▽月?日
無事に西暦世界へと帰還を果たした。
いやぁ、青い海はやっぱり素敵ですわ。
時間の流れもどうやらあちら側と同じのようなので、時差などは考えなくていい事が判明したし新正暦世界に戻る時もこちらで過ごした時間が流れている可能性が高くなった。
となればやはり一年というタイムリミットは変わらないようだ。
で、問題が起きたとすればナデシコBのエンジントラブルが発生したのだ。まぁ、無理やりフィールド出力を上げたりしてたみたいだからな。
補給、そして情報収集の為に日本に向かう事になった。
うん、チトセとすぐに会えそうだ。
▼月○日
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▼月☆日
ようやく頭が落ち着いたので日記を再開する。
あの日、ヌーベルトキオシティに戻った俺に知らされたのはフザケタ話であった。
チトセが攫われた。まるで意味が分からない。
どうして、と何度も考えても理解できないでいる。
旋風寺財閥とネルガル重工が共同でこの一月の間に捜索を行ってくれたらしいが、消息は掴めず。攫った組織の影すら捕らえられていないという。
前に俺が火星の後継者に狙われた事があったので、そっちの線かと思ったのだがそちらではないらしい。
当時一緒にいたサリーちゃんによれば白い服を着た女達らしいが、情報は集まらず。監視カメラなどの映像も残っていないという。
加えて、脅迫の為に爆弾を複数仕掛けられる点を考えるとかなりの規模の組織なのかもしれない。
更に工場で修理中だったゲシュペンスト・タイプRも強奪されてしまったとか。
ほぼ同時刻に犯行が行われた事を考えると同一犯として考えていいだろう。
今も必死に捜索活動を行ってくれているし、ルリ艦長やソレスタルビーイングも協力してくれている。
信じて……待つしかない。
▼月★日
少し前にあった記録も書いておこう。
舞人の友人である浜田君に彼女が出来ていた。
旋風寺重工でアルバイトをしていたそうだが、そこで浜田君に一目ぼれ。猛アタックをして結ばれたとかなんとか。
この時の俺はかなり冷静じゃなかったが、ここは素直に祝福できたと思う。
その後に舞人とエースのジョーの一騎討ちがあったり、ザンボット3を狙ってショーグン・ミフネが襲ってきたが返り討ちにしてやった。
あんまりこう書くのもあれだが、俺は悪い意味でかなり派手に暴れてしまった。
襲ってきた奴等を容赦なく千切って潰して砕いてしまった。アンジュや万丈さんに諌められるまでやってしまい色々と反省するしかない。
▼月◆日
幾つかの補給や修理を終えた後、アルゼナルに向かう事になった。
ドラゴンの情報をジル司令に渡す為である。
俺は先日の暴走もあり、部屋で休んでいる所だ。
正直な話、チトセの事もあるから落ち着かないので体を動かしたいのだが何故かモモカが部屋で陣取りこちらを見張ってくるので部屋から出る事もできない。
おーい、アンジュの世話はどうした?えっ?アンジュから頼まれた?ほっとくどっかに飛び出しそう?
さすがにそんな無茶はしないんだけど……。
アンジュや勝平達が部屋に遊びに来た。
もしかしなくても気を使わせてしまたのかな。
色々と申し訳ない。
▼月※日
アルゼナルに到着。
情報交換などしていたら、北辰達が襲ってきた。
アキトさんとの一騎討ちをご希望らしかったが、まぁ、罠ですよね。こっちもちゃんと近くで出待ちしてたけど。
その際にあっちが矜持がないのかとか色々と喚いてたけど知るかそんなもん状態である。
火星で大敗していた火星の後継者の戦力はあんまり多くない為、北辰とその六人衆さえ抑えればどうにでもなると思っていたのだがナデシコBが北辰の攻撃で大破。
加えて、始祖連合国の無人MSが援軍としてこっちに襲い掛かってきたもんだから正直、かなり焦ってしまった。
しかしそこに現れたのはまさかのナデシコC。
どうやってボソンジャンプしたんだろうかと思ったが、更にまさかのまさかのミスマルもといテンカワ・ユリカの登場である。
怒涛の超展開に驚愕しっぱなしである。
トドメとばかりにルリ艦長のクラッキングで無人MSの大半が沈黙。
この展開にさすがの火星の後継者の士気も低下。雑魚はあっさりと討ち取られ、北辰六人衆も順番に叩き落され、北辰はきっちりアキトさんがトドメを刺して終わりであった。
その後、アキトさんが立ち去ろうとしていたが勿論逃がす訳ない。
みんなの声、ルリ艦長の声、そして何よりもユリカさんの声を聞いてアキトさんも帰ってきてくれた。
あんまり覚えてないが、あれだとこんな終わり方ではなかった筈だ。
だからこそ言える事がある。
ハッピーエンドが一番である、と。
ああ、本当に良かった……。
▼月#日
昨日の続きであるが、戦闘後にやってきたアカツキ会長達の話によるとチトセを攫ったのはやはり火星の後継者ではないらしい。
逮捕した草壁達を取り調べたがなんら一切知らなかったそうだ。
となると、犯人は誰だ……?
