イレギュラーは家族と共に 〜ハイスクールD×D'sバタフライエフェクト~   作:シャルルヤ·ハプティズム

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どうも。御坂の運極が作り終わるまで貫通タイプだとずっと勘違いしていたアホの作者です。

ルーマニア編、想定よりだいぶ伸びましたが、後数話で終わりそうです。(終われるとは言い切れない)




第97話 あの日見た幻影

 

 

 

リゼヴィム「この娘は俺のボディーガードの比企谷(ひきがや)小町(こまち)ちゃんどぅえ~っっす!! なんとぉ、あの『堕天魔』こと八幡君の実の妹にして、貴重な貴重なもう一人の純粋な『堕天魔』!!

 

······今はその記憶は一切ないけどね☆」

 

 

 

───奴は不快な音を発しながら言った。

 

 

ギャスパー「·····屑が」

 

高速で奴よ前に移動し、ブリューナクの刃先に貯めた膨大なオーラを放出する。ロキに劣るこいつが耐えられる筈がない。

 

 

だが─────

 

 

リゼヴィム「うっひゃああっぶねぇ。やってくれんじゃん」

 

ギャスパー「······ッ!?」

 

奴は余裕の表情を浮かべてその場に立っていた。

 

──奴の体はオーラの膜で覆われている。それで防いだのか? にしても、このオーラ······お母様に近いものを感じる。何がどうなって······?

 

小町「おじちゃん大丈夫!!?」

 

リゼヴィム「おうよ小町ちゃん。君のお陰でおじちゃんは無傷だぜ♪」

 

少女──小町の両手からは赤いような青いような黒いような······()()()()()()()()()()()()()()をしたオーラがリゼヴィムに向けて送られていた。

 

 

いくら最大威力ではないとは言え、これだけでブリューナクの力に耐えられるのか······!?

 

リゼヴィム「はっはっはーッ!! さっすがおじちゃんの最高傑作にしてボディーガードなだけはあるぜっ!! ······これが『皇獣』の力か。おじちゃんの予想以上でびっくりだ」

 

奴は体を覆っているオーラの膜をまじまじと見詰めながら言う。

 

 

『皇獣』······? まさかこのオーラは······!!

 

 

僕は奴から距離を取る。

 

その時、空中に白と黒の入り混じった魔法陣が展開される。この魔法陣を使うのは、僕達の中で一人だけ······

 

 

ヴァーリ「······話は聞かせてもらった。久しぶりだな、リゼヴィム」

 

リゼヴィム「うっは♪ ヴァーリきゅんじゃん♪ ひっさしぶりだねー。元気にしてた?」

 

魔法陣からはお兄様が現れる。お兄様の目には、強い怒りがこもっている。

 

ヴァーリ「すまない。思ったより敵が多くて遅れた」

 

お兄様は僕の隣に降り立ちながら言う。

 

ギャスパー「いえ······それより、今は奴をどうにかしましょう」

 

本音を言えば、今すぐ首を刎ねてやりたいが······お兄様がいる以上、それはお兄様がやるべきだと思う。

 

奴を一番憎んでいるのは紛れもなくお兄様だ。僕がそれを奪うことは出来ない。さっきは殺すつもり満々で何を言っているのか、と自分でも思わなくはないが。

 

 

リゼヴィム「······さってさてー。役者も揃ったことだし、おじちゃんもう一個見せたいものがあるのよ」

 

何だ······? 奴は何を······?

 

奴がそう言って指を鳴らすと、宙に立体映像が出現した。あれは······ルーマニアの吸血鬼領の城下町? 城の外観からしてカーミラ側?

