スパロボVで頑張る   作:白い人

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俺にいい考えがある(私にいい考えがある)

 

 ショウの言葉が戦場に響く。

 起死回生の一手がこの状況であるというのか。

 

「勝平!一度みんなの所に戻るぞ!」

「いいのかよショウの兄ちゃん!?」

「今のままじゃあいつは倒せない!」

 

 黒幕の近くまでやってきていたショウと勝平達だが、これ以上は無理だ。

 突っ込もうとしても数で押しつぶされてしまう。

 

「だから戻るぞ!」

「分かったよ!」

 

 周りを囲んでいた敵を蹴散らして、戻っていく二人。

 それを見て、他のメンバー達も自然と合流する為に機体を動かしていた。

 

「それで、どうするつもりだ?」

 

 補給や修理が必要な機体は母艦へと帰還。整備員達が必死に作業を開始する。

 他のメンバーは群れてくる敵を片っ端から迎撃していく。

 だがこれも時間の問題。

 いつか物資は尽き、パイロット達は疲弊し敵に打倒される日がやってくるだろう。

 

「目には目を歯には歯を、だ」

「え?」

「甲児!マジンガーZEROを使う!」

 

 ショウの言葉に視線がマジンガーZEROへ集中する。

 

「どうするつもりだ!?」

「あいつらは俺の『記憶』から様々な世界の存在をこちら側へ呼び寄せた!ならば!」

「方法は分からないがこちらも同じ事が出来ると、そういう事だな」

 

 ヴェルトの言葉にショウが頷く。

 確かにそれは有効な一手ではあった。

 しかし。

 

「どうやってあいつらと同じ手を使うってのよ!?」

「こっちはあっちの種も仕掛けも分かっていない状況だっていうのに……」

 

 アンジュやタスクの言う通りであった。

 対抗策はあれど、その実行方法が分からないのであれば空想上の論理にすぎない。

 だがショウにはある種の確信があった。

 方法ならば、あると。

 

「キーマンは甲児!お前だ!」

「おうさ!」

 

 ショウの言葉に甲児が答える。

 すぐさまマジンガーZEROをゲシュペンスト・タイプSBの元へと向かわせる。

 だがそれだけでは足りない。

 

「アムロ大尉!」

「了解した!カミーユ、ジュドー、ハサウェイ、レーン中尉、トビア、キンケドゥ、バナージ、リディ少尉ついてこい!」

「分かりました!」

 

 アムロがショウの言おうとする事を理解して、必要なメンバーを招集する。

 

「集合場所は真・ゲッタードラゴンだ!」

「竜馬ァ!」

「あぁ!」

 

 直感か何かか。

 號の呼びかけに竜馬達も真・ゲッタードラゴンの元へとやってくる。

 そしてショウの意図に気づいたのは號だけではない。

 

「ダナンを真・ゲッタードラゴンの傍に!相良軍曹!」」

「宗介!」

 

 テレサとかなめが同時に叫ぶ。

 

「分かった!」

「行きなさいウルズ7!」

「こっちは任せておけ!」

 

 マオとウェーバーの援護を受けて宗介もレーバテインを動かしていく。

 

「アンジュにクラインさんも来てくれ!」

「分かったわ!サラ達も!」

「分かりましたわ!」

 

 アンジュを筆頭としたパラメイル部隊が。

 

「エターナルを真・ドラゴンの傍に!」

「了解!」

「アスラン!」

「分かっている!シン、俺とお前で前に出る!キラとルナマリアはエターナルの防衛を!」

「分かりましたよ!ルナ!」

「ええ!きっちり守って見せるわ!」

 

 MS部隊もそれにあわせて動いていく。

 

「各員!彼等の護衛に専念!

「了解!」

 

 ヤマトの艦橋で沖田の激が飛ぶ。

 まともにやってもこの状況は覆す事は不可能。

 だからこそこの手に乗るしか残されていないだと理解したからか。

 

『それができると本気で思っているのかい?』

「当然!」

 

 アイナ・クルセイドの言葉に真っ向から反論するショウ。

 自暴自棄と取られてもおかしくない一手だという事は理解している。

 しかしこのメンバーならば可能だと、そう信じているのだ。

 

「マジンガーZEROの光子力エネルギーを呼び水に。ゲッター線で空間に穴を開け、ニュータイプや脳量子波、念動力で思念を飛ばす!助けてくれってな!」

「レーバテインのラムダドライバ、ダナンのTAROSを補助に使います!」

「ついでに私達の歌で世界への声を大きくするって訳ね!」

 

 ショウの方法をすぐさま理解したメンバーが声を上げる。

 しかし方法を提示されて尚、無茶だという事は誰もが理解していた。

 本当にこれで呼びかけに答えてくれるかどうかも分からないのだから当然だろう。

 だけど。

 

「時間を稼ぐぞ!」

「きっちり決めてくれよな!」

 

 同時にここにいる誰もがきっと成功するのだと信じていた。

 ダイターン3を始めとするスーパーロボット達は壁になるように立ちふさがり。

 