あのテロリスト達の集団であるDG同盟ではないようだし。
この後もネルガルはチトセの行方を追ってくれるらしい。そこは素直に感謝だ。
ルリ艦長も言っていたが攫った、という事は何か目的があるのだろう。わざわざゲシュペンストまで持っていたのなら尚更だ。
スパロボ的なお約束のアレなのか、もっと別の何かがあるのかは分からない。
だけど抱き合っているアキトさんとユリカさんを見て思う。
俺も決して彼女を諦めたりしないと。
▼月=日
アンジュの様子がおかしい。何か思いつめた様子だ。
この時期に何かあっただろうか。
最近、色々な展開があって忘れてくる話もあるから困る。
ちょっと本気で記憶の海を漁ってくるとしよう。
▼月@日
昨日の答えだがすぐに判明した。
始祖連合国、アンジュの故郷であったミスルギ皇国にて妹であるシルヴィア嬢が処刑される事が決まってしまったらしい。
罪状はノーマを匿った事。つまりアンジュの事だ。
仲が良かったのだろう。アンジュは助けに行きたいと思っている。
勿論、一国家、しかも地球連合ですら手出しできない国相手にそんな事が出来る筈もない。
と、なれば……。
▼月?日
やはりスメラギ皇国か、いつ出発する?
俺も同行する。
▼月>日
以下、カズマ・アーディガンの真似をして脳内日記である。
あの日、脱走の話をしていたアンジュ、モモカ、ヒルダと協力して俺もまたアルゼナルから飛び出したのだ。
こんな事をやらかした理由としては一つ目は純粋にアンジュとモモカの手助けをしたかった事。
そしてもう一つは始祖連合国を調べたかったからだ。
前にティエリア達から聞いた話によればあの国はヴェータですら調べきれないモノが大量にあるらしい。
旋風寺財閥、ネルガル重工、ヴェータですらチトセを攫った犯人を特定できない事を考えると、攫った犯人が始祖連合国にいる可能性が高い。
火星の後継者すら援助した連中だ。他にテロリストを抱え込んでいてもおかしくないだろう。
そんな訳で俺も同行した訳だ。
アンジュからは止められたけど、チトセの話を聞けば頷いてくれた。
途中でヒルダと別れ、俺とアンジュ、モモカの三人で潜入となった訳だ。
目的は二つ。アンジュの妹であるシルヴィア嬢の救出と、チトセに関する情報がないか調べる事だ。
因みに俺はゲシュペンストは置いてきて、ヴィルキスに三人乗りしてやってきた。今回の潜入作戦に相棒は邪魔になってしまうからな、目立つし。
二人からは心配されたが、ゲッターチームと鉄也さんから仕込まれた体術と幾つかの道具でどうにかするしかない。
それに切り札と保険も用意しておいたしな。
▼月¥日
無事にミスルギ皇国に潜入完了。
ヴィルキスの跳躍チートすぎる。一瞬で行けるとは思わなかった。
で、潜入後の動きとしてはアンジュとモモカは二人で皇宮に進入し、シルヴィア嬢を救出。俺はモモカから教えてもらった幾つかのポイントからチトセに関する情報を探す事にした。
定時連絡や合図、合流場所を決め、作戦開始。
▼月$日
アンジュとモモカが捕まった。
しまった、今頃思い出したけど今回の話って罠じゃねーか。自分の低脳っぷりに呆れてしまう。
シルヴィアの処刑が一転してアンジュの処刑となってしまった。
助けなければならないが正直、俺一人だと手が足りない。
だがモモカも捕まった以上、俺一人でどうにかしなければならないが……。
あっ。
見知った……いや、かつて映像を通して見た顔を一人見かけた。
こいつなら間違いなく力を貸してくれるに違いない。
▼月%日
大混乱!