 

ギャスパー「······カーミラ側の城下町?」

 

リゼヴィム「イェス!! その通りだよギャスパーきゅん!!」

 

立体映像には吹雪いている街並みが映っているだけだが······

 

その時、奴は再び指を鳴らせた。

 

リゼヴィム「さてさて、これからサーカスショーの生中継ですぞ〜。ほら来た!!」

 

奴が指を差すと、立体映像に映る街並みに、黒いドラゴンのようなものが出現する。一つ、2つ······それはどんどん増えていき······

 

 

 

 

······口から禍々しいオーラを放って街を破壊し始めた!!

 

黒歌「何よこれ───ッ!! これ、3年前と同じ······!!」

 

黒歌さんは後ずさりながら体を震わせ出した。

 

リゼヴィム「そうだよん!! 3年前、八幡君が治める『サングィネム』でやったことの発展版さ♪ あん時は()()()()()()()()()()()()()のせいで不発が相次いだんだけど、今回は大成功〜!! やったぜ☆」

 

 

 

───3年前、お父様の自領『サングィネム』では、SSS級はぐれ悪魔が徒党を組んで襲撃を掛けるという前代未聞の事件が起きた。僕だけでもその被害を免れるように、という家族の皆の配慮でグレモリーに預けられたのだが······

 

その事件の最中、領民が突如魔獣に変貌するという現象が複数確認されたと聞いている。魔獣に変貌した領民達は、総出で鎮圧に乗り出していたお父様達に拘束され、掛けられていた術を解除することで様々な検査と一年近い休養とリハビリを経て漸く社会復帰にまで回復したと聞いた。

 

ただ、掛けられていた術は解除されるよりも前に自壊したらしいけど······

 

 

それもこれも全てこいつの仕業······!!!

 

 

ヴァーリ「3年前······だと······!? そうか、3年前の事件もお前がッ!!」

 

お兄様の顔が怒りで歪む。前言撤回だ。

 

 

────こいつは今ここで確実に殺さなければならない。

 

リゼヴィム「うひゃひゃっ。ギャスパーきゅんと言い、そっちは頭の回転が良くて助かるぜっ!! 回答役っていいね☆ ま、3年前は今回の術式の試運転だったわけよ」

 

ギャスパー「·······このッ!!」

 

ブリューナクから極大のオーラを放つが、やはり奴に張られているオーラの膜に阻まれる。

 

リゼヴィム「いいねぇ♪ 攻撃に殺気がいい感じに乗ってるぜ。これでも本気じゃねぇってんだから想像したら寒気がするぜ☆」

 

奴は顎に手を当てながら下卑た笑みを浮かべた。

 

ヴァーリ「リゼヴィムッ······!!」

次いでお兄様が『白龍皇の光翼(ディバイン・ディバイディング)』を発動しながら奴に突っ込む。

 

そして、神器(セイグリッド・ギア)の力を身体能力の強化のみに絞って奴に拳を打ち込む。が······奴には届かない。

 

リゼヴィム「うんうん、可愛い孫がそんな目しながら殴ってくるなんておじいちゃん感激!! イキそうになっちゃう!!」

ヴァーリ「なっ······!?」

 

リゼヴィム「ただ、ちーっとばかし相性が悪かったな。神器使えないお前なら、おじいちゃん一人でも何とかなんのよ。うひゃひゃひゃひゃひゃっ!!」

奴の蹴りを、お兄様は体を捻って躱し僕の所まで後退した。

 

ヴァーリ「······『神器無効化(セイグリッド・ギア・キャンセラー)』か。それに、貴様の側のその少女······」

 

リゼヴィム「そうそう、もう一人の純粋な『堕天魔』なんよ。ルシフェルってのはすげぇよ。『堕天魔』ってのは『聖書の神』の『システム』のバグから生まれたんたぜ?」

 

 

『聖書の神』のシステムのバグから生まれた······? 『堕天魔』はルシフェル様が堕天しないよう掛けた術がお父様にまで及んだということか?

