スパロボVで頑張る   作:白い人

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スーパーロボット大戦 上

「凄い……」

 

 宇宙(そら)を駆ける流星達を見ながらタカサカ・ショウは小さく呟いた。

 その流星達のどれもが自分達の声に答えてくれた存在だとはっきりと感じ取っていたからだ。

 やってきた彼等は自分の存在が確固たるものになると、すぐさまアイナ・クルセイドの手勢達を撃退し始めた。

 説明は不要、という事だろう。

 

「間に合ったみたいで良かったです」

「ああ、ここへの道も無事にできたみたいだしな」

「君は……君達は……」

 

 ショウのゲシュペンストの近くにやってくる正義の味方。

 彼、いや彼等こそがショウ達の呼びかけに一番に気づきこの世界へと駆けつけてくれた存在。

 モニターに映る制服を着た男と麦わら帽子に白いワンピースを着た女。

 それを見て、なるほどと小さくショウは呟いた。

 あえて言うならば原作後の二人という事か。

 だからこそ納得もした。

 既に時間も空間も超越した正義の味方ならば、あの声を聞きここへ跳ぶ事も不可能ではない、と。

 

「ありがとう、助かったよ」

「礼を言うのはちょっと早いぜ」

「はい、まずは」

「ああ」

 

 ショウと正義の味方の視線がアイナ・クルセイドの方へと向く。

 既に自分が有利な状況ではなくなった事を理解したのだろう。

 呼び出した存在で守りを固めているようだ。

 

「だが甘い」

 

 ショウははっきりと感じ取っていた。

 ■■■■■■■■■■(N#%rl?t⊿§∑ep)がいるのならば。

 

『ッッッ!!!』

「ほら、な」

 

 彼等がやってくるのも必然である。 

 アイナ・クルセイドと機械仕掛けの悪夢が吹き飛ばされる。

 そこにはかつて■■■■■■■■■■(N#%rl?t⊿§∑ep)を屠った鬼械神――無垢なる刃が存在していたのだから。

 いや、それだけではない。

 彼等の息子()が駆る三位一体となった黒い鬼械神がいた。

 彼等と激闘を繰り広げた深紅の鬼械神がいた。

 彼等より前から邪神と戦いを繰り広げていた鬼械神がいた。

 

「まったく、ナイスな展開で最高の援軍だよ」

「だろう」

 

 子供のような笑顔を見せる男にショウも頷く。

 気が付けば正義の味方と共に戦った人の創り出した鬼械達もまたこの決戦の場に集っていた。

 

「露払いは任せとけ」

 

 それだけ言うと正義の味方は仲間と共に戦陣に加わっていった。

 

「ショウ!」

「みんな……!」

 

 それを見届けると同時にチトセやソウジ、ヴェルトにロッティが駆けつける。

 それだけではない。

 

「シズキさんまで……」

「遅くなったけど私も力になりに来たわ」

 

 ヴィルヘルム研究所日本支部で世話になったシズキ・シズカワのヒュッケバインまでこの場に現れていた。

 

「どうやってここに……」

「あなた達の声が聞こえてきたと思ったら、ここにいたの」

 

 どうやら駆けつけてくれたのは平行世界の人々だけではなく元の地球に残っていて戦う意志がある人々もらしい。

 

「で、俺達はどうする?」

「他のみんなは駆けつけてくれた人達と攻勢に出てるわ」

「決まってる」

 

 全員から意見を求められ、ショウは迷う事なくその意志を口にする。

 

「敵本陣に突貫だ」

「了解!」

「アイナ教授に一発入れないと気が済まないしね」

 

 全員、それに迷わず同意する。

 とは言え、その道のりは決し楽なものではない。

 アイナ・クルセイド本人は現状、鬼械神達と戦闘を繰り広げているものの、彼女が呼び出した存在が部厚い壁のように立ちはだかっている。

 そこを超えて行くのは楽な道のりではないだろう。

 だが各自で戦い始めた地球艦隊・天駆の面々も同じ場所を目指すに違いない。

 それならば自分達も目指さない理由が見当たらない。

 

「楽な道のりではないけど!」

「僕達ならば!」

 

 ダメージは残っている。エネルギーや弾薬も満タンには程遠い。

 だがこの身の気力は十二分に回復した。

 ならば後は少しだけ無茶をすればいい。

 全員の覚悟が決まった、その時。

 強大なエネルギーと衝撃が宇宙を駆け抜けた。

 

「波動砲!?」

「ヤマトか!?」

「いや……これは……!」

 

 T-LINKシステムが反応している。

 この反応は敵性反応ではなく、同じシステム(・・・・)に反応しているのだろう。

 

