イレギュラーは家族と共に 〜ハイスクールD×D'sバタフライエフェクト~ 作:シャルルヤ·ハプティズム
祝、更新100回目!! ありがとうございます。これからも本作をよろしくお願い致します。
※今回の話には若干過激な描写が含まれております。ご注意下さい。
小猫side
ギャスパー「······お前達、僕が昔何と呼ばれていたか知っているか?」
ゆらゆらと歩いていたギャー君が立ち止まり、顔を押さえていた左手をダランと下げる。
そして隠れていた真紅の瞳が──全てを吸い込むような漆黒に染まった。
ギャスパー「······答えは─────『バケモノ』だよ」
次の瞬間、ギャー君から膨大な量の漆黒のオーラが噴出し、この広大な空間を覆い始めた。
ギャー君から放出された漆黒のオーラは、瞬く間に広がってゆく。
ギャスパー「······逃げようなどとは考えないことだ」
全身から漆黒のオーラを放出し続けるギャー君が口を開く。
そして遂に、空間全てが漆黒───闇のような『ナニカ』に覆われた。
────もう、この空間には上下左右の概念があるのかすら分からない。
暗く、冷たく、光すら消失させた空間には、私達だけがポツンと闇の中で取り残されたような錯覚を起こす。
「こ、これは······!?」
「いったいなんなのだ!?」
吸血鬼達が驚いているが、それは私達も同じだ。このような現象は見たことがない。
まさか、これをギャー君がやっているのだとしたら······これはあまりに異常な力ではないのだろうか······?
ロスヴァイセ「······これは······!?」
この光景には、魔法に秀でたロスヴァイセさんも、堕天使の総督であるアザゼル先生ですら驚くばかりだった。
アザゼル「······おい、リアス······これは何だ······? いくら『
リアス「······私にも分からないわ······ギャスパーは眷属になった後すぐにお兄様に封印されてしまったから······」
部長ですら知らない能力······!?
マリウス「······落ち着いて下さい、叔父上方。これがリゼヴィム殿やロキ殿からの報告にもあったギャスパー・ヴラディの
マリウスはこの空間を見渡しながら言った。すると、言われた上役達は臆した様子を見せつつも頷いた。
「そ、そうだ」
「聖杯にて強化された我々がハーフ如きに遅れを取るなど────」
その吸血鬼が最後まで言い切ることはなかった。
─────空間から突如出現した、闇のような『ナニカ』で形作られた無数の刃に貫かれたから。
ギャスパー「······ハーフハーフ煩い。僕をお前達の同類にするな」
その時、空間の一部が突如隆起したかと思うと、何かを形作っていった。
それは空間の至る所で起こっており、見たこともないような漆黒の生物が無数に生まれていく。
三つ首の龍のようなものに、トカゲの爬虫類のようなフォルムに蝶の羽のようなものが生えたもの。脚が20本はある
この光景に、私達も吸血鬼達も身震いが止まらない。姉様とマリウスだけは平然としているが······
「『
次の瞬間、鳥のようなものに啖呵をきった吸血鬼が連れ去られていく。そして次の瞬間───
「や、やめっ······!!」
床に叩き付けられて、頭部を
この光景を見ているギャー君が不意に口を開く。
ギャスパー「『
······ギャー君は彼らを呪うかのように吐き捨てる。
「や、やめてくれぇぇぇぇぇぇぇっ!!」
「し、死にたくないっ······!!」
吸血鬼達は為す術もなく、魔獣のようなものに一方的に喰われていく。
これを、ギャー君がやっている······こんな恐ろしいものをギャー君が······
あまりの光景にアーシア先輩は目をぎゅっと瞑り、両手で耳を塞いでいた。
だが、マリウスはこの状態でも依然として余裕な表情を浮かべていた。
マリウス「······素晴らしい。昨今、ハーフで異質な力を持つ者は増加傾向にあるが、君はその中でも別格だ。聖杯で強化された叔父上達をああも簡単に蹂躙する力······しかも、これが
私達はマリウスが口にした言葉に驚愕した。
神器の力ではない······!? 私は
ギャー君は特に動じる様子もなく吐き捨てるように返した。
ギャスパー「······そうだよ。確かに、この力はあんな偽物の邪眼の力じゃない。で、それが分かったところでどうする?」
そう言ったギャー君の右腕に闇のような『ナニカ』が纏われていく。
ギャー君も認めた······!! 私達の知らないギャー君のこの力はいったい······
マリウス「······ここで会ったのも何かの縁だ。折角ならこちらに協力を────ッ!!!?」
そこまで言った所で、突如マリウスの息が詰まる。
「「「「「「「「······ッ!!?」」」」」」」」
その光景には、私達も目を見開いた。
ギャスパー「はぁ······今際に言うことがそれ? くだらない。お前達は多少楽に死ねるようにしてやろうか考えた。でも無駄だったよ。特に、お前は生きていたなら周りに害を振り撒くだけだ」
ギャー君の右腕が巨大で闇のような『ナニカ』で出来た腕に変貌しており、それがマリウスを掴んでいた。
マリウス「······流石『
巨大な手に掴まれても尚、余裕な表情を浮かべるマリウスが言う。
───『バロール・リヴァイヴァル』······? ギャー君のことだろうか?
