好きって言いたい 作:お金の無駄使い
まさかの三月から四ヶ月…そろそろ八月に突入します…。
ちょっと訳ありでしばらくハーメルンに入れず、その内に執筆の事が頭から抜けていました…。
そしてその間に時間さんは本編執筆終了してたと言うw
今回は、時間さんのオリキャラ、津久井一奈さんが出てきます。以前言ったオリキャラの交換の件ですね。
…そして物語の方向性が怪しく…。
奉仕部の扉を開けると、そこには驚愕の目をウチに向ける三人が。
…まあ予想は出来ていたし、別に驚きはしないけど。
「さ、さがみん……」
「……………」
「……………」
雰囲気は、お世辞にも歓迎とは言い難い。
だけど、ウチはウチの間違いを知るために動く必要がある。
だから、怖じ気づいてる暇はない。
「…雪ノ下さん、コイツ借りてっていい?」
思った以上にウチ自身は落ち着いているらしく、サラッと軽く言えた。
「「……は?」」
「さ、さがみん?」
雪ノ下さんと比企谷の戸惑う声が重なり、結衣ちゃんも何言われたか分からない見たいな顔をしてこっちを見る。
それもそうだろう。
…あの文化祭。誰もが忘れたわけでは無いし、ここはその発端とも言える場所。そこにあの日以来恐らく初めてウチが来たのだ。訳が分からなくて当然だ。
「…雪ノ下さん?…返事無いんだけど、勝手に連れてくよ?」
「おい待て俺の意思…」
何も言おうとしない…と言うよりは、恐らく状況の飲み込めて見ない雪ノ下さんにウチが更に声を掛ける。普段なら──最近のウチならば絶対に自分から他人に話しかけるような真似はしない。だから、今こうしてスムーズ…ではないにせよ、話しかけられている事に少し驚きもしている。
「…ま、待って。…待ちなさい相模さん。それは奉仕部の備品よ。いくら備品だからとは言え勝手に連れ出されては困るわ」
「備品ってな…」
「…ふーん。…じゃあ予備を出せば?備品って事は予備もあるんだろうし」
ウチはそう言いながら比企谷の方へと歩く。
──と、その時だった。
「…悪い、二人とも。今日は先に帰るわ。…相模もそっちのがいいだろ」
「う、うん…」
「ちょっと、貴方何を言って…」
比企谷が急に席を立ち、椅子を片付けながらそう言い、そしてそのまま扉へと向かう。
予想もして無かった行動だったのはどうやらウチだけじゃないらしく、雪ノ下さんも結衣ちゃんも固まったままだ。
「…行かねーのか?だったら帰るぞ」
「…ふん。アンタに言われなくても分かってるわよ」
何故比企谷が急にウチに乗って来たのかは分からないし、どんな目的があるかも知れないけど、とにかくこれで第一歩は踏み出した。…ウチが真実を知り、そしてそれを償うまでの、小さな物語の、第一歩を。
* * *
奉仕部を出て、比企谷と二人廊下を並んで歩く。
特に会話は無く、ただひたすらに廊下を蹴る靴の音がカツ…カツ…と一定のリズムで刻まれて行く。
まだ初秋のこの季節では陽は長く、放課後と言えどまだまだ明るい時間帯。
これが冬ならば、この廊下も寒く暗い場所になっていたのだろう。
人の気配は無く、静かに
そんな場所が、今のウチの好きな場所だった。…とは言いつつも、怖いのはあまり好きではないし、それ以前に今は秋と夏の中間…若干秋より、くらいの季節であって、冬など到底先の事なんだけど。
結局無言のまま階段へ着き、そのまま降りて行く。
やはり無言なのは変わらず、ウチが隣を歩くのも同じだけど。
陽の角度のせいだろうか、廊下より幾分階段のが暗く、少し不安になる。
周りが暗くなり、少しずつ闇に吸い込まれて行くような感覚。
それが来た後には、今度は廊下へ向かって少しずつ明るくなって行く。
それを数回繰り返している内に、一階──昇降口へと辿り着いてしまった。
「……………」
「……………」
一階に着いてから少し前を歩いていた比企谷が振り返り、ウチを見る。
切り出すタイミングを伺っていたのは比企谷も同じだったようで、しばらくの沈黙の後、比企谷自身から提案してきた。
「…どっか店のがいいのか」
何の抑揚も無く、面倒事に付き合わされてる感すら出さず、ただ単にそう言った比企谷に、私も取り敢えず頷きを返す。
奉仕部部室での流暢な会話はどこへ消えたのか、今はもういつものウチに戻っていた。
…こうなってしまえばもう、ただのぼっちとぼっち。コミュ症とコミュ症。会話が生まれる事も、作り出す事自体も難しい。
それに恐らく向こうは会話は必要最低限レベルでしか行わないし、ウチも既に話しかける勇気は無い。