「……鋼の方舟と天翔ける龍」

 

 この世界にはまだ存在しない二つの戦艦の姿があった。

 それと同時に竜巻の如く駆け抜ける嵐。

 巨大な馬のロボットを駆る巨大な斬艦刀を構える鎧武者がショウ達の前に立ちふさがる敵を切り裂いていく。

 更に神雷の如く敵に切り込む蹴闘士。

 敵を正面から撃ち貫く鋼鉄の孤狼と白銀の堕天使、蒼い拳闘士、白き天使。

 四神の力を集結した真なる龍と虎。

 ショウの顔が引きつりだすぐらいの大戦力である。

 

(いや、時間軸とかどうなってんだよ)

 

 彼等がやってきたのはきっとあのフラスコの世界なのだろうが、それにしては乗っている機体が自分の知っているものとかけ離れている。

 よく見れば超機大戦の機体はプロトタイプのあちらではなく完成型の方である。

 加えると史上最強の家やら必殺仕事人とか新しい勇者ロボっぽい彼等までいる。

 

「ヒュッケバイン、に近い機体かアレは」

「グルンガストの強化型かな」

 

 凶鳥を超えた機体と超闘士の強化機体を見てヴェルトとロッティが興味深そうに呟く。

 

「ゲシュペンストのカスタム機とかもたくさんあるわね……」

 

 チトセも敵に砲撃を加えながら、呟く。

 それはそうだろう、と苦笑するショウ。

 自分達が乗っている機体はあの世界に属するのだから。

 

「あちらもこちらを見ているみたいですが」

 

 こちらが彼等の機体に興味を抱くように、彼等もまたこちらの機体に興味を持っているようだ。

 

(レッドもブラックもα世界の機体でOG世界では産まれない機体だし、俺のSBは絶対ありえないだろうしな)

 

 SBはともかく二機は違う形になった機体だ。

 興味を抱くのは当然か。

 だけどショウの視線はとある機体へ釘付けになっていた。

 

(黒い銃神までくるとは……この世界に因子は揃ってたのか?)

 

 翼を広げ禍々しい気配を持ったまま戦場を駆けるアクマの機体を見ながらそんな事を思う。

 それとも何一つ因縁あるものがないからこそやってこれたのか。

 しかしそれもなんとなく違うような気がする。

 トロニウムもT-LINKシステムもここにあるのだから。

 色々と考察したい所ではあるが、今はそんな時間ではない。

 

「機体考察は後回し。今は奴の元へ行くぞ!」

「了解!」

 

 ショウのゲシュペンストが敵に突っ込む。

 チトセ達が、そして鋼と龍達もそれに合わせるように突撃を開始した。

 

 

 

 

 

「本当に援軍が来たのか……!」

「カミーユ!」

 

 破損して使えなくなったハイパー・メガ・ランチャーを放棄しながら、次々にこの宙域に現れる存在に驚きの声を上げた。

 傍に居たファもまたやってきた存在から放たれる優しさに困惑しつつも、助けが来てくれた事に喜色の表情を浮かべる。

 だけどそれだけではない。

 

「アレは……!」

 

 目の前の敵が撃ち抜かれる。

 それを行った機体を見てカミーユもファも今日一番の驚きの表情を浮かべた。

 

「ガンダムMK-Ⅱ……!まさかエマさんか……!」

「それだけじゃないわカミーユ!アレは……!」

 

 ガンダムMK-Ⅱだけではないリック・ディアス、パラス・アテネ、ボリノーク・サマーン、サイコガンダム、サイコガンダムMK-Ⅱなど二人に縁がある機体達が現れたからだ。

 その乗り手達は確認するまでもない。

 共に戦った戦友達であり救えなかった人であり、心を触れ合った人達であるのだから。

 

「一緒に戦ってくれるのか、みんな……!」

「ええ、ええ!そうよカミーユ!みんな助けに来てくれたのよ!」

 

 声を聞くまでもなく彼等はZガンダムとメタスを中心に陣形を取る。

 そして見知った相手だけではない。

 赤や黄に染まったZガンダムや白鳥のような白い機体、百式の意匠を持ち合わせたZタイプ、妖刀を思わせるようなガンダムタイプも駆けつけてきている。

 否、それだけではない。

 

「あ、れは……!」

 

 妖精の女王を名を冠する白い機体。

 その中から発せられるプレッシャーにカミーユはすぐに気づいた。

 忘れる訳がない。

 

「シロッコ!!」

 