アザゼル「······『魔神の再臨』······!! ギャスパーがか······!?」
アザゼル先生は何やら知っているようで、一人驚いている。
ギャスパー「······そこまで情報が······まぁいいや」
ギャー君はそんな先生の様子も気にもとめずに呟いた。
─────死ね。
ギャー君がそう呟いた瞬間、マリウスを掴んでいた巨大な右腕は······マリウスを握り潰した。
闇に覆われた空間が、霧が晴れていくように霧散していく。
そこには、もう闇のような『ナニカ』の獣も、ギャー君の真っ黒で巨大な右腕も、もうそこにはなかった。
その空間に立っていたギャー君は、何事もなかったかのように柔らかい笑みを浮かべ、姉様が肩を支えている女王ヴァレリーの頭をそっと撫でた。
黒歌「······仙術が効いたから今は落ち着いてる。でも、ギャスパーも分かると思うけど、この場ではどうしようもないほど負の気を溜め込んでるにゃん。私からすれば、生きてる方が奇跡よ」
姉様は女王の頭を膝の上に乗せて、しゃがんでいるギャー君に言う。
ギャスパー「······うん。何があるか分からないから、早くここから────ッ!! ······黒歌さん!!」
黒歌「······了解にゃ」
ギャー君は立ち上がり、突如何もない所に黒い魔法陣を展開した。更に、姉様もそこに魔法陣を重ねがけする。
突然どうしたのか2人に聞こうとしたが、空中に、見るだけで本能的に理解出来るほどのプレッシャーを放つ光の粒子が集まっていった。
ロスヴァイセ「あ、あれは······まさかッ······!!」
光の粒子は、数瞬で巨大な塊へと変化し、次の瞬間、無数の光の
······私達は、ギャー君と姉様が張った魔法陣がなければ即死していた。
降り注いだ光の礫は、爆煙を引き起こした。
それはすぐに晴れたが、煙の中に一人の男性が立っていた。黒を基調としたローブを着ており、少々目付きが悪いが整った顔立ちだ。
アザゼル「あいつはっ······!! 夏に捕縛された筈だ······!!」
ロスヴァイセ「なっ······何故ここにおられるのですか······!?」
先生とロスヴァイセさんが目を見開きながらも声を上げる。と、男性はそれの反応した。
「······誰かと思えば、オーディンの付き人をしていた
ロスヴァイセ「······ッ!!」
男性は一睨みでロスヴァイセさんを黙らせ、ギャー君に話し掛けた。
「······さて。殺したこと思えば、まだ生きていようとはな。くたばり損ないの魔神。また神殺しの餌食にされたいようだな」
くたばり損ない······? 魔神? 神殺し? 彼はいったい······!!
ギャスパー「·····こんな所まで態々来るとは。テロリストに屈した悪神は暇なのか」
悪神······!? 神がテロリストに屈した!?
「ほざけ。我が黄昏の障害足りうるは殺さねばならん。そのために貴様ら『ルシフェル』が邪魔なだけだ······!!」
ギャスパー「······『
ロキ······!!!? 北欧神話で『ラグナロク』を引き起こすとされる悪神!! 何故ここに!?
ロキ「それが我の使命だからだ。『神々の黄昏』こそ、我が成就すべき行いであり、存在理由だ。貴様も我に力を貸さないのであれば、排除するしかあるまい。『神魔槍』に貫かれた魔神の遺物」
ギャスパー「······そうか。僕もお前が邪魔だ。お前こそ僕達の危害に成りうるなら、消す」
ギャー君は固有の亜空間から血のような色をした二叉の槍を取り出すと、悪神ロキに向けた。
小猫sideout