世界を超える片道切符の旅に出た黒崎一護を待っていたのは、藍染惣右介だった。
死神も虚も居ないSAOの世界で藍染は、人の魂魄から破面や虚を作り出して大軍を作ろうとしていた。
それを阻止しようとする一護の前に現れたのは……一護に死神の力を与えた朽木ルキアだった!?
斬魄刀をしっかり握って振り下ろすルキアの行動に驚く一護だが、斬月を手に取り何とかその一撃を防いだ。
「何でルキアがここに!?」
「貴様に答える義務などない!!」
ルキアは、そう言うと力で押し潰そうとするが、一護はそれを振り払いルキアと距離を取った。
「……クッ!戦うしかないのか!?」
ルキアの目を見た一護は、彼女が本気で殺しに来てると感じたので斬月を両手で握って正面で構えた。
「舞え……、
ルキアが唱えた始解と共に彼女の斬魄刀の刀身も鍔も柄も全て純白になると柄頭に先の長い帯が付いた形状になった。
「ルキア、目を覚ましてくれ!!俺だ!一護だ!!」
「そんな名など、聞いたことない!」
ルキアはそう言って一護へ向かってまた斬り倒そうと袖白雪を振るが、それを一護は躱して空中へ移動した。
「いつまで逃げているのだ!?」
「言われなくたって……月牙!天衝ッ!!」
挑発された一護は、斬月を振り霊圧の斬撃、月牙天衝を放つが軽々と躱されると次はルキアが両手を前に突き出す。
「破道の六十三、双蓮蒼火墜!!」
そう叫ぶと同時にルキアは、蒼火墜の上位技である双蓮蒼火墜を一護に向けて放つが一護はそれを斬月で斬りギリギリ躱した。
このままでは、殺られると思った一護はルキアと更に距離を置いた。
「もう終わりかい?」
開きっぱなしのゲートの前にいる藍染がそう一護に聞いてきた。高みの見物をしている藍染の顔を睨んだ一護は、舌打ちをした後ルキアを再び睨んだ。
「まだまだだッ!ウオォォォォォォォォォォォッ!!!」
そう叫ぶ一護の霊圧は急上昇すると、右手に持っていた斬月を前に突き出すと左手は右腕を握る構えをしていた。
「卍・解ッ!!!」
一護を凄まじい霊圧の渦が包み込むと、一護本人は黒いロングコートに似た独特の死覇装を身に纏っていた。
「天鎖斬月!」
一護の右手に持っていた斬月は、卍型の鍔、柄頭に途切れた鎖がついている全てが漆黒に染まった長めの日本刀に変化した天鎖斬月となっていた。
「久しぶりに君の卍解を見たよ。あの頃より進化してるところを少しは見せて欲しい。」
「うるせぇぇぇぇぇッ!!!」
一護の卍解を見た藍染が懐かしさに浸る中、一護は天鎖斬月に霊圧を込めると、ルキアに向かって振り上げた。
「月牙…天衝ッ!!」
赤黒い月牙天衝がルキアの方へ飛んでいくが瞬歩で躱したルキアは、一護の背後を取ると袖白雪で一護の背中を斬ると背中から激しい痛みを一護は感じた。
赤黒い血が斬ったルキア本人の方へ飛び散って顔とかにかかる。一護は、瞬歩で逃げて元いた場所へ戻ってきた。
「ねぇ!起きてよ!!ねぇってば!!どうしよう……」
後ろから女の子の声が聞こえた。慌てて振り向いた一護は、自分の体を揺らしながら反応しないはずの身体に声をかけている女の子が居た。
「目障りだな。」
そう呟いたルキアは、遂に袖白雪を構えて能力を解放しようとした。
「舞え、袖白雪……次の舞・白漣!!」
「ヤベェ!!」
そう言うと一護は、自分の身体と隣に居る女の子を守るために迫り来る雪崩のような凍気の前に立ち塞がると、左手を額に持ってくると、彼の霊圧がそこへ集まると当時に顔を撫でるように左手を下げた。すると、顔にはなかったはず虚の仮面が出現していた。
「ほう……彼は、遂に死神と虚を超越した存在になったのか。」
その姿を見た藍染がそう呟く。一護の中には、虚が眠っておりその力を制御する特訓を今までしてきたのだ。
(今は、退くしかないか……。後ろの娘のためにも……。)
「ウオォォォォォォォォォォォォッ!!!」
一護は、自らの考えをまとめると再び雄叫びをあげて天鎖斬月を両手で握り振り上げた。赤黒い一護の霊圧が刀身から溢れ出ていた。霊圧も前放った月牙天衝の時より遥かに上だった。
「月牙…天衝ッ!!!!」
これまでに無い凄まじい霊圧のこもった月牙天衝が次の舞・白漣とぶつかり合って爆発した。
「ルキア君ご苦労様です。さぁ、帰りますよ。」