そんな事をしてる内に、今度は外へ。
「…お前、チャリか?」
「……ウチはバス」
会話はこれで終わり。
たったこれだけ。…この後に続ける言葉が何故か見つからないし、そもそも繋げる気すらなかった。
比企谷は少し肩を落とすような仕草を極力隠して行いつつも、バス停へと向かっていったので、ウチもその後を追う。
──こんな事が、ずっと続いていた。
* * *
駅とは逆方向に向かうバスに乗って、少し揺られた後。恐らく適当なところで降りたのだろう。マップアプリを使って進んで行く比企谷の後に着き、やって来たのはいかにも客の入ってなさそうなカフェ。
外装に派手さは欠片も無く、普通に通り過ぎてしまいそうな感じで、内装にも派手さは無い。
店員も店主を入れて二人しかいないようで、内装やその他の雰囲気も合わせて落ち着いた雰囲気を醸し出していた。
「いらっしゃいませー…二名様ですか?」
「あ、いえ……っと、二名です」
今、多分比企谷は一名って訂正しようとした。…条件反射でそうなるとかマジでぼっち。…ウチもだけど。
「こちらへどーぞー」
そのままやる気のない店員に案内されて、店の角にある席に座る。
ウチら以外に客は無く、店主の趣味なのかなんなのか知らないけど、ジャズが流れていた。
「……ん…」
比企谷はメニュー表を一瞥すると、今度はそれをウチの方へと渡してくる。
「…ウチは比企谷と同じのでいい」
それだけを告げ、そのメニュー表をテーブルの隅に置く。
どれでも良かったし、飲み物への拘り…と言うか、自分を飾るのがバカらしく思えて来て、今まで無駄に派手に装っていたのがアホらしく思うようになっていた。
それの一例として、女子だったらとかそう言うのがどうでも良くなったのが、飲料だ。
だから、比企谷に任せた。
「…すいません」
「はい。少々お待ちを」
比企谷が手を上げつつカウンターの方へ声をかけると、カウンターの奥から帰ってくる店主の声。
そして直ぐに来た店主に、比企谷が同じものを二つ頼む。名前からしてコーヒーだろう。
「……………」
「……………」
ジャズだけが流れる空間に、店主がオーダーを用意する音が小さく聞こえる。
だけどやっぱりウチと比企谷の間には何も無い。
──そう。何も…何も、無い。
「…比企谷、さ……」
「………おう…」
「…ウチや…ウチみたいな人の事…、…どう…思ってる?」
「………は?」
「…いや、…その前に…まずはごめん、から…だよね」
「お、おい!?…ちょっ…」
比企谷がウチの問いかけに動揺してる間に、頭を下げる。
…何でウチがこんな事をしてるのか。
それは、ウチの現状が語っている。
…でも、この謝罪自体に意味はない。
ウチは謝る対象や、理由をまだ完全には知ってないから。
何となく、比企谷に謝らなきゃいけないのは分かった。
今日の小田原さんと同じような事が、前にもあったから。
──津久井一奈さん。
あの人にも、同じような事を言われた。
もともと中学が同じで、ゆっこと仲が良かったウチは、一年生の時はゆっこと一緒に居る事が多かった。
津久井さんと知り合ったのも、ゆっこがきっかけだった。要するに友達の友達みたいなものだ。
たまに遊ぶくらいで、それ以外は殆んどコンタクトなし。学校ですれ違えば手を振るくらい。
──そのくらいの関係性だったからこそ、余計鮮明に覚えている。
『相模さんは、比企谷君を理解してないから…』
…その一言を聞いた当時は、反発していた。
言っている事の意味が
今でも、完全には理解していない。
でも、ウチの現状がこうなったのには、きっと比企谷が関係してる。──そう、思うようになった。
恐らく、これは正しいんだと思う。
根拠も仮説も存在しないけど、それは何となく分かる。
まだ大半の人間が比企谷をイジってるけど、さっき言った二人──小田原さんと津久井さんは、その話題が出た時に限って暗い顔をしていたような気がする。
…でも、だったら何で、周りにそれを言わないんだろうか。
──この時のウチは、二人がどれだけ比企谷の事を考えて動いていたのか、まだ知らなかった。
あやふやな状況に陥っている相模さん。
でも、大体こんなんじゃないかな。
原作では相模がぼっちとまではいかずとも少し下に見られてましたよね。それが本人には理解出来ない…できる筈も無いんだと思うんですよ。
自分を必死に肯定しようとしますからね。
なので、そこら辺を見ていくと、うちの相模さんは、別人ですよねw
そして物語の方向性が怪しくなって来てこの先書けるかな…。