっていたが、てんやわんやしていた。

 

 

八幡「······チッ」

 

今ツェペシュ側の領土の、カーミラ側に面していない方の端まで来たのだが······恐ろしい程に避難が進んでないな。この辺はドラゴンもどきの数も少ないみたいだから、見た感じ被害は中心部に比べれば少ないが······

 

八幡「······『擬態(ミミック)』」

 

『擬態』の能力で、エクスカリバーを弓に変形させる。そして、右手の指と指の間に、計4本光の矢を作り出す。

 

それらを纏めて弓にしたエクスカリバーで引き絞り、一斉に発射する。

 

放った4本の光の矢は途中で無数の光の礫となって、ドラゴンもどきを貫き、消し飛ばした。

 

これで8割は片付いた筈だが······取り敢えず、下に降りるか。

 

八幡「······おい、そこのあんた。ここの避難はどうなっている?」

 

逃げ遅れていた住民の一人に尋ねる。

 

「こ、この地区は街の端だから避難誘導がまだ来てないんだ」

 

避難誘導がないのか······余程あたふたしてるのか。吸血鬼は。

 

八幡「······なら、代わりに俺が避難誘導を務めよう。街の東門の先に地下シェルターがある。俺が上空から、そこまでの避難の援護をしよう」

 

「ほ、本当か?」

 

八幡「ああ。ここで見なかったことにするほど腐っちゃいないんでな」

 

逃げ遅れたのは······だいたい50人か。上からなら何とかなるだろう。街は多少破壊することになりそうだが······

 

 

その後、クロウ達と連絡を取りつつ住民の避難を完了させ、俺は再びドラゴンもどきの殲滅に戻った。

 

 

 

八幡sideout

 

 

 

 

 

 

 

 

ヴァーリside

 

 

父さんと別れて行動していた俺は、ツェペシュ側の南部を黒いドラゴンの偽物を屠りながら避難誘導を行っていた。

 

ヴァーリ「······もうすぐだ。そこの先を行けば、東門の先にある地下シェルターに辿り着く筈だ」

 

俺の声に、避難中の住民達は安堵の声を漏らし始めた。

 

俺は上空から避難する住民達の護衛をしつつ、握り拳大に濃縮したオーラの弾を無数に放ち、的確に偽物のドラゴンの頭を潰していく。

 

 

 

住民達が東門の先にある地下シェルターまで辿り着き、住民の避難が完了する······その時だった。

 

 

 

 

 

ふと、俺の目に()()()が映り込んだ。

 

 

次の瞬間、俺の目前に銀色の魔力が迫っていた。

 

 





作者は諸事情のため、暫く投稿が出来なくなります。申し訳ございません。次の投稿は早くても来週の月曜になるかと思います。


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