アンジュの処刑会場は大混乱に陥った。
犯人は言うまでもない、俺である。
途中で会ったヴィルキスの騎士もといアンジュの騎士であるタスクにアンジュとモモカの救出を依頼。
俺は囮となって派手に暴れたのだ。
勿論、生身ではない。タスクと違って忍者スキルは持っていないんだ。
で、何で暴れたかって?
勿論、ミスルギ皇国に配備されてあったMS、GN-X IVを強奪して、である。
いやぁ、事前にコーラサワー大尉に色々聞いておいて正解だったし、無人MSがビルゴみたいなタイプじゃなくて後付タイプでよかった。
俺の知識で無人制御部分を破壊して有人機仕様に戻して動かしたのである。
おかげでアンジュ達は脱出に成功。ヴィルキスもやってきて合流。
加えてボソンジャンプでナデシコCもやってきてくれた。書置きを置いておいてよかった。
アンジュ達はそのまま無事にナデシコCに合流。俺は適当に暴れた後、奪った機体を自爆させて脱出。タスクに拾ってもらってナデシコへと帰還に成功した訳である。
えっ、途中でやってきたドラゴンにミスルギ皇国との模擬戦?
全部叩き潰したに決まってるじゃないか……!
▼月&日
今日から再び書き込み日記。
当然ながら戻ったら大目玉を食らった。
説教に加えてナデシコCの一室にて謹慎処分である。
まぁ、こうなる事は分かっててやったので後悔はないんだけど。
一応、手土産として持ち帰った始祖連合国のデータを渡したおかげか日記だけは許してくれた。ありがたや。
しかし俺のスキルではチトセに関する情報は見つけられなかったが、ルリ艦長達なら何か分かるかもしれない。
後は持ち帰ったデータから何か分かればいいんだが……。
▼月!日
ヴィヴィアンドラゴン化事件が発生した。
こうなると色々と隠していたアルゼナル側も情報開示をするしかなくなったのだろう。
今日、色々と話を聞いた。
大半は俺の持っていた知識と一致していたが、驚いたのはコーディネイターもまた古の民だったり、イオリア・シュヘンベルグもまた『神様』を倒す為に動いていたとは。
なんとなく分かってはいたが、この世界、やっぱり混沌としてるなぁ。
▼月*日
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▼月|日
またかなり意識が吹っ飛んでた。いや、怒りすぎて何も考えられなくなった、というべきか。
あの日、何があったのか自分を落ち着かせる為にも書いておく。
まずはドラゴンの襲撃から始まった。
襲撃場所はアルゼナルに近いオーブ。ミスルギ皇国へ攻め入る為の前線基地とする為か。
しかしアスハ代表とマリナ皇女の二人がミスルギ皇国に行ったきり消息不明とは。
考えるまでもなく犯人ってあいつだよなぁ……。
それは置いておいて、ドラゴン退治だが例の指揮官機もやってきたのでそいつから話を聞く事にした。まぁ、力ずくでだけど。
しかしさすがにオーブの防衛をしながら戦うのは辛い所だ。とは言え、そう何度もこの国を焼かせる訳にはいかない。
シンやキラ、アスラン達が中心になってドラゴン達は無事に撃退。
指揮官機もアンジュがきっちり頭を抑えたんだけど、上手く逃げられてしまう。
そこで刹那がフォローとしてGN粒子を撒いてくれたおかげか、アンジュと指揮官機、サラマンディーネは無事に意思疎通が出来たようだ。
俺達もドラゴン達の意識に触れる事が出来た。
そのせいかお互い戦意が失われていくのが分かった。さすがにただの怪物退治という訳にはいかない事を理解してしまったせいか。
アンジュとサラマンディーネは決着をつけようとしてたけど。
だがそこに横槍が入る。
ガーディムである。
いつもの白い機体がこちらとドラゴンを攻撃してきたのだ。
……そしてそこに彼女がいた。
チトセ、だ。
チトセがゲシュペンスト・タイプRに乗ってガーディムの一員となって襲ってきたのだ。
彼女が裏切った、なんて考えはない。攫われたんだから当然だ。
そして予想通り、彼女からは何の意志も感じられなかった。ただただガーディムとしての命令を果たす、それだけしか感じられないのだ。