 

嘘の可能性もあるが······何か引っ掛かる。

 

 

奴は暗い銀髪を掻き上げながら言う。

 

リゼヴィム「······にしても、お前らはイレギュラーの宝庫じゃねえか。システムバグから生まれた『堕天魔』比企谷八幡。グレートレッドと同格のバケモンから生まれたクルル・ツェペシ。ダナ神族とフォモール族のハーフであり魔神と太陽神の神格を宿すギャスパー・ルシフェル。

 

───そして、魔王血族でありながら白龍皇であるヴァーリにサマエル級の猛毒神器を宿して生まれたオーフェリア。

 

それ以外にも神話級のバケモンがごろごろいやがる。おじちゃん楽しくて愉しくて仕方ねぇよっ」

 

「「「······ッ!!?」」」

 

僕達は驚くしかなかった。

 

 

こいつ、どこまで知っている······!!? ルーさんの神格のことも666(トライヘキサ)さんのことも極秘事項の筈······!! 特に666さんのことはディオドラさんにも殆ど伝えられていない筈なのに!!

 

 

 

リゼヴィム「······さぁ~って。言いたいことは全部言ったから、おじちゃん今日は帰ろっかね」

 

その瞬間、僕はブリューナクで、お兄様は亜空間から取り出したバルムンクで、黒歌さんは妖術で、一斉に砲撃を仕掛けた。

 

爆発が起き、奴とその隣にいる少女、小町は煙に包まれた。

 

 

煙が晴れると、そこにいた奴は······無傷だった。

 

ギャスパー「なっ······!!?」

 

黒歌「嘘······」

 

目を凝らすと、奴を覆っていたオーラは完全に消えているのが見えた。

 

リゼヴィム「うっは!! やべぇやべぇ、『皇獣』の力で作られたフィールド破壊するとかびっくりだわ。

 

お? シーちゃんとアポプスは撤退したか······あ、小町ちゃん帰るよ~」

 

小町「······うん、おじちゃん」

 

奴と少女は光に包まれる。転移で逃げる気か······!!!

 

ヴァーリ「逃がすか!!」

 

ギャスパー「ヴァレリーから抜き取った聖杯を返せ······!!」

 

僕がブリューナクを、お兄様がバルムンクを手に奴の懐に潜り込む。

 

─────が、突如体から一切の力が抜け、僕達は崩れ落ちた。

 

黒歌「ギャスパー!? ヴァーリ!?」

 

 

これはこの前のと同じ······!! しかも前回のと違って無効化が効かない······!!

 

リゼヴィム「おおっと、これはアンチマジックだのを無効化するように術式組んだからすぐに解除するのは無理だぜ?」

 

ヴァーリ「待て······!!」

 

お兄様は地に伏しながらも全く鈍らない強い眼光を奴に向ける。

 

リゼヴィム「······いや~、可愛い孫が強くなってておじいちゃん一安心だわ。今度あったらまたヤろうぜ☆ そん時はちゃんと相手してやるよ」

 

奴の体が光に包まれて、消えていく。

 

早く術式を·······!! ·············解けた!!

 

ギャスパー「逃がすかぁぁぁッ!!」

 

手からすり抜けていたブリューナクを手元に引き寄せ、ブリューナクから極大のオーラを放つ。

 

リゼヴィム「うっはマジで!!?」

 

小町「おじちゃん!!」

 

────が、少女が放ったオーラによってブリューナクから放ったオーラは相殺され、奴に届くことはなかった。

 

リゼヴィム「若い諸君···········じゃあねー☆」

 

 

···········そして、奴は転移の光に包まれて消えた。

 

 

 

また何も出来なかった······聖杯の奪還も、奴を殺すことも······

 

 

ギャスパー「クソッ······!!」

 

僕はまた、何も出来ずに立ち尽くした。

 

 

 

 

 

 

────結局、僕は、()()()()()()()()()何も変わってなどいなかった。魔王サーゼクス・ルシファーに封印を施される前も、そして今も。

 

 

つまるところ、ただ、力を得たと思い上がっていただけだった。

 

 

 

ギャスパーsideout

 

 


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