「見事、私の正体を見破った君にはチャンスを上げよう、ハチマンくん」
世界初のVRMMO、ソード・アート・オンライン。それが命をかけたデスゲームとなってから2年、ようやくの思いで75層のボスを倒し、茅場晶彦……プレイヤーネーム『ヒースクリフ』の虚をつき、プレイヤーネーム『ハチマン』はその正体を暴いた。
「私は本来なら最後、第100層で君達を待ち構えるつもりだったが仕方ない。そして二刀流の所持者を勇者と考えていたのだがね」
そう言いヒースクリフはキリトを一瞥する。
「万が一、俺がお前を殺せなかった時にみんなを導く奴が必要だからな」
そうハチマンはヒースクリフが茅場晶彦だと思ってから、この1対1の状態も想定していた。
「今私を1対1で倒せればゲームはクリアされる……が、本当に良いのかね?君の持つユニークスキル、『冥界剣』は強力だが私の神聖剣とは相性が悪いが……」
「大丈夫だよ……」
そしてハチマンは両手剣を構える。
「ハチ兄ぃ!!俺がかわりにっ……」
『そんな泣きそうな顔するなよ、キリト……お前以外に誰がみんなを導ける……』
「ハチマンさん、何で貴方は……」
『アスナ、キリトを頼むぞ。お前達お似合いなんだからよ』
「ハチマンお主!!相棒である我を置いていこうというのかっ!?」
『ケンゴウ……いや、材木座。この世界に来て何度お前に救われたか……じゃあな、相棒』
「ハチマンっ……あーしはあんたを信じてるから」
「うちも!!勝って文化祭の時のこと、現実で謝らせてよね!」
『ユミコ、ミナミ……あぁ、柄にもなく期待に答えたくなっちまうじゃねーか……』
ハチマンは1層からの様々な出来事を思い出し
「いくぞ、茅場!!」
「きたまえっ!!黒き勇者よ!!」
そして
「見事だ……」
「……相討ちか、格好つかねーな」
ハチマンの剣はヒースクリフを貫いていたが、ハチマンもまた冥界剣のデメリットであるスリップダメージにより体力を切らしていた。
『ゲームはクリアされました ゲームはクリアされました……』
ハチマンとヒースクリフがその姿を光の欠片にすると同時にソードアートオンラインにゲームがクリアされた報せが響き渡った。
現実に戻ったSAOプレイヤー達……しかし……
「ハチマンっ、何で目を覚まさないし……」
「ユミコ、さっきキリトくんと会ったけど、アスナちゃんも目を覚ましてないって……」
ハチマンの病室にはユミコとミナミが来ていた。
「あ、優美子さん。南さん、今日もお見舞いありがとうございます」
そこにハチマンの妹の小町が来た。小町は総武の制服を着ていた。
「あーしらはハチマンに命を救われた、これくらいしかできないけど……」
優美子がそう言うと優しい目でハチマンをみた。
「おぉ!!お主らはここにおったか!?」
そこに材木座が飛び込んできた。SAO期間中に痩せていたのをのぞけばいつもの材木座であった。
「ちょっとケンゴウ!!うるさいんだけど」
ミナミがジト目で睨む。
「で、材木座さん。どうしたんですか?」
小町が材木座に聞くと
「おぉ、そうだ。お主らにこれを見てもらいたい」
そして材木座は2枚の写真を見せた。
「これはALOで撮られたものなのだが……」
ALO……アルヴヘイム・オンラインで撮られたという写真のうち1枚には鳥籠のようなものの中に1人の少女がいる写真。そしてもう1枚は白い騎士を率いるように立つ両手剣を持った黒い剣士が恐らくプレイヤー達の前に立ちはだかっているであろう写真だった。
「この少女はアスナ嬢、そしてこの黒い剣士……まるでハチマンみたいではないか?」
材木座の言うようにその黒い剣士の構えはSAOでハチマンが本気で戦う時の構えに酷似していた。
「我はわずかな可能性でもハチマンを救えるかもしれないならALOにでもどこにでも、行く…お主らはどうする?」
「もちろん行くし!!」
「うちらが探さないとね」
優美子と南も決意をした。
「じゃあ私が皆さんにアルヴヘイム・オンラインの事を教えますね!!」
小町がALOプレイヤーだというのに驚いた3人だが、ここにハチマンを探すPTが結成された。