死神代行黒崎一護は、藍染惣右介によって連れ去られた仲間である井上織姫を助けるために虚圏へ向かおうとしていた。
一方、SAOの世界では剣を武器とした黒装束の集団に襲われて壊滅的な被害を受けた攻略組。その中にビーターである黒い剣士キリトも重症な被害を負い死んでいった。
キリトが死んでから数日……。
これまで攻略組が攻略してきた階層にもあの集団が迫り来るようになりクエストを攻略しようとするプレイヤーを次々と殺されていった。
「なぁ、エギル。キリトの奴が死んでから次々と上の層にいた人が殺されたっていう情報しか聞かなくなったな……。」
「あぁ、それに……アスナも部屋から出てこないみたいだしな……。」
エギルの武具店に来たクラインは、カウンターでエギルと二人っきり話していた。あれから変わったのは自分の命を大切にする人が増えてエギルの収入が減った事だ。カウンターの片隅には、キリトが愛用していたアニールブレードが形見として飾られていた。
アスナは、自分のミスで一人の少年を殺してしまったことに少しの後悔と心奥底にある絶望が彼女を戦闘から遠ざけていた。
「まぁ、こうして俺達も剣を握ることをしなくなったしな。」
「あぁ、キリトの死はある意味この世界の人々の生き方を大きく変えたからな。」
そう言ってから二人は、アニールブレードを見つめた。キリトが死ななければこんな事にはならなかった……。
クラインもエギルもそう思ったからだ。
場面は180度変わり、夕方の空座町。
町外れとまではいかないが、人気のないところにある小さな店浦原商店に一護達は、集結していた。
「で、浦原さん。話ってなんだ?」
「実は、大変なことになっていてですね……。」
浦原商店の居間にいるのは、一護、雨竜、茶渡と浦原喜助だった。浦原喜助は、いつもより真面目な眼差しで話し始めた。
「少し前、技術開発局からあるメッセージと荷物が届いたんですよ。」
「荷物?」
「で、内容はどんなのなんですか?」
荷物という言葉に疑問を持つ一護だが、それよりそのメッセージの中身が気になる雨竜は浦原に質問した。
「読みますから少し待ってください石田さん。えぇっと……。
技術開発局から死神代行へ。
つい数日前、藍染惣右介率いる破面の集団が虚圏から消えたという情報を確認。彼らの霊圧は確認出来ない状態だと言うことだです。調査を進めると、藍染一派が時空を超えてその世界の仮想空間へ入り、崩玉を使い悪さをしようとしてるみたいですね。」
「仮想空間!?何だそれ???」
「言わいるこの世界ではない世界。アニメの世界や二次元とかなら分かるかい?」
「あぁ……何となく……。」
技術開発局から送られたメッセージの中にあった仮想世界に疑問を感じた一護は、すかさず質問すると雨竜が簡単に例えを交えながら説明した。
「藍染惣右介が関わってる以上放っておくわけには行きません。黒崎さん、今から別世界の仮想世界に行ってもらえますか?」
突然の浦原の言葉にみんなが驚いた。仮想空間に行くことだっていくら技術開発局のサポートがあったとしても成功するか分からない。さらに別世界へ行くのだから不安もあった……。片道切符でこっちに帰ってこれないかもしれないそんな事が一護の頭を過ぎった。しかし、
「藍染がそっちで悪さをしようとしてるなら俺は、それを止める!」
「分かりました。黒崎さんの肉体、精神、全てをデータ化して仮想空間に送り込みます。では、時空移動用穿界門を開きます。向こうについたら、黒崎さんはこれを被って仮想空間に向かってください。」
「待ってください!」
まとまって終わろうとしていた話を雨竜が止めた。机を叩くと同時に雨竜は、浦原の顔を見つめていた。
「それじゃあ、黒崎はどうなるんですか?」