 傲岸なその気配は間違いなくカミーユがかつて倒した相手そのものである。

 どうしてこの場に現れたのか。

 復讐なのか、それともその力で再び自分の理想の世界へ導こうと言うのか。

 一瞬、だが永遠とも言える時間の中で思索にふけったカミーユに向けてその銃口を向ける。

 

「っっっ!」

 

 それに気づいたファが声を上げようとするがもう遅い。

 しかしカミーユの心は驚く程、落ち着いていた。

 シロッコが何をしようとするか分かっているように。

 

「……え?」

 

 銃口から放たれたビームはZガンダムの後ろにいた敵機を正確に撃ち抜いていたからだ。

 ファは呆然とした声を出し、エゥーゴの仲間達もまた驚いた様子を見せているようだ。

 

「世界をあんな奴の好きにさせるのは面白くない、か」

 

 カミーユだけは正確にその理由を理解した。

 するとお返しのようにカミーユもまたシロッコを狙おうとした敵をビームライフルで撃ち抜く。

 それが返答のように。

 カミーユのZガンダム、シロッコの白い機体。

 それが背中を預けあうと恐ろしい勢いで敵を駆逐していく姿は息のあったコンビのようであった。

 

「ふん、同窓会になっちまったな」

「ああ」

 

 ヤザンとジェリドもまた懐かしい顔ぶれに顔を綻ばせていた。

 戦友や愛した人。

 彼等にとっても無視できない人々である。

 

「ふん、だがそれだけではないな」

 

 ジェガンタイプにガンダムタイプ、しまいに赤いゲルググも現れてヤザンと肩を並べていた。

 

「未来か平行世界とやらで俺と一緒に戦う連中か。それにしては色々と混ざっているがな」

 

 連邦とジオン、両方の機体が混じりあった編成にそんな言葉を漏らす。

 だがその実力は間違いない。

 特にゲルググとガンダムは間違いなくエースクラスの連中だろう。

 その中心にいる赤いゲルググにはあの幻獣のエンブレムが描かれている。

 真紅に染め上げれた幻獣のエンブレムを持つ相手など一人しかヤザンには思いつかなかった。

 

「だが腕はいいし、どこか信用もできる。力を存分に貸して貰おうか!」

 

 二人もまたビームで敵を撃ち抜きながら、敵中心に突撃を開始した。

 

 

 

 

「万丈の兄ちゃん!」

「来たか勝平君!」

 

 ザンボット3とダイターン3もまた背中を預けながら襲い掛かる敵の波の中を突き進んでいた。

 無敵超人や鋼人と言われた機体であってもその物量を完全に捌き切る事は出来ず装甲に刻まれる傷跡も大きくなってきている、

 機体に寄せる信頼やパイロットの根性で傷は治る事はない為、可能ならば補給を兼ねて母艦に一度戻りたい所であったが、現実そんな時間はない事は四人とも理解していた。

 今は無理を通してでも前に進む時なのだ。

 修理不可能な程、ダメージを受けるかもしれない。

 だがそれでいいのだ。

 今この時、世界を守らなければ何もかもが終わってしまうのだから。

 

「くぅ!」

「勝平君!」

 

 だが限界がこない訳ではない。

 数の暴力は確実に着実に二機の機体から戦闘能力を奪っていく。

 万丈がなんとか起死回生の一手を探さんと目を凝らすが、そこに映るのは敵の姿のみ。

 その足が止まる、そう思われたその時。

 

「……!」

 

 鳥が宇宙を舞った。

 

「おい、勝平……」

「ああ、見えてるぜ」

「うん、私にも見える……」

 

 鳥型のオーラを纏ったロボットがザンボット3とダイターン3に襲い掛かってきた相手を蹴散らしていったのだ。

 見た事もないロボットだ。

 しかし、どこか懐かしく見覚えもあるような、気がする。

 理由は不明だが、ザンボット3に似ているような気さえしてくる。

 

「助かったよ」

 

 万丈が礼を言うのはやってきたロボットについてきた大型の戦闘機らしき機体から補給を受けた為だ。

 完全とは言えないが、戦闘継続はこれでまだまだ可能のようである。

 

「行けるかい?」

「勿論だぜ」

 

 力強く頷く勝平。

 敵は未だに無数の敵。

 だがここで立ち止まる訳には行かないのだから。

 

「ならまずは敵陣に穴を開ける!用意はいいかい、君達!」

「万丈の兄ちゃんの頼みじゃ仕方ねえ!」

 

 ダイターン3とザンボット3が並び立つ。

 そして鳥型のオーラを纏ったロボットもまた二体の横に並ぶ。俺達の力を見せてやろう、とばかりに。

 