「はい、藍染様。」
そう言って藍染とルキアは、ゲートの中に向かっていた。それを確認した一護は、安心した様子でため息を吐いた。
「ちょっと!いつまで私の口を塞げば気が済むの?」
「あぁ、ワリィ。」
安心した一護の隣りには、中学生ぐらい女の子が座っていた。あの爆発の時、瞬歩して身体に戻った一護は、その娘を連れて物陰に隠れていたのだ。
「もう、死んでるのかと思ったら急に生き返るんだからビックリしたじゃない!!」
「だから、ワリィって。それより何でここに?」
一護は、女の子一人で来ないような所に何故いるのか気になったが、それを聞かれた彼女は、急に元気をなくした。
「それは……えっと、SAOをやって意識がないお兄ちゃんのお見舞いに……。」
「お前、兄貴居るのか?」
更に質問した一護に対して無言で頷いた。その姿を一護は、自分の妹である優杏や夏琳に重ねていた。
「なぁ、お前の兄貴の意識が戻らない理由を教えてくれないか?」
「え!?もしかしてSAO事件知らないの?」
どうして意識がないか気になった一護は、すかさず質問すると今度は、その娘が驚いた表情で質問して来たのを今度は一護が頷いた。
「今の時代、SAO事件を知らないって珍しいね。じゃあ、教えたあげる!今から、半年前……。ナーヴギアって言う仮想空間で遊べるゲーム機が開発されてその一つとしてソードアート・オンライン。略してSAOが発売されたんだけど……ログインした人達が現実世界に帰ってこないって言う緊急事態に陥ったの。今も帰ってこない人たちは、山のようにいるわ。」
仮想空間……
浦原さんが言ってたのと同じだと一護が理解するとこの世界に持ってきた段ボール箱をここで開封し始めた。
「それって……ナーヴギア!?何で?SAO事件で全て回収されたはずなのに……。」
「あぁ、これは知り合いからもらったんだ。それより、SAOのソフトはあるか?」
「それも今回の件で全部回収されちゃって今は、友達から譲ってもらったのしか……。」
「じゃあ、それを貸してくれ!」
「え!?そんなのダメに決まってるじゃない!!」
ナーヴギアもある、最後のSAOのソフトもある、これで藍染の待つ仮想空間に行けるはずだったが、そのソフトを持ってる彼女が認めてくれなかった。
「あんた分かってるの!?このゲームの中に入るってことは、生きて帰ってこれるかわからないんだよ!現にお兄ちゃんだって帰ってこないし……。そんな事をさせる訳ないじゃない!!だから、私がこれを使ってゲームの中に入る!!」
「確かに、大好きな兄貴が目の前から居なくなったらそれは不安になるよな。俺の妹達もそんな想いしてるのかも知れねぇ……。でも、そんな危ないゲームにやって来て仮に兄貴に会えたとしてお前の兄貴は、それを喜ぶか?」
女の子がそれを使って大好きなお兄ちゃんを助けると明言すると一護は、そのお兄ちゃんが喜ぶか質問した。すると、女の子はだまって俯いてしまったが、そんな彼女の肩を一護がポンと手を置いた。
「そんな事されたって俺は嫌だと思うぜ。大切な妹が戦場に立ってんだからな、お前の兄貴だってそうだ。大切な妹だと思ってるから待ってて欲しいと思うんだ。それに必ず俺が救い出してやる!だから、安心しろ。」
そう言い終えた一護は、肩に置いた手を頭へ動かして女の子の頭を撫でた。その温もりが意識のない兄と似てるのか、彼女はしばらく泣き出してしまった。その後、泣き止んだ女の子と共にその娘の兄の病室へやって来た。
「
「はい、私はお兄ちゃんの妹の
「そうか。俺の名は、黒崎一護。よろしくな、直葉。」
「はい!宜しくお願いします。一護さん!!」
出会ってから数分たっての自己紹介を済ませた一護は、たまたま空いていた隣りのベットに横になりナーヴギアを被った。
「じゃあ、行きますよ?今からSAOのソフトセットしますから
「あぁ、宜しく頼む。」
そう言うと直葉はSAOのソフトを入れて設定を全て終えた。一護は、楽な姿勢をとりゆっくり瞳を閉じてから言われた通りに言った。
「
《次回予告》
遂にアインクラッドへやって来た一護の前に現れたのは浅打と呼ばれる斬魄刀を持った下級死神達だった。
死神の力を封じられた一護は、背中にある初期装備の剣を取り出し戦闘を開始した。
第4話「始まりの地」