「と言いますと?」
「何で井上さんを助ける前に黒崎だけ危ない所に向かわせるんですか?それに、時空を超えることが上手くいったとしてその後、黒崎がここに帰ってこれる保証はあるんですか?」
「まず、どうして黒崎さんだけって意見ですが……それは、彼がこの中で一番強いからです。次に帰ってこれる保証ですが……時空移動用穿界門を開ける人がいない限りなく0に近いと考えてもらって構いませんよ。」
「でも!」
「石田、もう良いよ。さっきも言ったけど俺は、藍染を止める。例えこっちに戻れなくても……。」
「それで良いんですね?黒崎さん。」
浦原の質問に一護は無言でうんと頷くとみんな地下にある特訓場へ移動した。思えば、ルキアを救う為に一護が初めて尸魂界に向かったのもここが始まりだった……。その地下では、鉄裁を中心に既に穿界門の準備が進められていた。
「では、黒崎さん。これを持っていってください。」
そう言って荷物と称された段ボールの中からヘルメットみたいのとルキアが愛用してた記換神機と似てるものだった。
「時空を超えたらどこに着くか分かりません。最悪、他に人にバレたらこの記換神機を使ってください。」
「分かった。」
「それから……必ず藍染の野望を打ち砕いでください。」
そう言われた一護は、うんと頷くと同時に穿界門の枠の中が青白く光出した。
「石田、チャド、井上を……頼んだぜ!」
「あぁ!」
「任せろ、黒崎。」
二人の言葉を聞いた一護は、世界を超える覚悟を新たに決めて
「じゃあな!」
と言ったから穿界門の中へと向かって行った。
穿界門をくぐり抜けた先には、近未来の日本の首都東京だった。
「……ここが、別世界!?」
一護がついた場所は、よく分からないビルの屋上だった。夜の都会であることから街灯やビルの窓から光るライトの光などが眩しかった。
「……久しぶりだね、黒崎君。」
すると、綺麗な夜空が口を開くのかのようにゲートが開くとその中から藍染惣右介が高みの見物をしてる態度で立っていた。藍染が現れた瞬間、一護は眉間にシワを寄せながら睨みつけた。
「藍染……。」
「そう睨まないでくれたまえ。こうして、君とは世界という軸を超えてまで出会えたのだから。」
「テメェ、この世界で何をする気だ!?」
「私がしようとしてるのはね……この世界と我々がいた世界を支配することにあるのだよ。この世界には、虚も死神も居ない。更にこの世界で起きているデスゲームによって出た魂魄を使い虚あるいは、破面を作り世界を征服する。これが私の狙いだよ。」
「そんな事……させてたまるか!!」
一護は、すかさず制服の後ろポケットに入れていた代行証を取り出して自分の胸に当てて自分の身体と魂を分離させて死神の姿となると背中にある斬月の柄を右手で握った。
「おっと、まだ君とはやり合わないよ。私は、死んだ人の魂魄を回収しに来たのだ。」
「なん…だと!?」
「それでも対決したいというのなら……。」
一護は、突然襲ってきた絶望により思わず右手を斬月の柄から離してしまった。
何故なら、藍染の隣りには……
「君臨者よ!血肉の仮面・万象・羽ばたき・ヒトの名を冠す者よ!真理と節制、罪知らぬ夢の壁に僅かに爪をたてよ!!破道の三十三!蒼火墜!!!」
懐かしい声と共に青白い稲妻が一護の横をすれ違った。後ろでは物にあたり爆発が起こると一護は、眼の前の人物をしっかり見た。
「ル…ルキア!?」
驚く一護とは真逆にルキアは、斬魄刀の柄に手を伸ばすと鞘から抜いて一護へ向かって振り下ろしてきた。
《次回予告》
SAOの現実世界にやって来た黒崎一護の前に現れた藍染惣右介と朽木ルキアだった!?
一護は、戸惑いながらもこの世界で初めて斬月に手をかける。
第3話「兄の敵!?直葉の想い」