「よし、では行くぞ!」

 

 太陽が、月が、そして鳥が。

 その力を解放した。

 

 

 

 

「シンジ君、13号機はもう動かない。初号機に乗り換えるんだ」

 

 身を犠牲にした13号機はもはやスクラップ同然。

 今はレイの零号機によって戦艦へと運ばれている状況だ。

 通信を聞けば既に初号機の出撃準備が始まっているようである。

 

「カヲル君はどうするの?」

 

 と聞いてみるが、既にカヲルが扱える機体はない以上、艦内待機だろう。

 しかしカヲルから笑みが零れる。

 

「そのつもりだったんだけど、どうやらあちらから来てくれたみたいだ」

「え?」

 

 13号機が艦に収容されると二人の目の前に突如、光と共にロボットが、いやエヴァンゲリヲンが現れたではないか。

 

「これは……!?」

「エヴァンゲリオンMark.06。本来、僕の搭乗機だった子だよ」

「カヲル君の……!」

 

 13号機から降りると、カヲルは迷わずMark.06の元へと向かう。

 周りの整備員達からは止められるが、大丈夫とだけ言うと無重力を利用してふわりとMark.06の巨体へと乗り込んでいく。

 

「シンジ君、急ごう。援軍が来たとは言え戦況は決していいものじゃない」

「分かったよ!初号機、出ます!」

 

 格納庫からMark.06が飛び出していくのを見届ける事なくシンジもまた初号機へと乗り込む。

 するとその手には見た事もない武器、大型の日本刀が握られている。

 

「これは?」

「知らん!気が付いたら持ってた!」

「なんて無茶苦茶な!」

 

 整備員の返答に思わず声を荒げてしまうシンジ。

 だがどういう訳がその武器からは嫌な感じがしない。

 多分、これもまたあの光に導かれてやってきた平行世界の武器という事か。

 

「置いていくか!?」

「いえ、持っていきます!」

「分かった!」

「初号機!行きます!!」

 

 遅れてシンジも飛び出すと、先に戦闘を開始していたメンバーから次々と通信が入ってくる。

 

「遅いわよバカシンジ!」

「碇君、大丈夫?」

「場はすっごいあったまってるよぉ!」

 

 ごめん、とだけ返して近くにいる敵を日本刀で両断する。

 カヲルのMark.06の槍を回収して武器として使っているようだ。

 

「お、こっちにも誰か来たね」

 

 マリが何かに気づいたように声を上げる。

 他のメンバーの所に援軍が来たように、シンジ達の元にも駆けつけてくれた人達が来たようだ。

 だがそれを見た時、まず最初に喜びではなく困惑と戸惑いと言った表情が浮かんできた。

 なぜならば……。

 

「3号機……ですって……!?」

 

 アスカから驚愕の声が出る。

 使徒に乗っ取られ破壊された筈のエヴァンゲリオンがどうしてここにやってきたのか。

 敵としてあの邪神に呼び出されたのかと思った瞬間、3号機がパレットライフルで次々に敵を撃ち抜いていく。

 更にはA.T.フィールドを展開してそれを敵にぶつけるという攻撃も行っているではないか。

 3号機の動きに皆が驚いている中、シンジだけはそのパイロットの存在を感じ取っていた。

 

「トウジ……?」

 

 地球にいる筈の友人の鼓動を感じて困惑する。

 敵をある程度、破壊した3号機はそんなシンジにまるで気にするな、と手を振る。

 ああ、とそんな動きを見て納得する。

 間違いなく3号機のパイロットは友人である鈴原トウジなのだと。

 だが次に現れたエヴァンゲリオンを見て、本気で困惑する事になる。

 

「白いエヴァ?」

 

 その手にランス持つからA.T.フィールドを発生させ敵を薙ぎ払っていく機体。

 こちらはまるで見覚えがない。

 ない、筈である。

 アスカ以外は。

 

「2号機……?」

 

 それはどこか2号機に似ている、ような気がする。

 そしてその中にいるパイロットの気配にもシンジと同じようにすぐに気づいた。

 

「ヒカリ……!?あんたが乗ってるの!?」

 

 大人びた気配があるものの、間違いなく友人である洞木ヒカリである事に気づいた。

 何故、彼女がエヴァンゲリオンに乗っているのか。

 驚愕、しかし聡明なアスカはすぐに納得する、せざるを得ないでいた。

 

「ああ、もう平行世界ってなんでもありね!ヒカリ!あわせるわ!」

 