「抜けてくる敵を一掃する!」

「誰も後ろに

 

 エステバリスやASなどのリアルロボット達が隙間から襲い掛かってくる敵を叩き落していく。

 

「行くぞぉ!ZERO!」

 

 甲児の雄叫びと共にマジンガーZEROもまた、光の咆哮を上げる。

 

「――」

 

 マジンガーZEROはかつて見た。

 その認めたくもない、美しい光景を。

 マジンガーZ(自分)がいたからこそ、生まれ出たあの光を。

 あの光景がもう一度見れるなら、そしてその果てに自分こそが最強など証明できるのであれば。

 もう少し力を貸してやろう。

 何より。

 

 ――アンナ、邪神ノ紛イ物ニ負ケルナド許サレン

 

 光子力の光が放たれる。

 それを受け止めるのはゲッターロボ。

 

「やるぞ隼人、弁慶!」

「ああ!」

「おう!」

「俺達も行くぞ!」

「ええ!」

「ゲッターロボの力、見せてやろうぜ!」

 

 真・ドラゴンの上に乗った真・ゲッターロボ。

 二機がマジンガーZEROから放たれた光子力エネルギーを受け取る。

 

「行くぜえぇぇぇぇ!」

 

 それをそのまま虚空の彼方へ解き放った。

 いや、ただ解き放った訳ではない。

 ゲッター二機に込められたゲッター線と共にだ。

 人と密接な関係を持つ二つのエネルギーは螺旋のように世界の壁を穿ち、その輝きを解き放っていた。

 本来、どのようなエネルギーであっても世界の壁を穿つような真似は出来る筈もない。

 だが時空を超えた事があるゲッター線。

 平行世界への干渉が可能な光子力エネルギー。

 この二つが重なれば、この程度の事は可能である。

 

「道は出来たぞぉ!」

「これが俺達のファイナルミッション……!クアンタムバースト!」

「T-LINKシステム、リミッター解除……やってみせろよ!」

 

 刹那のダブルオークアンタが対話の為のシステムを完全開放する。

 それと同時にショウがゲシュペンストに搭載されているT-LINKのリミッターを解除を行う。

 いや、正確に言えばその裏に搭載されているであろうウラヌス・システムを無理やり使用する為だ。

 しかしショウの念動力では多分、いや間違いなく完全起動は不可能である。

 それは分かっていて尚、使用する事に躊躇いなどなかった。

 念動力は極まれば空間への干渉が可能な力(XNディメンション)。今という山場で使わなければいつ使うと言うのだ。

 

「全ての意思をゲシュペンストに、ショウに合わせるんだ!」

 

 アムロを始めとするとニュータイプと呼ばれる者達がその意志を一点へと収束させていく。

 いや、ニュータイプだけではない。

 ここにいる人々が誰もが願うのだ。

 それと同時に戦場に響き渡る歌声。

 世界によく聞こえるように、その願いが誰かに届くようにと祈りを籠めて。

 

『目ざわりな声だね』

 

 歌を謳いあげるアンジュやラクス達の元へ殺到する敵機。

 

「ここは通さない!」

「ラクスの邪魔はさせない!」

 

 タスクのアーキバスがアサルトブレードで切り結んでいくと同時にキラのストライクフリーダムが圧倒的な砲撃をもって援護に入っていく。

 

「撃て!銃身が焼け付くまで撃ち続けろ!」

「おうともさ!」

 

 モビルスーツが、エステバリスが、アームスレイブが全てを出し切らんと撃ち続ける。

 ネズミ一匹通さんとばかりの弾幕である。

 

『チィ、これはどうだ!』

「通さん!」

 

 ステルス性の高い機体が暗殺とばかりに近づいていくがそれを察知したアキトのブラックサレナがボソンジャンプで接敵、速攻で叩き落していく。

 

「力押しもさせる気はないよ!」

「おうさ!」

 

 巨大な機体での力押しは、同じサイズであるダイターン3を筆頭にスーパーロボット達が押しとどめていく。

 地球艦隊・天駆、全ての機体が平行世界への対話を実現させるべく一丸となって敵を押しとどめている。

 

「ここから先は通さん!」

『だがその声が世界の先に届くものか!』

 

 その通りだ。

 これだけやっても、本当にこの声が世界の誰かに届くとは限らない。

 例え届いたとしても、その願いの通り助けてくれるかも分からない。

 だけどショウは知っている。

 だけどマジンガーZEROは知っている。

 数多の可能性の光がある事を。

 その願いに答えてくれる者達がいるという事を。

 だから。

 

「俺達はそれでもと叫び続ける!」

「その力を俺達は知っているんだから!」

 

 彼等の切実な願いを聞き届けてくれる者達がいるのだと信じているのだ。

 

『チィッ!ならばその声が届く前に断ち切りましょう!』

「来るぞ!でかいのが!」

 

 苛立ちと共にアイナ・クルセイドの横に現れる巨大な砲台。

 全てを薙ぎ払う一撃とするのであろうか。

 

「チャージなど!」

「させるものか!」

 