洗脳。
予想通り……最悪の展開である。
そしてチトセの横には見た事がない大型の機体がそこにはいた。
グーリーが乗っていた機体よりも一回り以上大きな機体。これは後の話だが通信・索敵能力を強化した指揮官機だと言う。
そしてこいつがチトセを洗脳した奴であった。
ジェイミー・リータ・スラウシル。
ガーディムの指揮官の一人だそうだ。
だがあの時の俺はそんな事はどうでも良かった。
チトセを攫った相手、ぐらいの認識であり、こいつは潰す、とした感情しか抱かなかった。
だが、負けた。
俺とゲシュペンストはあのクソ女とチトセの連帯攻撃によって返り討ちにあってしまった。
フォローにきてくれた刹那やキラがいなければあのまま命を落としていたかもしれない。
他の敵機は全て撃破。チトセとクソ女は撤退。オーブの防衛に成功。
結果的に見れば俺達の勝ちであったが、そんな事は何の慰めにもならなかった。
そして悪い事は続くものである。
敵が全ていなくなった後、行われたアンジュとサラマンディーネの決闘。
二人の攻撃で次元が乱れたのか、アンジュ、そしてそれを助けようとしたタスクとヴィヴィアンが消息不明。サラマンディーネもまた同じように姿を消していた。
ああっ、クソっ……本当にどうしてこうなったんだよ……。
その音はまるで地獄の底から響いてくるようなものであった。
「……」
だがその音よりも、ホシノ・ルリは音を生み出した本人、高坂翔の方に恐怖を覚えていた。
その顔からは何も読み取れない
しかしその内に秘めた意志は自分だけではないここにいる誰もが理解していた。
「頭を……冷やしてきます」
それだけ言うと、ブリーフィングルームから立ち去って行く翔。
その姿を見届けると、誰が漏らしたのかは分からないが息を吐き出す。
先ほどまで蔓延していた重い空気が少しだけ消えて行く。
「尋常……じゃなかったわね」
「はいです……」
怒りに満ちた翔の姿に恐怖を覚えたのは決して自分だけではない。
同じように話を聞いていたスメラギ達もその顔に怯えの色が見える。
だが今はそれ所ではない。
翔が先日、ミスルギ皇国に潜入した時のように飛び出して行く事が考えられる。
無闇に飛び出しても攫われた千歳を助ける事など出来ない事は分かっているが、人の感情はそんな問題を無視する可能性があるからだ。
「その心配はないだろう」
「アキトさん……」
ルリの傍にいたアキトが安心させるように口を開く。
「怒りに満ちていたが、冷静な部分も見えた。今すぐどうこうするとは思えない」
先程、出て行ったのも本当に頭を冷やす為だろう。
だが、とも付け加える。
「冷静なのは今だけだ。何かきっかけがあれば冷静な感情などすぐに吹き飛ぶだろう」
ガーディム、千歳を攫い洗脳した連中が来る可能性は高い。
何せあの指揮官である女はまた来るような口ぶりだったからだ。
「しかし敵の目的が読めませんね」
「ええ」
如月千歳は別世界の人間、という点以外に何か特別な要素は見受けられずわざわざ攫う必要があるとは思えない。
話を聞く限り因縁、という可能性も低いだろう。
彼女とガーディムとの接点は次元の狭間での戦闘ぐらいしかない。
視点を変える必要がある。
「チトセさん個人に用があった訳ではないのかもしれません」
千歳という個人に何かの価値があった訳ではなく、それを利用して何かをするつもりなのかもしれない。
しかし一体何をするつもりなのか……?
「情報がない以上、推測しか出来ません」
「ええ。となると……」
「次にガーディムが襲撃してきた時ですね」
手元に情報がない以上、手に入れるしかない。
そして入手する方法はたった一つ。
ガーディムから直接入手するだけだ。
「情報だけではありません。チトセさんも必ず奪還します」
そうだ。情報だけの入手で満足する訳がない。
彼女の奪還こそが本命だ。
「仲間を攫い、洗脳した奴等を許す気はありません」
その言葉に全員が頷く。
怒りを覚えているのは決して翔だけではないのだ。
仲間を奪った相手を許す訳にはいかない。
「彼等には思い知って貰いましょう」
我々の怒りを。