 すぐにヒカリのエヴァンゲリオンに動きをあわせるアスカ。

 似た気配を放つ二体のエヴァンゲリオンはまるで姉妹のような動きで次々と敵を屠っていく。

 

「はー、エヴァっていっぱいあるもんだニャー」

 

 トウジとヒカリ以外にも複数のエヴァンゲリオンが援軍として駆けつけている様子から、マリも本気で驚きの声を漏らす。

 どうやら世界は思った以上に広いようだ。

 

「初号機……?」

 

 そして日本刀を構えていた初号機もまた新たな変化を迎えていた。

 

「これ……!」

 

 背中には見覚えのない四枚の可動式パイロンが増えており、出力も初号機と比べ物にならないぐらい向上しているように感じられる。

 

「並行世界の初号機……?」

 

 シンジから困惑の声が零れる。

 どこか母の匂いが感じられた初号機とは違い、この変容した初号機はまるで自分自身そのものに感じられるからだ。

 だがその困惑は今は必要なかった。

 世界を救えるのならば、この変容した初号機はむしろ歓迎すべきだからだ。

 

「……行こう(最終)号機」

 

 それだけ呟くとここに集った仲間達のエヴァンゲリオンを見渡す。

 

「みんな行こう!」

「ああ、行こうシンジ君」

 

 駆けつけてくれた仲間達と共に突き進む。

 それこそが世界を救う道などだと信じて。

 

 

 

 

 

「アイアンカッター!!」

 

 甲児の雄叫びと共にマジンガーZEROから放たれた一撃が無数の敵を容赦なく粉砕する。

 出力が高すぎて下手な攻撃を撃つと味方を巻き添えにしかねない一撃もこの状況ならば容赦なく放てる事が出来た。

 

「しかし数が多い!」

 

 その後ろを守るように鉄也のマジンエンペラーGがエンペラーブレードで敵を切り刻んで行く。

 二体の魔神は異界の道を作る為に大量のエネルギーを消費したばかりだが、そんなもの関係ないとばかりに敵陣を蹂躙していく。

 だが鉄也の言う通り数が多い、多すぎる。

 大体の相手は戦闘にもならない雑魚ばかりだが、時折戦闘が成立する敵も現れる為、油断はできないでいた。

 

「鉄也さん!」

「でかいな」

 

 巨大な丸太のような戦艦を見つけて呟く。

 周りには無数の円盤型の戦闘機が従っている姿が見られる。

 敵ではない。だが面倒だ、と二人が思ったその瞬間。

 閃光が走った。

 

「何……!?」

「あれは……?」

 

 一瞬にして旗艦らしき巨大戦艦が墜ちていく。

 それを成したのはその中心部で半月状の鎌を装備したロボットであった。

 

「あれは……」

 

 知っている。

 兜甲児はそのロボットを――マジンガーZ、グレートマジンガーに続く第三の魔神を知っている。

 宇宙の王者と呼ばれるそのロボットを。

 

「……」

「……」

 

 マジンガーZERO、マジンエンペラーG、そして宇宙の王者。

 静かな対面であった。

 数多の世界において出会う事がなかった三者はこの世界でようやくこうして出会う事になった。

 だが甲児としてはZEROの事が心配であった。

 未だに彼は自分がもっとも最強のロボットであるという考えを捨てていない。

 だからこそ敗北から産まれたグレートマジンガーを許さなかったし、その先にいる宇宙の王者もまた粛清対象と考えていてもおかしくない。

 一分にも満たない、どこか緊迫した対面を終わらせたのは意外にもZEROであった。

 

「ZERO……?」

 

 甲児に急かすように敵に攻撃を加え始めるマジンガーZERO。

 そんな様子を背中で見ていた鉄也達は首を傾げるが、甲児だけはすぐに気づいていた。

 

「なんだよZERO。そう言えばいいだろうに」

 

 小さく笑みを浮かべながらZEROの考えを理解した甲児が気合を入れなおして敵を叩き落してく。

 ZEROはそれに答える事なく自分の前に立ちはだかる敵を粉砕し行った。

 それを見た後、残された二人は顔を見合わせて笑みを浮かべると頷き合う。

 二人もまた理解したのだ。

 

「行くか」

 

 鉄也の言葉に、ああと頷くと魔神皇帝と宇宙の王者も終焉の魔神の背中を追う。

 

「最強の力を見せてやるから背中で見てろ、か。もう少しいい言い方があるんじゃないかZERO」

 

 そんな小さい呟きは誰に届く事もなく消えていく。

 それと同時に三体の魔神は無数に現れる敵を容赦なく消し飛ばしていた。

 誰にも止められない、止まる事がない魔神達の進撃であった。


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