 シンのデスティニー、アスランのジャスティスが神速の踏み込みでチャージを妨害せんと突撃する。

 だが今度は先程とは真逆の光景、二人の進路を妨害せんと数多の敵がその前に現れる。

 

「ならっぐっ!?」

「アキト!?」

 

 ボソンジャンプを行おうとするブラックサレナに組み付く敵。

 このままジャンプしても身動きを半分封じられた状態では攻撃するのもままならない。

 

「まずい!」

「チャージがもう!」

 

 射撃武器で攻撃を繰り返すが砲台の前に盾になる敵のせいで銃弾一つ届かない。

 その稼がれた時間で砲台のチャージが完了する。

 

『これで終わりよ』

 

 巨大なエネルギーが砲台から放たれる。

 盾になっていた機体諸共吹き飛ばしながら、地球艦隊・天駆の中枢を薙ぎ払わんと迫りくる。

 だけど、諦めぬ者達はまだここに。

 

「ATフィールド全開!!!」

「シンジ!?」

 

 エヴァンゲリオン13号機がATフィールドでその一撃を受け止める。

 

「碇君!」

「この馬鹿シンジめ!」

「あー、もう大変だなー」

 

 それに続くように零号機、2号機、8号機が同じようにATフィールドを張りながら攻撃を受け止める。

 

『防げるものではないわ!』

「それでも防ぐ!ショウさん達は僕達が守る!」

「ああ、やろうシンジ君」

 

 心の壁であるATフィールド。

 その意志の力をもって発言させる心の壁はシンジ達の想いによってその強度を増していく。

 誰もが防ぎきれないと判断したその一撃はその意志の前に消失していく。

 

『防ぎ……きった……!?』

「やったぜシンジ!」

「だけど13号機が……!」

 

 だがその代償は大きい。

 真正面で受け止めた13号機は無残な姿に成り果てていた。

 四本の腕は全てが消失しており、正面の装甲の全てが焼け爛れている。

 

「カヲル君、大丈夫!?」

「僕は大丈夫。シンジ君も無事で良かった」

 

 シンジとカヲルは無事である事にほっとする一同。

 とは言え、13号機はもう動かしようがないのには誰の目に見えても明らかであった。

 

「だけど希望は守ったんだ!」

 

 確かに13号機を犠牲にしたが、その希望を守る事は出来た。

 しかし。

 

『その希望が本物かどうかなんて分からないのにね』

「っ!」

 

 世界へ繋がる光はまだ繋がっている。

 だがどれだけ願っても、この場に現れる光はどれ一つと存在しないでいた。

 

「まだ……っ!?」

「光が……!」

 

 対話の光が小さくなっていく。

 光子力エネルギーもゲッター線も、GN粒子の輝きも。

 全てが収束していってしまう。

 希望はないのだと、そう言わんばかりに。

 

「もう……エネルギーが……」

「ちっ……くしょう……!」

 

 光が、消えた。

 もはや残されたのは静寂の宇宙に鳴り響く戦闘音のみ。

 全てのエネルギーを使い果たしたゲシュペンストを始めとした機体は身動き一つ取れず漂うだけであった。

 

『少しばかり驚いたけれど、あなた達の希望は現れる事はなかったわね』

 

 勝ち誇ったようなアイナ・クルセイドの声。

 沈黙した地球艦隊・天駆とは逆に次々と新しい機体が召喚されていく。

 最後の切り札というべき策が沈黙し、士気も落ち込んでいく。

 もはや勝ち目はない。

 そう誰もが思った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

≪切実な願い、確かに聞き届けたぜ≫

 

 その声を聞くまでは。

 

『な、に……!?』

 

 光が走った。

 

「なっ!?」

「無数の敵機の破壊を確認。……ビーム砲、じゃない斬撃……!?」

 

 突然の事に地球艦隊・天駆の誰もが驚愕と混乱に陥る。

 アイナ・クルセイドもまた同じであった。

 

「この声は……!?」

 

 ショウ、ただ一人を除いては。

 

≪世界を守りたいという気持ち、確かに俺達に届いたぜ≫

≪私達は知っています、最後まで諦めない意志を持つ者達を≫

 

 それは少年の声であった。

 それは少女の声であった。

 そしてそれをショウは知っていた。

 

≪だから俺はあんた達に力を貸すぜ≫

≪それが私達が歩む道と交わるんですから≫

 

 ビームが放たれた方向へ、視線が向く。

 味方も、敵も、全ての人達の意識が。

 

≪だから俺はあえてこう言わせてもらうぜ≫

 

 二本の角、牙のような顔面を持った鬼を連想させる。

 その背に巨大なマントをなびかせながら現れたロボット。

 小さな点でしかなかった想い(願い)を重ね、繋ぎ、結び合わせ、可能性という名のラインを作り上げるもの。

 それはすなわち。

 

≪数多の平行世界から、一つの世界を護る為に集結する。それはなんて……≫

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

≪ナイスな展開じゃないか!≫

 

 正義の味方がここに参上した。




Re:クロガネと少年

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